オムニチャネル用ソフトウェア開発企業Kiboが最近行った「従来型小売店舗の変化をもたらすテクノロジー」と題する調査では、多数の小売業者が、顧客情報の閲覧を多様なタッチポイントで可能にするテクノロジーを導入していないことが指摘された。
2017年10月12日(木)に発表された本調査では、対象小売業者の58%はそうしたテクノロジーの導入の可能性がないことを認めた。調査は、毎年100以上の小売業者が参加する“店内体験”を考えるカンファレンス「Future Stores 2017」のベンチマークセッションにおいて、115人の小売事業経営幹部への質問形式で行われた。
調査結果によると現時点では、大多数の企業は実店舗内のモバイル機器やキオスク端末上で、買い物客の情報を自動的に操作することができない。「シームレスなオムニチャネル体験を、顧客に提供するためには、小売業者は、購買チャネル関わらず、顧客の全行動の詳細を完全に把握している必要がある」と、KiboのCMO、Tushar Patel氏。「顧客にとって、自分の行動を把握していない小売業者ほど、イライラさせられるものはない」と同氏は語った。
テクノロジーの導入
Kiboの調査結果によると、多くの小売業者は顧客から個別にデータをより多く収集するために、幅広いテクノロジーを用いてきた。
調査対象小売業者の82%がモバイル機器とタブレット、76%がキオスク端末、41%がモバイルPOS端末、26%がBluetooth low-energy beacon技術、19%がNFC(Near Field Communication/近距離無線通信)を使用していると回答。しかし小売業者の64%は、それらのテクノロジーは、店舗内での顧客の嗜好に関するデータの把握に、多少効果が見られた程度だと回答した。多様なタッチポイントで顧客データを表示するための店舗内テクノロジーを導入していると回答したのは、対象小売事業者の42%のみであった。
パーソナライゼーションプラン
小売業者が導入しているもう一つの重要な店舗内テクノロジーは、パーソナライゼーション機能である。
対象小売業者の52%は、今後12ヶ月以内にパーソナライゼーション技術への投資を計画しているか、すでにパーソナライゼーション戦略の実行に着手していた。一方で、小売業者の22%はまだパーソナライズ化を始めておらず、実行可能かどうかは不明だと回答した。
商品受け取り方法の選択肢の提供
多くの小規模小売事業者にとって、顧客により多様な商品受け取り方法を提供することが難しいというのは明らかである。Walmart、CVS、Sears、Targetなどの大手小売業者は、オンライン注文への店舗からの出荷や店舗受け取りサービスを提供しており、何年も前から始めている事業者もいる。
しかし、Kiboの調査に参加した小売業者の40%以上は、自社の技術がこれらのサービスをサポートしていない、もしくは、実施する準備が整っていないと回答した。
小売業者の苦悩
AmazonとWalmartを除く多くの小売株には、PDR S&P Retail ETF(投資信託)が、昨年12月以来の最安値に落ち込んだ週以降、厳しい状況が続いていると、Constellation Researchのプリンシパルアナリスト、Cindy Zhou氏は、指摘した。
同氏はMicrosoft社主催のカスタマーエクスペリエンスに関するイベント「The Modern Customer Experience Summit」で、小売業者の37%が、「最大の課題は、デジタルから実店舗までの一貫したマルチチャネルな顧客体験の提供である」と答えたという。「顧客は、複数のモバイル機器を使用し、レビューを読んだり、ソーシャルメディアで友人に尋ねたりし、購入決定前に、商品をリサーチし、買い物をしている」と語った。
モバイルショッピングを顧客に提供することは極めて重要だが、簡単に在庫を確認し、商品を選び、決済を完了できるモバイルアプリを提供できる小売業者は、非常に少数であるという。Zhou氏によると、業態のデジタル化への移行に着手している大手小売業者の一社は、小売店舗、eコマースサイト、カタログ部門を有しているが、それぞれが別システムで機能し、相互の関連性が無いとのこと。
RSR Researchのマネージングパートナー、Nikki Baird氏は、「顧客データ閲覧を可能にするための店舗内テクノロジーの変更は、それ程簡単なことではない」と述べている。「モバイル機器の必要性は、事業者ごとに、当然異なっている」と、Baird氏。同時に、現場の店舗従業員が個別の顧客データにアクセスできるようにすることについての懸念も高まっている。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/16公開の記事を翻訳・補足したものです。