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Amazon vs 検索エンジン、どちらの対策を重点的に行うべきか - 「都市伝説」に対する検索エンジンサイドの調査結果

Amazon vs 検索エンジン、どちらの対策を重点的に行うべきか - 「都市伝説」に対する検索エンジンサイドの調査結果

マーケティング
2017/09/28

小売業界のマーケティング担当者は、時間と労力をどこに費やすべきだろうか

 

検索エンジン対策か、もしくは、Amazon対策なのか。Microsoft社のコラムニストPurna Virji氏が発表した買い物客の行動分析データとその調査結果は、意外なものであった。

 

どこに拠点を置いているか、もしくはどの市場をターゲットとしているかにかかわらず、世界中の小売業者は消費者の“検索エンジン”と“Amazon”の使い分けについて、以下の3つのような疑問を持っている。

  • オンラインユーザーはどのサイトを利用して商品を探すのか。
  • ユーザーの行動は、検索エンジンとAmazonでどのように異なるのか。
  • BingとAmazonのチャネルが、相互に利益をもたらすことはあり得るのか。

これらの答えは、意外なものだろう。

我々マーケティング担当者にとって消費者の意思決定の過程は、研究、比較、意図、取引などの要素が絡み合い、非常に複雑に見える。しかし消費者の視点から見ると、意思決定過程は単純なものである。

消費者の立場になると、無意識のうちに下記の特定の行動パターンに従う。

  • どのような商品が必要なのか、または、商品を選択する前に詳しい情報を知りたい場合は当然、検索エンジンを使用する。
  • 購入したい商品が明確な場合、あらかじめ決まっているそれぞれのユーザーのお気に入りのサイトでその商品を探し始めることが多い。

多くのユーザーはお気に入りにAmazonを登録しており、Amazonから商品を探し始める場合が多い。しかし、ユーザーはショッピング関連の検索の全てをAmazonで行うのか。また、最終的に購入を決定するサイトもAmazonなのだろうか。

それらの疑問に答えるため、Bingのサーチマーケットインテリジェンスチームは調査を行なった。

 

 

オンラインユーザーは、商品をどのサイトで探すのか

 

この調査の目的は、ユーザーがどのようにオンラインショッピングを行うかを観察し、ユーザーの意思決定過程で検索エンジンとAmazonがどのように使われているかを知ることだ。

 

調査方法

  • ウェブブラウザ上で商品関連検索を行った、もしくは、Amazonを訪れた900万人の米国内ユーザーのサンプルを使用。
  • AmazonおよびBingでのユーザーアクティビティを追跡し、検索内容に基づいてユーザーをそれぞれの小売カテゴリに分類。
  • 検索エンジンに戻ってきたユーザーグループの行動パターンを解明するために、Bingで検索を行なった後、Amazonに移動し検索を行ったユーザーの検索過程、また反対に、Amazonから検索エンジンへ移動したユーザーの検索過程を追跡。
  • モバイル端末とアプリの使用状況を反映するため、comScore(インターネット視聴率の測定及びデジタル市場分析を行う会社)のデータを用いて、分析結果を尺度解析。

 

いまや、半分以上の商品検索がAmazonで行われているという神話について

この神話は何度も繰り返され、それにより、事実として受け取られるようになった。おそらくこれは、ネット通販利用者の56%が、Amazonからショッピングを始めるとの(グローバルソフトウェア会社Kenshoo社の)調査結果から生まれた神話だろう。問題は商品検索全体の55%がAmazonで行われると誤解されていることであり、それは事実ではない。

 

<参考>

【米国】Googleに替わり、Amazonが検索エンジンになっている

 

調査データというものは非常に重要であるものの、必ずしも全てを解明するものではない、ということを忘れてはならない。人間の意思決定は、多くの場合無意識の先入観の影響を受け、また極めて一般化されているため、人間の行動について100%の正確さで論じることはできないのだ。

