【2022年最新】「eコマース(EC)」とは? 今さら聞けないコマース基本用語
eコマース(EC)とは?
「eコマース(EC)」とは、インターネットなどのネットワークを介して契約や決済などを行う取引形態のことで、インターネットでものを売買することの総称である。「eコマース」の「e」とは、「Electronic」の略であり、「eコマース」とはつまり、「Electronic Commerce」のことである。また、「eコマース」の「e」には小文字が当てられているのには理由があり、単語の先頭が小文字で始まると、何かやってくれる、格好いいというイメージとは別に、科学の電子は通常「e」と小文字で表現することが由来になっていると言われている。
「eコマース」は、そもそも、このサイトのタイトルに使っている、業界用語の中心のキーワードであるが、「eコマース」と言われたり、「EC」と言われたり、場合によっては「ネットショップ」や「ネット通販」と言われたり、正式には「電子商取引」となり、最も基本的なキーワードにも関わらず、このように色々な表現が乱立している。そのため、使う相手によってどのキーワードを用いるか考えなければならない、非常に面倒な言葉である。
“eコマース=電子取引”の内容は大きく3つに分けられ、
- 企業同士の取引をB to B
- ネットショップなどの企業と消費者間の取引をB to C
- オンラインオークションなどの消費者同士の取引をC to C
と呼ばれる。一般的にeコマースと言った場合には、多くの場合この「B to C」の取引を指すことが多い。
eコマース(EC)の市場規模
ここ20年ほどで急速に発展してきたeコマース。国内では、1997年にサービスを開始した楽天が業界最大手で、会員数1億1,980万人(2020年12月時点)、日本人の約1.05人に1人が会員になっている計算である。現在では、オークションサイトやオンライン証券取引、旅行代理業など、多様なサービスを展開しており、常に業界を牽引する存在として注目を集め、2020年度の流通総額は4.5兆円という巨大サービスとなっている。また米国発の大型モール、amazonも日本でのサービス提供を拡大しており、eccLabでは日本国内における2019年の流通総額を3兆4,238億円と推測している。国内のeコマース全体の市場規模としては、BtoCに限っても、2020年で21.7兆円、野村総合研究所の調査によると、2024年には27.2兆円ほどに膨らむと予測されている。
国内の市場規模を示す最も代表的なデータは経済産業省が公開するレポートである。このご時勢で、まだ右肩上がりのデータが公表されている、まだまだホットな業界といえるだろう。
また、総稼働店舗数については以下の記事も参考にしてほしい。
世界における日本のeコマース(EC)の市場規模位置付け
日本のeコマースの市場規模は世界の中でどのような位置付けになっているのだろうか。同じく経済産業省のレポートによると、日本のeコマースの市場規模はここ数年4位を維持している。上位はというと、1位の中国が2位のアメリカを3倍近く引き離し独走、3位にイギリス、5位に韓国、6位にドイツとなっている。しかし、伸び率で見ると上位10ヵ国の中では日本が2番目に低く(2019年と2020年の比較)、成長が他の国と比較してやや鈍化しているようだ。
eコマース(EC)と実店舗の違い
当初eコマースが始まったとき、一部の大きな可能性を信じていた若者とは異なり、多くの識者が否定的に捉えていたのも事実だ。その論旨の多くは、これだけ身近に便利なお店があるのに、いつ誰がインターネットを使ってモノを買うのか、というものだ。なかなか手に入りにくいものや、近くに便利な実店舗が無い場合などは良いが、日用品やアパレルなど近所のスーパーや実際に試着の出来る実店舗の方が良いに決まっていると考えられていた。しかしご存知のように今やそんなことを言う識者は存在しないほど、eコマースは日常に浸透している。
