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2025年の消費者トレンドは「倹約、規範化、価格に対する不安」

2025年の消費者トレンドは「倹約、規範化、価格に対する不安」

トレンド
2024/12/30

Gartnerの最新の消費者・カルチャー調査から、「倹約」は単なる節約にとどまらないことがわかった。


調査・アドバイザリーを行う米国企業Gartnerの調査によると、消費者は「倹約」を憧れの美徳ととらえるようになっており、自分磨きや同様の動機のために消費主義に公然と抵抗するようになっているという。同社はまた、「ノーミング(規範化)」と呼ばれる、広く浸透した傾向も見出している。これは基本的に、個人の行動や態度を客観的な基準やコミュニティの基準と照らし合わせることで、安心感を得ようとするものである。消費者はまた、予想外の、あるいは一貫性のないコストや価格設定に対して不安を抱いていることも判明した。

さらに、消費者の74%がドローン配送やレジなし店舗などの自動化技術に前向きであると回答。この調査結果の意義について、Gartnerの消費者・カルチャー調査の専門家であるKate Muhl氏に話を聞いた(レポート全文は、Gartnerの顧客のみに公開されている)。

 

健全な倹約

「ニュー・スパルタン(質実剛健な生活スタイルを支持する人)」世代は、ほとんどライフスタイルの一つの選択肢として倹約を受け入れている。もちろん、お金を節約したいという衝動は最近のインフレとの戦いと無関係ではないが、それはより広範な意味を持つようになったようだ。Gartnerの調査では、消費者の88%が、2年前よりも以下のような消費行動を一つ以上減らしたと回答している。その例は次の通り。


・製品を買い換えずに、より長く使用する

・組立て済のものよりも、中古品やDIY品を購入することを選ぶ

・新品を買うより修理する


たしかに価格は消費者の気になるところだが、68%が消費行動を抑える理由として、ライフスタイルや自分磨きを挙げており、それには以下のようなものが含まれる。


・断捨離し、生活をシンプルにする(45%)

・自分自身をより良く感じる(35%)

・「自分はできる」ということを自分自身や他人に対して証明する(28%)

・環境への配慮(23%)


「消費者が何かを受け止めて、それを自分自身について語る方法に変える能力に、私が驚かされることはないと思う」と、Muhl氏は話す。「これは、やらざるを得ないかもしれない何かを、自分でコントロールできるもの、つまり『自慢できること』に変えるようなものなのだ」。同氏は、インフレ率が低下しているにもかかわらず、90年代のような目立つ消費に戻る兆候はまだ見られないと指摘した。「おそらく1、2年後にはそうなるだろう。今は、質素な生活を受け入れる強さや知恵が必要なのだ」。

これもまた、人々が製品よりも体験を選んでいることの表れなのだろうか。「その通りだと思う」と、Muhl氏。「お金を払って手に入れた体験のロングテール(オンラインショップにおいて、少数の売れ筋商品の売上合計よりも、その他多数の売れ筋商品以外の商品の売上合計の方が大きくなるという理論)は、セーターのようなものよりもはるかに優れている」。

ブランドのマーケターへのメッセージ: 顧客の目標をサポートしよう。価値観のあるブランドは、ここでさらに評価を得ることができる。

 

規範化しているか

不確実な世界では、消費者は自分の行動や意見に客観的な(または少なくとも共通の)ベンチマークを求めている。彼らが求めているのは次のようなものである。


・明確に確立された境界線(76%)

・物事をラベリングし、分類する能力(64%)

・自分自身と世界における自分の立ち位置に対する理解(57%)

・人生を歩むための 「プレイブック」のようなもの(48%)


これは新しい概念ではないが、最近になって勢いを増している、とMuhl氏は述べる。2018年当時、人々は自分自身が残していく、自分だけの一連のデータに興味を持つようになったため、「My Data, My Self」と呼ばれるトップトレンドがあったと同氏は語った。それは、規範化という考え方に反している。「最近の私たちが知らないのは、自分が全体の中でどのように位置づけられるかということだ」と同氏は話す。「『木を見て森を見ず』は、よくない。なぜなら、あなたは森の中にある一本の木だからだ。あなたは、自分が背の高い木なのか、小さな木なのか、この森には何本の木があるのかを知りたいのだ」。

ブランドのマーケターへのメッセージ: 必ずしも購入に直結しないコンテンツを提供することで、消費者がコンテキストの中で自分自身を理解できるようにしよう。

 

価格に対する不安

消費者の60%近くは、購入にかかる本当の最終的なコストを知ることに自信が持てていない。その理由は以下の通りである。


・使用料は変わらないのに、サービス料金が上がった(38%)

・オンラインでの価格と店頭価格の不一致(31%)

・ショッピングカートでの価格の変動(29%)

・隠れた料金や予想外の料金(23%)


検討したトレンドの中で、おそらくこれが最も大きな影響を与えるだろう、とMuhl氏。現在のインフレ率を考えれば、「消費者は大丈夫なはずだ」と同氏は言う。「しかし、実際にそうではなく、コスト意識の回復は、我々のクライアントの多くが望んでいるよりもはるかにゆっくりとしたペースで進んでいるのだ」。

同氏は、企業は安定を好むと指摘する。企業は急激なコスト上昇を好まず、計画性が求められる。「個人も同じではないだろうか」。

ブランドのマーケターへのメッセージ: 価格の安定性で知られるようになり、特典プログラムを通じてロイヤリティに報いよう。

 

気にかける理由

消費者の行動、つまり消費金額や買い物の仕方を教えてくれる大規模なデータセットはいくらでもある。消費者行動のトラッキングは、特にホリデーショッピングの時期には事実上、産業となっている。そして、それはすべて価値があることである。

Gartnerが消費者トレンドだけでなく、カルチャートレンドにも目を向けることで追加しようとしているのは、消費者行動の原動力となっているより深い信念体系についての理解であり、その困難さは、買い物客を一人ずつ心理分析するのではなく、これを大規模に行うことにある。

(注:ドローンの快適性に関する調査は、当然ながら現在のニュースサイクルより前のものである。)


※当記事は米国メディア「MarTech」の12/18公開の記事を翻訳・補足したものです。