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疲弊した世界に誇る繊細かつ高度な物流・宅配システムを救え - 今、EC業界としてやるべきこと

疲弊した世界に誇る繊細かつ高度な物流・宅配システムを救え - 今、EC業界としてやるべきこと

物流・決済・業務
2017/04/12

疲弊した世界に誇る繊細かつ高度な物流・宅配システムを救え - 今、EC業界としてやるべきこと

 

ECの発展を支えてきた、世界に誇る日本の繊細かつ高度な物流システムが疲弊している。今年の3月7日の日経の報道に端を発した、いわゆる「宅配クライシス」は多方面へ影響を及ぼし、連日メディアを様々な関連話題で賑わせている。日本の物流・EC業界は一体となってこの問題をどう解決していくのか。今回はこの問題について考えていく。

 

 

そもそも送料は無料ではないという事実

 

Amazonが5年以上もの間、日本市場で行ってきた「送料無料」というサービス。このアドバンテージによって楽天一強だった国内のモールの勢力図は徐々に塗り変わってきた。その影響で送料が発生する(Amazon以外の)店舗での購入が徐々に消費者に敬遠され、他の店舗でも送料を無料化、もしくは下げる努力を強いられることになった。

しかし考えてみたい、そもそもモノを運ぶという行為は本質的には決して無料ではない。商品を梱包するところからECにおける物流の起点と考えるならば、梱包・ピッキング・出荷・運搬・配達、そして再配達と、その各業務において、多くの人とシステムが関わって成り立っている。もちろんそれらに携わる企業の努力によってある程度効率化が図られてきている。しかし繰り返すが、これらのモノを運ぶという行為は本質的には決して無料にはならない。

 

 

送料は誰かが負担している

 

そう考えると当然の話ではあるが、Amazonなどの“送料無料”というサービスは、結局のところ誰かが送料を負担しているのだ。もちろんAmazonなどのECプラットフォーマーやEC事業者も一部負担しているのだが、そのプラットフォーマーが巨大であればあるほど交渉力が生じるため、ヤマトなどの宅配事業者が負担することになる。そのため実はAmazonの送料無料というサービスは、宅配事業者にとって諸刃の剣となっている。2013年までAmazonの物流を担当していたのは佐川急便だった。しかし今回のヤマトと似たような問題が表面化してきたため、佐川急便は苦渋の決断としてAmazonの物流から撤退したという経緯がある。それを機に、佐川の国内での宅配便のシェアは減り続け、ヤマトに40%以上差を付けられている(国土交通省調べ)。まさに宅配事業者にとってAmazonとは甘い蜜には毒がある、という存在となっている。

また、送料だけでなく、物流会社を苦しめている問題の中でも最も大きなものとして再配達問題がある。国土交通省の報告書によると、全体の2割の荷物が再配達となっており、再配達にかかる時間は年間約1.8億時間で、年約9万人分の労働力に相当することから、大きな社会的損失が発生していることが判明している。

 

<参考>

ECサイト運営を支える配送事業者 - 佐川急便・ヤマト運輸・日本郵便の価格とサービスレベルの狭間での奮闘

再配達に関わる手間とコストをどこまで減らせるか - EC・フリマ事業者とコンビニと宅配事業者の三位一体の取り組み

 

 

便利なサービスを提供して差別化を図ろうとするプラットフォーマーと甘える消費者

 

Amazonの送料無料の影響か、多くの消費者はいつの間にかオンラインで購入した商品は無料で運ばれてくるもの、という少し傲慢とも思える感覚に慣れてしまっていたのも事実だろう。さらに無料だからとそれほど緊急性が高くなくても即日や翌日配達を希望するケースもあるだろう。そしてそれにもかかわらず不在となってしまったケース、皆さんも何回か経験があるのではないだろうか。

確かに即日配達などの物流の高速化はイノベーションであるし、それを利用する権利のある消費者(Amazonプライム会員など)がそれを選択するのは自由だ。しかし配達指定日を入れないケースでも入れたケースでも再配達前提での配送を依頼することはあまり良い傾向とはいえないのは間違いない。

サービス自体が消費者を甘やかしているともいえるが、そもそも送料無料・即日配達・不在再配達も全て無料という現状ではECの物流・宅配システムが疲弊しパンク寸前なのだ。便利なサービスを提供して差別化を図ろうとするECプラットフォーマーが送料を無料にし、その甘い蜜を宅配事業者は受け入れ、消費者は必要も無いのに即日配達を依頼し再配達に何の抵抗もなくなり、結果的に宅配事業者が悲鳴を上げるというサイクルで今回の問題が発生しているのだ。

 

 

EC業界としての取り組み

 

EC業界としてこのような現状に対してどのようなことができるのだろうか。もちろん各プレイヤーも手をこまねいているだけではなく、様々な改善策が検討されている。

 

