マーケターはAIの導入を急いでいるが、ブランドが信頼のギャップを埋められない限り、顧客はAIを活用したエンゲージメントを完全には受け入れられないだろう。


マーケティングチームにとって、AIは「アクセラレーション(加速装置)」である。多くの顧客にとって、それは誰かの目的地への移動手段にすぎないのだ。

企業向け顧客エンゲージメントプラットフォームを提供する米国企業Brazeの「2026年ローバル顧客エンゲージメントレビュー(Global Customer Engagement Review 2026)」は、マーケティングリーダーに考え直させるべき状況を叙述している。マーケティングチームにおけるAI導入はほぼ普遍的である一方で、消費者は、ブランドが顧客とのやり取りにおいてAIをどのように、そしてなぜ活用しているのかについて、依然として懐疑的である。

このギャップは理論上のものではなく、すでに顧客体験に影響を与えている。

出典:Brazeによる「2026年グローバル顧客エンゲージメントレビュー」


ほぼすべてのマーケターが「AIを活用している」と回答しており、その大多数はAIが顧客の要望やニーズをより深く理解するのに役立つと考えている。AIはインサイトを導き出し、トレンドを予測し、大規模なパーソナライゼーションを推進している。内部からみれば、これは進歩のように見える。

マーケターの93%が「AIによって顧客理解が深まる」と回答している一方で、ブランドが自身の要望やニーズを正確に予測していると信じている消費者はわずか53%にすぎない。この認識のギャップは、より優れたダッシュボードであっても解消できない。

これは、より深い問題を示唆している。つまり、ブランドは関連性を提供していると確信しているが、顧客はそれを常に実感しているわけではない。そして、それは重要なことである。なぜなら、認識が信頼を左右するからだ。


エージェントが中間層として台頭

もう一つの変化が水面下で進行しつつある。消費者は、AIを自身とブランドの仲介者として利用し始めているのだ。

現時点では、その割合は比較的小さく、「ブランドとのやり取りの仲介としてAIを利用している」と答えた消費者はわずか19%にとどまっている。しかし、今年は1.4倍に急増し、46%に達する可能性もあると予想されている。マーケターは、エンゲージメントについて考える方法を再構築する必要に迫られるだろう。

AIエージェントが顧客とブランドをつなぐ主要な接点となる場合、可視性、価値、そして透明性はこれまで以上に重要となる。もはや検索結果やメール受信トレイの配置だけを最適化するのでは不十分だ。AIアシスタントが自社ブランドをどう解釈し、推奨し、優先順位付けするかを最適化する必要がある。

出典:Brazeによる「2026年グローバル顧客エンゲージメントレビュー」


ここで「信頼」が戦略的インフラとなる。

マーケターは、成長とROI(投資利益率)向上を目指してAIに大きく賭けている。一方で、消費者はAI主導のエンゲージメントに対する満足度について、複雑なシグナルを送っている。

消費者の半数以上が、ブランドはAIを顧客体験の向上ではなく、自社利益のために利用すると予想している。この認識だけで、最先端のパーソナライゼーションエンジンでさえもその効果を鈍らせる可能性があるのだ。

言い換えれば、AI主導のエンゲージメントは、人間的なタッチと明確な価値証明なしには機能しないということだ。これは、今後5年間のマーケティングにおける決定的な課題となり得る。AIの能力は加速している一方で、消費者の信頼がそれに追いつく保証はないのだ。


AI
とエンゲージメントの4つの未来像

Brazeのレポートでは、考えられる4つの可能性が概説されている。

  • AIエージェントは消費者とブランドをつなぐ中核レイヤーとして機能し、個々のニーズに合わせた高度にパーソナライズされた体験の創出を支援する。そのシナリオには、信頼、透明性、そして一貫した価値提供が不可欠である。
  • AI技術は進歩し続けているが、まだ十分に人々の信頼を得られていない。AI導入は鈍化し、影響は限定的で、成長は期待を下回る。
  • AIイノベーションは停滞しつつも、消費者心理は安定。ブランドは既存のツールを活用するが、差別化を牽引するのは人間の戦略と創造性である。
  • そして最も悲観的なシナリオでは、顧客はAI主導のエンゲージメントを完全に拒否し、マーケターは静かに期待値を引き下げる。

現在、私たちは高い能力を持ちながらも信頼は低いという状況にある。意図的な行動がなければ、未来も同様の状況に陥るだろう。強力なツールが、躊躇するユーザーによって制約を受けることになるのだ。

出典:Brazeによる「2026年グローバル顧客エンゲージメントレビュー」


パフォーマンスと認識のギャップを埋める

成功するブランドは、AIについて説明し、自社内部の効率だけでなく、顧客成果をどう向上させるかを示すだろう。

つまり、サービス解決の迅速化、より関連性の高いおすすめ、チャネルをまたいだクリーンなエクスペリエンス、不要なメッセージの削減など、消費者にとっての具体的なメリットを示すことを意味する。

それはまた、明確な同意、透明性のあるデータの使用、強力なガバナンスによって境界を尊重することも意味している。

多くのマーケターは、AIを活用したエンゲージメントによってすでに大きな成果を得ている。生産性は向上し、インサイトは深まり、オーケストレーションはよりスマートになっている。しかし、顧客が同様の効果を実感しない限り、成長曲線は鈍化してしまうだろう。


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※当記事は米国メディア「Martech」の2/27公開の記事を翻訳・補足したものです。