国内・海外の当日配達・即時配達(クイックコマース)サービスのトレンドと今後
オンラインショッピングがユーザーの生活に浸透する中で、配達方法の多様化が進んでいる。コロナ禍以降に急速に普及した非接触配達のトレンドである置き配や、スピーディに顧客に商品を届ける「当日配達」や数十分で配達する「即時配達(クイックコマース)」を実践する事業者も増えてきた。そこで今回は、国内や海外における、当日配達・即時配達(クイックコマース)の23事例からトレンドを読み解き、今後の展開を考えていく。
※アカウント作成する方は、作成後再度このページへアクセスしてダウンロードしてください。
※資料ダウンロードURLをメールにて送信するため、モバイル端末からでもダウンロード出来ます。
当日配達・即日配達・即時配達(クイックコマース)サービスとは
まずはじめに各キーワードについて簡単に整理していこう。
当日配達・即日配達・Same Day Deliveryと呼ばれるサービスは、注文したその日に配達が完了するサービスのことを指している。一方、非常に似ているが、即時配達・クイックコマースと呼ばれるサービスは、注文した後、数時間以内に配達が完了するサービスのことを指している。その配達時間によっては、当日配達と大差ないケースもあるため、その境界線は曖昧ではあるが、上記のように使い分けられることが一般的だ。
当日配達・即時配達(クイックコマース)サービスの市場規模
市場規模について、公表されているデータをいくつか見ていこう。
Straits researchによると、2024年の全世界における当日配達(Same Day Delivery)の市場規模は108億USドルに及び、2033年には6倍の614億USドルに拡大すると予測されている。
GIIによると、全世界における即日配達の市場規模は2032年に563億2,000万USドル規模に到達すると予測されている。
statistaによると、米国のクイックコマースの市場規模は2025年に626億3,000USドル、2030年までに867億USドルに達すると予測されている。
上述したキーワードの意味するとことで多少対象の相違などはありそうではあるが、今後もかなりの勢いで右肩上がりに市場規模が増えていくことは間違いなさそうな状況となっている。
このように、今後も爆発的な伸びが予想されている当日配達市場だが、最新の国内・海外のトレンドはどのようになっているのだろうか。中国、欧米、日本の事例を見ていこう。
中国の当日配達・即時配達事例
中国では、2013年頃から当日配達サービスが一気に拡大し、JD.com等の大手ECサイトもサービスを開始している。中国の当日配達における特徴は、他国では類を見ない多種多様な内容と言える。BtoC向けの当日配達だけでなく、CtoC向けの当日配達や、中には代わりに行列に並ぶといった風変わりなサービスも提供している。それでは、中国の主要サービスや特徴的なサービスを見ていこう。
JD.com「极速达(Jisuda)」:2時間以内にお届け
JD.comは、2013年から极速达という当日配達サービスを提供している。JD.comは楽天やAmazonのような巨大モールで、中国国内No.2のシェアを誇る。家電を中心に、衣類や家具まで、非常に膨大かつ高品質な品揃えで有名である。そんなJD.comが展開する极速达のサービスは、北京、上海、広州、成都等の一部の大都市を配達範囲としており、配送料は商品の大きさによって異なる(一部無料)。注文後、2時間以内に商品を届けてくれて、受付時間は8:00〜20:00となっている。
美团外卖(Meituan Waimai):3km以内であれば30分以内にお届け
2013年に創立された美团外卖は、2020年に中国国内初の非接触型配達サービスを開始した。食品・飲料、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、果物・野菜といった生鮮食品のほか、花や医薬品など多彩なカテゴリの商品を扱い、配達範囲が3km以内の場合、30分以内に配達してくれる。注文を行うと、配達スタッフの位置がリアルタイムで地図上に反映され、配達時間はもちろん、スタッフの体温や配達ボックスの消毒状況まで表示されるという徹底ぶりだ。非接触型の配達方法は、購入者が備考欄に置き場所を指定する方法と、スタッフと直接連絡して配達方法を伝える2つの方法があり、配達が完了するとアプリ内のメッセージや電話で通知が来る仕組みとなっている。記事によるとドローン配送にも積極的に取り組んでおり、すでに複数の配送ルートを開設済みで、通常配送と同じ料金で利用できるという。
