マーケティング部門とIT部門はそれぞれ別に目標を設定しているが、どちらもMartechへの投資効果を最大限にしなければならない
今や、これまで以上に技術者とマーケティング担当者が協力する必要性が高まっている。それにもかかわらず、互いにまったく異なる2つの世界でビジネスを続けているように見えるのはなぜなのだろうか?
多くの部署間の課題と同様に、問題は上層部から始まっているであろう。Leapfrog Marketing Instituteの調査によると、「IT部門との関係が非常に協力的で生産的である」と考えているマーケティング役員はわずか30%である。さらに驚くべきことに、IT部門においては同様に考えている役員はたった13%である。マーケティング担当者の20%が「IT担当者との連携が企業の団結を強める」と感じているのに対し、IT担当者では、4%のみが同様の意見とのこと。
マーケティングとIT部門の分裂の解決には、一体何が必要なのだろうか?両部門で共通の目標とインセンティブを設定することは有効であろうが、Leapfrogの調査によると、両チームの63%が「目標とインセンティブを共有していない」と回答している。マーケティングとIT部門はそれぞれ、チーム毎の目標が設定されているものであるが、少なくともMartechへの投資効果の最大化という1つの目標は両部門にとって重要なのである。
Martechで平和的に協力する
マーケティングテクノロジーは、IT部門スタッフとマーケティング担当者のスキルを組み合わせ発揮するのに明らかに最適な分野である。表面下を探れば、Martechについて両者が団結して早急に取り組むべき必要性が見えてくる。
ITサービス企業Wipro が最近実施したマーケティング役員を対象とした調査では、「マーケティングチームスタッフのほとんどがMartechに精通している」と考えているのは、たった6%に過ぎなかった。そして半数以上が「Martechに関する能力格差が、ビジネスの成功の障壁になる」と考えていることがわかった。これよると、マーケティング担当者はMartechの重要性を理解しているようだが、その「方法」について理解しているのはほんのわずかである。
対照的に、IT担当者は、テクノロジーイニシアチブがなぜ重要かという問題を理解していないようだ。戦略コンサルタントファームであるBain & Companyの調査によると、調査対象の経営幹部の80%以上が、「自社の広範な戦略とITチームの歩調があっておらず、IT部門に対して(平均20%増しで)必要以上にコストをかけている」と感じている。
一方で、マーケティング担当者と技術者が協力しビジネスを進めると、企業全体の成功につながる。調査会社のMcKinseyによると、CMO(最高マーケティング責任者)が、IT部門最高責任者と協力して自社目標を達成する“インテグレーター”である企業は、年間10%の収益成長を遂げている。これはS&P 500企業平均の2倍の速さである。
では、ITとマーケティングチームは、各々の能力をどのように融合することができるだろうか?他の問題でも同様だが、すべてはコミュニケーションから始まると言えるだろう。
ビジネス目標設定から始めよう
ITチームは、ダウンタイムを特定の基準値に抑えようとする一方で、マーケティングチームは、ソフトウェアの普及率を押し上げようとしているかもしれない。しかし、両方の目標はどちらも「企業がコストを負担しているプログラムを確実に最大限活用する」というより大きな目標の一部であるのだ。
推論としか聞こえないかもしれないが、実際ほとんどの従業員が自分の仕事を全体的なビジネス目標に結びつけていないものである。Harvard Business Reviewは、従業員の95%が雇用企業の戦略を認識していない、あるいは理解していないと指摘。つまりマーケティングとIT担当者の双方で、目標と主要結果を共有し、企業が何を目標としているのか、そしてどのように目標を達成しようとしているのかを確実に理解するようにすべきなのである。両方のチームで同じ目標を設定し、各チームに特定の機能についての主要結果を提供する。そして進捗状況を報告するチーム間の連絡担当者を指名し、他のチームが全体目的にどのように貢献しているかを両チームが確認しなければならない。
バズワードを使用しない
「ブランドシナジー」や「パラダイムシフト」などといった言葉は、マーケティングチームにとっては重要な用語かもしれないが、それらを用いることにより事情に疎いIT関係者を疎外させることになりかねない。同様に、マーケティング担当者は、「リファクタリング」や「アフォーダンス」などの用語を聞いた場合、疎外されているように感じるだろう。すべての分野において、独自の“バズワード”が存在するものだが、初心者にその概念の説明が必要なケースは実際ほとんどない。
マネージメント&ITコンサルティング会社のCrederaのデジタルプラクティス部門主席リーダーであるPhil Lockhart氏は、次のように述べている。「多くの場合、マーケティングとIT部門の衝突は、お互いの言語を話すことができないことにより生じている。コミュニケーションがうまくとれなければ、両部門が自社の投資を最大活用することは難しいだろう」。さらに、「他チームへの説明において専門用語を使用しなければならないときは、組織の置かれている状況と視点を考慮し、詳細な説明を添えて用いなければならない」と述べている。チームメンバーが、コンセプトを何度も説明しなければならないことにストレスを感じるのであれば、両チームが理解する共通言語を作り出すことを検討すべきだ。
共同購入をする
(ソフトなどの)購買は、多くのマーケティング部門とIT部門のコラボレーションの最初の段階である。しかし、テックPRエージェンシーであるWalker Sands Communicationsの調査によると、マーケティング担当者の約三分の二近くが、マーケティングテクノロジーに関する購買決定を行なっている。それには、入社間もないマーケティング担当者の半数以上が含まれているという。
マーケティングソフトウェアのような両方のチームが関係する商品の購買については、両チームで意見を出し合うべきである。小規模の企業では、投票ツールを使って全員の意見を聞くのも効果的だろう。大規模なチームでは、統括責任者などの意思決定者を代表者に指名し、第三者の意思決定者に対し、チームの利益を主張させる必要がある。
一緒に成功を祝う
多くの場合、チーム間の軋轢は、能力不足や明らかな悪意から生まれるのではなく、人間関係における“親しみのなさ”から生じているものだ。マーケティングチームは、ITチームが(リリースのための)コードデプロイメントの締め切りを守るために協力しなければならない理由がわかっていないかもしれないが、最終的に祝賀会などで主要メンバーが讃えられる機会があれば、その際にその理由を理解できるだろう。個人の業績を認識するこうした合同祝賀会によって、マーケティング担当者とIT担当者が交流する時間を持つことができでば、両チームの貢献をよりよく理解できるものだ。
「プロジェクトのキックオフから離陸まで、ITとマーケティングは一体となるべきであり、一緒に功績を祝うべきである」とLockhart氏は語る。たとえばグローバル企業のLockhart のCMOと協業するCrederaチームは、メジャーなウェブサイトがリリースされるたびに、必ずIT部門と合同で祝賀会を行なっているそうだ。マーケティングチームは、通常ITチームは徹夜でサイトリリースをサポートしなければならないため、リリース直後にまずは休息が必要なことを知っており、そのため、祝賀会は常にサイトリリースの2日後にスケジュールされている。
CMOが、テクノロジーに関してCIO(最高情報責任者)よりも多くの時間を費やしている場合、両チームは素晴らしい顧客体験を提供することができるだろう。マーケティング担当者は、消費者とつながることにおいては専門家かもしれない。しかしIT担当者は、より大きな規模で消費者とつながりを持つための技術知識を持っている。両チームともまだ完全には理解できていないMartech分野で協力することで、最終的に、各チームが提供できる価値を認識できるかもしれないのだ。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/17公開の記事を翻訳・補足したものです。