WalmartとShopifyの新パートナーシップによってeコマース業界に広がる波紋 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

EC業界で最も深く、鋭く、分かりやすいメディア「eコマースコンバージョンラボ」メルマガ登録はこちらから!業界の最新ニュースとトレンドをお届けします!

  • follow us in feedly
トレンド
公開日2020/06/25

WalmartとShopifyの新パートナーシップによってeコマース業界に広がる波紋

2020年6月15日、世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartとeコマースプラットフォームShopityは、新たなeコマース・パートナーシップを結んだ。年内に、1,200社ものShopifyの中小販売事業者が、Walmartマーケットプレイスでのビジネスをスタートできるだろうと発表している。

 

何年にもわたり、顧客から信頼されるマーケットプレイスの構築を最優先としてきたWalmart。Walmart マーケットプレイス担当VPのJeff Clementz氏は、100万以上の事業者が利用するオールインワン・コマースプラットフォームであるShopifyと提携することで、自社のマーケットプレイスをShopify販売事業者に開放すると述べている。

「今回の統合により、承認されたShopify販売事業者は、Walmart.comにシームレスに商品を掲載できるようになり、Walmartの顧客はより幅広い品揃えにアクセスできるようになる」と、同氏。

多くのShopify販売者は、すでにWalmart.comに進出している。しかし、Walmartマーケットプレイスは、まだ限界値まで浸透しているといえず、今回の提携によって大きなチャンスがもたらされると、Clementz氏は付け加えた。

 

Shopifyのプロダクト担当VPであるSatish Kanwar氏は、「何年にもわたって交渉を重ねてきたが、この半年間で、非常にスピーディに話し合いがまとまった」と語っている。

「Shopifyは、加盟販売業者にどこで販売するかを選択する権限を与え、それを可能な限りシームレスに実行できるようにしたいと考えている」と同氏。

「そのような思いから、私たちはWalmartと提携し、加盟販売業者が売上を伸ばしてビジネスを成長させるため手助けをするのだ。起業への障壁を削減することは、販売事業者にとっても、消費者にとっても、そして、Shopifyにとっても、非常に素晴らしいことである」と、Kanwar氏は付け加えた。

 

必要条件を満たす販売事業者の募集

米国のeコマース取引は、パンデミックによるショッピングニーズのシフトが要因の1つとなり、直近の四半期には74%増加。Walmartマーケットプレイスは、同社事業全体を上回る成長を遂げたとClementz氏は指摘している。

 

今回のShopifyとの統合のローンチは進行中であり、Walmart.comでの販売商品の品揃えを補完する、米国を拠点とする中小企業が求められている。

 

Shopify販売事業者は、ShopifyのApp StoreからWalmartマーケットプレイス・アプリをインストールし、Walmart.comは、販売事業者の参加資格を判断する。承認されれば、販売事業者はWalmartマーケットプレイスにおいて商品点数に制限なく販売が可能となる。

 

承認ベンダーは、Shopify内で商品画像や在庫の変更を行うことができる。そして、それらの変更は、自動的に即座にWalmartのサイトに反映される。

承認のための必要条件の詳細については、Shopify販売事業者向けサイトを参照してほしい。

 

ビジネスの基礎知識

2009年8月にスタートしたWalmartマーケットプレイスは、2014年までは伸び悩んでいた。2014年とは、Walmartが、Amazonの代替を探している小規模業者から大量のサードパーティ・アイテムを新たに追加した年である。

 

Walmartマーケットプレイスは、Amazonの戦術を真似て、Walmartの巨大な物流ネットワークを通じてサードパーティ販売事業者に配送サービスを提供している。そして2年前には、Walmartマーケットプレイス内のアイテムを、2日以内無料配送プログラムと店舗での返品の対象とすることを発表した。

 

2006年に設立されたShopifyは、迅速かつ低コストで、eコマースへの参入を目指す企業にとって人気のある選択肢となっている。月額料金は29USドルからだ。その金額で、決済、在庫、出荷を管理するためのデジタルツールを備えたオンラインストアが開設できるのだ。

AmazonもeBayも、すでにShopifyと提携している。

 

「Amazonが、eコマースチャネルを支配していることは明らかだ。しかし、Walmartが、サードパーティ販売事業者との関係を強化し、そのプレゼンスを拡大することは、正しい一歩である」と、eコマースソリューションを提供するCommerceIQのスポークスマンであるFrances Bigley氏は述べている。

