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ECサイトの運用業務をDX化するために事業者が取り組むべきこと

ECサイトの運用業務をDX化するために事業者が取り組むべきこと

トレンド
2022/05/31

ECサイトの運用業務をDX化するために事業者が取り組むべきこと

 

コロナ禍の影響もあり各業界でEC化が進み、EC業界には追い風が吹いている。経済産業省の調査で、2020年のBtoC ECにおける物販系分野の市場規模は12兆2,333億円、前年比21.71%増となっていることからも、そのことが見て取れるだろう。競争が今後さらに激化する中でEC事業者が売上を上げ続けるためには、業務効率化や顧客体験向上を常に意識し、新しいサービスを検討していく必要がある。今回は、ECサイトの運用業務をDX化するために事業者が取り組むべきポイントについて解説していく。

 

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

 

DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、デジタル技術を用いてビジネスモデルや組織レベルでの変革を行うことを指す。IT化がデジタル技術による業務効率化であるのに対し、DXでは業務そのものやプロセス、企業風土までも抜本的に変革していくという違いがある。従来のフローのまま業務効率化を行うIT化では限度があるため、その構造から変えられるDXがもたらす恩恵は非常に大きい。昨今ではデジタル技術を活用した新たなサービスがあらゆる分野で登場しており、今後ますます激化していく競争を生き抜くためにも、事業者はさらなるDXに取り組む必要があるのだ。

 

 

押し寄せるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波

 

総務省の情報通信白書によると、2020年のデジタル競争力ランキングにおいて、調査対象である63カ国のうち、日本は27位であった。世界的に見ても、日本はデジタル後進国なのだ。さらに株式会社アイルの調査では、調査対象である中堅・中小企業の85%以上で、FAXや電話によるアナログ業務が根付いていることが明らかになった。しかしながら、BtoBでWeb受発注システムを導入した企業の約8割が業務効率化を実感しており、DXで遅れを取っていたBtoB領域を含め、現在ではDX推進のために多くのサービスが提供されている。また、新型コロナウイルスの影響もあり、ニューノーマルに対応できる体制や環境づくりのためにDXが不可欠であることも非常に大きい。総務省の調査において、2020年のEC化率がBtoCで8.08%(前年比1.32%増)、BtoBでは33.5%(前年比1.8%増)と増加傾向にあることからも、業界全体にDXの波が押し寄せていることがわかるだろう。

 

<参考>

業務のデジタル化の重要性が高まるも、BtoB取引において85%以上がアナログ手段で受注

 

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)で実現できること

 

DXがもたらすものは、老朽化したシステムからの脱却による業務効率化、今後の市場における競争力の獲得など多岐にわたるが、ここではECサイトの運営業務に関係するものをピックアップして見ていく。

 

バックエンド業務の効率化

ECサイトの運営には、商品情報の登録や受注処理、在庫管理など多くのバックエンド業務が伴う。DXによりこれらの業務を効率化し、人為的なミスを削減することが可能だ。複数店舗における商品情報の一括登録や、実店舗とECを連携させた在庫の一元管理など、多店舗展開による煩雑さも解消できる。

 

フロント業務での顧客体験向上

売上を伸ばすためのマーケティングやマーチャンダイジングも、ECサイトの運営には必須である。DXはデジタル技術やデータを活用するため、データを元にパーソナライゼーションし、顧客体験の向上につなげることが可能だ。また、データを用いて顧客分析を行いそのニーズを把握することで、ターゲットに対する適切なアプローチも実現できる。

 

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できるサービス

 

DX導入というと敷居が高く感じるが、手軽にECサイトの運営などに取り入れることができ、業務効率化や顧客体験向上を通してDXを推進できるサービスが多数存在している。それらのサービスや戦略を用途別に見ていこう。

 

<参考>

eccLabサービスマッチング

利便性が向上するオンラインショッピング、あくなき顧客体験向上の取り組みまとめ

ECサイトは「サイト」という形態を存続させる意義はあるのか - テクノロジーの進化が生み出すジレンマ

 

多店舗管理

自社ECやショッピングモールなど複数のECサイトを運用している場合でも、受注処理や在庫連携、配送手配などの一元管理を可能にするサービス。多店舗展開している事業者にお勧めで、在庫数以上の商品を販売してしまう「売り越し」や、実際には在庫があるのに販売できない「売り逃し」などを防止できる。

 

<参考>

EC業界カオスマップ2021 - 運営業務管理編

 

在庫最適化

在庫情報や販売情報を分析することで、在庫切れによる機会損失や過剰在庫によるキャッシュフローの悪化を防ぎ、在庫リスクを低減するサービス。売れ残る可能性の高い商品をあらかじめ予測できるほか、セールでの過剰な値引きを防ぎ、適正価格での販売を可能にする。

 

受発注管理

注文情報の取り込みや請求書の作成、メールの送付など、煩雑になりやすい受発注業務を自動化するサービス。これまで電話やFAXが用いられていた受発注をWeb上で行うことで、大幅な工数削減と生産性の向上を実現する。過去の受発注履歴も確認しやすく、人的ミスを解消できるメリットもある。

 

商品登録

ショッピングモールへの商品登録業務を効率化するサービス。商品の一括登録をはじめとして、商品情報の一括修正や更新、商品画像の一元管理などが可能になる。モールごとにひとつひとつ手作業で行っていた商品登録をツール上で効率よく行えるようになるため、多店舗展開している事業者や商品数の多い事業者に向いている。

 