では、eコマースと実店舗の違いはどのようなものがあるのだろうか。大きく分けてeコマースには3つのメリットがあるだろう。1つ目はいつでもどこでも買い物を楽しめるという点。営業時間などは気にせず24時間、気になったタイミングでショッピングが行えるというのは実店舗との大きな違いだろう。2つ目は価格の比較が楽であるという点。楽天やAmazonなどのモールを中心に価格の安い順番に商品を並べることが出来ることが一般的なため、価格を安く入手することが出来る。3つ目は商品を配送してくれるという点。これはメリットでもありデメリットであるケースもある。また、実店舗でも配送サービスがあるところも多いためeコマースだけのポイントとも言い切れない部分もある。重い商品、実際に使用する日まで余裕があるものなど、自宅まで配送してもらえることは大きな利点となる。
一方で実店舗には2つのメリットがある。1つ目は店員さんが丁寧に商品の説明や使用した印象を教えてくれる点だ。いくらeコマースサイトで丁寧に商品説明を記載しても、生身の人間の温かみのある説明にはなかなかかなわないだろう。2つ目は実際の商品を手に取って検討出来る点だ。これは永遠にeコマースサイトが実店舗に追いつかない点と言ってもいいだろう。そのためeコマースサイトでは商品の説明を非常にしっかりと行っていく必要があり、少しでも手を抜くと売上に大きく影響していくことになる。
eコマース(EC)運営側のメリット
eコマースは、実店舗を構えて商品を販売する従来の商取引と比べて維持コストが少なく、地方在住者でも簡単に販売を行えるといったメリットが運営側にはある。また、販売を開始するための仕組み自体も非常に安価に提供されており、実店舗を開店するためのコストよりも安価にスタートすることが可能な点も非常に魅力的だ。また、最近では国内にいながら、海外の消費者向けに販売を行う「越境EC」も盛んになっておきており、あらゆる消費者に対して、商品を売るための場所を設け、販売を行っていくことが非常に安価に行うことが出来る点がメリットと言える。
eコマース(EC)運営にありがちな課題
eコマース運営で課題になりやすいのが、競争率が高くただ出店しただけでは売上を伸ばしていくことが難しい点と、それゆえに集客コストがかかりやすい点である。インターネット上に場所を設けて販売すること自体は簡単だが、それが実際に「売れる」ことと必ずしもイコールになるわけではない。オンラインが生活に浸透してきた今、Webマーケティング活動を行うことは必須で、そのコストや難易度は年々上昇している。そのため、店舗を簡単に開店できるから、という理由だけで開店するのではなく、開店後にしっかり集客するためのマーケティングについても準備をした上で店舗運営に臨んでいきたい。
eコマース(EC)の種類
一言にeコマースと言っても実は色々な形態がある。今eコマース業界には多くの出店・開店に向けた選択肢が広がっており、どのようなニーズを持った個人や事業者でも、思い通りの店舗展開をオンライン上で実現できるようになってきている。楽天やAmazonなどの「モール」以外にも、カートASP、CMSパッケージ、オープンソース、フルスクラッチなど聞きなれない形態が存在するため、基礎知識として理解しておきたい。
eコマースを始めるにあたっては、大きく分けて、「出店する」か「開店する」かという違いがある。
出店するというのは楽天やAmazonなどのECプラットフォームにお店を出店すること。実際の世界に置き換えて考えてみると、百貨店の中にお店を出すようなものだ。百貨店の場合と同じく、出店する場合は、既に多くのユーザーがいるところに出店することが出来るため、集客に関わる費用は一般的には抑えられるが、場所代として売上の何%かをチャージされることになる。
この出店することが出来るプラットフォームだけを見てもその目的によって多くのサービスが存在している。
EC業界カオスマップ2022 - ECモール&プラットフォーム編EC業界は年々進展を続け、ECサイト運営事業者を支援する各サービスジャンルにも多くのサービスが乱立している。このEC業界カオスマップでは、eコマース業界の“今”を分かりやすく、そして網羅的にマップ化することを目的としている。2021~2022年度版の10回目のサービ...
