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アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

トレンド
2014/03/14

アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

 

そもそもアパレルECには他の商材にはないハードルとして商品選択の難しさが存在する。「家電や本はネット上で買うけど、洋服は失敗しそうだから買わない」、というような声をよく耳にする。アパレル商材は他のジャンルの商材と違い、商品の細かいディティールが購買のポイントとなってくる。消費者は素材感や色味、持っている洋服との合わせ、そしてサイズなどが気になるが、それらをインターネット上でだけで詳細に伝えるのが難しく、アパレル商材を買うことへの抵抗感が生まれ、アパレルECにおける障壁となっているのだ。

しかしこのような環境だからこそ、アパレルEC業界では次から次へ新しいサービスが立ち上がり、新しい話題をEC業界に提供してくれているとも言える。特に昨年10月にリリースされたWEARは、懐疑的な声もあったものの快進撃を続けている。

今回は商品の細かいポイントをどのように消費者に伝え、消費者の不安を取り除き購買意欲を引き起こしているのか、アパレルECを引っ張りEC業界全体に革新を起こすポテンシャルを秘めた新しい取り組みをしている3つのサービスを見ていく。

 

<参考>

アパレルECに横たわる根源的な3つの課題は解消するのか - サイズ・レコメンド・コーディネート

 

 

快進撃を続けるWEARのツボはショールーミングではなくコーディネート

 

昨年の10月にZOZOTOWNからリリースされたコーディネート検索サービスWEARは、当初の予想以上の延びを見せWEAR経由の売上げが約1億円を超えた。さらには、WEAR経由のコンバージョンは12%と近年では信じられないくらいの高い値をたたき出している(通販新聞記事)。

 

 

当初、バーコードスキャン機能によるショールーミングの拡大について注目されていたが、ユーザーに刺さった機能は「マイクローゼット機能」や「コーディネートレシピ機能」だ。現にコーディネートの投稿件数は20万件を超え、クローゼットの商品登録数は600万件を超える。そして、注目すべき点は著名人やショップスタッフでない一般のユーザーにも数万人のフォロワーがつき、一つのコーディネートのビュー数が数万となっている点だ。一般のユーザーのリアルなコーディネートだからこそ、マネしやすく同じ商品を買いたいというマインドになっているのだ。

また、日々オシャレなコーディネートが投稿されていくため、毎日見ていても飽きることがない。すると、WEARというメディアを通じユーザーがファッションに興味を持つ時間が増え、比例するように購買意欲の上昇に繋がっているということは想像に難くない。つまりWEARはアパレルECにコーディネートとCGMという要素を取り入れることで、ユーザーのファッションそのもの楽しさに気づかせ、売上げが延ばしているのだ。

つい先日2/28にサービス終了となったコーディネート提案型ソーシャルメディア「FUKULOG(フクログ)」から17万件以上のコーディネートと5万件以上アイテムデータを吸収することも発表され、ますますコーディネートの足場を固めていっている。今後は、現段階のコアユーザーであるファッションに強い興味を持ったユーザー以外にもどのように浸透させることが出来るかが鍵となってくるだろう。

 

<参考>

ZOZOTOWNの新アプリ“WEAR”で、狙い通りアパレルECにおける店舗のショールーミング化は進むのか

アパレルコーディネートのチャット型提案サービス - オンラインで理想的なコーディネートに巡りあえるのか

 

 

アパレルECのサイズ問題を解消するVirtusize(バーチャサイズ)

 

昨年の8月に大手アパレルECモールのマガシークVirtusizeを導入し話題となった。

 

 

Virtusizeは一言で言うと自分の持っている服との比較によってサイズ感を把握できるようにするサービスだ。確かに、既に持っている服と比べて、何cm大きい、短い、という比較がビジュアルで分かり易く把握できれば、洋服をECで買う際のサイズの不安感は払拭される。

