グローバルに一気に拡散する昨今の新興アプリは、以前のアプリとは何が違うのか
近年、TikTokやSHEINなど短期間で全世界に拡大するサービスが急増している。このトレンドは時代によるものなのか、分野によるものなのか、どのような背景によるものなのかを分析するために、今回は、時代や分野の異なる9つのサービスのデータを比較し考察していく。今回比較したサービスは、「以前」の代表例として、15年ほど前に一気に若者の人気を集めたFOREVER 21やZOZO、Zalandoなどのアパレル分野、そしてMIXI、FacebookなどのSNS分野。「現代」の代表例として、若者の間で人気を集めているアパレル系、SNS系で、SHEIN、Temu、TikTok、BeReal.、Snapchat。世界中で幅広い年代に利用されているChatGPT、課外活動やビジネスシーンで利用されているCanva、起業家を中心に人気を集めたが一瞬で散ったClubhouseである。これらのサービスの伸び方やタイミングから、何か読み解けることがあるかを今回は考えていく。
今回比較したサービス・アプリ
FOREVER 21
FOREVER 21は、1984年にアメリカロサンゼルスで設立され、一時は世界10カ国に460店舗をおき、若者を中心に人気を博したファストファッションストアチェーン。はじめは韓国系移民の若者向けのアパレルであったが、大人から子供まで幅広い層に支持され、若い女性にフォーカスして様々なジャンルの商品を格安で提供したことで人気を集め、全米各地で出店し、グローバル企業となった。中間業者を排除してすべての生産プロセスを管理することでコストを削減し、低価格での商品提供を可能にしている。ピーク時である2007年の売上は13億円にものぼり、2008年には会員制オンラインショッピングを開始した。2000年に日本に進出するも1年で撤退し、その後も原宿や銀座に店舗を設けるが、2019年に倒産に追い込まれた。急速な実店舗の拡大により、高品質かつ低価格の商品提供ができなくなったことや、オンラインショッピングの導入に遅れをとり、実店舗の縮小とオンラインショッピングの拡大に舵を切れなかったことなどが考えられる。その後は、E-commerceソリューションの実装やメタバース空間にForever 21 Shop Cityを設けるなど、新たな事業に挑戦している。
SHEIN
SHEINは、2008年に中国で設立されたD2Cオンラインファストファッション小売業者。圧倒的な低価格と迅速な商品提供でアメリカをはじめとするZ世代に強い支持を集め、世界220ヵ国以上で商品を販売し、2020年の売上は約1兆2,572億円に達した。SHEINの特徴は、店舗を持たないビジネスモデルにある。従来のファッション小売業者とは異なり、オンライン販売に特化し、小ロット生産や短期間でのデザイン・製造プロセスを通じて、トレンドの変化への迅速な対応を可能にした。この効率的なサプライチェーンの構築により、新作を素早く展開し、ヨーロッパや中東などの新たな市場にも進出することとなった。また、2019年にはRoadget Businessという持株会社を設立し、経営体制の強化を図っている。さらに2022年から2023年にかけて、ファッションの持続可能性を推進するために、SHEIN Exchangeという二次流通プラットフォームをアメリカや欧州で展開。ユーザーが中古のSHEINの商品を売買できる仕組みを提供し、循環型経済への対応を進めている。しかし2020年には、プライバシーやデータセキュリティに関する懸念からインド政府によってSHEINのアプリが禁止されるなど、一部の市場で規制に直面している状態だ。急成長を続ける一方で、各国のデータ保護政策や規制への対応が今後の課題となっている。
<参考>
Shein Revenue and Usage Statistics (2025)
Temu
