高所得層ほどAIの導入が早く、検索行動が細分化され、クリック前の意思決定のあり方が変化している。
誰もがAI検索について、まるでそれがすでに普遍的な技術であるかのように語っている。まるで私たちが皆、AI検索に移行し、ユーザーの行動様式が変化し、すべての人にとって情報発見の方法が変わったかのように。しかし、現実はそれほど単純ではない。
AI検索は急速に普及しているものの、その導入状況にはばらつきが見られる。この格差は、検索業界ではあまり話題に上らないある要因、すなわち「世帯収入」によってますます拡大している。
私の設立した調査会社Reflect Digitalは、2025年初頭から人々の検索動向を追跡調査してきた。世帯収入を分析したところ、明確かつ顕著な格差が浮かび上がった。全体では、約27%の人がChatGPTを定期的に利用していると回答している。しかし、これを収入別に分類してみると、状況は劇的に変わる。
- 年収2万5千ポンド~3万ポンドの世帯:利用率約18%
- 年収5万ポンド~6万ポンドの世帯:利用率約30%(2024年度末時点の英国の平均世帯収入がこの区分に該当)
- 年収7万ポンド~8万ポンドの世帯:利用率約49%
- 年収10万ポンド以上の世帯:利用率約48~58%

言い換えれば、高所得世帯は、生成型AIツールを利用する可能性が2倍以上高いということだ。これは小さな差ではない。これは、検索戦略を形成する最大の前提の一つ、つまり「AIの導入は誰にとっても同じペースで進んでいる」という前提に疑問を投げかけるものである。
人々が情報にアクセスし、意思決定を行う方法において、新たな種類のデジタル格差が生まれている。この格差は、単独で存在するものではない。
FutureDotNow(企業のデジタルスキル教育を後押しする英国の非営利団体)の調査によると、英国全土で、労働年齢層の成人の52%が、仕事に必要な基本的なデジタル業務をすべて遂行できていないことが明らかになった。AIの導入は、既存のデジタルスキル格差にさらに拍車をかけており、この格差はすでに、誰が自信を持って情報にアクセスし、評価し、それに基づいて行動できるかを左右する要因となっている。
作家のウィリアム・ギブソン(William Gibson)が言ったように、「未来はすでにここにある。ただ、均等に分配されていないだけだ」。
AIの導入は、ツールへのアクセスだけによるものではない
AIの導入は、単にツールへのアクセスがあるかどうかという問題ではない。それは人間の行動、具体的には以下の要素によって左右される。
- アクセス
- 能力
- 自信
アクセス:日常生活の中でAIに触れているのは誰か?
デジタル分野、コーポレート部門、あるいは知識集約型の職種に従事している場合、AIの利用を推奨されたり、期待されたりする可能性がはるかに高くなる。AIは業務フローの一部となる。これは当社のデータにも表れており、ITやビジネスなどの分野が常に導入率でトップを占めており、職場での接触機会が増えれば行動が加速することを裏付けている。
一方、そうした職種でない場合、AIとの接点は、見出しやメディアの報道、あるいは間接的な経験にとどまってしまうかもしれない。そうなると、出発点が大きく異なってしまう。
能力:使い方はご存知だろうか?
AIを日常的に利用している人にとって、プロンプト表示はもはや当たり前のことだ。出力結果を洗練させ、検証し、発展させる方法を習得しているからである。しかし、初めてAIとやり取りする人にとっては、最初の接触は馴染みがないもの、あるいは不安に感じられるかもしれない。適切なガイダンスがなければ、多くの人はそもそも使い始めることすらできない。
自信:AIを頼りにできるほど信頼しているだろうか?
ここが特に興味深い点だ。信頼度はプラットフォームだけでなく、利用者の考え方によっても異なる。私たちの調査では、Perplexityのようなプラットフォームは信頼性において高い評価を得ているが、依然としてニッチな存在である。
そこで重要な疑問が生じる。これらのツールを早期に導入したユーザーは、AIの出力結果を理解し、検証することに最も自信を持っているユーザーでもあるのだろうか?
