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攻め続ける巨人Amazon - 開始したEC関連サービスの狙いはどこにあるのか

攻め続ける巨人Amazon - 開始したEC関連サービスの狙いはどこにあるのか

トレンド
2015/08/28

攻め続ける巨人Amazon - 開始したEC関連サービスの狙いはどこにあるのか

 

EC業界に君臨する巨人Amazon。先日も日本で開始されたAmazonログイン&ペイメントは業界に大きな話題を呼んだが、それ以外にも様々な新サービスを開始している。新たなストアの開設、有料会員向けサービス「Prime Now」、特価品販売ストア「ヤスいいね」など、EC業界を席巻せんとばかりに攻め続けているのだ。今回はここ1年強で開始された少し目立たないAmazonの新サービスを紹介し、その狙いを見ていきたい。

 

<参考>

Amazonが見据えるECの未来 - アマゾンポチ、fire phone、flow、firefly、予測配送、ドローン、Amazon Dash等の新サービス続々

Amazonログイン&ペイメントは何が凄いのか - 他の大手ID決済サービスと徹底比較してみた

 

 

Amazon「お酒ストア」で、直販での酒類取扱い開始

 

2014年4月より直販による酒類取扱いを開始した。これを機に「お酒ストア」は、ワイン、日本酒、焼酎、スピリッツ、ビールなど直販による酒類を5,000種類以上追加し、合計150,000種以上を取り揃えた日本最大級の品揃えとなった。

 

 

酒類を直販にしたことで、様々なメリットがうまれる。消費者にとって、直販はより便利で、迅速な配送サービスを受けることができる。例えば送料無料や、Amazonプライム対応がお酒購入の際に利用できることだ。登録店舗からの購入は送料がかかるが、Amazonでは基本的に無料になる。また、Amazonプライム会員対応になることで、当日お急ぎ便、お急ぎ便、お届け日時指定便をいったサービスを無料で使うことができる。これらのサービスを利用し、重いお酒も便利な配送サービスで、家まで届けてもらえるため、店頭で持ち帰る手間がなくなる。

この直販開始によって、特に力を入れたのが地酒とシングルモルト・ウィスキーだという。地酒は47都道府県の銘柄を揃え、日本酒は1000種類以上、焼酎は1400種類以上を揃えた。シングルモルト・ウィスキーは、国内すべての蒸留所の商品を含む300種類以上を提供する。

また、Amazonは、沖縄県と協力し、800種類以上の泡盛の提供も開始した。各酒造所のおすすめ銘柄も紹介するほか、沖縄限定品の提供も行う。このようにして、消費者に品揃え豊富な商品提供しているだけでなく、泡盛の普及、沖縄県の地場産業の活性化も目指している。

 

 

Amazon「産業・研究開発用品ストア」をオープン

 

2015年6月に、産業用資材や研究開発用品など「産業・研究開発用品ストア」をオープンした。ここでは、産業用・研究用の消耗品(手袋やマスク)業務用清掃用品(掃除機・フィルターなど)、運搬・包装用品(台車、緩衝剤など)、産業用電気部品(工業用スイッチ、ケーブルなど)、3Dプリンタ、研究開発用品(試薬、計測機器など)、結合・固定部品(ねじ・ボルト・ナットなど)といった、170万点以上の商品を取扱う。

 

 

Amazonは、これまでも間接資材を取り扱っていたが、その利用客からの要望が高まっていたことによって、同ストアをオープンした。個人顧客だけでなく、企業や学校、研究機関などの幅広い法人のニーズにも対応しており、現場で急遽必要になった製品の購入や、定期購入をすることが出来る。こうしたBtoB向けサイトは初めてだ。

このサイトはホームセンター市場をターゲットとしており、この市場は3兆円規模とも4兆円規模とも言われていて、非常に大きい市場だ。現在、数多くのホームセンターが存在する。欲しい時にその場で手に入るということは、リアル店舗のスピード感には叶わないが、注文が確定した当日配送をはじめ、ユーザーの要望に応じて商品を届ける体制を構築しており、個人向け事業で培った配送力も活用して、利便性を高めている。例えば、「当日お急ぎ便」を活用できること。一般店には、在庫が薄そうな大物機材であっても、中1日程度、送料無料で届いてしまう。このような強みを生かし、ユーザー拡大につなげる。

 

 

Amazon、日用品を特価で販売するストア「ヤスイイね」をオープン

 

2015年6月、食料品や日用品など特価で販売するストア「ヤスいいね」をオープンした。食品や飲料、お酒、ヘルスケア用品、ペット用品などの日常的に必要となる商品を中心に特価で販売するストア。約50点以上の商品を2週間ごとに入れ替えて販売する。

 

 

通常のAmazonの商品表示とは異なり、1個当たり〇〇円と表示して、ユーザーが価格を実感しやすいデザインにしており、価格の安さを訴求する。そのような表示になっているが、箱買いなどのまとめ買いが基本となる。対象商品は、Amazonが配送するため、当日・翌日配送に対応している。