Temuは、中国のPDDホールディングスが2022年アメリカで事業を開始し、中国国外向けに運営するオンラインマーケットプレイス。メーカーがEC企業に製品を納入しさえすれば、広告宣伝、物流、販売、苦情処理などのすべてをEC企業が引き受け、世界中で売ってくれる「フルホスティングモデル」を用いることで、サプライヤーにとって低負担な条件で物流をまとめてに効率化した。これにより、SHEINよりも平均4日ほど早い5~7日で配送することが可能になり、SHEINを超えるサービスになりつつある。しかしこのモデルには、メーカーが自社のブランドの認知度を上げることができないという欠点もある。2023年の流通売上総額は約1億2千万円で、2023年2月にスーパーボウルで広告を出したことで爆発的に認知度を高め、23日までにダウンロード数4000万回を記録している。さらに2023年2月にカナダ、2023年3月にオーストラリアとニュージーランド、4月にイギリス、ドイツ、オランダ、イタリア、フランス、スペイン、7月に日本と、急速に世界各地に展開することで急成長してきた。しかし、SHEINについての虚偽の発言をインフルエンサーに促したとして2023年7月にSHEINから訴訟を起こされるなど、中国発の類似アパレル企業としてSHEINと競合している。
<参考>
Temu Revenue and Usage Statistics (2025)
中国発の格安越境EC「Temu」、米スーパーボウルCMに19億円。ユーザー急増でSHEINを猛追
ChatGPT
ChatGPTは、2015年に設立されたOpenAIが2022年にリリースし、世界を席巻したAIチャットボット。利用者は公開後1週間で100万人を超え、2か月後には1億人に到達した。無料である程度の機能を利用でき、対話履歴の表示など使いやすいインターフェースで幅広い層の需要に応え、ユーザーからのフィードバックによって継続的な学習と改善を重ねている。自動運転や自動翻訳、顧客サポートチャットボットからコンテンツ作成などその使い道は多様で、幅広く応用できることも特徴だ。2022年の評価額は290億米ドルとされ、2023年後半時点の売上は34億ドル(約5,300億円)にものぼる。ピークの予測が立たないほど爆発的にユーザーを集めており、現在も急上昇中のサービスである。
<参考>
Number of ChatGPT Users (Feb 2025)
Canva
Canvaは、2012年にオーストラリアで設立された同名の企業がリリースした、80万種以上のテンプレートを保有するデザインプラットフォーム。世界190カ国に展開し、これまでに創作されたデザインは140億以上で、2023年の売上は20億ドルを超える。プレゼンテーションや動画の作成、共同作業を容易にする「ビジュアルコミュニケーションプラットフォーム」が特徴で、ビジネスや学生の活動に用いられることが多く、フリー素材が大量にインプットされており、ポップな作品を作ることができる。創設者のメラニーパーキンスはForbs Under 30に選出されており、「世界で最も価値の高い企業の1つになり、最善を尽くす」ことを目標に、6万の学校や13万の非営利団体と連携した。さらに、Pledge 1%と呼ばれる慈悲活動に参加し、印刷注文1件につき樹木1本を植えるボランティアを行い、これまでに植えた樹木は200万本とされている。しかし、2019年5月に1億3,900万人のデータが流出するなど、情報漏洩の問題が指摘された。最近ではコロナとともに拡大し、社会貢献に注力している。
<参考>
豪デザインソフトCanva利用1億人 共同創業者に聞く
“MAU1億人”のデザインツール「Canva」 、日本責任者に聞く今後の成長戦略
TikTok