次に開店する形態を見ていこう。開店というのは、自社ブランドの店舗をオンライン上に開設すること。実際の世界に置き換えて考えて見ると路面店を開店するようなものだ。場所代や売上へのチャージは抑えることが出来るケースもあるが、集客のコストは出店の場合よりもかかるケースが多い。また、店舗の自由度が高いため、思い通りの形態のショップを構えることが出来るのも利点だろう。
この開店することが出来るサービスも市場には多く存在している。
EC業界カオスマップ2022 - ECサイト構築サービス編EC業界は年々進展を続け、ECサイト運営事業者を支援する各サービスジャンルにも多くのサービスが乱立している。このEC業界カオスマップでは、eコマース業界の“今”を分かりやすく、そして網羅的にマップ化することを目的としている。2022年度版の4回目のサービスジャ...
格段に手軽に開店できるようになってきた「eコマース(EC)サイト」
そんな中、以前はある程度の規模の投資が必要だったeコマースサイトの開店のハードルもここ数年で一気に下がってきている。特にBASEやStores.jpに代表されるインスタントECという、「3分で開店出来る」などの謳い文句でサービスを行っているプラットフォームを用いれば、本当に数分での開店が可能となっている。しかも驚くべきことに無料だ。
ただ、eコマースをしっかりと事業として位置付けている方には上記のサービスは物足りない側面もあるだろう。事業をしっかりと行っている方であれば、まずは楽天などのモールに出店して、売上をしっかり作ってから独自の店舗などを拡張していくという方法が主流だ。
eコマース(EC)を運営するための業務内容
出店・開店することが初期のゴールになりがちだが、実際に大変なのはeコマースサイトを出店・開店した後だ。eコマースサイトの店長業務はとにかく多岐にわたる。商品企画、サイトメンテナンス、商品情報作成・登録、商品写真撮影、画像加工、受発注対応、顧客対応、集客施策検討など多くの知識が必要になってくる。特に初期はそれらの業務を1人もしくは2人程度で行うことが一般的なため非常に難易度が高くなる。そのためそれらの業務を支援するサービスも多く存在している。eコマースサイトを効率的に運営するためには得意な業務、不得意な業務を見極めて、効果的に外部のアウトソーサーを利用するなどしていく必要もあるだろう。
eコマース(EC)が持つ将来性
スマホによるeコマースの利用率は年々増えており、コロナ禍によるEC需要もあいまって今後も右肩上がりに伸びていくと考えられる。特に第5世代移動通信システム、通称「5G」の普及は、eコマースが持つ可能性を広げるきっかけとなりえる。
高速大容量、低遅延、多数同時接続の3点において高規格の5Gは、動画を用いたライブコマースやVRを用いたVコマースと特に相性がよい。例えばeコマースには、実店舗の特徴である店員による商品説明ができないデメリットがあるが、インフルエンサーを起用し消費者との対話の中で商品の魅力を伝えるライブコマースが5Gの普及で身近になれば、対面販売のようなコミュニケーションがeコマース上で可能になる。また、Vコマースを用いてリアルな店舗をVR上で再現し、オンラインショッピングをストリートビューのように楽しんでもらうなどで、商品価値以上の魅力的な体験をユーザーに提供しやすくなる。
ライブコマースもVコマースもすでに一部でサービスが提供されているが、eコマースのスタンダードといえるほどには定着していない。5Gの普及でこれらが身近なものになれば、より新しく、より効果的なマーケティングが行えるようになるだろう。
今後の成長が期待できる商品カテゴリ
