2020年、ヨーロッパにおけるeコマースは継続的な成長を遂げた。ヨーロッパeコマースの総売上は、7,570億ユーロ(約97.4兆円)に達し、これは、2019年の6,900億ユーロから10%の増加となった。

 

ここ数年、ヨーロッパでは、オンライン買い物客の数とシェアが年々着実に増加している。オンライン買い物客数が最も大きく増加したのは2020年で、これは新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって消費者がオンラインショッピングを利用するようになったことも一因である。オンライン買い物客の割合は、前年が66%だったのに対し、2020年には71%となった。

 

この調査結果は、Ecommerce Europe(ヨーロッパのデジタルコマース部門を代表する組織)とEuroCommerce(ヨーロッパの小売・卸売業を代表する組織)が発表した「2021年版 ヨーロッパのeコマースレポート(2021 European Ecommerce Report)」に記載されている。ヨーロッパのeコマースは10%と大幅に成長したものの、その成長率は2019年(14%)に比べて低かった。新型コロナウイルス感染症による観光業やサービス業でのオンライン販売の急減が、全体的な成長の抑制につながった。

 

パンデミックが示すeコマースの重要性

パンデミックは、小売業界に多大な影響を及ぼした。EU全域でロックダウンが行われたため、オンラインショップの数が急増し、実店舗閉鎖による経済的打撃はeコマースの成長によってある程度吸収された。

 

Ecommerce Europeの事務局長であるLuca Cassetti氏は次のように話す。

「この1年で、デジタルトランスフォーメーションの重要性が明らかになった。小売業のデジタル化を促進し、消費者にシームレスなショッピング体験を提供するためには、eコマースが非常に適していることが証明された。実店舗は新たなオンライン販売チャネルを開拓し、中小企業はeコマースによって新たな市場にアクセスできるようになった。また、マーチャントは、絶え間なく変化する感染防止のための要求事項や消費者のニーズに対応するために、クリック&コレクトなどのオムニチャネルコマースソリューションを次第に導入するようになってきた。しかし、デジタルへの移行はまだ完了していない。政策立案者は、デジタルコマースの可能性を認識し、新しいテクノロジーやデジタルスキルへの投資を増やすとともに、調和のとれた、チャネルニュートラルで、将来性のある法的枠組みを構築する必要がある」。

 

この1年で、デジタルトランスフォーメーションの重要性が明らかになった。

 

EuroCommerceの事務局長であるChristian Verschueren氏は次のように話す。

「小売・卸売業は、著しい変革の過程にある。政府による制限規制と消費者の需要の高まりがデジタル化を加速させた。これまでオンラインやモバイル機器での購入についてよく知らなかった消費者が慣れてきており、今後も複数のチャネルにおいてこれらの機器を利用し続けるだろう。パンデミック前は、小売店や卸売業者の70%はオンライン販売のための設備を持っておらず、オンラインで存在感を示していた実店舗の方がうまく試練を乗り越えていた。 しかし、課題は残っており、我々は、政府やEUの政策立案者に対して、eコマース分野のデジタルトランスフォーメーションへの支援、オンラインプラットフォーム販売に対するメーカーからの不当な規制への対処、そして、チャネルニュートラルで将来性のある政策環境を提供する規制の枠組みの構築を求めている」。

 

ヨーロッパ市場におけるeコマース

2020年のヨーロッパeコマース総売上においては、西ヨーロッパが64%と最も高いシェアを達成した。南ヨーロッパは全体の16%を占めている。成長率では、東ヨーロッパが驚くべき46%を記録したのに対し、西ヨーロッパの成長率は4%と緩やかであった。中央ヨーロッパと南ヨーロッパの成長率はほぼ同じで、それぞれ28%と24%であった。

 

ヨーロッパ46%と最も大きな伸びを示した。

 

2020年のもう一つの重要な出来事は、もちろん英国のEU離脱(ブレグジット)だ。英国は、常にヨーロッパのeコマースにおける経済大国であるが、他のヨーロッパ各国のデジタル市場の成長と進歩も停滞していない。実際、2020年には、ヨーロッパの人口の89%がインターネットにアクセスし、オンラインショッピング利用者は、73%となっている。(2019年の68%から増加)。

 

※当記事は欧州メディア「Ecommerce News Europe」の9/27公開の記事を翻訳・補足したものです。