”ブランドを中心としたコミュニティを構築する”ということは、eコマースを成功させるためにとても重要だが、これが見過ごされてしまうことも往々にしてある。

「コミュニティは、ブランドと顧客の関係を強固にするものだ」とeコマースコンサルタントIan Rhodes氏。

「コミュニティは忠誠心を生み出す。大多数の小売ブランドは、自社の商品を購入してもらうために顧客を獲得ようとしている一方で、コミュニティ志向の高いブランドは、顧客が自らそのブランドに賛同し、購入したくなるよう誘導している」と語る。

では、このようなコミュニティを築くのに最良の方法は何だろうか?どのようなコミュニティが最も有効なのだろうか?また、その維持の方法とは?

コミュニティ構築を始める秘訣として、専門家たちは以下のポイントを挙げる。

 

1. 顧客をブランドの旅へと誘う

顧客は会社の舞台裏を覗いたり、会社の設立ストーリーを聞いたりすればするほど、よりその会社に関わりたくなるものだ。

「自社のブランドが旅の途中だと考えてみると良い」とRhodes氏。「顧客をその旅の道連れとなるよう誘ってみるのだ。そうすることで、ブランドが制作し、シェアすべきコンテンツの目的が明確になる。自社ブランド内部の仕組みや展望、目標を顧客とシェアするのだ」。

 

2. 自社よりも顧客のために

ブランドは「世界は会社を中心に回っているのではない」ということをとかく忘れがちだ。ブランドアイデンティティーや知名度を築こうと取り組んでいる最中には、特にそうである。しかし、実際のところもし企業がいつも強引なセールスパーソンという印象を与えてしまえば、誰もその企業と付き合いたいとは思わなくなるだろう。

「顧客との関わりを持つ上で会社が犯しがちな最大の過ちは、うぬぼれ、ナルシズム、自己中心主義である」と、コンサルタントのBrian Carter氏は言う。

「決して、懇親会に足を踏み入れようとせず、15分間自分の話ばかりするようなことはしない賢明な人を例にとってみよう。恐らく、彼らは聡明であるため、自分自身ではなく他人に心を注ぐ人が好かれるということを十分にわかっている。そのような人は、他人に対しその人の生活や家族、趣味について尋ねる。そうやって、友人をつくるのだ」。

同様に、ブランドは必ずしも顧客に物を売ることばかりにとらわれず、顧客の興味や心配事に関心を寄せる必要がある。

「ブランドは、商品を売る目的ではなく、時にただ顧客のために存在しなければならない。さもなければ顧客と良い関係は築けないだろう。単に鬱陶しいだけのセールスパーソンになってしまうことは好ましいアプローチとはいえない」とCarter氏は言う。

「ブランドは自社の製品を超えて、顧客の生活や感情のレベルに寄り添っていかなければならない。顧客と共に生き、他の話題について語りあう。そうすることで顧客がブランドをより好きになり、良い関係を築くことができるという信念を持つことだ。そして、もちろん顧客はそのブランドの製品を買いたいと思うようになる」。

 

3.  オンラインコミュニティ空間を作り、育む

デジタル空間は、ブランドを中心としたコミュニティ意識を生み出すのに重要な役割を果たす。顧客がそこで出会い、話し、考えをシェアし、ブランドとまた他の顧客と交流することを可能にするのだ。それがソーシャルメディアのグループであろうと、個人的なブランドのサイトであろうと、そのようなオンライン空間はコミュニティを育み、発展させるのに不可欠である。

「忠実なオンライン顧客を惹きつける最も効果的な方法は、すべてのメンバーを歓迎するスペースを作ることである」と、ソフトウェア企業CMNTYの最高経営責任者Maxim Schram氏は言う。

「コミュニティプラットホームは、顧客が話題やアイデア、経験をシェアすることを可能にしてくれる。それはフォーラムにもチャットルームにも、またアイデアを競う場にもなり得るのだ。これらのいずれのケースも大いに参考になるだろう」。

顧客が顧客同士、そして企業とも関わりを持つようになると、彼らは企業のビジネスを向上させ改善させるために役立つ情報を与えてくれる。

「ブランドのコミュニティを利用することにより、企業は真に自社の顧客とコミュニケーションをとることができ、また、顧客から役に立つフィードバックを得られるのだ」とSchram氏は語る。

 

4.  モバイル主導に

人々がすでに集まっている最良のコミュニティの場といえば、モバイルスペースになりつつある。コミュニティを育てはじめようとしているブランドは、モバイルに対応したコミュニティを作る方法を考えるべきである。

「さらに一歩先を行きたいのであれば、ブランドは、モバイル対応したプラットフォームを採用すべきだ」と語るSchram氏。「モバイルマーケティングが成長し続けるにつれ、On-The-Go(PCを経由せずにモバイルを利用する)顧客も増え続けている。ブランドは、さらなる手段としてモバイルを利用できるのだ。すべてのモバイルチャネルを通じて、インサイトやフィードバックを収集することができ、そしてそれをより幅広いビジネス戦略へと組み込むことができる」と加えた。

 

5.  顧客自身のコンテンツをシェアするように促す

コミュニティというものは、写真やビデオ、経験をシェアすることを中心に展開するもの。ブランドが顧客のために作ったコミュニティの場でも、顧客自身のコンテンツをシェアしてもらうよう促すべきである。

「人は、コミュニティの一員であると感じるとき、自然にブランドの製品やブランドにフォーカスした彼ら自身のコンテンツや画像をシェアしたいという気になるだろう」とRhodes氏。

「この戦略は功を奏す。なぜなら、その戦略には、開放性や透明性があるからだ。ブランドが素晴らしい製品を作ったとき、人々はそれを所有し、そして所有したことに誇りを感じるのだ」。

最良のコミュニティとは、そこで顧客がつながりたい、交流したいと思わせるものである。顧客はそこにいたいからそこにいる、ということだ。そして、ブランドのゴールは、単純に顧客のためにスペースを維持するということである。積極的な参加や交流、共有を促しながら―。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の4/24公開の記事を翻訳・補足したものです。