达达快送(Dada Kuaisong):3km以内であれば1時間以内にお届け
达达快送は2014年に上海で創業され、2020年にアメリカのNASDAQに上場した配送サービスを提供している会社だ。ラストワンマイルを、クラウドソーシング的に配達してくれる配達者と個人をマッチングするサービスだ。現在は、中国国内2,700以上の都市でサービスを展開しており、日々の注文件数は1,000万件を超え、食品をはじめとしたあらゆる商品の当日配達が可能だ。距離ごとにサービスが異なり、配達に有する時間も異なるが、例えば自宅と店舗が3km以内であれば1時間以内に配達が可能。特徴としては、通常の配達だけでなく、買い物代行や代わりに行列に並ぶサービスなど、多様なサービス展開が挙げられる。
闪送(Shansong):1時間以内にお届け
闪送は2014年に創業した配達サービスで、中国国内290都市を対象に、1時間以内の配達を行っている。前述の达达快送と同様のサービス構成となるが、闪送もサービス内容がバラエティに富み、通常の日用品等の配達に加え、代わりに行列に並ぶサービス、薬局で薬を受け取るサービス、CtoCの配送サービスなどが用意されている。CtoC向けのサービスは、日本のバイク便のようなイメージといって良いだろう。CtoCは、10分以内に指定場所で集荷したのち、1時間以内に配達を行う。家の鍵やパソコン等の緊急性のあるものから、書類等の機密性の高いものまで対応可能だ。
Taobao(淘宝)「闪购(Shangou)」:3km以内であれば30分以内にお届け
中国最大手のECモールを提供するアリババグループは、2020年6月より淘宝(タオバオ)アプリ内において小时达という1時間以内に配達するサービスを開始した。現在ではアップグレードにより「闪购」という名称で提供されており、北京をはじめとする主要50都市以上で、最短30分で配達が完了するスピード重視のサービスを展開している。アリババが2018年に買収した中国大手のフードデリバリー「餓了麼」の供給ネットワークやフルフィルメントと連携し、利便性を高めている。
欧米の当日配達・即時配達事例
欧米は、中国よりも1~2年前の2012年頃から当日配達サービスが登場していた。例えば、Instacartは2012年よりアメリカで食料品の当日配達を開始。現在はカナダでも展開しており、10億点以上という非常に豊富な品揃えが特徴である。また、欧州アパレルのZalandoも、2015年からドイツ国内の一部都市を対象に当日配達を開始。Zalando Plus会員であれば、無料で利用可能だ。それ以外にも、多くの企業で行われている当日配達であるが、欧米の主要サービスや特徴的なサービスを見ていこう。
Amazon:当日中にお届け
Amazonは、2009年からニューヨーク、ボストン等の7大都市で当日配達を開始した。その後、シカゴ等をはじめとする60以上の主要都市へサービスを拡大している。日本と異なり欧米では当日配達に力を入れており、主要都市だけでなく農村部の物流にも40億ドル以上を投資しているという。また、限定的ではあるもののイタリア、イギリス、米国の一部の都市では2024年に「Prime Air」というドローン配送サービスを開始しており、重量が5ポンド(約2.3kg)までの商品であれば1時間以内に配達することも可能になっている。
Everli(イタリア):当日中にお届け
2019年、オンライン食料品の配達サービスであるEverli(旧Supermercato24)は、スーパーマーケットチェーンのLidlと提携してインフラを強化し、イタリア国内の当日配達サービスを開始した。サービス開始時の対象エリアはミラノやローマ等の3都市のみであったが、現在では50以上の都市でLidl、Coop、Conad、Carrefourなどのスーパーマーケットを利用可能だ。商品の注文だけでなく、在庫確認や注文の追跡なども専用アプリの「Everli Shopper」上で行える。
