EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

「客単価」とは? 今さら聞けないコマース基本用語

「客単価」とは? 今さら聞けないコマース基本用語

ノウハウ・ツール
2022/10/12

客単価とは?

 

デジタルやeコマース関連の用語では、珍しく日本語のみのキーワードで、替わりとなる横文字もない、重要な用語である“客単価”。eコマースだけでなく物の売買が行われる場で頻繁に使われる言葉である。コマース基本用語解説の第4回目は、この客単価について解説する。

 

 

用語解説

 

客単価とは、1回の購買によって消費者1人当たりが支払う総額のことである。客単価は1人ずつ計算するわけでなく、店舗の売上高を購入客数で割ったものを指す。

客単価[円]=売上高[円]÷客数[人]

「客単価」は、飲食店、小売店、ECサイトにおいても考え方が同じであり、すべてのビジネスで通用する重要な用語である。例えば、ECサイトにおいては、客単価を一定期間や一定の母数で計測、平均化した平均客単価が重要な指標として扱われる。また、この平均客単価も単に客単価と呼ばれることがあり、厳密に区別して利用している人はそれほど多くはない印象だ。

 

 

客単価の重要性

 

客単価は売上高を上げる重要な3つの構成要素の1つであり、経営の課題を分析する重要な手がかりになる。売上高は計算式で表すと、

売上高[円]=来訪者数[人]×CVR(コンバージョンレート)[%]×客単価[円/人]

この数式からもわかるように、集客に力を入れても、CVR向上の施策を立てても客単価が低ければ意味がない。そのため、客単価は売上を伸ばすために欠かせない重要な要素である。さらに、客単価を細分化すると商品価格と1回あたりの購入点数の掛け算で表される。

客単価[円]=商品価格[円]×1回あたりの購入点数[個]

このことから客単価を上げるために考慮する要素としては、①商品価格が適正か、②1回あたりの購入数が少ないのか、のどちらに課題があるかを見極める必要がある。

 

 

LTVとの関係性

 

近年では客単価に似た用語としてLTVが用いられることも多くなってきた。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客の生涯にわたる販売者との関係の中で、販売者がその顧客から受け取る総額を意味し、定期購入商材やサブスクリプション型のビジネスモデルで用いられる。LTVは以下の計算式で表される。

収益[円]=顧客数[人]×LTV[円/人]

LTV[円/人]=客単価[円/人]×粗利率[%]×購入頻度[回数]×継続期間[月]―顧客の獲得・維持コスト[円]

粗利率:売上に対する粗利額(売上から売上原価を引いた利益)の割合

購入頻度:1年当たりの購入回数

継続期間:購入を継続する期間

顧客の獲得・維持コスト:新規顧客を獲得するのにかかる費用

LTVは、顧客との関係を分析する重要な指標であり、LTVが高い企業は、商品や企業を評価してくれる既存顧客を確保できているという証である。新規顧客の獲得への費用は既存顧客維持費用に比べ膨大な費用を要す。

客単価はLTVにおいても重要な指標の1つであり、客単価を上げることがLTVを伸ばすために欠かせない重要な要素であると言える。

 

 

客単価は何によって影響を受けるのか

 

1. 商品の単価

商品の単価によって、客単価の意味合いは大きく変わってくる。例えば、取り扱っている商品の最低価格が10万円の高級バッグのショップでは、客単価は10万円以下には成り得ない。逆に、300円の洗剤から取り扱っているショップでは、300円以上の全ての価格が客単価に成り得る。実際にはこのように分かりやすいパターンばかりではないが、ショップで取り扱っている商品の単価によって大きく変わってくる値となる。

 

2. 商品が消耗品か

取り扱っている商品が消耗品の場合、送料との兼ね合いから、消費者はインターネットで購入する際に複数個数の購入を行うケースが高くなる。定期的に消費するものは、ある程度ストックがあっても困らないため「まとめ買い」を選ぶ消費者心理に訴えかけることが大切だ。

 

3. 保存期間の長い商品か

消耗品か、にも影響するが、消耗品でかつ保存期間が長い商品はより一層その傾向は高まる。また、それ以外にも、重量がある商品なども複数個数を購入する傾向が高いため、客単価は高くなる傾向がある。

 

 

客単価を上げるための施策

 

実店舗とECサイトでは、客単価を上げる方法にも違いが出てくる。関連商品を促すことで比較すると、実店舗には接客が存在するが、ECサイトには存在しない。そのため、直接声掛けができないECサイトでは購入ボタンの近くや商品詳細ページに関連商品を表示させることが購入を促す施策となる。

このように実店舗とECサイトでは客単価を上げるための施策が異なり、販売チャネルに応じて適切な施策を打つことで効果的に客単価を上げることができる。

 

実店舗での施策

1. 関連商品の購入を促す(クロスセル)

クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品と別の商品を提案し、購入を検討してもらう手法のことである。本来販売したい商品に関連した商品を追加で販売することができるので、客単価を上げることができる。例えば、「関連するものを商品の近くに陳列すること」や「販売時に直接関連商品をおすすめすること」「店内で声掛けすること」が効果的な施策である。

この施策を実行するには、既存の購買データから消費者がどのようなニーズを抱えているか消費者の購買傾向を分析することが必要である。

 

2. 複数の価格帯の商品を陳列する(アップセル)

アップセルとは、購入しようとしている製品と同等かそれ以上高価な製品やサービスを顧客に促す手法のことである。同ジャンルで複数の価格帯の商品が売られている場合、人は無意識に真ん中のランクの商品を購入する傾向がある。その心理傾向を「松竹梅の法則」という。

