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進化するハンドメイドマーケットEC市場 - Etsy、minneに続き市場を牽引するサービスは現れるのか

進化するハンドメイドマーケットEC市場 - Etsy、minneに続き市場を牽引するサービスは現れるのか

トレンド
2015/03/27

進化するハンドメイドマーケットEC市場 - Etsy、minneに続き市場を牽引するサービスは現れるのか

 

2013年頃から脚光を浴び、今やCtoC ECのひとつとして欠かせないものとなっているハンドメイドマーケットEC。2021年に入ってもその勢いは衰えず進化してきているようだ。国内最大級のハンドメイドマーケットECサービスであるminneは「ものづくりへのこだわり」を前提に、2019年7月から法人出品も可能になった。また、Creemaは2020年11月に東証マザーズに上場するなど、更なる成長を遂げようとしている。今回はminneやCreemaを含め、それに続く存在になるであろう注目のサービスを4つピックアップして紹介し、今後のハンドメイドマーケットECサービスの展望を考えていく。

 

<参考>

ひしめき合うハンドメイドマーケットEC - 気軽にネットで開店する時代はやってきたのか。Etsy、Creemaに見る未来

minne、CtoCハンドメイドマーケットから「ものづくりの総合プラットフォーム」へ

 

 

minne

 

国内最多となる77万人以上の作家(クリエイター)とブランドが登録し、1,000万点以上もの作品が出品されている「minne(ミンネ)」。

 

 

2012年1月にサービスを開始したminneは数あるマーケットプレイスの中でも後発だったが、2014年3月に登録作品数No.1を達成。同年9月に作家数No.1も達成し、国内最大のハンドメイドマーケットECへと成長した。minneでは“気軽にハンドメイド製品に触れて欲しい”という想いから、2012年10月からiPhoneアプリを、翌2013年11月からAndroidアプリの提供を開始。広告の強化やInstagramをはじめとするSNSでの露出拡大によって、2014年12月から急速な伸びを見せ、ついにスマートフォンアプリが累計1,000万ダウンロードを突破した(2021年6月現在)。2015年2月には女優の水川あさみをイメージキャラクターに起用したテレビCMを放映し、PCがなくても手軽に利用できる点をアピール。またminneでは、ワークショップイベントや実店舗の展開、全国に手芸専門店を展開する藤久と共同でハンドメイド大賞を実施するなど、オンライン・オフライン問わず作り手と買い手の双方が楽しめる場を提供している。

作品を販売するには会員登録が必要となるが、入会費や月会費は一切かからず、作品が売れた時点で手数料として販売価格の10.56%(税込)が発生する仕組みだ。また、minneは2019年7月の利用規約改定で、CtoCに限らず「ものづくりへのこだわり」を持つ法人の出品が可能になったため、より窓口が広がり新規ユーザーの増加も期待できるようになった。競合他社をどこまで引き離せるのか、今後の戦略に注目したい。

 

 

Creema

 

Creema(クリーマ)」は、株式会社クリーマが運営するハンドメイドマーケットプレイスだ。

 

 

Creemaは2010年に開始されたサービスで、19万人のクリエイターによって1,000万点のオリジナル作品が出品されている(2021年6月現在)。日本だけでなく中国語圏でもサービスを展開しており、クラフトイベントのハンドメイドインジャパンフェス、クラウドファンディングのCreema SPRINGSなど、クリエイターを支援する事業に多方面から取り組んでいる。中でも特徴的なサービスがセレクトショップのCreema Storeで、新宿や札幌などにある実店舗に出展することが可能だ。Creema Storeへの出展条件は、クリエイター登録をしており、20種類以上の作品を販売可能でなおかつ20万円以上の納品が可能なユーザーと、CtoCであることを踏まえるとハードルは少々高めである。しかしながら、ECの延長で実店舗に作品を並べることができる点は、多くのクリエイターにとって魅力的といえるだろう。

出店料・出品料ともに無料で、作品が売れた際に成約手数料と決済手数料が発生する仕組みだ。手数料は作品カテゴリや国によって異なり、作品や素材の場合は成約手数料が商品金額の10%(税別)、食品の場合は成約手数料が決済総額の14%(税別)となっている。

 

 

iichi

 

iichi(いいち)」は、同名の企業iichi株式会社が運営するハンドメイドマーケットプレイスだ。

 

 

iichiは2011年7月にサービスを開始し、「日本の手仕事マーケットプレイス」というテーマの通り、日本らしい雰囲気や職人仕事をイメージさせるサービスである。出品する作品に和洋などの制限はないが、minneやCreemaとは少々異なるコンセプトを持ち、個人もしくは小規模なクリエイターを対象にしているのが特徴だ。アクセサリー、イヤリング、雑貨、器、アートなど多数の作品カテゴリがあり、3万人以上の作家が登録している(2021年6月現在)。また、開始時期は不明だが、小規模ブランドのeコマース・DtoC支援サービスが予定されている。

