近年見られるEコマースや、Mコマース(携帯電話を利用した電子商取引。モバイルコマース)市場の台頭は、業界関係者なら驚くことではなくなってきた。しかし最新のレポートでは、最も取引が活発になる第4四半期においてのオンライン売上が、実店舗の売り上げに迫る勢いとのこと。

 

このレポートを発表したのは、世界中の視聴者やブランド、消費者行動を計測するクロスプラットフォーム調査会社comScore。調査では、特に第4四半期におけるデスクトップPCやモバイル端末からの売上に焦点を当て、EコマースやMコマースの驚異的な台頭を示している。

「忠実な顧客を持つ小売業者は、何か致命的な事がない限り、携帯端末を用いたデジタルの道で生き残っていくだろう」と語るのは、モバイル用Web会社SiteMinisのCEO、Marci Troutman氏。「一つのミスでたった数時間後、ブランド自体の存続が危ぶまれる事態に発展しかねないこのデジタル時代。企業はますます消費者との関係性を大切にしていかなければならない」と語る。

 

Mコマース企業の急成長

2016年第4四半期、オンライン売上は1,093億ドルを記録し、2015年の同期と比べて18%の増加となった。この売上の大半を占めるのは、デスクトップPCからの購入によるもので、合計866億ドル。1年前から13%の増額である。一方、スマートフォンやタブレット端末からの売上は227億ドル。成長率で言うと、前年同期と比べデスクトップPCよりも遥かに高い45%を記録した。

2010年の4%に対し、2016年のEC全体におけるモバイル端末での取引は全体の17%を記録。そして今年は既に、2016年第4四半期のEC取引額の21%を占めている。これはcomScore社が2010年に調査を開始以来、1四半期における最も高い売上高である。

 

EコマースVS実店舗

第4四半期のホリデーシーズンは、1年を通じていかにブランドがECインフラを効果的に発展させてきたかを計るバロメーターになると言われている。その意味でブランドは、初期投資さえすれば低コストですぐに運用に入れるECでの管理を奨励している。

 

米大手百貨店Searsは2016年冬、ホリデーシーズン限定のお買い得情報を複数のアプリケーションを活用し発信するという“オムニチャネル化”に注力。同社のホリデー特売でブラックフライデーの超目玉として紹介されていた「100%ポイント還元」の商品広告も、ホリデーシーズン期間の売上確保の目的はもちろん、還元されるポイントを管理するポイントプログラム“Shop Your Way”を同百貨店アプリに統合することで、顧客との長期的な関係を構築したいという目論見があってのこと。(詳細記事

2016年に化粧品販売店Sephoraがアメリカで開いた3回目の美容系ワークショップでは、美容を通じた顧客のモバイル体験会を実施。店内に設置されたiPadステーションでは、商品閲覧の他、顧客毎にカスタマイズされたヘアメイクの提案もオンラインで受け取れる。こうした内容はすぐにスマートフォンにEメールで送信できるというものだった。(詳細記事

 

「昨年の小売り全体の売上伸び率は、わずか3%にとどまった。しかし、能率化された会計の仕組みや、顧客のモバイル端末での取引意欲の高まり、更にモバイル端末を一つのプラットフォームだと認識し始めた小売業者のマーケティング意識の高まりにより、Mコマース市場は目を見張る拡大を遂げている」とTroutman氏は語った。

 

※当記事は、米国メディア「Mobile Commerce Daily」の2/15公開の記事を翻訳・補足したものです。