eコマース全体の市場規模は前述の通り非常に大きなものとなっているが、取り扱う商品カテゴリごとに見ると、実はEC化の度合いにはかなりの違いがある。特に「食品」「アパレル」「医薬品」のカテゴリは実店舗が大半でEC化率が低い状態だったが、コロナ禍の影響もあり、2020年から変化の兆しを見せているのだ。
食品業界はこれまでIT化があまり進んでいなかったため、市場規模に対するEC化率が低かった。依然として物流面の課題は残っているものの、外出の抑制によりネットスーパーなど食品ECの利用率が増加しており、IT化の浸透とともに成長が見込めるだろう。アパレル業界は店員によるアドバイスなど実店舗のメリットが大きく、eコマースには向かないとされてきたが、専門家の選んだ洋服が自動で届くサブスクリプション方式のeコマースが成功を収めるなど、独自の進歩がみられる。医薬品業界もIT化が遅れていた点は食品業界と似ているが、医療の専門家にオンライン上で相談できるサービスなども登場しており、ECサイトでの医薬品販売とあわせて注目していきたいカテゴリだ。
eコマースからMコマース、そしてVコマースへ
eコマースは既にMコマースに置き換わってきており、今後はVコマースの世界に入っていく、ということも言われている。ここでいうMコマースの「M」はモバイルのMを指し、Vコマースの「V」はバーチャルのVを指している。すなわち、Mコマースとはモバイル端末を介して行われるeコマースのことだ。今やeコマースの6~7割がモバイル経由と言われているため、Mコマースの存在感は非常に大きくなっている。VコマースはAR・VRなどの仮想現実の世界でのコマースを指しており、現在新しいテクノロジーの勃興が著しい領域でのコマースサービスが今後増えていくと予測されている。いずれにしても、広義の意味ではMコマースもVコマースもeコマースの一部であり、一時的なトレンドをキャッチーなキーワードで表現したものと捉えていれば十分だろう。
eコマース業界はこのように非常にトレンドの流れが激しい業界であり、また来年には新しいXコマースが登場していてもおかしくはない領域ともいえる。そのため、常に最新の情報・トレンドにアンテナを張っていくことも重要になるだろう。
eコマース業界はさらなる発展が予想されている。今後どのような未来となっていくのか、その主役は今この記事を読んでいる皆さんかもしれない。
eコマース(EC)とは?
「eコマース(EC)」とは、インターネットなどのネットワークを介して契約や決済などを行う取引形態のことで、インターネットでものを売買することの総称である。「eコマース」の「e」とは、「Electronic」の略であり、「eコマース」とはつまり、「Electronic Commerce」のことである。また、「eコマース」の「e」には小文字が当てられているのには理由があり、単語の先頭が小文字で始まると、何かやってくれる、格好いいというイメージとは別に、科学の電子は通常「e」と小文字で表現することが由来になっていると言われている。
「eコマース」は、そもそも、このサイトのタイトルに使っている、業界用語の中心のキーワードであるが、「eコマース」と言われたり、「EC」と言われたり、場合によっては「ネットショップ」や「ネット通販」と言われたり、正式には「電子商取引」となり、最も基本的なキーワードにも関わらず、このように色々な表現が乱立している。そのため、使う相手によってどのキーワードを用いるか考えなければならない、非常に面倒な言葉である。
“eコマース=電子取引”の内容は大きく3つに分けられ、
- 企業同士の取引をB to B
- ネットショップなどの企業と消費者間の取引をB to C
- オンラインオークションなどの消費者同士の取引をC to C
と呼ばれる。一般的にeコマースと言った場合には、多くの場合この「B to C」の取引を指すことが多い。
