AIは検索のあり方を変えつつあるが、実際にデータを検証してみると、トラフィックやコンテンツ、測定、SEO関連の仕事について声高に語られている主張の中には、根拠が十分ではないものがある。


LinkedIn(米国に本社を置くビジネス特化型SNS)を開けば、毎日のように「従来の検索はもう終わった」と断言する人が登場する。さらに、AI生成コンテンツがもはや検索の上位に表示されなくなったことを示すグラフや、「SEOチームは時代遅れだ」と主張する人を目にする。

こうした主張の多くには、ある共通したパターンがある。一見もっともらしく聞こえ、繰り返し語られるうちに、あたかも業界の常識であるかのように受け入れられてしまうのだ。しかし、実際のデータと照らし合わせてみると、それらは簡単に根拠が崩れてしまう。

これが、現在のSEO業界における問題である。情報の拡散が検証のスピードを上回っており、こうした主張の中には、売上げを伸ばすための不安をあおる手段として利用されているものも少なくない。

では、解決策を考えてみよう。ここでは、AIと検索に関する根強い主張をいくつか取り上げる。そして、それらを実際のデータと照らし合わせて検証する。それらが次の戦略資料に誤った情報として入り込んでしまう前に、具体的なスタンスを確立していこう。


従来型検索に関する通説

通説その1:AIによって従来型検索が衰退している

主張:ChatGPT、Claude、Perplexityで行われるすべてのセッションは、本来Googleのような従来型の検索エンジンで行われていたはずの検索である。そのため、AIがそのシェアを奪うことで、従来型検索は縮小している。

データが示す事実:確かにAI検索は成長しているが、従来型検索も同様に成長している。「The State of Search Q2 2026(2026年第2四半期の検索動向)」レポートによると、両者は四半期ごとにほぼ同じペースで成長していることがわかった。つまり、「AI対従来型検索」という構図ではなく、「AI+従来型検索」という構図なのである。

出典:Datos(米国のデータ企業)


AIプラットフォームは、検索需要を奪っているわけではない。むしろ、その上に新たな層を加えているのだ。

ただし、この議論には少し複雑な側面がある。この説にも一部の真実が含まれており、それは、Webサイトへのクリック数が減少しているという点だ。Googleは、ユーザーを他のサイトに誘導することなく、その場で答えを提供する方向へと、ますます設計を変えている。同調査によると、Googleの検索結果からGoogle以外のWebサイトへ移動するクリック数は、2025年4月以来の最低水準に落ち込んでいることが明らかになった。

出典:Datos


Googleが、より多くの検索クエリに検索結果ページ上で直接回答するようになったことで、オープンWebへのユーザー流入(一般のWebサイトへのアクセス)は減少している。それにもかかわらず、検索需要そのものは増え続けているのだ。


通説その2:ゼロクリック時代の今、オーガニックトラフィックはもう増やせない

主張:「AI Overviews(AIによる概要)」と「AIモード」がある以上、2026年に意味のあるオーガニック流入の増加などあり得ない。

データが示す事実:2026年7月にWebサイトへのオーガニッククリック数が過去最高の月間記録を更新したばかりのクライアントに、その主張を言ってみてほしい。その増加は、ブログ記事とサービスページの両方で取り組んだ非指名検索施策のみによってもたらされたものである。


ここで留意すべき重要な点は、上記はローカルビジネスに関する事例であるという点だ。AIの影響という観点では、ローカルビジネスは検索市場全体の他の分野とは異なるリスクカテゴリーに分類される。こうした成長が、すべてのWebサイトで実現できるわけではない。それでも、SNS上で見かける論調の多くは、まるでどのようなサイトでも、こうした成果を上げることは不可能であるかのように思わせがちである。

したがって、この説を正確に言い換えると、次のようになる。「ゼロクリックの圧力は確かに存在するが、その影響はすべての業界に均等に及んでいるわけではない。適切に策定されたSEO戦略があれば、ゼロクリック化が進む検索環境においても、依然としてオーガニック検索による成果を生み出すことは可能である」。


通説その3:AIだけで生成したコンテンツは検索順位で上位に表示されない

主張:GoogleやLLM(大規模言語モデル)はAI生成コンテンツを検知・排除できるため、AIによって書かれたものは、せいぜい平凡で、長続きしない成果しか出せない。

