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EUの一般データ保護規則(GDPR)は、マーケティングを邪魔するものではなく、役に立つものだ

EUの一般データ保護規則(GDPR)は、マーケティングを邪魔するものではなく、役に立つものだ

マーケティング
2024/07/08

欧州のCEOとマーケティング担当役員の83%が、「EU一般データ保護規則(GDPR)の基準を遵守しながらも、効果的なマーケティングを行うことができる」と回答。


新しいソーシャルキャンペーンを立ち上げ、Webサイトを最適化し、ソートリーダーシップ(特定の分野で将来を先取りした革新的なアイデアや解決策を発見し、示すことでその分野の主導者になること)のチャンスを確立するー。これらは今日のビジネスを成功させる上で不可欠であるが、見逃すことのできない重要な4番目の要素がある。それは、データプライバシーである。

 

6年前、欧州連合(EU)は一般データ保護規則(GDPR)を制定し、データプライバシー遵守の世界基準を設定した。それから間もなく、他の業界や国々でも同様の政策が制定され、データプライバシー規制が広く実施されるようになった。

 

しかし、私たちのデジタル行動は常に変化しており、GDPRは施行された2018年から、EU域内の企業、消費者、新興テクノロジーのコンプライアンスにどれほどの影響を与えたのだろうか、という疑問が生じている。

 

ポーランドに本社を置くプライバシーに準拠した分析プラットフォームのPiwik PROが欧州27か国のCEOおよびマーケティング担当役員1,800人を対象に実施した調査により、GDPRコンプライアンスの地域差が業務運用において重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、このレポートは、世界中の企業のデータプライバシー慣行の多様性に関する貴重な洞察も提供している。

 

回答者の圧倒的多数(83%)は、企業が個人情報保護法を遵守しながら効果的なマーケティング活動を実施できると考えているが、「GDPRは理解しやすい」と考えている人は66%に過ぎない。この差異は、マーテック(ITを取り入れたマーケティング活動)ベンダーがコンプライアンスを理解するために必要な助言を組織に対して確実に提供するチャンスがあることを明示している。

 

もう一つの大きな発見は、「GDPRガイドラインを遵守する組織は、消費者の信頼と法規制遵守の強化に貢献したという肯定的な反応を得た」ことである。ますますデータ主導になる未来で成功を収めようとする企業にとって、この調査結果を理解することは、現代の複雑なマーケティングを克服するために不可欠である。

 

GDPRがビジネスとプライバシーに与える影響

このレポートは、組織がデータプライバシーコンプライアンスをよりよく理解し、業務を安全に最適化するためにデータを収集し、活用するところまで来ていることを明示している。

 

顧客データを収集することは、マーケティング戦略を強化するための第一歩である。この情報を企業がどう活用するかは、その企業の業績と社会的認知にとって極めて重要である。データ活性化に関していえば、回答者の79%は「営業とマーケティングの効果に重要な要素である」と感じている。回答者の半数以上(51%)は、データ活性化の主な課題として「セキュリティとコンプライアンス」を挙げ、次に「データの不正確さ」を43%が課題として挙げた。

 

デジタル化が、企業や消費者のオンライン化をさらに推し進めるなか、プライバシーをより高いパフォーマンスとより良いサービスと引き換えにするのは、自然なことである。プライバシーコンプライアンスをマーケティング活動に積極的に組み込んでいる組織は、顧客体験と業界標準を向上させながら、さらなる透明性を示しているのだ。

 

回答率上位国の結果分析

この調査結果を実行に移すことで、プライバシー要件と効果的なマーケティング手法のバランスを取る能力が実証され、GDPRコンプライアンスの強みと弱みが明らかになる。GDPRがビジネスにはっきりとプラスの影響を与えると答えた回答者は少なかったが、ほとんどの回答者はGDPRが障害とは考えていなかった。

 

これは、GDPRとコンプライアンスが顧客の信頼構築に及ぼす影響によるものと思われる。回答者にとっては、顧客の信頼がコンプライアンスの主な動機であった(70%)。以下、企業価値の維持(52%)、法的義務(40%)と続く。コンプライアンスへの原動力として罰金のリスクを挙げた回答者はわずか16%であった。

 

回答率が高かったのは、デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダの 5か国。これらの国からの主な調査結果では、大手テック企業よりもEU拠点のベンダーを優先する、コンプライアンスに対する企業独自のアプローチが果たす役割を示している。これら5か国の主な調査結果は以下の通りである。

 

  • デンマークでは、企業の68%が「消費者との信頼関係の構築が、GDPRコンプライアンスの重要な原動力である」と回答し、「コンプライアンスへの取り組みが、事業運営に32.7%のプラスの影響をもたらした」と回答した。
  • オランダの企業は、69%が大手テック製品よりもEUの代替技術を支持している。オランダはGDPRを遵守したマーケティングテクノロジーの導入で世界をリードしている。
  • フランス企業は、顧客のデータ保護を優先し、57%がデータ処理の主要な法的根拠として「同意」を使用している。
  • ドイツでは、消費者の信頼構築が企業のGDPRコンプライアンスへの原動力となり、76%の企業がGDPRの要求事項の導入は容易であると考えている。
  • スウェーデンの企業は、GDPRを業務の透明性を高めるための重要な要素として挙げており、70.3%がコンプライアンスを確保するために欧州のマーケティングテクノロジーの代替案を選択している。

マーケティングの未来:プライバシー、信頼、パフォーマンスのバランス

これら5か国の結果、およびレポート全般を見ると、成功したマーケティング戦略は、パーソナライゼーションと、顧客主導のコンプライアンス認識を重視することが明らかな原動力となっている。これは、EUを拠点とする企業が提供するビジネス価値が、大手テック企業の競合他社を上回る業績と好感度を示していることからも明らかである。

 

さらに、プライバシー要件に合致し、ユーザーのパーソナライズされた選択肢を提示するツールや方法を活用できる組織は、ファーストパーティデータの価値を示している。ファーストパーティデータは、顧客の行動や嗜好に関する重要な情報を明らかにするものである。ファーストパーティデータは、責任を持って活用すれば、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを展開し、顧客との関係を強化し、パーソナライズされたマーケティング活動を最適化することができるのだ。

 

GDPRは、施行以来、データプライバシーにおける世界的なベストプラクティスを設定するための指針となっている。米国内のコンプライアンスとの違いはあるものの、米国企業はGDPRに基づいた戦略を活用することで、規制の期待に応え、顧客との関係や体験を強化し、競争力を維持し、ビジネス目標を達成することができる。

 

これらの分野に焦点を当て、この調査結果を研究することで、企業は進化する個人情報規制や新たなテクノロジーがもたらす課題に対処するための準備を整えることができるだろう。このアプローチにより、効果的なマーケティング戦略を維持しながら、より強固で信頼できる顧客関係を築くことができるのである。

 

詳細は、こちらからレポート全文を見ることができる(登録不要)。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の7/1公開の記事を翻訳・補足したものです。