TikTokは、2016/1に中国で設立されたByteDanceが2017年5月に提供開始したサービス。簡単に言うと、2016年9月に中国で提供開始された動画に特化したSNS「抖音」の海外版である。原型はニュース配信アプリであり、コンテンツ情報、ユーザー情報、環境情報から構成されるビッグデータによって利用習慣、好み、場所、時間帯に合わせたニュースや広告が提供され、一般ライターの育成プログラムも行っていた。当時ビッグデータによるユーザーにパーソナライズされた情報を提供するアルゴリズムの開発は困難であるといわれたが、その開発に成功している。しかし、既存のコンテンツを原作者やメディアの許可なく配信したことで訴訟を受け、その後は各メディアと正式に契約を結ぶことで合意した。その後はユーザーパーソナライズのアルゴリズムを用いてショートムービー専門のSNSに着手し、2022年のTikTokの売上高は850億ドルにのぼる。世界中の若年層を中心に流行し、音楽やエンタメ、動物など、TikTok上のトレンドが若者のトレンドにそのまま反映されるようになった。しかし国家安全保障上の問題を理由に、2020年6月にはインド、2020年10月にはパキスタン、2023年3月にはアメリカで使用禁止となり、2022年3月にはロシアでも動画投稿禁止の動きがあるなど、各国で注視されている。
<参考>
TikTok Statistics You Need to Know
Snapchat
Snapchatは、スタンフォード大学でのアイデアをもとに2011年9月に立ち上げられたスマートフォン向け写真共有アプリで、「一度見た写真は消える」というコンセプトが特徴的だ。2022年4月時点の時価総額は約7兆円にのぼり、2023年第2四半期の売上は10億7,000万ドル(約1,525億円)であった。初期は共同創立者のいとこが学校の友人にシェアして広めるなど、友達マーケティングによりミレニアル世代を中心にユーザーを増やし、2017年にはアメリカに住む12~17歳の80%が利用するほどのシェアを獲得した。2016年にアプリのストーリー機能をInstagramに模倣され、一時的に株価暴落に追い込まれるが、2019年発表の赤ちゃんフィルター機能が大ヒットし、ユーザーを取り戻した。さらに、企業がロケーションベース広告を出すことができる機能「ジオフィルター」を付け加えるなど、マーケティング分野への活用法も提示している。現在はZ世代に注目し、ARグラスの開発やオリジナルドローンで撮影した映像を編集できる機能など、時代に合わせて新たな試みを行うことでユーザーを獲得し続けている。
<参考>
Number of daily active Snapchat users from 1st quarter 2014 to 4th quarter 2024
How Many People Use Snapchat 2025 (Active Users Stats)
Clubhouse
Clubhouseは、2020年4月にiOSでリリースされ、2021年に200万人のユーザーと10人の従業員を抱えて評価額10億ドルとなり、起業家を中心に話題になった音声配信スペースを提供するサービス。2021年2月にはイーロン・マスクがアプリ内でルームを作成するなどして爆発的に流行したものの、2021年6年をピークに急落した。特徴は、画面やカメラを使用しないため「ながら使用」ができること、トピック指向の部屋、声以外の情報が公開されないため平等な会話ができることなどだ。コロナ渦で会話に飢えていた層や、招待されないと参加できない友達招待制の特別感により人気を集めていたが、コロナ渦が収束して忙しくなったことでリアルタイムの会話への参加が難しくなり、友達招待制が廃止されて新機能も追加されなかったこともあり、その勢いを失った。iOSのみのリリースだったためAndroidが支配的な市場で成功しなかったことや、アプリ自体の使いにくさも一因だと考えられる。また、X(旧:Twitter)やFacebookなど他のSNSにも音声配信機能が存在するため、競合との競争力も乏しいと思われる。その一方で、Clubhouseを通じて始まった事業や活動が現在も続いているケースもある。
<参考>
音声SNS「Clubhouse」ダウンロード数がわずか2カ月で「10分の1」に激減。大型資金調達には成功するも…
BeReal.