データが示す事実:下図に示す4本の記事は、テストとして、綿密なプロンプトを使って完全にAIによって生成され、2025年3月から9月にかけて公開された。人間による簡単なチェックは行われたが、公開後に手作業による書き直しは一切行われていない。それでも、これらの記事は現在も検索順位で上位表示され、成果を上げ続けている。


AI生成コンテンツの中には、実際に低品質なものが数多く存在する。Googleは、手間をかけずに作られた独創性のないコンテンツや、キーワードを詰め込んだAI生成コンテンツを見分ける能力を高めている。

しかし、重要なのは「LLMが文章を書いた」という事実ではなく、その作成プロセスである。コンテンツが優れたアイデアや本物の専門知識、独自のデータ、あるいは明確な視点に基づいていれば、AIはコンテンツ作成をスピードアップでき、十分に練り上げられた他のページと同じように成果を上げることができる。 検索エンジンには、「AIによって書かれたものか」を理由とするペナルティはない。あるのは、「これに価値があるか」というフィルターなのだ。


技術的SEOに関する通説

通説その4:llms.txtはAI検索での可視性向上に役立つ

主張:llms.txtファイル(LLM向けにサイト構造や重要コンテンツを伝えることを目的とした設定ファイル)を追加すると、AIによる回答の中で自社サイトが取り上げられる頻度が大幅に向上する。

データが示す事実:この説はこれまで何度も否定されてきたが、なぜか繰り返し浮上している。

まず、GoogleはAI検索におけるコンテンツ発見にllms.txtを利用していないことを明確に表明している。


次に、この調査では、10のサイトにおいて、llms.txtの導入前後それぞれ90日間にわたって、AIによるクロール頻度とAI経由のトラフィックを追跡した。その結果、ほとんどのサイトでは測定可能な変化は見られなかった。また、変化が確認されたサイトについても、その要因はllms.txtではなく、他のSEO施策によるものだった。

この調査から導き出される妥当な結論は、llms.txtをサイトマップに例えた次の見解である。「llms.txtは戦略ではなく、インフラである。導入しても損はないが、それだけで大きな成果をもたらすわけではない」。


通説その5:LLMはJavaScriptを問題なく処理できる

主張:最新のAIクローラーは、ブラウザと同じようにJavaScriptをレンダリングできる。そのため、クライアントサイドでレンダリング(Webページのコードを実際に表示できる形に変換すること)されたコンテンツも、Googlebot(GoogleがWebページを収集・分析するために使用するクローラー)と同様にAIクローラーに認識される。

データが示す事実:実際はそうではない。Profound(AI検索分析プラットフォームを提供する米国企業)が実施したAIクローラーの挙動に関する調査では、新興のAI検索プロバイダーの多くはJavaScriptをレンダリングする機能を備えておらず、AI検索での可視性を確保するためにはサーバーサイドレンダリングが不可欠であることが明らかになった。


しかし、この通説が根強く残っている理由の一つは、LLMがこれについて事実と異なることを述べてしまうからだ。私の印象では、ChatGPTはその中でも特に顕著な例の一つである。

たとえば、先日私がChatGPTと交わしたこの会話を挙げてみよう。私はChatGPTに、AIの可視性が与える波及的効果について書かれた最近の記事を要約するよう依頼した。しかし皮肉なことに、そのページの内容はクライアントサイドJavaScriptの背後に隠れていて、読み取れない状態だった。

それにもかかわらず、ChatGPTは「問題ありません」と答え、その記事の要点を列挙し始めた。私がさらに問い詰めると、ChatGPTは完全には真実を語っていなかったことを認めた。実際には、内容が読み取れる別の記事から要点を見つけ出し、それを私に返していたのだ。


LLMの提供する情報を鵜呑みにしないよう注意してほしい。また、ヘッドレスCMS(コンテンツを管理する機能だけを持ち、Webページの表示機能を持たないコンテンツ管理システム)を使用している場合や、JavaScriptに大きく依存してコンテンツを表示するサイトの場合は、なおさら注意が必要だ。