さらに、これまでに買ったことのある洋服が掲載されていればそれを簡単に登録できるのもユーザーの使い易さという観点からは魅力的だ。既存のECモールでもサイズの細かい採寸を表記しているサイトも多くあるが、消費者のほとんどは自分の大まかなサイズしか把握しておらず、“肩幅何cm”という表記は意味をなさないことが多い。つまり、消費者は自分の体のサイズを測る手間を省くことができるのだ。

実際に着てみた際の詳細なシルエットまでは把握することができない問題点は残るが、Virtusizeは2Dによる簡単で分かり易いサイズ比較を可能にし、消費者がECにおいて一番不安だと感じているサイズ問題を解消した。

 

 

動画で商品とブランドの世界観を見せるVAULT(ヴォルト)

 

楽天グループのスタイライフは昨年11月に動画を活用したECサイトVAULTをオープンした。VAULTは、2012 年にスタートした米国のビデオコマースサイト「VAULT」の日本版で、動画を通して商品の世界観やストーリー、さらに品質の高さを表現し、ユーザーの感性を刺激することをコンセプトにしている(プレスリリース)。

実際に商品ページで流れる動画はこのような動画だ。

 

 

商品を着た際のシルエットや雰囲気、質感などは写真だけのECサイトよりも格段にイメージしやすい。また、ブランドのイメージや世界観を伝えるためのスペシャルムービー等も用意されており、こちらは商品毎の動画以上にクオリティの高い仕上がりとなっており、ECというよりもブランド独自のサイトのようになっていて、新しい試みとなっている。

 

 

VAULTの成功の可否は、ユーザーの感性を刺激する質の高い動画をどれだけそろえられるか、が重要なポイントとなる。それぞれの商品毎の動画は、基本的に構成や音楽にあまり変化がないため、正直2~3本観ると飽きてしまう程度のクオリティとなっている。また、十数分もあるブランド全体のコレクション動画が用意されている商品ページもあり、よほどそのブランドが好きではない限りは観られないだろう。現状の動画では販促に繋がりそうなものは少ないが、今後動画のクオリティが上がっていけばECの新たな形として定着する可能性は秘めているのではないだろうか。

 

 

WEAR、Virtusize、VAULTから見えてくる次世代のオンライン商品選択の姿

 

これらの3つのサービスは、アパレルECの商品選択の難しさを何とかして超えていこうとする挑戦の現われでもある。コーディネートから商品を提案するWEAR、バーチャル試着でサイズの不安を取り除くVirtusize、動画でブランド訴求を行うVAULT、それぞれのアプローチは異なるが、アパレルECの新たな可能性を模索したサービスとなっている。

アパレルを購入する消費者は皆が強いこだわりを持っているわけでもなく、様々なニーズを持っている。非常にファッションにこだわりの強い人、それほどこだわりはないがそれなりの服を着こなしたいという人、手軽に簡単に服を買いたいという人など様々。このようなタイプの消費者別に商品選択・商品訴求の方法は異なってくる。

例えば今回のサービスを例にとると、購買のハードルを下げてアパレルECの間口を広げる効果があるのはVirtusize。このサービスが広まれば、これまで洋服をネットで買うことに不安を覚えていた消費者が一歩踏み出すきっかけとなる。WEARはある程度ファッションに興味のある人がさらに着こなし・合わせ方から刺激を受けることで購入しやすくなるサービスといえよう。そしてブランドのイメージや空気を重視するファッションへのこだわりが最も強い層に刺さる可能性のあるVAULTだろう。

 

 

アパレルECのこれらの3つのサービスは、消費者のこだわりに応じた商品選択・商品訴求の方法を考える必要があるということを示している。商品選択が難しいアパレルECだからこそ、このような消費者のこだわり別に相応しいサービスが勃興してきているが、今後はアパレル以外のジャンルでも同様視点での訴求は必要となってくるだろう。WEAR、Virtusize、VAULTの取り組みはアパレルECだけでなく、EC業界全体の未来へのヒントといえるかもしれない重要な取り組みといえる。
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