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シアトルに正式オープンした「Amazon Go」の理想と実際

シアトルに正式オープンした「Amazon Go」の理想と実際

トレンド
2018/01/26

従業員向けに公開されていたAmazon Goが遂に一般向けに正式オープン

Amazon Goが軌道に乗るかどうかに関わらず、このニュースは小売業界の未来にとって大きな分岐点となるだろう。当初の計画より約1年遅れて、Amazonは正式に1月22日の朝、Amazon Goを一般向けにオープンさせた。Amazon Goはミレニアル世代をターゲットとした、ハイテク、かつ、健康意識の高いコンビニエンスストアであると言われていた。

 

<参考>

Amazon、次世代型店舗「Amazon Go」を正式オープン

【米国】次世代型リアル店舗Amazon Goをシアトルにコンセプトストア - 会計不要の食料品販売で小売業に衝撃

【英国】Amazon Go、イギリスでの出店準備進む

 

しかし、実際のところは少し異なる。むしろ、調理済み食品と高価格商品を中心に取り扱うWhole Foodsの縮小バージョンに近い。また周知のように、レジ待ちの行列もレジも存在しない。

Amazon Goには店員や従業員が配置されている。しかし、従来の小型食料品店やコンビニエンスストアよりも少ない人員で営業することができるだろう。しかしどの程度人員を削減できるのか、レジ係だけが不要なのかという点については、明らかではない。米国の労働人口の約6%は小売業のレジ係として従事しており、その数は800万人を超えている。

複数のテクノロジーを統合して運営されるAmazon Go。具体的には、センサーとコンピュータービジョンを、スマートフォンアプリと買い物客のAmazonアカウントに結びつける。買い物客はAmazon Go専用アプリをインストールし、決済に使用するカードを設定する必要がある。(個人のAmazonアカウントにおける支払いオプションのうち1つを選択することが可能)。

専用アプリを起動した買い物客は、地下鉄の自動改札機を通過するように店舗入り口でQRコードをかざして入店。そして、棚から手にとった商品や棚に戻した商品は、導入技術によって自動的に検知され、バーチャルカートで管理される。買い物客が店から出ると、登録しているカードに商品代金が請求され、領収書が専用のアプリに表示されるという流れだ。

混雑時には店が混乱し、誤作動が生じるのではないかという懸念もある。しかしAmazonがオープンを延期していたのは混雑時にも対応できるように、導入技術のストレステストを十分に実施するためだったと考えられる。1つ疑問に思う点は、買い物客が商品を陳列されていた元の場所に戻さず、店内の他の場所に置いた場合はどのような事態が起きるのかということだ。

 

Amazon Goはミレニアル世代が集中する都心に適している。Amazon社に直接確認をしたわけではないが、Amazon Goが成功すれば、これは世界中のマーケットでも展開できるグローバルなコンセプトである。特にロンドンでは、こうしたコンセプトの店舗は受け入れられ易いだろう。

 

Amazon Goは他の小売業者にどのような影響を与えるだろうか?それはAmazon Goのオープンに際し、誰もが疑問に思うことである。端的に答えるとすれば、「すぐに影響はない」と言えよう。当初の影響は、Amazon Goが開店したエリアの食料品店やコンビニエンスストアに限られると思われる。しかし長期的に見れば、小売業全体への影響は深刻であり、より広範囲に及ぶ可能性がある。

レジを待つ長蛇の列と、愛想がなく手際が悪いレジ係によって、店舗のショッピング体験に不満を持った多くの買い物客は、実店舗での買い物を避けるようになった。レジの行列を最小限にし、もしくは、無くすことは、小売業者がすぐに取り組むべき課題である。ただしその実現の可能性と仕組みについては、さらなる議論が必要だ。さらに、Amazon Goの技術を他の小売店舗にも応用することは可能かという疑問も出てくる。答えは、多かれ少なかれ、応用可能である。

Amazon社は、Amazon Goの運営を通じて多くのデータを入手できる。こうしたデータは色々な意味で非常に貴重なものであり、Amazonの食料品ビジネスと、いずれはWhole Foods経営に役に立つものとなるだろう。Amazonは店舗での買い物客から収集したデータやショッピング履歴の利用方法については言及していないが、最終的にはオフラインからオンラインへのリターゲティングに活用すると思われる。

今回のニュースが、例えAmazon Goの宣伝文句通りの期待に沿わなかったとしても、長い目で見れば我々は今、小売ショッピング業界にとって転機となる衝撃的な瞬間にいることは確実である。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の1/22公開の記事を翻訳・補足したものです。