BeReal.は、2020年フランス発祥のインアウトカメラ機能が特徴的な、いわゆる「映えない」SNS。いいねの数やフォロワー数を比較し、「盛る」ことを目的とするアプリではないため、SNS疲れの若者に人気を集めている。その一方、私生活の充実ぶりを演出する間接的な「盛り」をアピールできるSNSでもある。ありのままを投稿するという趣旨はSnapchatと類似しているが、一斉に通知が届くことでアプリを使用していないと疎外感を覚える仕組みや、加工機能がなくアプリに時間を使わなくていい点などが特徴的だ。使いやすさや友達とつながっている感覚を持てることが人気の理由であり、プロモーションよりもUGC(友達マーケティング)やコミュニティを通して広がっていった。なお、2024年6月にフランスのゲーム会社Voodooによって5億ユーロで買収されている。
<参考>
BeReal Revenue and Usage Statistics (2025)
Facebookは、2004年にハーバード大学で創設されたSNSで、当初は学生のみに限定していたが、2006年9月以降に一般にも開放された。2007年10月にMicrosoftが広告に関して独占契約し、出資するとともに株式の1.6%を保有した。2008年にFacebook Connectを発表したほか、2010年にはFacebook創設の経緯を描いた映画を公開するなどで続々と知名度を上げていき、2011年9月にはユーザー数は8億人となり、Googleと並ぶ世界最大のSNSとなった。ただし、10億人を超えるアクティブユーザーのうち8.7%が利用契約に違反する13未満の子供であると、2019年9月に報告されている。本来の機能であるプレーンテキストに加えて、一般のユーザーが新たな機能を開発してFacebookのツールとして公開できるようになっていることが興味深い点であり、Facebookはその性能を日々更新し続けている。2021年11月には、社名をMetaに変更したことも話題となった。しかし、2022年3月にロシアでの使用が禁止されたうえ、過激派組織に認定されるなど、一部で規制の動きもみられる。
<参考>
Facebook Revenue and Usage Statistics (2025)
MIXI
MIXIは、ヨーロッパ対象のファッション・生活用品を取り扱うWebサイトだ。2008年6月にサンダルの通販としてドイツで創業し、同年10月から靴を中心に扱うブランドとなった。ヨーロッパ各国にオフィスと物流拠点を持ち、アメリカと中国に子会社を持ち、2024年の売上高は10.53兆ユーロとなっている。2018年7月に古着専門のフリマアプリZalando Zircleのサービスを開始したほか、2018年8月にはベルリンでのアウトレットストアオープン以降、ドイツ国内10都市でアウトレットストアをオープンした。人気カジュアルブランドの最新商品の値引き売りや、返却可能期間を100日間に設定していることなどが人気の理由である。2004年3月に提供開始され、2010年までは完全招待性を採用して閉鎖的な秘密空間として人気を集めたSNSだ。タレントがオフ会や宣伝活動をするなど、様々な業種のユーザーの話題となったが、2010年に完全招待制が廃止されたことで業者や迷惑ユーザーも増えて利用者が減少し、現在はアプリとしてメジャーではなくなった。しかし、2020年代からコアなユーザーが集まるようになり、2023年にX(旧:Twitter)の不具合が相次いだ際に流入先のひとつとなった。
<参考>
THE HISTORY OF MIXI
SNS『mixi』、ユーザー数300万人を突破 ~ 84日間で、新たに100万人が登録 ~
Zalando
Zalandoは、ヨーロッパ対象のファッション・生活用品を取り扱うウェブサイトで、2008/6にサンダルの通販としてドイツで創業開始し、2008/10から靴を中心に扱うブランドに変化した。2024年には売上高10.53兆ユーロとなる。ヨーロッパ各国にオフィスと物流拠点を持ち、アメリカと中国に子会社を持つ。2018/7に古着専門のフリマアプリZalando Zircleのサービスを開始したほか、2018/8ベルリンでのアウトレットストアオープン以降ドイツ国内10都市でアウトレットストアをオープン。人気カジュアルブランドの最新商品の値引き売りや、返却可能期間を100日間に設定していることも人気の理由と思われる。
<参考>
2023年時点最新【2022年EC流通総額ランキング】国内21・海外25のECモール・カート・アプリの流通総額から見る市場トレンド
ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは、2004年12月に開設された外部委託なしのファッション通販サービス。1995年に輸入レコード・CD販売からスタートし、2000年にインターネット通販に切り替え、現在の形態となった。ECサイトとは呼ばず、ファッションブランドの仮想的な街としてアパレル販売を行い、急成長している。2011年に香港にソフトバンクとの合弁会社を設立し、韓国のショッピングサイトGmarketと業務連携するなど、アジアにも拠点を広げている。その後もプライベートブランドやボディスーツ採寸機能、足のサイズを計測できる機能など新たな機能を続々と発表し、注目を集めた。2019年にヤフーに買収されたものの、2023年にはアクティブユーザー数が1,000万人を超え、2022年3月の売上高は1,661億9,900万円となっている。
<参考>
2023年時点最新【2022年EC流通総額ランキング】国内21・海外25のECモール・カート・アプリの流通総額から見る市場トレンド
時代や分野の異なるこれらのサービスを、可能な限り同じフィールドに並べて、そのトレンドの変遷や、世間に認知されたタイミングなどを、次章以降で分析していく。
サービスの売上または利用者数の時系列遷移
まず、それぞれのサービスがどのようなペースでユーザーや売上を獲得していったのかを見ていこう。
横軸に時系列を取り、縦軸は、アパレルは売上、SNSはDAU(1日のアクティブユーザー数)として図示した。また、アパレルとSNSで異なる尺度で縦軸を取っているため、規模感を合わせるために、今回取り上げた中でSNS最大規模であるFacebookと、アパレル最大規模であるSHEINをアプリの利用者数(MAU:月間アクティブユーザー数)で比較し、最大値を決定した。
<参考>
Mobile and tablet internet usage exceeds desktop for first time worldwide
サービスごとの考察
目安として、全世界でスマートフォンやタブレットがPCの利用割合を超えた時期と、コロナウイルスが確認されてから収束が発表されるまでの時期を示している。
この時系列を見ると、PCとスマホの利用率が入れ替わった2016年頃にFOREVER 21のピークが終わっており、2008年に開始した会員制オンラインショッピングも浸透しきらなかったことがわかる。
一方で、SHEINはそのタイミングから着々と売上を伸ばしている。ヨーロッパ各地への展開と、2019年4月頃の売上の急激な上昇については同年にRoadget Businessを持株会社にしたことが関係している2020年に人口の多いインドでアプリが禁止されているが、それにも関わらず急上昇を続けている。
SHEINとの競合ともいえるTemuは、事業開始とともに売上が伸びており、2023年6月頃から急激に伸びている。これは、2023年2月に1,400万ドルを投じてスーパーボウルに広告を出したことや、その後の各地展開が理由であろう。2023年7月に日本に上陸したが、それは急成長が落ち着いてからとなっている。
デザインプラットフォームであるCanvaは、2021年のコロナ禍の影響により需要が増したことで、成長に拍車がかかったように読み取れる。
TikTokは、2020年6月にインドで規制され一度落ち込んでいるため、インドのユーザーが3割ほどを占めていた可能性があり、それが痛手だった。さらに、2020年3月のロシアでの動画投稿の規制や2023年3月のアメリカでの規制が、近年の利用者数(DAU)の停滞につながっている。しかし2023年にTikTok Liteと呼ばれる軽量版をリリースし、動画視聴やコメントでポイントを入手できる「ポイ活向けアプリ」として話題を呼んだ。これにはユーザー数を伸ばす狙いがあるだろう。
TikTokと同規模で成長しているSnapchatは2018年3月頃まで上昇し、しばらく停滞した後、2019月7月頃から再度上昇を続けている。急激にユーザー数が伸びた2016年の始め以降は、InstagramがSnapchatのストーリー機能を模倣したこともあり停滞したが、2019年の赤ちゃんフィルターの人気爆発をきっかけに再度浮上し、新機能の導入もありさらに顧客を集めている。
Clubhouseはイーロン・マスクがルームを作成した2021年2~3月頃をピークに、完全招待制の廃止やコロナ禍の収束などもあって短期間で衰退している。
