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RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)モバイル・マーケティングが米国で大ブレイクする理由

RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)モバイル・マーケティングが米国で大ブレイクする理由

マーケティング
2024/06/03

米国のマーケティング担当者は、この秋リリースのAppleの新しいiOSで、より没入感のあるメッセージング体験をプレイブックに加える可能性がある。

 

SMS(ショートメッセージ)モバイルキャンペーンは、顧客から十分に信頼され、携帯電話番号を教えてもらえる場合には、顧客にアプローチする効果的な方法である。テキストは、顧客が領収書、出荷の最新情報、予約の確認、そして最近ではお得な情報を受け取るための一般的な方法である。

 

しかし、テキストは、たとえ写真や絵文字、Webサイトへのリンクなどの添付ファイルが含まれていたとしても(それは技術的にはMMS(マルチメディア・テキスト)になる)、必要最低限のものでしかない。テキストで送信されるより魅力的な体験のために、マーケティング担当者はRCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)を採用している。

 

RCSキャンペーンはアプリと似たような動きをするが、アプリをダウンロードする必要はない。それにも関わらず、米国のマーケティング担当者は、RCSキャンペーンを実施することに消極的である。なぜだろうか。このフォーマットは現在Androidではサポートされているが、Appleではサポートされていない。Appleは今秋リリースされるiOS 18でこれを変更するだろうとの見方がある。

 

この動きにより、RCSのリーチが携帯電話ユーザーの約40%からほぼ100%にまで拡大するため、米国のマーケターにとってRCSはより人気が高く、効果的なチャネルになる可能性があるのだ(司法省がAppleに対して起こした反トラスト法違反訴訟では、同社が米国のスマートフォン市場の65%を占めているとされている)。

 

RCSとは何か?

RCSは、メッセージングにおける充実した機能をサポートする標準規格である。これは、モバイルネットワークの業界団体であるGSM Associationによって10年前に制定された。GoogleはGoogleメッセージでこのフォーマットを採用し、Androidユーザーがこのフォーマットにアクセスできるようにした。一方、AppleはiOSでこのフォーマットをサポートすることを保留している。

 

RCSでは、ユーザーは高品質のGIF、動画、その他のインタラクティブな要素をテキストメッセージで直接共有できる。マーケティング担当者は、ロゴやデザイン要素を追加して、メッセージに独特のブランド感を与えることができる。洗練されたRCSのデザインでは、複数の動画や販売する商品をカルーセルに埋め込むことができる。ユーザーはメッセージ内のWebサイトへのリンクやボタンをタップすることができ、アプリのようなユーザーエクスペリエンスを生み出すことができるが、アプリをダウンロードする手間はかからない。

 

マーケティング担当者はまた、RCSメッセージの行動を測定する力を持つようになるため、モバイル分析でキャンペーンを最適化できるようになる。

 

AppleはRCSをサポートするだろうか

おそらくサポートするだろう。Appleは公式発表を行っていないが、昨年、同社の広報担当者は、RCSは今秋のiOSアップデートでサポートされると示唆した。

 

今年、Appleは米国での独占的な慣行を抑制する圧力の高まりにさらされている。iPhoneとAndroidユーザーの間で共通のメッセージング・フォーマットをサポートすることは、正しい方向への一歩となり、Appleが今秋のRCSサポートに踏み切るという信念に重みを与えるだろう。

 

「まだいくつかの問題は残っているが、Apple(の声明)により、RCSがGoogleとAppleの両方の環境で利用され始めることを期待している」
と、モバイルエクスペリエンス企業Sinchのカスタマーサクセスおよびイノベーション担当シニアバイスプレジデントであるMatt Ramerman氏は述べている。「また、すべてのワイヤレスオペレーターが自社の製品にも同じように投資していることもわかっている。これがRCSの新時代の到来を告げることになるだろう」。

 

RCSはSMSをどう変えるか?

「(RSCは)私たちが待ち望んでいた機能セットをついに搭載することになり、メッセージングを単なる運用ツールとしてだけでなく、モバイルを利用した顧客体験の重要な中心に据えることができるツールとして利用することについて、企業が抱いていた躊躇(ちゅうちょ)を払拭してくれると信じている」とRamerman氏は述べた。

 

考えられるシナリオは、AppleのiPhoneが、Appleのユーザー同士がメッセージをやり取りする際に、デフォルトのiMessagesプラットフォームを通じてRCSメッセージングをサポートするというものである。iOSのアップデートが計画通りに進めば、iPhoneとAndroidユーザー間のRCSメッセージもサポートされるだろう。Google Messagesは、これまでと同様、Android同士の通信を通じてRCSをサポートし続けるだろう。

 

このシナリオにおける大きな変化は、より多くの米国の消費者がブランドからのRCSメッセージを受信できるようになることである。SMSテキストよりも多くの機能を持つRCSは、ブランドと顧客とのコミュニケーション方法を変える可能性を秘めている。

 

「SMSは、私たちが携帯電話を使い、友人や家族とやりとりする方法の大部分を占めている」とRamerman氏は説明する。「米国での企業利用は、銀行が詐欺の警告を送ったり、海外配送サービスを提供している運送会社FedExが今日荷物が到着することを知らせたりといったように、主に通知のプッシュ配信によって定義されている」。

 

同氏はさらに、「メッセージングに関する強力で近代的なアナリティクスはほとんど制限されており、またチャネル自体も機能が豊富ではない。こうした状況により、企業によるCXツールとしてのメッセージング導入への投資は抑制されてきた。彼らの顧客がそこにいることを考えると少し奇妙なことだが、そこには障壁があったのだ」と付け加えた。

 

マーケターが使うべきRCSの機能とは?