eコマース(EC)の市場規模
ここ20年ほどで急速に発展してきたeコマース。国内では、1997年にサービスを開始した楽天が業界最大手で、会員数1億1,980万人(2020年12月時点)、日本人の約1.05人に1人が会員になっている計算である。現在では、オークションサイトやオンライン証券取引、旅行代理業など、多様なサービスを展開しており、常に業界を牽引する存在として注目を集め、2020年度の流通総額は4.5兆円という巨大サービスとなっている。また米国発の大型モール、amazonも日本でのサービス提供を拡大しており、eccLabでは日本国内における2019年の流通総額を3兆4,238億円と推測している。国内のeコマース全体の市場規模としては、BtoCに限っても、2020年で21.7兆円、野村総合研究所の調査によると、2024年には27.2兆円ほどに膨らむと予測されている。
国内の市場規模を示す最も代表的なデータは経済産業省が公開するレポートである。このご時勢で、まだ右肩上がりのデータが公表されている、まだまだホットな業界といえるだろう。
また、総稼働店舗数については以下の記事も参考にしてほしい。
世界における日本のeコマース(EC)の市場規模位置付け
日本のeコマースの市場規模は世界の中でどのような位置付けになっているのだろうか。同じく経済産業省のレポートによると、日本のeコマースの市場規模はここ数年4位を維持している。上位はというと、1位の中国が2位のアメリカを3倍近く引き離し独走、3位にイギリス、5位に韓国、6位にドイツとなっている。しかし、伸び率で見ると上位10ヵ国の中では日本が2番目に低く(2019年と2020年の比較)、成長が他の国と比較してやや鈍化しているようだ。
eコマース(EC)と実店舗の違い
当初eコマースが始まったとき、一部の大きな可能性を信じていた若者とは異なり、多くの識者が否定的に捉えていたのも事実だ。その論旨の多くは、これだけ身近に便利なお店があるのに、いつ誰がインターネットを使ってモノを買うのか、というものだ。なかなか手に入りにくいものや、近くに便利な実店舗が無い場合などは良いが、日用品やアパレルなど近所のスーパーや実際に試着の出来る実店舗の方が良いに決まっていると考えられていた。しかしご存知のように今やそんなことを言う識者は存在しないほど、eコマースは日常に浸透している。
では、eコマースと実店舗の違いはどのようなものがあるのだろうか。大きく分けてeコマースには3つのメリットがあるだろう。1つ目はいつでもどこでも買い物を楽しめるという点。営業時間などは気にせず24時間、気になったタイミングでショッピングが行えるというのは実店舗との大きな違いだろう。2つ目は価格の比較が楽であるという点。楽天やAmazonなどのモールを中心に価格の安い順番に商品を並べることが出来ることが一般的なため、価格を安く入手することが出来る。3つ目は商品を配送してくれるという点。これはメリットでもありデメリットであるケースもある。また、実店舗でも配送サービスがあるところも多いためeコマースだけのポイントとも言い切れない部分もある。重い商品、実際に使用する日まで余裕があるものなど、自宅まで配送してもらえることは大きな利点となる。
一方で実店舗には2つのメリットがある。1つ目は店員さんが丁寧に商品の説明や使用した印象を教えてくれる点だ。いくらeコマースサイトで丁寧に商品説明を記載しても、生身の人間の温かみのある説明にはなかなかかなわないだろう。2つ目は実際の商品を手に取って検討出来る点だ。これは永遠にeコマースサイトが実店舗に追いつかない点と言ってもいいだろう。そのためeコマースサイトでは商品の説明を非常にしっかりと行っていく必要があり、少しでも手を抜くと売上に大きく影響していくことになる。