作家登録をすることで、作品の販売やイベント告知など、iichiの各種サービスが利用可能になる。月額利用料は無料だが作品が売れた際に発生する成約手数料が20%となっており、他サービスと比較すると割高である。店舗やギャラリーで作品の代理販売をすることも可能ではあるが、こちらは招待制のため詳細は不明。クオリティが保たれるというメリットはあるものの、最初からセレクトショップのような運営をすることはできないようだ。

 

 

Pinkoi

 

台湾発、アジア最大級のハンドメイドマーケットプレイス「Pinkoi(ピンコイ)」。

 

 

2011年にサービスを開始したPinkoiは、ローンチ後たった1年でアメリカの巨大ハンドメイドマーケットEC「Etsy」の初年度売上高の2倍となる約3,400万円を記録し、注目を集めた。現在は台湾、香港、中国、日本、タイの5大市場をメインに各地域で市場を拡大しており、93ヵ国に発送可能となっている。190万点以上のアイテムがサイトに登録され、アジアを拠点として会員数は400万人以上、ショップ数は25,000以上となっている。扱っている商品はアクセサリー、窟、ファッション用品、インテリアなど多岐にわたり、ユーザーは20~40代がメインだ。Etsyなどとの違いは、ハンドメイド作品を売ることだけを主眼に置かず、デザインそのものの価値を重視し、デザインされたものであれば何でも売っていくという点だ。また逆にオープンプラットフォームとせずに、事前に運営側が内容を確認し商品の質を担保することで、デザイン感度の高いユーザーの獲得を目指している。

料金プランは基本プランとプレミアムプランの2種類があり、基本プランではショップ開設保証金として3,000香港ドルが必要となる。この開設保証金は、契約解除の際に払い戻される。また、作品が売れた際に成約手数料として商品価格+送料の15%に15香港ドル(為替レートに合わせて変動)を加算した金額が差し引かれる仕組みだ。

しかし、日本でのサービスは2014年末から継続しているものの、初期費用がかかることもあり競合と比較して伸び悩んでいるのが現状だ。サイトは日本語対応、日本円表示も行っているが、台湾のアーティストやデザイナーによる出品と現地での販売が多く、翻訳はGoogle自動翻訳システムが利用されている。それによりレビューの内容などに若干機械的な印象があり、今後中国語圏以外のユーザーを獲得するにはこの辺りの改善が必要になってくるだろう。

 

 

Etsy、minneに続き市場を牽引するサービスは現れるのか

 

世界的なハンドメイドマーケットECであるEtsyは2005年からサービスを開始し、日本語版も公開するなど、既に世界のほほ全ての国でサービスを展開。470万店舗、9,000万以上の商品点数、9,000万人以上のユーザーと、どれも世界最大のマーケットとして圧倒的な数字を誇る。

 

 

国内で見てみると、これまで市場を牽引してきたCreemaは、数字に加えサービスの完成度や商品の充実度、百貨店などでの積極的な露出施策においても、後発のminneに逆転される形となった。以前minneに出品されていた商品は手作り感のあるものが多かったが、現在は全体的に商品のクオリティが上がり、ユーザー数の大幅な増加から賑わいも感じられ、ハンドメイドマーケットECとしてかなり成熟している印象だ。Creemaには実店舗に出展できるというメリットがあるものの、応募条件を満たすハードルが高いので、その恩恵を得られるユーザーが限られてしまっているのも原因のひとつかもしれない。

iichiはコンセプトが明確なためか、工芸品やアートのような作品もあり全体的にクオリティが高い印象だ。しかしながら、成約手数料が高額という点は、個人や小規模なクリエイターにとって無視できないハードルになりやすい。Pinkoiは中国語をGoogle自動翻訳にかけた文章が多く、先入観とはいえ商品のクオリティや信頼感、購入した際に安心な取引を行えるかの不安が頭をもたげてくる。しかし、日本以外のクリエイターが制作した商品に気軽に触れられることは非常に魅力的だ。出品者から見ると、ハンドメイドマーケットECに出品する際に考慮する点は、売れやすさと共に、ブランディングや露出効果、そして副次的な効果として商品に関する新たなインスピレーションを得られることが重要だろう。

 

 

ハンドメイドマーケットEC市場には、米国発のFabという失敗事例が存在することも覚えておくべきだろう。目先の商品点数やユーザー数だけでなく、長い視点で消費者・出品者のメリットをバランスよく追求し、ソーシャル要素などを上手に掛け合わせていき、新たな世界観を紡ぎだしていくことができれば、後発でありながらCreemaを超えたminneのようなサービスがまた現れるのではないだろうか。これからもハンドメイドマーケットECというオリジナリティ溢れる市場に注目していきたい。