次の点を考える必要がある。Amazonから商品検索を開始したことがあれば、あらゆる商品検索を常にAmazonから始めるようになるのか。もしくはその後、Amazon以外のサイトでは一切検索しないということになるのか。

概念的にそうではないと分かっているが、質問の答えを証明するために行動データを用いた調査を行なった。

 

Amazon検索はほんの僅か、55%という数字からはかけはなれている

ユーザーが下流の購買ファネル(注目をした中の一部が関心を持ち、関心を持った中の一部が欲求を持つというように上流から下流にかけて一般的に対象は減ってくるという、消費者の購入までの意識の遷移を図化したもの。)の検索を中心とした“特定のタイプの検索を行う場合”にAmazonを使用する、という現実がある。 しかしこれは商品検索全体の中ではほんのわずかに過ぎず、よく引用される約55%という数字からはかけ離れている。

たとえば、「引き出物食器の最高級ブランド」、「片頭痛を治す方法」、「プロポリスと蜂花粉のどちらがいいか」など検索クエリ(ユーザーが検索するときに、入力する言葉やフレーズ)で検索する場合、人は本能的に検索エンジンとAmazonのどちらを使用するだろうか?

おそらく答えは検索エンジンだろう。現時点では、Amazonの検索機能はそれらの検索クエリに対応するべく構築されていない。

一方検索エンジンは、購買ファネルの全範囲にまたがる検索クエリに使用され、検索ロジックが商品検索に多大な影響を及ぼしている。

 

実はAmazonで商品検索をしている人は少ない

Bingが収集したデータセットとcomScoreの分析を用いて、何百万人ものユーザーを再調査した結果、ほとんどの商品検索にAmazonは使用されていないことが判明した。一方70%の商品検索は、上位検索エンジンで行われている。

2017年に入って、SEOを中心とした検索マーケティング会社MozRand Fishkin氏によって行われた研究(データ分析会社Jumpshotによるクリックストリームデータの分析)も、同様の結論に達した。Fishkin氏は、注目すべき10のウェブサイトを比較しすべてのサイトの全検索件数を合計し、それをパーセント分布を示すようJumpshot社に依頼した。

そのデータによると、Amazonの検索件数がわずか1.85%であったのに対し、Bing、Yahoo、Googleの検索件数の合計は64.02%となった。

 

マーケティング担当者にとって、この結果は何を意味するのか。

Amazonは依然として成長を続ける強力な小売チャネルであり、マーケティング担当者はもちろんAmazonを軽視してはいけない。検索エンジンは、小売チャネルとして有効な手段であるだけでなく、Amazonの戦略を補完し強化するためにも役立っているからだ。

 

 

ユーザー行動は、検索エンジンとAmazonでどのように異なるのか

 

検索エンジンとAmazonでの“ユーザー行動の違い”を調査したところ、27%のユーザー(米国内で約3,800万人)はBingで検索を行った前後にAmazonを利用していないことが判明した。彼らは、オンラインで商品情報を検索し、実店舗やそのAmazon以外のオンラインチャネルで商品を購入する貴重なユーザーである。さらに興味深いことに、この調査によって検索エンジンとAmazonの両方を使用するユーザーでさえ、各プラットフォームで異なる行動をとることがわかった。

 

調査方法

Bingのみを使用するユーザー

  • Webブラウザログ(米国内のみ)より、2016年11月1〜7日にデータを収集。
  • AmazonおよびBingでのユーザーアクティビティを追跡し、検索クエリに基づいてユーザーを分類。
  • 検索エンジンで、商品関連検索(自動車、銃、スポーツ・レクリエーション、オフィス製品、健康・ウェルネス、美容・香水、衣類・靴、ジュエリー・腕時計、 家具、キッチン、家庭用品などの様々なカテゴリでの検索)を行うユーザーをフィルタリングし、Amazonを訪れていない検索ユーザー数を算出。
  • comScoreの分析に基づいて、総ユーザー数に対するAmazonを使用しなかったユーザー数の割合を算出。
  • より長い期間(5〜2か月間)においても、Bingのみを使用するユーザーの類似した分布が見られることを確認。