Morrisons supermarket(イギリス):1時間以内にお届け
Morrisons supermarketは、2019年からイギリス全土を対象に、低価格の当日配達サービス「iDeliverr」を開始した。食料品をはじめ、各スーパーで取り扱う日用品の配達を行う。iDeliverrの特徴は、アプリ上であらゆるスーパーの取扱商品を見ることができる点だ。希望するスーパー及び商品を指定して注文すると、およそ1時間で配達される。配達を担うのは地元のドライバーで、注文時にドライバーと注文金額や詳細な注文についてリアルタイムでやり取りを行うこともできる。
Publix super markets:11:00までの注文で当日中にお届け
Publix super marketsは、2020年に医薬品配達を行うScriptDropと提携し、薬の当日配達を始めた。一般的な処方箋薬や市販薬、健康サプリ等まで幅広い医薬品が配送対象となっており、対象地域は各店舗から半径5マイル以内。配送料として5ドルが必要だが、11:00までの注文で当日中に配達される。なおPublixは、コロナ終息後も本サービスを継続すると述べている。
Walgreens(アメリカ):最短1時間でお届け
全米で8,600店舗以上を展開するアメリカの薬局チェーンWalgreensは、2021年から医薬品の非接触型当日配達を米国全土を対象に開始した。大型商品アルコール飲料などを除く店舗のほとんどの商品が対象で、WalgreensのWebサイトやアプリ経由で注文すると、最短1時間で届けてくれる。それだけでなく、Walgreensは店舗やドライブスルー経由でわずか30分で医薬品を提供するサービスも開始している。
Doordash(アメリカ):35分前後でお届け
アメリカの大手食品配達サービスであるDoordashは、2022年2月から花の当日配達を開始した。全米で9,500を超える花屋と提携することで、提携先の花屋がある地域内であれば35分前後で受け取ることができる。花の種類やブーケのタイプも自由に選べるので、イベント時にも重宝する画期的なサービスだ。
日本国内の当日配達・即時配達事例
海外では当日配達は依然として勢いがあり、サービス数も増えているが、国内では大手ECサイトが展開する当日配達サービスは近年減速傾向となっている。一方で、海外同様、コロナ禍を経て新たに当日配達サービスを立ち上げた企業もあった。ここからは、国内の当日配達サービス事例を見ていこう。
7NOW(セブンナウ):最短20分でお届け
大手コンビニエンスストアのセブン&アイ・ホールディングスは、2022年にクイックコマースサービス「7NOW」を開始した。全国に多数存在する実店舗を配送拠点にしており、最短20分で届けることが可能だ。専用アプリから利用でき、おにぎりや揚げ物、冷凍食品などセブンイレブンで販売している数々の商品を1,000円以上から購入できる。雨の日や重量があるものを購入するときなどの利用を想定しており、今後もサービスの強化を図るという。
カクヤスEXPRESS:最短15分でお届け
酒類販売チェーンのカクヤスグループは、2022年にスピード配達に特化したサービス「カクヤスEXPRESS」を開始した。酒類以外の日用品なども扱っており、ちょっとしたスーパーのような感覚で利用できる。従来のカクヤスのECサイトでも最短60分で配達可能だが、カクヤスEXPRESSはフードデリバリーなど外部の物流ネットワークと連携している点で違いがある。出前館やWoltといったフードデリバリーにただ出店するだけでなく、専用の宅配用倉庫を併設し、カクヤスEXPRESSを事業として立ち上げていることも特徴だ。
Yahoo!ショッピング:当日中にお届け
日本国内のシェア3位を誇る大手通販サイトYahoo!ショッピングは、国内の他ECに先駆け、注文商品を当日に届ける「きょうつく」を2012年より開始した。当日配達の範囲は各モールの出店者に委ねられており、各ストアが定めた利用条件時間内に注文が完了し、かつ指定の配達エリアであれば、注文商品を当日に届けてくれる。なお、配達時間の指定はできない。対象商品は現状ではフラワーギフトが大半を占めている。