その可能性は高い。これはより重要な点を改めて示している。AIの普及は単なる技術革新ではなく、人間的な側面も大きく関わっているのだ。
AIが人々の検索や意思決定のプロセスに深く浸透していくにつれ、AIリテラシーはデジタルデバイドの新たな層となり、すでにデジタルに精通している人々の優位性をさらに高める恐れがある。
検索は細分化が進み、ビジネスに現実的な影響を及ぼしている
ユーザー層によって、検索行動も以下のようにさまざまに分かれている。
- AIを主体に利用するユーザー → タスクの委任、要約、候補の絞り込み
- AIを補助的に利用するユーザー → 複数のプラットフォームを横断して情報の検証
- AIを敬遠するユーザー → Google、小売業者、コミュニティへの依存
こうした行動パターンは固定されたものではない。同じ人でも、法的文書の下書きにはAIを利用しつつ、製品の調査の際には依然としてGoogleに頼るといったことがあり得る。
習慣が定着するには時間がかかるが、現時点では人々はさまざまな試行錯誤を繰り返している。つまり、私たちは単に一つの検索プロセスから別のプロセスへと移行しているのではなく、発見のプロセスがいくつかの異なる経路へと細分化されていくのを目の当たりにしているのだ。
この断片化は単なる行動様式の変化にとどまらない。直接的なビジネス上の影響を及ぼす。「顧客はアーリーアダプターのように行動する」と思い込んでしまうと、戦略的な判断を誤るリスクがある。
AI最適化への過剰投資は従来型のユーザーを逃すことにつながり、Googleへの過剰な依存はAI主導型のユーザーを逃すことにつながる。また、ユーザーの自信のギャップを無視することも、信頼を損なう可能性がある。
チャンス:あなたにとって最も価値の高い顧客層は、すでにAIファーストである可能性がある
この状況には大きなチャンスがある。AIを最も早く導入している顧客層は、多くのブランドにとって重要な存在だ。意思決定者、専門家、そして高所得層の消費者などがその例である。
当社のデータによると、これらのユーザーは、私たちが「デジタルエクスプローラー」と呼ぶ層に当てはまることが多い。彼らは、Webサイトを訪問する前に選択肢を比較したり、情報を要約したり、候補を絞り込んだりすることで、意思決定の一部をすでにAIに委ねているアーリーアダプターである。
行動はあくまでも一つの側面に過ぎない。その根底には「自信」があり、それがユーザーがAIをどこまで活用するかを決定づける。
この視点から行動を分析すると、3つの明確なパターンが浮かび上がる。
- 自信度の高いユーザー → AIに作業を委任できる
- 自信度が中程度のユーザー → 複数のプラットフォームで情報を確認する傾向がある
- 自信度の低いユーザー → 慣れ親しんだ環境に頼る
行動、ユーザー体験、期待、そして何よりも重要なコンテンツニーズは、それぞれ異なっているのだ。
断片化された検索への対応策
こうした高価値でAIファーストなユーザーは、意思決定をより早い段階で委任するようになっているため、今や目標は、クリックが発生する前にAIツールによって理解され、提示され、推奨される存在となることである。
1.人口統計情報だけでなく、行動に基づいてセグメント化する
年齢や収入は、ターゲット層が誰であるかを説明するのに役立つかもしれないが、彼らがどのように意思決定を行うかまでは説明できない。これを正しく理解するには、表面的なセグメンテーションを超え、定量的および定性的な洞察を組み合わせた、発見行動に関する理解を構築する必要がある。
定量データは、大規模な傾向を示してくれる。
- どのプラットフォームが利用されているか
- どのくらいの頻度で利用されているか
- どのようなユーザー層が利用しているか
定性的な洞察は、その理由を明らかにしてくれる。
- 人々が何を信頼しているか
- どこに安心感を抱いているか
- どのような要因でプラットフォームを切り替えるか
人々は特定の検索方法に固執しているわけではない。その時の課題に応じて行動を適応させているのだ。
ある人は、選択肢をまとめるためにAIを利用し、詳細を確認するためにGoogleを使い、現実世界での文脈を知るためにTikTokやRedditを参照するなど、すべてを同じ購買プロセスの中で行うかもしれない。
セグメンテーションは、顧客の購買プロセス全体にわたり、AIがどのような役割を果たすか、人々がどこで安心感を求めているか、どこで人間による裏付けが必要かといった点を踏まえて策定する必要がある。なぜなら、同じ人物であっても、購買プロセスの初期段階ではAIを優先し、意思決定の段階ではAIを避けようとする場合があるからだ。
こうした変化を理解していなければ、ジャーニーの一部にしか効果のない戦略を策定してしまうリスクがある。そうなれば、ブランドは顧客にとっての関連性を失ってしまうのだ。
2.多様な情報発見の旅を想定したデザイン
ユーザーの行動パターンを理解したら、次はそれを反映した戦略を設計することだ。
私たちの調査によると、ユーザーの51%は画像や動画など、好みの形式の情報を得るためにソーシャルメディアを利用し、40%は実在の人物からの情報を重視している。これは、人々がどのような情報を求めているかを示している。つまり、視覚的で分かりやすい形式、人間味あふれる視点、そして現実世界の文脈を通して情報を得たいと考えているのだ。
AIは答えを見つけるためのツールであり、ソーシャルメディアは人間的な文脈を伝える場であり続けている。TikTokやInstagramのようなプラットフォームは、特に探索の初期段階において、検索プロセスで重要な役割を果たしている。同時に、AIは情報の要約と簡略化に活用される一方で、従来の検索エンジンは検証と詳細情報の入手において依然として頼りにされている。
重要な瞬間に、適切なコンテンツを、適切な形式で、適切なトーンで発信することが重要である。
ユーザーは今、特にAI環境において、検索内容についてより具体的かつ会話調で、かつ複雑な表現を用いるようになってきている。
3.分かりやすさを最適化する
そのため、コンテンツは、現実的で微妙なニュアンスを含む質問に答えられるよう構成し、人間と機械の両方が解釈できる情報を提供する必要がある。コンテンツが明確でなければ、検索結果に表示されない可能性がある。
4.効率性と信頼の構築
AIの登場によっても、安心感を求めるニーズが変わるわけではない。なぜなら、AIを使って選択肢を素早く絞り込んだとしても、人々は依然として、レビュー、権威性、実証された実績、ブランドの信頼性など、決断に自信を持てるような手がかりを求めているからだ。
AIの登場によっても、安心感を求めるニーズが変わるわけではない。なぜなら、AIを使って選択肢を素早く絞り込んだとしても、人々は依然として、レビュー、権威性、実証された実績、ブランドの信頼性など、決断に自信を持てるような手がかりを求めているからだ。
この傾向は、AIが生成するレビューの要約や推奨事項にもすでに表れている。効率性は候補に挙がるきっかけにはなるかもしれないが、最終的に選ばれる決め手となるのは「信頼」なのだ。
検索の未来は人間によって形作られる
AIは進化し、プラットフォームも変化するだろう。しかし、決定的な要素はテクノロジーではなく、人々がそれをどのように利用するかだ。
検索の未来は、人間の行動によって決まる。成功するためには、プラットフォームを最適化するだけでなく、その背後にいる人々、つまり彼らがどのように考え、検索し、意思決定するのかを理解する必要がある。