 

実はAmazonと検索エンジンの両方を使用していても別の商品を探している

Bingを使用したユーザーの27%は、Amazonを利用しなかったことが判明した。そして、AmazonとBingの両方を使用した73%のユーザーを対象により詳細な調査を行なった結果、非常に興味深い発見があった。

BingとAmazonの両方で商品検索をした73%のユーザーのうちの約80%は、両方のサイトで同じ商品カテゴリでの検索を行っているわけではない。たとえば、Sallyさんが香水を購入したいと思っているとする。検索エンジンで情報を探し、さまざまなサイトを訪れ、最終的には実店舗で香水を購入した可能性がある。そして、同時に、Amazonも利用しているが、そこでは子供の誕生日用のおもちゃといった別の商品を検索している、ということを意味する。

この行動は下図で例を挙げる複数のカテゴリで見ることができる。検索エンジンからAmazonへ、または、Amazonから検索エンジンへ移動して、明らかに同じ商品の検索を続けているケースは存在するが、それは少数派であり、20〜25%のユーザーに過ぎない。

下のグラフは、“Amazonで検索を行っているが、検索エンジンとは異なるカテゴリで商品検索をしているショッピングユーザー”の割合を表している。

「美容・香水」と「おもちゃ」のカテゴリでは、検索エンジンとは異なるカテゴリで検索を行うユーザーの割合がそれぞれ82%と77%となっている。

 

検索エンジンとAmazonで、同じ商品に関する一連の検索をした20〜25%のユーザーについては、何がわかるのか。

買い物客は、購買ファネルの上流から下流までの行動を通して検索エンジンを使用する。たとえば、風邪やインフルエンザの薬を販売している企業のデータをみた場合、その検索パターンは同様に複数のカテゴリにまたがっている。

緑色の棒グラフは、検索エンジンで行われた検索件数を表し、青色の棒グラフは、Amazonでの検索件数を表す。

検索範囲は、「インフルエンザの症状」といった上流の購買ファネルの検索クエリから、「風邪薬」といった下流の購買ファネルの検索クエリにまで及ぶ。手間を省くため、「風邪」とだけ入力するケースに加え、多くのユーザーは「風邪、もしくは咳の薬」を探して検索をしている。

あなたがインフルエンザの症状や喉の対処方法を最後にAmazonで検索したのはいつだろうか。上流の購買ファネルでの検索(「健康・ウェルネス」カテゴリでの「インフルエンザの症状」「喉の痛みの対処法」「風邪の症状」「風邪の治し方」などの検索クエリ)に、Amazonは一切使用されない。しかし検索エンジンは、ユーザーが何を購入するべきか、または、どこで購入するべきかを調べる場合にも役立っている。検索エンジンは非常に多くの場合、最良の商品を選ぶ時や最安値の商品を見つける時など、情報に基づいた意思決定を行う際に役立ち、信頼できるツールとなる。

下記チャートで示すように、「best(最高)」、または、「deal(お買い得)」などの単語を含む検索をする場合は、Amazonよりも検索エンジンを利用するユーザーが著しく多いことがわかる。

 

マーケティング担当者に何ができるか。

上流の購買ファネルの検索クエリを分析することにより、ある商品カテゴリへの明確かつ強い関心がある買い物客や、企業の提供する商品がそのニーズを満たすことが可能な買い物客に対し、検索エンジンを利用して商品を宣伝する絶好の機会を得ることができる。検索エンジンはユーザーの購買過程のリサーチ段階において、最も適切なチャネルである。なぜなら、予備知識を求めているリサーチ段階では、購入したい商品についてより多くの情報を必要としているからである。その結果、主要な検索エンジンで露出されない広告主はユーザーの購買決定過程における重要な機会を見逃す可能性がある。

 

 

どうすれば、検索エンジンを利用し、企業のAmazon対策を補完できるか。

 

最後に、Bingのサーチマーケットインテリジェンスチームは、検索広告が広告接触後のAmazonの買い物客の行動に及ぼす影響を分析した。 結局のところ、コンシューマーエンゲージメントの向上につながらないのであれば、企業はなぜ上流から下流の購買ファネルで使用される検索ワードに投資するのだろうか?