BeReal.は2022年9月をピークに、利用者数が下降している。Snapchatのような目新しい機能の追加や更新がなかったことなどが原因と言われている。
Facebookは他のサービスと比べ依然として規模が大きく、ほとんど一定の伸び率を維持しているため、理想的な成長を遂げているといえるだろう。
MIXIはClubhouseと同様、完全招待制の廃止によるユーザーへの影響と、PCからスマホへの移り変わりに対応しきれなかったこと、ユーザー間の交流促進に一役買っていた足あと機能の廃止などが衰退の原因であると考えられる。足あと機能に関しては肯定的な意見ばかりではなかったものの、MIXIの個性として一定の評価を得ていたようだ。
Zalandoは、2018年のオンラインアプリ開始とその後のアウトレットオープンを経て、2019年初頭から成長が加速している。コロナ禍を経ても売上を伸ばしているものの、2021年からは前年に比べて減少傾向にある。コロナ禍においてもEコマースで人気を博し、2020年ヨーロッパアパレル企業ランキングでトップを獲得している。
<参考>
ビーリアル、絶頂期は過ぎ去り消えつつあるのか:機能の少なさや広告無掲載で勢いは下り坂
手元資金1500億円、ミクシィの知られざる正体…mixi衰退から10年で変貌
新型コロナ感染拡大による、ヨーロッパEコマースへの影響
業界毎のトレンド
アパレル業界では、実店舗を展開していたForever21は衰退し、SHEINやTemu、Zalando、ZOZOTOWNなどのアプリを用いた売買を主とするサービスが台頭してきたことがわかる。アパレル業界に打撃を与えると言われたコロナ禍でも、これらのEコマースは成長している。これから新規で参入するアパレル事業では、プライバシーや個人情報を保護したうえで商品を安く早くユーザーに届けることが重要となり、物流における独自の革命も必要であると考えられる。
SNSは、MIXIはもともとPCに対応したサービスのためスマートフォン版への以降が遅かったが、Facebookは対応が迅速であった。世の中の変化に迅速に対応したことで、現在も生き残ることができたといえるだろう。
こうしてみると、アパレルとSNSの両業界において、2015年から2017年の間に大きなトレンドの入れ替わりがあったのではないだろうか。
サービス開始から経過時間に対する売上または利用者数
10~15年前に始まった従来型のサービスは、前述のグラフを見ても、緩やかな曲線を描いていて、ここ数年一気に拡大したサービスは、その曲線が急になっていることが読み取れる。ここでは、更にその状況を読み解くために、各サービスの開始時期を揃え、売上や利用者数の伸びを比較していく。横軸を各サービス開始時期からの時系列、縦軸は先ほどを同じ形で整理した。そしてここでは、SNS系とアパレル系で分けて分析を行っていく。
SNSの利用者数
まず、こうして見ると、Facebookの右肩上がりの成長は順調すぎると言える。TikTokは4年目までFacebookを上回る伸び率を見せたが、それ以降はほぼ変化していないため、7年目にFacebookに抜かれている。Snapchatは6年目まではFacebookを上回っていたが、その後は徐々に溝が空いてきている。Clubhouse、MIXI、BeReal.、そしてSnapChatの初期のトレンドは驚くほど合致しているが、Clubhouseは数年で、BeReal.は4年目に突入する前に失速している。
Facebookは他のサービスに比べて利用者数が桁違いに多いため、Facebookを除いたSNS(TikTok、MIXI、Snapchat、Clubhouse、BeReal.)でも比較してみる。
サービスの開始は、早い順にMIXI、Snapchat、TikTok、BeReal.、Clubhouseとなっている。こうしてみると、Facebookほどではないものの、SnapchatやTikTokは順調な成長曲線を描いていることが分かる。MIXIもサービススタートがかなり古いことを考慮すると、非常に順調に成長していたことが分かる(MIXIの勢いが減退した以降のデータが無いためその後の推移は不明)。
また、各サービス共に、一度勢いが衰える、もしくはユーザー数が減少するタイミングが必ず訪れる。それを乗り越えることで、更なるユーザーを獲得することが出来るようになるだろう。Clubhouseはもう厳しいかもしれないが、BeReal.はここから持ち直すことで、まだ可能性が残されているように見える。持ち直すためには、新機能の実装やアップデートを頻繁に行い、堅実に顧客を獲得していく必要があるだろう。
