大型家具や家電などの高額アイテムは、オンライン購入者が即座に購入に踏み切る準備ができていたため、より深い割引の恩恵を受けた。


7月16日と17日の2日間にわたって開催された毎年恒例のeコマースイベント、Amazonプライムデーは、大幅な値引きもあって、今年の米国におけるオンライン売上高は過去最高となる142億ドルに達した。Adobe Analytics(Adobeが提供するアクセス解説ツール)が18の製品カテゴリーにおける米国の小売サイトへの1兆件の訪問からデータを収集したところ、これは昨年より11%増加したという。

この記事では、今後数か月間のホリデーセールを計画する際に、デジタルマーケターが考慮すべきトップトレンドを紹介しよう。このイベントはeコマース大手のAmazonが主催しているが、他のチェーン店や専門小売店も同時期にプロモーションを実施した。

 

モバイルの伸び

プライムデーの成長の多くはモバイルが牽引した。モバイル端末を通じた売上は70億ドルに達し、前年比18.6%増となった。

 

高額商品の好転

景気の逆風は、2024年上半期の高額商品の成長に打撃を与えた。しかしながら、プライムデーの期間中、同じ商品カテゴリーの一部では大きな需要があった。

Adobe Analyticsによると、家庭用品、家具、家電製品のカテゴリーでは、売上が76%増加した。

コマースメディアプラットフォームのCriteoによると、プライムデーの初日だけで、家庭用家具カテゴリーはオンライン取引が倍増し、コンバージョン率が75%増加した。

Adobe Digital Insightsの主任アナリスト、Vivek Pandya氏はリリースの中で、「電子機器、アパレル、家具のカテゴリーはeコマース支出の半分近くを占めているが、2024年上半期の成長率は1桁台前半にとどまっている」と述べている。「プライムデーイベントがこれらの主要カテゴリー全体の起爆剤となり、消費者が購入ボタンを押したり、自宅にある商品をアップグレードしたりするのに十分な割引が行われたことは明らかである」。

 

今年はさらに割引率が拡大

Salesforce(クラウドコンピューティングサービスを提供する米国企業)は自社の「Commerce Cloud」でeコマースの購買(15億人の買い物客の行動を含む)を分析しているが、同社は割引率の上昇が売上を刺激したというAdobeの意見に同意した。

米国のプライムデーの割引率は平均22%で、昨年より10%上昇した。割引率が最も高かったカテゴリーは、アパレル全般(平均割引率33%)、家庭用品・家具(21%)、健康・美容(21%)だった。

「久しぶりに注文量がプラスに転じ、割引率が大きくなっている」と、Salesforceの消費者インサイト担当ディレクター、Caila Schwartz氏は話す。「この教訓は単純なものだ。つまり、小売企業が値引きを実行し、真の価値を提供すれば、蓄積された需要の圧力弁が解放され、驚くほどの成功を収めるだろう。そうでなければ、買い物客は他へ流れてしまい、小売業者は損失を被る恐れがある」。

 

プライムデーのハロー効果は拡大し続けている

Criteoによると、プライムデーに参加した量販店や複数のカテゴリーを扱う専門店の数は88%増加したという。同社は、Amazon以外の1,300以上の小売業者とeコマースサイトを分析した。

28%の小売業者が今年、独自のセールイベントを開催したか、またはハロー効果(目立つ特徴が対象の印象や評価に影響を与える現象)の恩恵を受けており、プライムデー初日のオンライン取引は73%増加した。この増加率は昨年より21ポイント上昇し、平均的なeコマース営業日よりも取引が52%増加した。

 

先生の「ウィッシュリストのクリア」を支援

夏休みの時期にもかかわらず、プライムデーの期間中、先生たちはソーシャル上で話題の的だった。

ソーシャルマーケティング企業のSprout Socialが、2日間で約29万6,000件のプライムデー関連のソーシャルメンションを追跡したところ、「#ClearTheList」がメンションのトップになった。

この呼びかけは、来年度に向けた先生たちのウィッシュリストに関するものである。このハッシュタグを使うことで、生徒とその保護者は、新学期に向けて、クラスのために何かを寄付して贈る意思を示した。Sprout Socialの調査では、「#ClearTheList」は1万8,447回メンションされ、「先生」はさらに1万1,173回メンションされた。

その他の上位のソーシャルキーワードは以下の通りである。


Kindle: 1万3,506 件のメンション

Samsung: 7,099 件のメンション

Apple: 4,568 件のメンション

TV/television(テレビ): 3,821 件のメンション

Watch(ウォッチ): 2,493 件のメンション

iPhone: 2,313 件のメンション

Air pods(エアポッド): 2,022 件のメンション

Alexa: 2,000 件のメンション


Sprout Socialによると、29万6,000件のメンションに対する総エンゲージメントには約120万件の「いいね!」、コメント、シェアが含まれ、潜在的なインプレッション数は147億4,000万件に達した。エンゲージメントの割合は、ポジティブが61%、ニュートラルが29%、ネガティブが10%であった。

 

TikTok Shopの「Deals For You Days」はプライムデーに敵わない

TikTok Shopは7月9日、ソーシャルコマースプロモーション「Deals For You Days」を開始した。TikTokのクリエイターが若い消費者に与える影響力に疑問の余地はない。パフォーマンスの面では、少なくとも今年はプライムデーを脅かすものではなかった。

Salesforceによると、「Deals For You Days」によって、小売業者間で値引きが促進されたり、割引率が引き上げられたりすることはなかった。

GMV(商品総額)の伸びは、TikTok Shopのプロモーション期間中は6%減少したが、プライムデー期間中は3%増加した。

Salesforceによると、「Deals For You Days」の割引率はプライムデーよりも低く、18%対22%だった。

「Amazonプライムデーだけでなく、他のセールイベントと比較しても、TikTokのイベントはターニングポイントとなる」と、マルチチャネル成長プラットフォームCymbioのCEOであるRoy Avidor氏は語る。「ブランドは今後数か月で、ソーシャルコマースへの関与をさらに強めるだろう。なぜなら、そこが消費者のいる場所であり、消費者が買い物をしたい場所だからだ」。

Amazon Liveは、他の多くの動画プラットフォームやソーシャルコマースプラットフォームほど強力なブランドエンゲージメントの成果をもたらしてはいないが、Amazonはより広範なソーシャルコマース分野から大きな利益を得ている(Amazonプライムデーに関連する動画は昨年、TikTokで4億ビューを記録した)」と、グローバル投資企業ComCapの副社長、Uren Dhanani氏は述べる。「TikTokが今年、こうしたビューの一部を自社のTikTok Shopや『Deals for You Days』イベントに向かせたいと考えるのは当然のことだが、全体としては、TikTokやソーシャルコマースはプライムデーの売上を押し下げるのではなく、引き続き押し上げていくと予想している」。

TikTok ShopとAmazon Liveの対決は、ホリデーシーズンに向けてさらに激化しそうだ。


※当記事は米国メディア「MarTech」の7/18公開の記事を翻訳・補足したものです。