株式会社矢野経済研究所は、国内のEC決済サービス市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

 

オンライン決済では、外出自粛により決済単価の大きい旅行やホテル・宿泊、イベントなどのチケット販売の利用が減少したものの、巣ごもり消費に伴って物販系ECや動画・ゲーム・電子書籍などのデジタルコンテンツの取扱高が増加した。さらに、コロナ禍を機にEC事業に進出する事業者による決済代行サービスで飲食デリバリーやオンライン診療などが増加している。

 

後払い決済サービス市場の動向

 

BtoC領域のECにおける後払い決済サービス市場は堅調に拡大しており、2019年度は6,870億円、2020年度は8,820億円を見込んでいる。拡大してい理由の1つとしてとして、これまで自社で後払い決済を展開していた大手企業で、自社のリソース削減を目的に後払い決済サービスの導入が進んでいる為だ。また、サービスを利用しているユーザーは、若年層や主婦層、シニア層などのクレジットカードを利用しない層を中心に利用が広がっているが、クレジットカードを所有しているユーザーにおいても、普段使用しないECサイトの利用や電車内で移動しながら購買する場面などで後払い決済サービスの利用がみられる。

 

さらに、コロナ禍などを背景に購買行動が、リアル店舗をはじめとするオフラインからECなどのオンラインへシフトし、EC市場が活発化するなかで宅配業者と対面する決済を避けるため、代引きから後払い決済への移行が進むなどして、後払い決済の利用が拡大している要因だ。

 

今後、後払い決済サービスの送客効果に対する期待や、高精度な即時与信機能の実装によるEC事業者の導入拡大などを背景として、2024年度の後払い決済サービス市場は1.8兆円を超えると予測する。

 

EC決済サービスの市場動向

 

近年EC決済サービス市場は拡大を続け、コロナ禍を機に更に、事業者がEC事業に進出またはD2Cへの取組みが増え、事業者においてもEC決済サービスの導入が進んでいる。一方、決済代行業者では、決済手数料率の引き下げ競争が激化しているため、加盟店のサイト集客支援や販促支援、送金サービスなどにより、決済手段以外の付加価値を提供することで差別化を図っている。

 

また、決済手段においてはさまざまな決済サービスが登場する中、大手決済代行業者とのオンライン取引でのQRコード決済を拡充する動きが出ている。この取組みは、多様化する決済手段に対応することで、より広い層の消費者を取り込もうとする加盟店に対して、EC決済サービスの利用促進を図る意味合いがある。現在EC決済の取扱高では、オンライン取引でのQRコード決済金額が占める割合は小さいものの、利用は急増している。

 

大手決済代行業者を中心に取扱高は増加しており、また、EC決済サービス提供事業者は、対面取引やオムニチャネルに関する決済サービスの提供にも注力していくと考える。こうした要因などを背景に、2019年度のEC決済サービス市場を16兆4,325億円と推計し、2020年度は19兆1,562億円の見込みだ。

 

今後、BtoC領域のEC市場の拡大に伴ってEC決済サービス市場も拡大していく見込みである。EC化が進展するにつれて、購買行動ではオンラインとオフラインのボーダレス化が進み、オムニチャネルや対面領域の決済サービス提供も強化される。さらに、EC決済サービス提供事業者は、BtoB領域の企業間取引の決済サービス提供にも一層注力していくとみられている。