SEOの測定と価値に関する通説

通説その6:AIはサイトへのトラフィックをほとんど増やしていない

主張:アナリティクスでAIからの参照トラフィックを確認すると、その数値は誤差程度に過ぎない。したがって、AIは主にトラフィックを吸収しており、ユーザーをWebサイトにほとんど誘導していない。

データが示す事実:AIによる言及効果に関する調査によると、AIがトラフィックに及ぼす波及的効果は、大幅に過小評価されていることが判明した。

この調査では、特に注目に値するいくつかの発見があった。

  • AIアシスタントがブランド名を言及すると、そのユーザーは、その後の7日間で、予測された通常水準の1.5倍から2.5倍の頻度で当該ブランドのWebサイトを訪問する。
  • ChatGPTが2026年5月のアップデートで引用元の表示数が増やした後も、その後に発生したサイト訪問のうち、AI経由であることを追跡可能なパラメータが付いていたのはわずか約2.5%にすぎなかった。これは、これらのブランドサイトへの訪問の97%には依然としてUTMパラメータが含まれておらず、そのトラフィックはアナリティクス上では「ダイレクト流入」「オーガニック検索流入」、あるいは「流入元不明」として表示され、AIとの会話が訪問のきっかけとなったことを示す手がかりは全くなかった。
  • サイト訪問のすべてがAIで言及された直後に発生するわけではないため、これが流入元不明となる理由の一つとなっている。AIによる言及から1時間以内に発生した訪問はわずか20.5%、24時間以内でも42%にとどまり、初回訪問の大部分は翌日以降に発生していた。

つまり、アナリティクスで「AIからの流入」セグメントは、上限ではなく最低ラインに過ぎない。AIの波及的効果は確かに存在するが、その影響を測定することはかつてないほど複雑になっているのだ。


通説その7:SEOチームはAIに置き換えられる

主張:AIツールは今や、監査の実施、概要書の作成、さらには技術的な修正さえも実行できるようになっている。そのため、SEO担当者という職種は不要になりつつある。

データが示す事実:NP Digital(米国のデジタルマーケティング会社)の調査によると、AIは人間より多くの間違いを検出する一方で、重大な誤りを見逃したり、重要度の優先順位付けに苦労したりすることが判明した。(補足:私はNP DigitalのSEO部門のディレクターを務めている。)

AIは大規模な処理に優れており、人間では到底及ばない速さで多くの細かな問題を見つけ出せる。ただし、それは前述のように、WebサイトがクライアントサイドJavaScriptによるレンダリングに依存していないことが前提である。

しかし、AIはキーワード調査や検索意図に関する判断を下すことに関しては、依然として不十分である。また、オーガニック検索の成果を向上させるための最優先事項として、altテキストやメタディスクリプションの修正といった些細なことを推奨してしまうこともある。

さらに、SEOの改善提案にAIを利用した経験のある人なら誰でも、AIが誤った修正案を提示したり、すでに存在するページを新たに作成するよう勧めたり、あるいは明らかに悪いアイデアに対して自信満々に賛同したりする場面を、一度は目にしたことがあるだろう。

結論:AIはSEO担当者にとって不可欠なツールであるが、SEO担当者が提供する「人間らしい価値」を完全に置き換えるものではない。

AIにあなたのサイトを見つけてもらえないのなら、顧客にも見つけてもらえないのだ。

AI検索における自社の可視性を追跡し、見逃している機会を発見し、顧客が質問をしている場所で存在感を高めよう。


疑いもせずに通説を鵜呑みにしてはいけない

このリストにある通説が今まで生き残ってきたのは、微妙なニュアンスを含む問題を単純化し、インパクトのあるLinkedInの投稿としてまとめてきたからだ。

AIは検索のあり方を急速に変えつつある。その結果、飛び交うあらゆる主張の真偽を確認し、その動向についていくのは容易ではなくなっている。この記事から一つだけ教訓を得るとすれば、それは「一歩立ち止まってデータを確認し、二つの事実が同時に成り立ち得ることを受け入れる姿勢を持つ」ということだ。

誤った情報は後を絶たないだろう。しかし成功を収めるチームは、次々と飛び出す流行の話題にいち早く飛びつくチームではない。まず事実を確認し、検証したチームこそが勝つのだ。


※当記事は米国メディア「MarTech」の10/1公開の記事を翻訳・補足したものです。