この疑問について、ブランド名もしくはカテゴリ名以外の単語を検索したユーザーを対象とし、7か月間にわたり調査を行なった。対象ユーザーを2つのグループに分け、1つのグループはある企業の商品広告に触れ、もう1つのグループに対しては広告を露出させなかった。両方のユーザーグループは、その後Amazonを利用した。

 

調査方法

ブランド露出とAmazonでのユーザー行動に関するケーススタディ

  • Webブラウザログ(米国内のみ)より、非連続的な7か月間(2016年6月〜8月、2016年11月〜2017年2月)のデータを収集。
  • AmazonとBingでのユーザーアクティビティを追跡。
  • Bingで特定商品に関連する検索を行うユーザーをフィルタリング(商品例には、おむつ、ノートパソコン、洗剤などが含まれる)。 ユーザーを、それらの商品の検索ワードに連動する特定の企業の商品広告に接触しているかに否かに基づいて分類。
  • Amazonで2つのグループのアクティビティを追跡し、Amazon内の広告主の商品ページにアクセスしたユーザーの割合を測定。
  • 他の主要なオンライン小売業者を含むように、調査対象の検索ワードを拡大。

 

検索エンジンで接触した後Amazonでも検索する

ある企業の特定商品についての検索広告に接触したユーザーは、その後、2〜4倍高い確率でAmazon内の同じ企業のその商品ページを訪れている。下図は、カテゴリ別の測定値を示す。

この調査は、WalmartやTargetなどの主要なオンライン小売業者も対象として行われ、同様のケースでの企業商品ページの閲覧率は、Amazonと比較して平均20%高くなった。

 

マーケティング担当者に何ができるか。

検索エンジンは、ユーザーがブランドを発見することによりブランド認知度を高め、複数のチャネルでの購買率をあげるのに有効である。

ショッピングキャンペーン時のリスティング広告に加え、BingとGoogleの両方で、トップセールス商品と同様に、直接的及び間接的にブランド名を訴求するテキスト広告を必ず出稿するべきだ。テキスト広告をさらに効果的にするために、新しく提供される広告商品も活用したい。

たとえばBingは最近、小売機能を持たない広告主がAmazon内の広告主の商品ページに直接リンクを貼れるように、外部サイトへのリンクポリシーを更新した。

更にPrice Extension(価格表示オプション)と組み合わせて、広告コピーで価格を表示し、重要なユーザーを誘導したい小売チャネルに送り込むことができる。Price Extensionは、Google AdWordsではすでに提供されており、Bing Adsでは、現在パイロット版が利用可能だ。

Google AdWordsで新しく提供開始された「Promotion Extension」(広告表示オプション)を試してみるのも興味深い。

 

 

Amazon対策はもちろん行う必要があることには変わりないが、検索エンジンも同様に常にアンテナをはり、対策を取り続ける必要がある。2つのチャネル対策への投資と取り組みについて、どちらか一方に偏るように過剰に補正してはいけない。

商品検索の大半は検索エンジンで行われていて、検索エンジンとAmazonではユーザー行動が異なる。購買ファネルの上流から下流まで全域において行われる検索には、検索エンジンが使用される一方、Amazonで行われる検索のほとんどは、下流購買ファネルの検索クエリが中心である。

広告主は、両方のプラットフォームを組み合わせて使用することで、顧客リーチを拡大し、相乗効果を生み出し、購買数と収益の全体的な向上させることができるのだ。本調査により、その有効性は証明されている。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の9/15公開の記事を翻訳・補足したものです。