Amazonの食料品や日用品は、品揃えは他のサイトよりも優れているものの、日用品ECサイトである「ロハコ」「爽快ドラッグ」「SEIYUドットコム」などのように、頻繁に目玉商品のセールを行っているわけではない。そこで、セールを常に開催する「ヤスイイね」を開設することで、こうした日用品ECサイトのユーザーを取り込んでいくことを狙っている。そのため「ヤスいいね」のページには、セール商品を求めるユーザーが多く集まると考えられるため、「タイムセール」「在庫一掃」「アウトレット」「定期おトク便」などのコーナーも設置し、ユーザーを取り込んでいるようだ。

 

 

Amazon Prime Now「1hour delivery」、ロンドンでもスタート

 

海外に目を移してみよう。米国Amazonは、2014年12月から、ニューヨーク市のマンハッタンの限定地区で、受注後1時間で商品を届けるサービス「プライム・ナウ(Prime Now)」開始している。

 

 

このサービスは、プライム会員に対して1時間以内に配達するというもので、ペーパータオル、シャンプー、書籍、玩具、電池、文房具などの「エッセンシャル」 と呼ばれる生活必需品の商品、25,000アイテム以上の商品を、モバイルアプリで注文することで、1時間以内に配達される。会員はダウンロードしたモバ イルアプリもしくはウェブサイトでジップコード(米国の郵便番号)を入力して配達可能かどうかを確認し、表示される商品から選んで注文する。注文後はス タッフが自転車やオートバイあるいは地下鉄を使って自宅やオフィスに注文品を届ける仕組みとなっている。

 

 

このサービスは、年会費99ドルのAmazonプライム会員を対象としたもので、1時間での宅配料金は7.99ドル、2時間以上の宅配は無料で、宅配時間は朝6時から深夜0時までとなっている。即日配達サービスはGoogleやWal-Martといった、競合他社も既に一部で導入しているが、この1時間サービスは他社との差別化を狙った新たな戦略であると言える。このようなプライム会員向けのサービスを充実させることで、米国でのプライム会員数は2014年に53%増加した。ニューヨーク市のマンハッタンの限定地区のみで開始されたサービスであったが、フロリダ州のマイアミとメリーランド州ボルティモアの一部地域でも提供することになり、米国でのエリアを拡大していく。

そして2015年6月に、イギリスのロンドンでも同様の「プライム・ナウ(Prime Now)」を開始した。国外では初めての提供となる。ロンドンでは、毎日午前8時から深夜0時まで利用可能で、2時間の配達は無料、1時間の配達は 6.99ポンドで利用できる。注文は専用のスマートフォンアプリから行う形で、1万点のアイテムが「Prime Now」を利用して購入できる。ロンドンを皮切りに今後もエリアを拡大していく。

<参考>

ECの即日配達サービスの限界への挑戦 - 頼んだものがすぐ届くのが当たり前の未来はやってくるのか

 

 

開始したEC関連サービスの狙いはどこにあるのか

 

Amazonがこの1年強の間に開始した新サービスについて紹介してきた。この4つの新サービスから見えてきたことは、Amazonは今まで培ってきた「豊富な品揃え」「短い配送時間」「送料無料」というエッジをより強め、活かすことで差別化を強化し、より顧客を獲得しようとしているということだ。

 

 

豊富な品揃え

 

「お酒ストア」「産業・研究開発用品ストア」のオープンにあたり、今までもこれらの商品は取り扱っていたが、圧倒的に取扱う商品数が増え、多くの商品を顧客に提供できるようになった。また、豊富な品揃えは、以前からもAmazonの強みであったが、それだけではなく、そこに、「ヤスいいね」によって、競合サイトがすでに行なっているセールを盛り込むことで、より競合から顧客を奪うことができる。

 

 

短い配送時間

 

即日配達サービスは競合他社も行なっているなか、米Amazon は、アメリカやイギリスなどの一部地域で、プライム会員に対し、1時間で商品を届けるというサービスを行い、差別化を図った。また日本のAmazon でも、お酒の直販を開始したことで、今まで出来なかったお酒購入でのプライム会員のサービスを受けることが出来るようになった。これらのサービスによって、プライム会員の増加につなげ、競合他社からも顧客を奪うことにつなげることが出来る。

 

 

送料無料

 

「お酒ストア」では直販の商品が増えたことで、それらの商品を送料無料で配送することが出来る。また、「産業・研究開発用品ストア」の開始よって、大物機材などが、学校や企業であっても送料無料で届いてしまう。このように、元々あった送料無料というサービスが、ストアの開設でさらに顧客満足につながり、顧客獲得につなげることが出来る。

 

既にAmazonは多くの国でEC業界において大きな影響力を持っていると言っていいだろう。そして、パッと見目立たないようなこれらのサービスもボディブローのように消費者にAmazonの強みである、品揃え豊富な商品が、無料で、短い配送時間で届くということを認識することに寄与している。あれだけ大きくなってもまだまだ攻め続けるAmazon。今後もEC業界の巨人としてAmazonが打ち出す新サービスに期待していきたい。