レストランでコース料理を頼む際、真ん中の価格帯のコースを頼みがちな状態がこれである。

同じような商品で複数の価格帯の商品を陳列することで、自然と消費者が中間の価格帯の商品を購入する。そのため、客単価が上がるという仕組みだ。

 

3. セット商品を作る

セット商品とは、「単品商品を複数組み合わせて販売する商品」のことである。良いものを売っていても、その存在を知ってもらわなければ売上アップにはつながらない。そこで、イチオシの商品を含むお得感のあるセット商品を作ると、消費者は少しでもお得感のあるものに反応するので、欲しいものが含まれているお得セットに手を伸ばしやすくなる。例えば、2,000円のコスメを購入する予定だった消費者が3,500円のセット商品を購入、よって客単価はアップすることになる。消費者にとっては、欲しい商品をお得に購入できた感覚になる。

 

4.ポイントカード制度の導入

売上に応じてポイントを付与し、そのポイントを貯めて還元するポイント還元方式を多くの店舗では採用している。そこで、「500円で1pt」に設定すると2900円の買い物の場合にあと100円分買おうという心理に繋がる。そのため、客単価が上がる。

また、「火曜日ポイント5倍」などキャンペーンを打つことで、ついで買いやまとめ買いを促し、客単価を上げることができる。このように、ポイントカード制度は客単価を上げる施策として効果的である。

 

ECサイトでの施策

1.“●●●●円以上は送料無料”と打ち出す

ECサイトを利用する人の多くは、リアル店舗で購入するより便利で割安だから、という理由でネットショッピングを楽しんでいる。そのため、購入を検討する際に最もネックになってくるのが商品の価格に見合わない高い送料だ。その消費者心理に効果的であるのが“送料無料”である。最近は多くのショップが“●●●●円以上送料無料”と打ち出しているが、これは消費者心理をうまく利用した購買意欲増進の方法だ。

例えば、2,500円前後のデイリーワインをメインで販売しているワインショップに、試しに1本買ってみようという人が訪れたとする。しかし、“3,000円以上送料無料”という謳い文句を見た瞬間、その人は“1本ではもったいないから2本購入しよう”というモードになる。つまり、本来1本だけ欲しかったワインを自然な流れで2本購入することになり、消費者の意に反して客単価は上がる。送料無料のボーダーラインは、あと少しだけ購入すれば送料無料に手が届く、という金額をうまく見極めて設定すると効果的である。また、同じ消費者心理を利用した方法として、“複数購入すると●個目以降半額”という売り出し方も客単価の増加に繋がる。

 

2. 同梱特典を設ける

ある商品を送料無料商品に設定し、同梱する商品はすべて送料無料と謳う。その商品に少し興味がある程度でも、それさえ購入すれば送料が無料になると判断し、何となく買い物カゴに入れてしまうのだ。さらに、送料がかさむ大型商品を送料無料のこのタイミングで購入し、他の商品を複数購入するのではないだろうか。こうして自然と客単価は上がっていくというわけだ。

 

3. 関連商品の購入を促す(クロスセル)

商品を買い物カゴに入れている段階で、一般的に追加注文が入りやすいと言われている。そこで、ECサイトで商品の購入ボタンのすぐ近くに関連商品やお勧め商品のリンクを表示させることで、“ついで買い”を促すことができる。

 

4. 複数の価格帯の商品を並べる(アップセル)

前述の通り、同ジャンルで複数の価格帯の商品が売られている場合、人は無意識に真ん中のランクの商品を購入する傾向がある。

ECサイトでもこの消費者心理を利用して、松竹梅の価格提示行うようにサイトのレイアウトを変更することが効果的だ。そうすることで、より高額の商品購買へお客様を誘導し、客単価を上げることも可能になってくる。このように、本来購入してもらいたい価格帯の商品をショップ主導で決めることもできてしまう。

 

5. セット商品を作る

実店舗でも挙げたが、セット商品を設けることはECサイトで客単価を上げることにも効果がある。さらに、セット商品化することで、単品商品の際に毎回発生する梱包費や送料を1回にまとめることができるため、客単価以外のメリットも大きい施策である。

 

6. 優良顧客への特典や商品案内

優良顧客のロイヤリティ向上のための、特典やカスタマイズされたメールのやりとりは非常に重要である。例えば、Amazon会員は一般会員の2倍以上の売上を作っているというデータがある。確かにAmazon会員には、送料無料サービスや会員限定価格など様々な特典がある。このことからもわかるように、ECサイトでの売上の大部分は優良顧客(ヘビーユーザー、会員)が作り出している。

よく商品を購入してくれる優良顧客は、そのブランドやサイトのファンでありその場所で買い物をすることが習慣化する。そのため、必然的に商品購入回数だけでなくより高い客単価で購入する傾向がある。この手段は、客単価向上に対しても十分効果を発揮するが、リピート率を上げる事でLTV向上に対しても有効な手段だといえる。

優良顧客を増やすためには、リピートしてもらうこととその顧客を手放さないことが大切である。そのために、

  • 丁寧なアフターフォロー
  • プレミア会員だけの特別な特典・キャンペーン
  • 顧客一人一人のライフスタイルや好みに合わせたメール・LINE、SNSのやりとり

を強化することが効果的である。

 

 

このように、商品や行っている施策によって、適正な値は変わってくるのが客単価である。過去のトレンドや店舗のコンセプトなどから適正な客単価を見極め、それを上げる施策を積極的に打っていくことが大切だ。