 

「つまり、独立ブランドは、このチャネルを適切に管理し、消費者のために在庫切れの問題や価格つり上げを回避するよう、特に注意を払わなければならないということである」と、同氏は語った。

 

隠れたメリット

BigCommerceやShopifyなどのeコマースプラットフォームは、低コストかつ使いやすい統合機能を提供することにより、急成長中の加盟店がWalmartマーケットプレイスやFacebook、Instagramなどのソーシャルプラットフォーム等の様々なチャネルで容易に販売活動を行うことを可能にしていると、BigCommerceのオムニチャネルパートナーシップ担当責任者であるSharon Gee氏は語る。

 

「Walmartの今回のアプローチは、小売業者が、カタログ全体を拡大し、顧客に新進気鋭のデジタルネイティブブランドの新製品を紹介するのに役立ち、最終的には、Amazonとの競争力を高めることにつながる」と同氏。

 

eコマース業界における統合は、かなり急速に進んでいると、Nucleus Research(情報技術リサーチ会社)のアナリストであるDaniel Elman氏は見ている。

リーチには、極めて高い価値があると、Elman氏。「販売事業者は、最も多くの顧客にリーチし、最大限の売上を上げることが可能なプラットフォームを選択するだろう」。

 

eコマース企業への波紋

より小規模なeコマース企業は、WalmartとShopifyの提携が引き起こすコピーキャット効果を不安に感じているはずだと、Elman氏は示唆した。

「より多くの販売事業者がプラットフォームを利用するようになると、成功する販売事業者を見た他の販売事業者は、それらの成功はプラットフォームのおかげだと考えるため、同じプラットフォームへの参入が促進される。加盟販売者数を増やすための実行可能な長期戦略を持たない小規模eコマース企業は、自分たちが買収のターゲットになりやすいと考える可能性がある」と説明した。

 

これは、小規模eコマース企業にとっては問題となるだろうとElman氏は警告している。結果として、オンラインマーケットプレイスが主要プレイヤーを中心に統合される可能性があるからだ。

 

「長期的には、eコマース業界は、Amazon、Walmart、Alibaba(世界最大のB2Bオンラインプラットフォーム)を中心に、集約されるだろう」と同氏。「例外は、音楽機器を販売するReverbのようなニッチ販売事業者や、特定の業界やカテゴリーの製品を扱う他の専門的なプラットフォームであろう」。

 

これらのプラットフォームは、よりきめ細かい商品の品揃えだけでなく、専門的な保険、配送、顧客ネットワークを提供することができると、Elman氏は続ける。例えば、単純にギターが欲しいという消費者は、AmazonやWalmartを利用するかもしれないが、1969年製のサンバースト仕上げのFender社の Stratocaster(エレクトリックギター)が欲しいという消費者は、Reverb(ミュージックギア専門マーケットプレイス)などのより専門的な小売事業者を利用するだろう。

 

「現在時点でジェネラリスト型である小規模eコマース企業は、特定の顧客層を構築し、独自の商品セットを提供し、そのニッチに特化してビジネスを行うことを目指すべきである」と、同氏は提案。「それが、自社を差別化し、WalmartやAmazonのような大規模プラットフォームの規模、効率、リソースに対抗する唯一の方法である」。

 

Shopifyとの提携により、Walmartマーケットプレイスの魅力は高まっている。「quit Amazon(Amazon退会)」ムーブメントに賛同した顧客がAmazonプライムから離れていく一方で、Walmartが、より現実的な代替手段になる可能性はある。

 

「今回の提携より、Amazonを主要なショッピングプラットフォームとして利用していた顧客がAmazonを離れ、Walmartに移行する可能性がある」とElman氏。「現在のAmazonの優位性の大部分は、同プラットフォーム上の販売事業者とサイト訪問者の数、そして、プライムプログラムによって提供される価値にある」。

 

潜在的ゲームチェンジャー

WalmartとShopifyの提携は、中小企業にとって大きなゲームチェンジャーになる可能性があると、Sumo Heavy(デジタルコマース・コンサルティング会社)のCEOであるBart Mroz氏は述べている。

WalmartとShopifyの提携は、今日の競争の激しいeコマース市場で戦うために必要なツールを販売事業者に提供する、というShopifyの戦略をサポートするものであると、同氏は語った。