Amazon エクスプレスマート:最短6時間でお届け
Amazonは、関東近郊の一部対象エリアにおいて最短6時間で配達する「Amazon エクスプレスマート」の提供を2025年1月より開始した。WebサイトまたはAmazonショッピングアプリから利用でき、現時点で対象商品数は数万点となっている。対象エリアは東京18区、埼玉4区・8市、千葉1市で、プライム会員であれば送料200円が無料、非会員の場合は送料610円で利用できる。コストの高さと稼働率の低さから2021年で終了した地域限定のスピード配達サービス「Prime Now」に代わるものといえるだろう。なお、現在でもAmazon内の「ライフ」と「成城石井」のストアについては最短2時間で配送される。
OniGO:最短40分でお届け
2021年に創業された「鬼速で届く宅配スーパー」OniGOは、即配オプションを利用すれば注文から最短40分、通常配送でも最短70分で商品が届く画期的なサービスだ。首都圏を中心に関西や中部地方も含む11の都道府県で利用でき、1時間単位での時間指定も可能となっている。生鮮食品や惣菜、日用品など現在約9,000品目を取り扱っており、2024年12月からは主要約2,000品目についてスーパー店頭とほぼ同じ価格で購入できるようになった。
ZOZOTOWN(サービス終了):当日中にお届け
ZOZOTOWNは、2014年から有料の当日配達サービスを展開していた。0:00〜5:59までの注文で、当日の18:00までに商品が届くというものだが、物流会社の労働環境への配慮から停止となった。現在はサービス内容が変更され、最短で翌日に到着する有料サービスとなっている。
beepDelivery(サービス終了):最短12分でお届け
beepDeliveryは、2022年に提供されていたEC事業者向けの当日配達サービス。同社は約7万台の配送ネットワークを所有しており、予算や地域に合わせて最適な配送会社を自動でマッチングすることで、東京23区と大阪市でEC事業者に代わり最短12分での商品配達を可能にしていた。しかし、初期費用が11万円、さらに月額33,000円かかるため、コスト的には注意が必要であった。当時はバイク便など複数の事業者と提携していたが、現在ではサービスを終了している。
※ログインして頂くと当記事でまとめたデータ(エクセル版)をダウンロードすることが出来ます。
※アカウント作成する方は、作成後再度このページへアクセスしてダウンロードしてください。
※資料ダウンロードURLをメールにて送信するため、モバイル端末からでもダウンロード出来ます。
当日配達・即時配達(クイックコマース)サービスの今後
当日配達・即時配達サービスは世界各国で既に10年以上の歴史があり、多くの消費者が1回は体験をしたことがあるものになってきている。消費者が自宅にいたままで手軽に、そして思ったよりも早く商品が届く体験をしたことで、世界的に見ても当日配達・即時配達のニーズは高まっていたが、ここ数年、特に先進国では事業者側も消費者側もそこまでの即時性が必要なケースはそれほど多くないという事実にも気付き始めたのかサービスの見直しが進んでいるケースも目立つ。しかし、インドや中東などの発展に勢いのある国や、中国のように国民性とサービス内容がマッチする国などでは、多くのサービスが伸びてきているようだ。
一方国内では、ラストワンマイルを担う宅配事業者の負担などから全面的な展開にはブレーキがかかっており、終了・撤退するサービスも散見された。しかし、配達にかかる時間や料金を見直した後継サービス、多数の実店舗を活用してスピード配達を実現したサービス、フードデリバリーの物流システムと連携して課題解決を試みているサービスも登場している。海外ではドローン配送や商品をピックアップするショッパーの活用などが比較的多くみられたが、国内ではまた少し異なる流れがあるように思う。
ここで挙げた以外の商材についても検討がなされ、様々な方法で展開されていく可能性もありそうだ。今後もクイックコマースの拡大に期待していきたい。