MAツール

MAとはMarketing Automationの略で、マーケティング活動を効率化し、見込み顧客を獲得・育成するツールのこと。集客に関する課題解決のために活用される。メール開封や資料請求など顧客の行動をスコアリングして興味関心の度合いを可視化できるため、その度合いに応じた適切なプロモーションが可能になる。シナリオ設計はマーケターの手で行う必要があるが、PDCAを回していくことで、さらにマーケティング活動の効率化を図ることができる。

 

<参考>

EC業界カオスマップ2021 - CRMサービス編

 

SFA(営業支援システム)

SFA(営業支援システム)とはSales Force Automationの略で、営業に関する情報をデータ化し、営業活動の改善や生産性の向上を支援するサービス。MAの次のステップで用いられることが多い。顧客管理、行動管理、案件管理、スケジュール管理などの機能があり、蓄積したデータを分析・活用することでその真価を発揮する。属人化しやすい営業活動をデータ化しノウハウとして蓄積することで、より効果的な営業を可能にする。

 

CRM(顧客管理システム)

CRM(顧客管理システム)とはCustomer Relationship Managementの略で、顧客情報や顧客とのコミュニケーションに関するデータを一元管理するサービス。原則としてSFAの次のステップで用いられるが、MAとSFAの領域を含むサービスも存在する。プロフィールや購買履歴などの顧客データ管理、プロモーション管理、問い合わせ内容管理などの機能があり、顧客との良好な関係構築を支援するものだ。蓄積したデータを用いる顧客分析も非常に重要で、LTV(顧客生涯価値)の向上施策などで活用される。

 

BIツール

BIとはBusiness Intelligenceの略で、データを収集・管理・分析し、それらを可視化することで経営の意思決定に役立てられるツールのこと。多角的な分析が行えるOLAP分析、データから法則性を導き出すデータマイニング、予算策定に役立つプランニング、情報を可視化するレポーティングなど、様々な機能が備わっている。最初にデータ連携などの設定を行う必要があるが、その後の分析は自動化でき、専門家でなくとも手軽に扱えるので、ビッグデータ活用のために導入する企業が増えている。

 

パーソナライズ

顧客データや購買履歴から顧客一人一人のニーズを把握し、それぞれに最適化された購買体験を提供する戦略やそのサービスのこと。AI(人工知能)を活用したレコメンドが代表的だが、個人の興味関心に沿ったメールの送信や、ECサイトでの表示内容を顧客ごとに変えられる機能なども存在する。顧客の本音や潜在的なニーズがわかるVOC分析や顧客分析を活用し、ECサイトでも実店舗のような「おもてなし」を実現することで、売上の向上へとつなげることが可能だ。

 

AIチャットボット

チャットボットとは、テキストや音声で入力された質問に対し、自動で応答するプログラムのこと。デジタル技術の進歩によって、設定されたルール通りに動作する従来の「シナリオ型」に加え、AIの機械学習でより柔軟な応答が可能な「人工知能型」が登場した。営業時間などの制限がなく24時間いつでも対応できるため、顧客向けのサポートデスクとしてECサイトに設置するほか、社内ヘルプデスクとしても活用される。

 

<参考>

【徹底解剖】eコマースのCXを根底から変える全58のチャットボットサービスとその選び方

 

オンライン決済

Web上で決済を完了できるオンライン決済システムは、ECサイトの運営に欠かせないものだ。国内ではクレジットカード決済が主流だが、クレジットカードに抵抗のある消費者も一定数いるため、事業者はより多くの決済手段を取り入れ、利便性を向上させていく必要がある。電子マネー決済、キャリア決済(スマホ決済)、コンビニ決済、後払い決済、銀行決済(ネットバンキング)など非常に多くの決済手段が存在し、商品やターゲットによっても利用しやすい決済手段は異なってくる。

 

<参考>

【徹底解剖】選択肢が飛躍的に増加している11カテゴリ全64のEC決済サービスとその選び方

EC業界カオスマップ2021 - EC決済サービス編

 

バーチャル試着

バーチャル試着は、試着ができないというECサイト特有の課題を解決するサービス。アパレルやメガネなどのファッション分野で活用され、ユーザーの写真を取り込み商品画像と合成することで、まるで試着しているかのような体験を提供する。写真とともにいくつかの情報を入力するだけでスマホアプリ上での自動採寸が可能なものもあり、イメージやサイズの不一致などのトラブルを防ぎ、ECサイトで洋服を購入することのハードルを下げられる。

 

ソーシャルコマース

ソーシャルコマースとは、InstagramやFacebookなどのソーシャルメディア(SNS)とECをかけ合わせて商品の販売や販促を行うこと。ECサイトへの遷移や商品探しの手間なくSNSアカウント上での購入が可能で、ユーザーの離脱を防ぎ購入を促進することができる。「欲しい」と思った瞬間にシームレスな購買体験ができるほか、SNSはブランドイメージやコンセプトの発信に適しているため、リピーターやファンの獲得につなげていくことも可能だ。

 

 

課題の把握と適切なサービス選定が事業者の命運を分ける

 

このように、様々なサービスを活用しDXに取り組むことで、事業者は業務効率化だけでなくマーケティング精度を向上させることが可能になる。また、欲しい商品がすぐに買える、商品に関する疑問をECサイト上で解決できるなど消費者にとっても利便性が向上し、デジタル技術を駆使した新たな購買体験を提供することで、結果として事業者の売上向上にもつながっていくのだ。今やDXを推進できるサービスは日々更新され、市場に溢れかえっている。その中から自社にとって必要なサービスを選び取り、時には旧来のビジネスモデルや組織体制を変革していくことが、今後のEC市場を生き抜くための鍵となるだろう。

 

<参考>

eccLabサービスマッチング