「昨年、Shopifyは、フルフィルメントネットワークに対し10億ドルを投資したと発表した。これは、販売事業者がより効率的に商品を出荷するのを助け、小売最大手、特に、2日間配送を一般的にしたAmazonに対抗するためである」。

「多くの消費者が、COVID-19をきっかけに小規模eコマースビジネスをサポートしたいと考えているため、今回の提携は非常に適切なタイミングだ」と、Mroz氏。

 

迅速な出荷や幅広い品揃えといった、Amazonからの購入における通常の利点は、一部の地域における在庫不足や出荷制限のため、広範囲で利用不可能となった。そして、消費者は、必要な商品を他の場所で探し始めた。

「AmazonやWayfair(家具オンライン小売事業者)のような他の大規模オンライン小売業者による脅威は、依然として高まるだろう。しかし、中小事業者は、何千万人もの消費者の目に触れることができる新しいチャネルを活用し、Amazonのスーパーセラー達と競争するチャンスを、実際に手にするかもしれない 」とMroz氏は言う。

 

一定の競争上の脅威

WalmartとShopifyの新しい提携によって、中小企業の経営者は、毎日、Walmart.comで買い物をする何百万人もの顧客を獲得することができる。また、今回の提携により、顧客がWalmartサイトで買い物をすることができるアイテムの品揃えを拡充すると、Baruch College(ニューヨーク市立大学バルーク校)のマーケティングの助教授であるRobb Hecht氏は言った。

 

今回の提携は、新型コロナウイルスのパンデミックと関連する小売規制のためにオンラインショッピングが急増している時期に実現した。そして、その結果として、Walmartエコシステムの価値とトラフィックが増加することとなる。

 

今回の提携は、AmazonやWayfairのような大手のオンライン競合相手にとっては大きな脅威とはならない可能性が高いと、Hecht氏。

しかし、Shopifyのサービス経由で顧客に直販している、より小規模なソーシャルコマース企業にとっては、脅威となる可能性があると指摘する。

また、Facebook Shop(Facebookの新EC機能)プラットフォームへの新規参入者や、顧客とのダイレクトなオーディエンスリーチを増やしたいと考えていた人たちにとっては、問題となるかもしれない。

 

「今、D2C ShopifyのD2C販売事業者は、Walmartが事業者と販売商品に対してもたらすオーディエンスリーチと購入者のインテントに対し、非常に高い興味を持つ可能性がある。そして、Facebook Shopへの参入が減少するかもしれない」と、Hecht氏は語った。

 

ベンダーの流入

「今回の提携は、中小企業やWalmartにとっては素晴らしいことだと思う。Walmartマーケットプレイスは、より競争力を増し、中小企業はこれまで以上に多くの露出を獲得することになるだろう」と、6月15日にWalmart Marketplace に参入したMoriarty’s Gem Art(カスタムジュエリー・ストア)のマーケティングマネージャー、Jeff Moriarty氏は述べている。

今回の統合により、Shopifyストアとの同期が格段に容易になると同氏。

 

競争が激しくなればなるほど、Amazonにおける、利益率の低いセラーとの競争が厳しいと感じている中小企業にとっては有利になるだろう、とMoriarty氏は付け加えた。同氏は、今回の新しい提携を非常に楽観的に受け止めている。

 

「この提携により、小規模なeコマース企業は、直接、Walmartに商品を流通させることで、Amazonに対抗することができる」と、eBay、Amazon、Walmart、Shopifyの顧客への販売ソリューションを提供しているChannelReplyのCEO、Michael Dash氏。

「従来のようなアカウント設定やアップロードプロセスを経ることなく、すぐに膨大なオーディエンスにリーチすることが可能になるだろう」。

 

Walmartで販売していないベンダーは、すでに純利益が20%以上増加しているとDash氏は付け加えた。

「必ずしも、Amazonのセラーを奪うとは限らないと考えている。むしろ、今回の提携によって、販売事業者は、アクセスできなかった新規購入者へアクセスすることが可能となるのではないだろうか」。

 

また、多くのブランドが、その苦い経験から、Amazonでの販売を拒否しているとDash氏は指摘。それらの業者は、Walmartに参入するかもしれない。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の6/16公開の記事を翻訳・補足したものです。

 

close