ドローンなど、トラック以外の代替輸送手段

最もキャッチーなイノベーションとして考えられているのはドローンだろう。Amazonを中心の英国で既に実証実験が開始されている。もはや手の届くところにこのような未来が来ていると感じる部分もあるかもしれない。しかし、実際にはまだまだ技術的、法律的にも乗り越えるべき課題が多く、数年で実用化されるようなレベルにはないだろう。

また、国内に目を移すと佐川急便が主要幹線区間をトラックから鉄道に部分的に輸送を切り替えるなどの動きも見せてきている。

 

<参考>

【米国】ドローン配送サービス「Amazon Prime Air」、イギリスで実試験スタート

佐川急便、宅配荷物の輸送に旅客鉄道を利用してトラックの運転時間を削減

 

 

見直される宅配ロッカー

現実的なサービスとして注目されるものは、やはりコンビニ受取や宅配ボックスと言った再配達を可能な限り減らすために目に見える貢献をするサービスだろう。非常に地味だが、一番コストのかかるラスト1マイルの負担を軽減する効果は計り知れない。パナソニックなどの大手メーカーから日本郵便などの宅配事業者まで幅広い事業者が取り組みを進めている。

<参考>

日本郵便、ファミマに宅配ロッカー「はこぽす」を設置

戸建住宅用「宅配ボックス」で再配達率が49%から8%まで削減 ー パナソニックの実証実験ボックス

 

 

再配達を減らす取り組み

しかしこのような取り組みも消費者に選ばれなければ意味がない。実際宅配ロッカーやコンビニ受取は数年前から存在しているがそれほど普及していない。そのような中でプラットフォーマーとして楽天も積極的に対策を行う姿勢を見せている。再配達を行わないで受け取った場合にポイントを付与するというものだ。このような動きをプラットフォーマーが見せていくことは非常に重要なことだ。また環境省もプロジェクトを発足させるなど、再配達を減らす取り組みがここに来て一気に活性化してきている。

<参考>

楽天、再配達削減に向けて日本郵便と連携強化 ー 楽天ポイントの付与も

宅配ロッカーの利用者にポイント付与、日本郵便が宅配便の再配達削減対策

「宅配便を1回で受け取ろう」。環境省が再配達削減プロジェクトを発足

官民共同で再配達防止を! 103の企業・団体でプロジェクトがスタート

 

 

配達状況確認・調整アプリ

一方で、複数の宅配事業者の荷物の配達状況を一括で管理し、調整を行うことが出来るアプリ「ウケトル」も徐々に浸透してきている。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便という3大宅配事業者との連携はもちろん、楽天、Amazonとのアカウント連携も行っており、このようなアプリを消費者は積極的に導入していくべきだろう。

<参考>

再配達を1割削減した「ウケトル」はパンク寸前の宅配業界を救うか

 

 

今、EC業界としてやるべきこと

 

市場環境に目を移すと2016年には過去最高となる38億6930万個の荷物が宅配便で送られるなど、ECの浸透と共に荷物は増え続けている。また、その荷物を運ぶドライバーの人手不足と高齢化も深刻な様相を呈しており、宅配事業者を苦しめる原因となってきている。

 

<参考>

39億個に迫った2016年の宅配便取扱個数……止まらない荷受量と配送業者の負担増

「運転手が足りない」が約6割! 宅配便値上げの背景に深刻な人手不足と高齢化

 

 

さらにこの4月に入り、ヤマトが配送料の全面値上げや即日配達からの撤退など、立て続けに社内の労働環境の改善の取り組みを表明しており、今後のAmazonとの関係性に暗雲が立ち込めるなど、先行きが不透明だ。

このような状況の中、EC業界全体としてどのような取り組みができるのだろうか。未来があり、可能性のあるECというサービスを永続的に発展させていくためにも業界全体での取り組みが必要になってきているのは間違いない。

前述したようにドローンのようなイノベーションは今日明日にやってくるものではないだろう。それまで、消費者を含めた各ステークホルダーが地道な協力を積み重ねて対応していくしかないのではないだろうか。細かい改善点を挙げるとキリがない。例えば購入に際して必ず配達指定日を入れるようにすることや、複数の近しい日時での注文をまとめて配送できるようにするなども効果があるだろう。また、Amazonなどに代表されるが、倉庫業務などを効率化するために、荷物が不必要に大きくなっている傾向がある。これはトータルで見るとドライバーなどの大きな負担になってくる。また、再配達について受け取り側に一定のペナルティを課すなど、仕組みの整備も進める必要がありそうだ。

今後どのようにこの問題を解決していくことができるのか、日本のEC業界の底力が試されているのではないだろうか。我々はその底力を信じると共に、まずはこれからオンラインで注文する商品についてしっかり再配達が起こらないように受け取っていきたい。