「RCSは、メッセージングのための優れた機能を数多く備えている」と、グローバルRCSビジネスメッセージング企業DotgoのCEO、Inderpal Singh Mumick 氏は述べている。「RCSは本当に双方向のチャネルであり、コンテンツが豊富で、SMSよりもはるかに多くの分析を提供する。企業は分析を通じてより良い結果と可視性を得ることができ、消費者ははるかに快適な体験、より良いビジュアル、より良いユーザーエクスペリエンスを得るため、より多く利用するようになる。これにより、企業はより良い結果を得ることができる」。

 

同氏によると、Dotgoのサービスを通じて世界中で約2,000のブランドがRCSキャンペーンを実施しており、特にインド、ブラジル、メキシコなどAndroidの普及率が高い市場では顕著であるという。

 

同氏は、今年後半、AppleのiOSアップデートの数ヶ月後に、米国でさらに多くのRCSキャンペーンが展開されると予想している。

 

シンプルな要素の追加から顧客とのより深いエンゲージメントの提供まで、マーケティング担当者がRCSキャンペーンで実行できるアクションをいくつか紹介しよう。

 

  • 各ユーザーにパーソナライズされたメッセージや動画を送信する。
  • ユーザーが返事を入力する代わりに、返信候補を含める。
  • 提案されたアクションを追加する(送信者に返信する代わりに、地図やWebブサイトを開いたり、電話番号を呼び出してサービス担当者と話したりする)。
  • ユーザーの物理的な環境でのアクションを推奨するために、ユーザーの場所を尋ねる。
  • ユーザーがスワイプで移動できる5つ以上のオプションを持つカルーセルを埋め込む。
  • 個々のユーザーレベルで、メッセージに対するすべてのインタラクションのアナリティクスを収集する。
  • RCSメッセージの要素をA/Bテストする。
  • チャットボット体験と同様に、RCSメッセージング・チャネルを通じて、生成AIによる双方向の会話を促進する。

 

「リッチな画像や動画、写真のカルーセルを誰かに送るパワーは、味気ないテキストを送るよりもはるかに強力だ」とMumick氏は話す。

 

RCSの将来について

顧客体験コンサルティング会社CXJourney Inc.の創設者兼CEOであり、MarTech寄稿者のAnnette Franz氏によると、米国のマーケターの中にはすでにRCSキャンペーンを使用している人もいるという。AppleがRCSをサポートする可能性が高いことから、マーケターによるRCSキャンペーンの採用が広がるだろう。

 

「Android同士の通信でも、AndroidとiPhone間の通信でも、RCSで行われるようになるだろう」とMumick氏は指摘する。
「デフォルトでRCS経由の通信になるのは時間の問題だろう」。

 

「Appleが参入したことで、より多くのマーケターがRCSを活用する方法を見つけようとしている」とFranz氏は述べている。
「今のところ、一部のマーケター(家電量販店Best Buy、主にピザを販売するファーストフードチェーン店Papa John’s、ファーストフードチェーン店Subway、世界最大のスーパーマーケットチェーン店Walmart、日本の自動車メーカーNissanなど)がRCSを使用しているが、一部のユーザーしか対象にできないという限界を認識している。Appleユーザーは引き続きメッセージを受け取ることはできるが、RCSが現時点でiPhoneではサポートされていないため、その体験は得られない」。

 

Franz氏は、メッセージング体験が充実すればエンゲージメントも高まり、マーケターにとってRCSが魅力的なものになるという点に同意している。

 

「リアルタイムのアップデートやよりシームレスな購買機能によるサービスやサポートの向上は、満足度の向上や、顧客がこれまで経験したことのないような体験にもつながる」とFranzは語る。「これらは顧客にとってもブランドにとっても価値あるものだ」と続けた。

 

「マーケターが単純なテキストメッセージだけでなく、顧客とのエンゲージメントのために利用できるユースケースは数多くあり、それらのユースケースのどれが消費者にフィットするかを見極めるには時間がかかるだろう」と、モバイルテクノロジー企業Vibesの共同設立者兼最高イノベーション責任者であるAlex Campbell氏は言う。
「私たちは、RCSを単に見た目がかっこいいからやりたいというのではなく、ROIとエンゲージメントを向上させ、より良い顧客体験を実現するためにやりたいのだ。今年は、どのような可能性が特定の顧客に有効かを見極めることが重要である」と続けた。

 

優れたエクスペリエンスとより良いカスタマーサービスは、顧客が好みのブランドとのリッチなインタラクションのためにRCSメッセージングに頼るのに十分な理由となるだろう。

 

※当記事は米国メディア「Martch」の5/30公開の記事を翻訳・補足したものです。