eコマース(EC)運営側のメリット
eコマースは、実店舗を構えて商品を販売する従来の商取引と比べて維持コストが少なく、地方在住者でも簡単に販売を行えるといったメリットが運営側にはある。また、販売を開始するための仕組み自体も非常に安価に提供されており、実店舗を開店するためのコストよりも安価にスタートすることが可能な点も非常に魅力的だ。また、最近では国内にいながら、海外の消費者向けに販売を行う「越境EC」も盛んになっておきており、あらゆる消費者に対して、商品を売るための場所を設け、販売を行っていくことが非常に安価に行うことが出来る点がメリットと言える。
eコマース(EC)運営にありがちな課題
eコマース運営で課題になりやすいのが、競争率が高くただ出店しただけでは売上を伸ばしていくことが難しい点と、それゆえに集客コストがかかりやすい点である。インターネット上に場所を設けて販売すること自体は簡単だが、それが実際に「売れる」ことと必ずしもイコールになるわけではない。オンラインが生活に浸透してきた今、Webマーケティング活動を行うことは必須で、そのコストや難易度は年々上昇している。そのため、店舗を簡単に開店できるから、という理由だけで開店するのではなく、開店後にしっかり集客するためのマーケティングについても準備をした上で店舗運営に臨んでいきたい。
eコマース(EC)の種類
一言にeコマースと言っても実は色々な形態がある。今eコマース業界には多くの出店・開店に向けた選択肢が広がっており、どのようなニーズを持った個人や事業者でも、思い通りの店舗展開をオンライン上で実現できるようになってきている。楽天やAmazonなどの「モール」以外にも、カートASP、CMSパッケージ、オープンソース、フルスクラッチなど聞きなれない形態が存在するため、基礎知識として理解しておきたい。
eコマースを始めるにあたっては、大きく分けて、「出店する」か「開店する」かという違いがある。
出店するというのは楽天やAmazonなどのECプラットフォームにお店を出店すること。実際の世界に置き換えて考えてみると、百貨店の中にお店を出すようなものだ。百貨店の場合と同じく、出店する場合は、既に多くのユーザーがいるところに出店することが出来るため、集客に関わる費用は一般的には抑えられるが、場所代として売上の何%かをチャージされることになる。
この出店することが出来るプラットフォームだけを見てもその目的によって多くのサービスが存在している。
EC業界カオスマップ2022 - ECモール&プラットフォーム編EC業界は年々進展を続け、ECサイト運営事業者を支援する各サービスジャンルにも多くのサービスが乱立している。このEC業界カオスマップでは、eコマース業界の“今”を分かりやすく、そして網羅的にマップ化することを目的としている。2021~2022年度版の10回目のサービ...
次に開店する形態を見ていこう。開店というのは、自社ブランドの店舗をオンライン上に開設すること。実際の世界に置き換えて考えて見ると路面店を開店するようなものだ。場所代や売上へのチャージは抑えることが出来るケースもあるが、集客のコストは出店の場合よりもかかるケースが多い。また、店舗の自由度が高いため、思い通りの形態のショップを構えることが出来るのも利点だろう。
この開店することが出来るサービスも市場には多く存在している。
EC業界カオスマップ2022 - ECサイト構築サービス編EC業界は年々進展を続け、ECサイト運営事業者を支援する各サービスジャンルにも多くのサービスが乱立している。このEC業界カオスマップでは、eコマース業界の“今”を分かりやすく、そして網羅的にマップ化することを目的としている。2022年度版の4回目のサービスジャ...
