ドイツではeコマース詐欺が大問題になってきている。なぜドイツのオンライン小売業は、この種の詐欺の標的になりやすいのだろうか。これには、ドイツの買い物客が好む支払い方法が深く関係している。

 

eコマース詐欺の一般的な手口は、詐欺師がオンラインで商品を注文するときに分割払いを選択し、偽の、あるいは入手した名前と口座番号を入力し、注文品を受け取るための特定の住所を知らせるというものだ。詐欺師は、被害者が購入した覚えのない請求書に困り果てている間に、無料で入手した高額商品を持ち逃げしているのだ。

 

ドイツでeコマース詐欺を働くのは簡単

ドイツのテレビ番組ZDFzoom(ドイツ第2テレビZDFの番組)は、ドイツにおいて、eコマース詐欺がいかに簡単に実行できるかを示した。オンラインショップをだますには、他人の名前と生年月日を取得するだけで十分な場合がある。同テレビ局のスタッフは、約200人の詐欺師がいるギャングのトップに話を聞いた。彼は、6年間の捜査の末に逮捕され、現在は刑務所に入っている。彼と彼のギャングネットワークは、約26,000件のオンライン注文詐欺を行い、約13,000万ユーロを盗み取ったという。

 

詐欺師は意図的にドイツを選んだ

ロシアの詐欺師によると、彼は他のいくつかの国で詐欺を企てようとした後、意図的にドイツを選んだという。「他国と比較すると、ドイツのセキュリティシステムが最も弱い」とのことだ。

 

「他の国と比較すると、ドイツのセキュリティシステムが最も弱い」

 

そのロシアの詐欺師によると、ドイツのオンライン小売業者に決済メカニズムを提供している企業に責任があるという。「彼らは詐欺の企てを検知することに特に優れていると自負しているが、現実では失敗しているケースが非常に多い」。

 

ドイツ人は分割払いを好む

また、ドイツのオンラインショッパーの好む支払い方法にも原因がある。彼らは分割払いでの購入を好む、ということだ。「しかし、支払い条件を厳しくすると、誰も購入しなくなり、売上が上がらなくなってしまう」とドイツのサービスプロバイダーであるRatepayの広報担当者はドイツの週刊誌Sternに話している。そのため、ほとんどの小売業者は、リスクの高い請求書払いを決済方法として提供するしかない。

 

もちろん、二段階認証のような追加のセキュリティ対策は常に取られている。しかし、繰り返しになるが、ほとんどの消費者は、これらのセキュリティ対策をハードルとして捉えている。オンライン小売業者にとっては、売上とセキュリティを天秤にかけることになる。

 

「オンライン小売業者にとっては、売上とセキュリティを天秤にかけることになる」

 

eコマース詐欺は、オンラインショップに打撃を与えるだけでなく、消費者も犯罪によって損害を被る。ZDF(第2ドイツテレビ)の番組では、(被害者の)Mara Bergmann氏が紹介されている。彼女の名前で合計6,000ユーロ相当の商品が注文されており、その結果、債務回収機関とのトラブルが発生し、Schufa(ドイツの信用情報機関)との問題が生じる可能性もあったとのことだ。

 

氏名と生年月日で十分なことが多い

Mara Bergmann氏は、通知を受け取るまで、詐欺の注文について何も気づかなかったという。単純ではあるが、厄介な理由がある。多くのオンラインショップでは、本名と生年月日を取得すれば、分割払いサービスを提供している。顧客は、自宅の住所とメールアドレスも提供する必要があるが、これらはチェックされない。そのため、住所とメールアドレスは、詐欺師自身が勝手に設定することができるのだ。

 

ベルリンの法執行機関にいるStefan Keller氏によると、昨年は同市だけで19,000件以上のeコマース詐欺事件があり、検挙率はわずか12%だという。

 

※当記事は欧州のニュースサイト「Ecommerce News Europe」の12/4公開の記事を翻訳・補足したものです。