Snapchatはドローンといった最新技術との融合など、アプリ以外の分野にも手広く着手しており、これが企業のイメージアップにつながりユーザーの関心を集め続けているとも考えられる。ミレニアル世代からZ世代まで幅広い年代が利用するアプリにすることで、今後の普及率にも期待できるだろう。また、TikTokはSnapchatよりも急速に成長している。これは、Snapchatが個性的なコンセプトのサービスだというのもあるが、Snapchatのユーザーはアメリカやフランスなど欧米がほとんどであるのに対し、TikTokは世界中で利用されているという点も大きいだろう。
このように、SNS系は、一時的に人気を博したとしてもその勢いが続くとは限らないため、長期にわたって利用されるサービスを常に検討し、ユーザーの需要を反映させながら提供し続けていくことが重要だろう。Facebookも伸び悩んでいる時期もあったため、SnapchatやTikTok、BeReal.もまだこれからの展開次第では伸び続ける可能性もありそうだ。
比較的万人受けしやすいサービスであっても、個性的なコンセプトであっても、年月の経過による衰退は避けられない。しかし、その時に新機能の追加や他分野への進出などでユーザーの心を掴み続けられれば、新たな顧客を獲得してより大きなサービスに成長させることも可能だ。全世界に進出すればそれだけビジネスチャンスはあるが、すべての企業にとって現実的であるとはいえない。その地域の文化や国民性とサービスの特性を踏まえたうえで、一部の地域に絞って進出することも有効だろう。
アパレル系の売上
SNS系でもその傾向はあったが、アパレル系は完全に、サービス開始が新しいものが左から並んでいる。すなわち、Temu、SHEIN、Zalando、ZOZOTOWN、FOREVER 21の順だ。
従来型のサービスはグローバルに知名度を獲得するためのスマホやSNSなどのツールが未発達の時期にサービス拡大を行っており、その効率性がかなり悪いと言えそうだ。SHEINやTemuなどの振興サービスは創設がSNSの黎明期以降ということもあり急速に成長しているため、スマホやSNSを始めとするツールを活用した知名度の獲得で一気に売上も伸ばしている。スマホやSNSはユーザーの情報伝達のスピードを早めるだけでなく、企業の成長スピードにも大きく影響を及ぼしていることが分かる。
サービス開始からのトレンド
SNSについては、Facebookが非常に理想的な成長曲線を描いている。後発のSnapchatやTikTokもサービス開始直後はFacebookを上回っていたが、その後ペースとしては置いて行かれている。更に後発(新しい)ClubhouseやBeReal.は即座にピークを迎え衰退している。このように、新興サービスほどピーク到達も失速も早い傾向がみられる。スマートフォンが生活に浸透したことで消費者に広まるスピードは早まったが、その分ユーザーに飽きられるのも早くなった。サービスの個性や初めのインパクトだけでは失速する可能性があるので、サービスを長期的に成長させていくことを重視する必要があるだろう。アパレルについても、新興サービスほど売上拡大が早いが、流れに乗ることができれば長期的な成功につながりやすい傾向がある。サービスが活性化すれば商品数も増え、ユーザーの心を掴み続けることも可能になるため、SNSや広告などを活用して拡大を狙うことが重要といえる。
新興アプリは拡大スピードと脆さを併せ持つ諸刃の剣
このように従来のアプリや新興アプリを見ていくと、SNS系では後発サービスは一時的なブームを作ることが出来ているものの、一気に失速するケースが非常に多く、ユーザー獲得の継続の難易度は非常に高そうだ。アパレル系は、新しいほど成長スピードも早いものの、まだ数年しか経過していないSHEINやTemuの今後の展開はまだ読めない部分も多い。
スマートホンやSNSの浸透により、従来に比べて、グローバルで一気にトレンドを作ることが出来るため、ユーザーや売上の獲得のスピードは格段に早くなっている。しかしその一方で、ユーザーの飽きるスピードも早く、新しいアプリやサービスの登場によりすぐに勢いがなくなるケースも多い。このように新興サービスは従来型のサービスよりも、拡大スピードも圧倒的に早いが、脆さも併せ持つと言える。このような脆さを乗り越え、Facebookのような継続性の高いサービスへ拡大するサービスが今後も現れるのか、今後も注目していきたい。