格段に手軽に開店できるようになってきた「eコマース(EC)サイト」
そんな中、以前はある程度の規模の投資が必要だったeコマースサイトの開店のハードルもここ数年で一気に下がってきている。特にBASEやStores.jpに代表されるインスタントECという、「3分で開店出来る」などの謳い文句でサービスを行っているプラットフォームを用いれば、本当に数分での開店が可能となっている。しかも驚くべきことに無料だ。
ただ、eコマースをしっかりと事業として位置付けている方には上記のサービスは物足りない側面もあるだろう。事業をしっかりと行っている方であれば、まずは楽天などのモールに出店して、売上をしっかり作ってから独自の店舗などを拡張していくという方法が主流だ。
eコマース(EC)を運営するための業務内容
出店・開店することが初期のゴールになりがちだが、実際に大変なのはeコマースサイトを出店・開店した後だ。eコマースサイトの店長業務はとにかく多岐にわたる。商品企画、サイトメンテナンス、商品情報作成・登録、商品写真撮影、画像加工、受発注対応、顧客対応、集客施策検討など多くの知識が必要になってくる。特に初期はそれらの業務を1人もしくは2人程度で行うことが一般的なため非常に難易度が高くなる。そのためそれらの業務を支援するサービスも多く存在している。eコマースサイトを効率的に運営するためには得意な業務、不得意な業務を見極めて、効果的に外部のアウトソーサーを利用するなどしていく必要もあるだろう。
eコマース(EC)が持つ将来性
スマホによるeコマースの利用率は年々増えており、コロナ禍によるEC需要もあいまって今後も右肩上がりに伸びていくと考えられる。特に第5世代移動通信システム、通称「5G」の普及は、eコマースが持つ可能性を広げるきっかけとなりえる。
高速大容量、低遅延、多数同時接続の3点において高規格の5Gは、動画を用いたライブコマースやVRを用いたVコマースと特に相性がよい。例えばeコマースには、実店舗の特徴である店員による商品説明ができないデメリットがあるが、インフルエンサーを起用し消費者との対話の中で商品の魅力を伝えるライブコマースが5Gの普及で身近になれば、対面販売のようなコミュニケーションがeコマース上で可能になる。また、Vコマースを用いてリアルな店舗をVR上で再現し、オンラインショッピングをストリートビューのように楽しんでもらうなどで、商品価値以上の魅力的な体験をユーザーに提供しやすくなる。
ライブコマースもVコマースもすでに一部でサービスが提供されているが、eコマースのスタンダードといえるほどには定着していない。5Gの普及でこれらが身近なものになれば、より新しく、より効果的なマーケティングが行えるようになるだろう。
今後の成長が期待できる商品カテゴリ
eコマース全体の市場規模は前述の通り非常に大きなものとなっているが、取り扱う商品カテゴリごとに見ると、実はEC化の度合いにはかなりの違いがある。特に「食品」「アパレル」「医薬品」のカテゴリは実店舗が大半でEC化率が低い状態だったが、コロナ禍の影響もあり、2020年から変化の兆しを見せているのだ。
食品業界はこれまでIT化があまり進んでいなかったため、市場規模に対するEC化率が低かった。依然として物流面の課題は残っているものの、外出の抑制によりネットスーパーなど食品ECの利用率が増加しており、IT化の浸透とともに成長が見込めるだろう。アパレル業界は店員によるアドバイスなど実店舗のメリットが大きく、eコマースには向かないとされてきたが、専門家の選んだ洋服が自動で届くサブスクリプション方式のeコマースが成功を収めるなど、独自の進歩がみられる。医薬品業界もIT化が遅れていた点は食品業界と似ているが、医療の専門家にオンライン上で相談できるサービスなども登場しており、ECサイトでの医薬品販売とあわせて注目していきたいカテゴリだ。
eコマースからMコマース、そしてVコマースへ
eコマースは既にMコマースに置き換わってきており、今後はVコマースの世界に入っていく、ということも言われている。ここでいうMコマースの「M」はモバイルのMを指し、Vコマースの「V」はバーチャルのVを指している。すなわち、Mコマースとはモバイル端末を介して行われるeコマースのことだ。今やeコマースの6~7割がモバイル経由と言われているため、Mコマースの存在感は非常に大きくなっている。VコマースはAR・VRなどの仮想現実の世界でのコマースを指しており、現在新しいテクノロジーの勃興が著しい領域でのコマースサービスが今後増えていくと予測されている。いずれにしても、広義の意味ではMコマースもVコマースもeコマースの一部であり、一時的なトレンドをキャッチーなキーワードで表現したものと捉えていれば十分だろう。
eコマース業界はこのように非常にトレンドの流れが激しい業界であり、また来年には新しいXコマースが登場していてもおかしくはない領域ともいえる。そのため、常に最新の情報・トレンドにアンテナを張っていくことも重要になるだろう。
eコマース業界はさらなる発展が予想されている。今後どのような未来となっていくのか、その主役は今この記事を読んでいる皆さんかもしれない。