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米国のアパレルブランドTrue Classicは、いかにして購入後のエクスペリエンスから収益増を達成しているか

米国のアパレルブランドTrue Classicは、いかにして購入後のエクスペリエンスから収益増を達成しているか

マーケティング
2024/05/07

同社は、正確な発送と配達の最新情報を提供するparcelLabのツールを利用して顧客満足度を向上させた。

 

マーケティングメッセージを大量に受け取った消費者は、そのメッセージが購入した優先順位の高い商品に関するものであれば、好意的に受け止める傾向にある。米国のアパレルブランドであるTrue Classicは、これを活用して顧客満足度を向上させ、収益を増加させた。

 

同社がこのことに気づいたのは、購入後の顧客に正確な配送や送料の詳細を記したメッセージを送るようになってからだ。このメッセージは、顧客サービス体験の重要な一部として顧客に歓迎されただけでなく、リピート購入を促し収益にもつながっている。すべては、より良い、より正確なコミュニケーションから始まる好循環の一環だ。

 

世界中に発送

2019年に立ち上げられたTrue Classicは、わずか2年で売上高1億ドルに成長した。クラシックなメンズTシャツからスタートし、やがてパンツ、ジーンズ、ポロシャツ、アクティブウェアへと拡大していった。2022年には、ブランド初の小売店を5店舗オープン。True Classicの顧客は192カ国から注文することができ、同社はまさにグローバルブランドとなっている。

しかし、これほど多くの地域に配送するということは、複雑な配送チェーンを意味し、それを予測するのは難しい。

True Classicのカスタマーエクスペリエンス担当副社長、Breanna Moreno氏は、「昨年、世界規模で事業を拡大する中で、私たちは非常に大きな問題を解決しようと考えていた。それは、限られたリソースで、購入後のエクスペリエンスにどのように対処するかということだ」と述べている。
「海外向けの販売に関して、注文がいつ到着するかについて明確な予想を立てたかった」。

 

彼女はさらに、「消費者から『注文した商品は今どこですか?』と問い合わせが入ることは避けなければならないと考え、この問題を解決することに大きな意欲を燃やした」と付け加えた。

 

新しいポスト・パーチェス・エクスペリエンスの導入

True Classicは昨年、購入後の体験を提供するソフトウェア会社、parcelLabが開発したツールを導入した。このツールは、スウェーデン発祥の世界最大の家具量販店IKEAや米国の女性向けアパレルブランドChico’sのような企業向け小売業者が利用。350社の運送業者からのデータを追跡し、AIを活用した分析によって配達時間の見積もりや遅延を予測することで、顧客の配送・配達エクスペリエンスを透明化するのに役立っている。

 

正確な配達情報を得ることで、顧客の関心とロイヤリティは高まるものだ。parcelLabのツールは、True Classicが以前使用していたツールのクリックスルー率をほぼ倍増させている。

 

「すべてのエクスペリエンスはTrue ClassicのWebサイト上にあるが、その分野でサードパーティベンダーと協力している場合は、そのようなエクスペリエンスを得ることができない場合がある。そのため、それは本当にエキサイティングなことだった」と、Moreno氏は述べた。

True Classicの購入後通知。画像提供:True Classic

 

購入後に適切なメッセージを届ける

ParcelLabのテクノロジーは、正確な配送予測を提供するだけでなく、顧客のエンゲージメントに基づいてメッセージの受け取り方を最適化する。

たとえば、ある顧客はテキストよりもメールを好むかもしれない。メッセージの嗜好は国や地域によって異なり、こうした洞察も、多くの国際市場をカバーするソリューションを利用する利点のひとつである。

True Classicはメールの形式を変えておらず、従来のメールマーケティングソリューションKlaviyoのeメールプラットフォームを引き続き使っているという。

 

「私たちはメールの形式を更新していない。文字通り、以前のメールの構造をそのままに、parcelLabがそれをサポートするように更新したものだ」とMoreno氏は話す。
「社内向けにいえることとしては、RPE(メール1通あたりの収益)が大幅に向上していることを考えると、メールをもっと良くするチャンスがあるということである」。

 

新しいソリューションを導入して以来、RPEは34.8%増加し、注文率は22.5%上昇した。メールのクリックスルー率は1.87%増加し、開封率は6.55%増加している。

 

個々の注文と購入後のセグメントに関するきめ細かいデータにより、True Classicは世界中の天候遅延やその他の予想される問題について顧客に知らせることができる。ParcelLabは、AIを活用した予測分析によって、運送会社から受け取ったデータを解析し、True Classicに最新の情報を提供する。

 

「ParcelLabは、これらの顧客エクスペリエンスをコントロールするブランドの能力を向上させる」と、ParcelLabのCTO兼共同創設者であるJulian Krenge氏は述べている。「私たちは、約束によってコンバージョンを促し、満足度とエクスペリエンスを管理できるように支援している」。

 

顧客へのコミットメント

Krenge氏によると、より良い顧客サービスは、カスタマージャーニーの早い段階、つまり購入前、マーケティング担当者が購入後のエクスペリエンスがどのようになるかについての期待を設定する時点から始まるという。

True Classicの返品用ポータル。画像提供:True Classic.

 

データを見て、ブランドが顧客にどのような約束をすることができるか。また、顧客がどの方針を好むか。これらを決めるのは、ブランド次第である。True Classicの場合、これらの約束は価値提案となる。たとえば、商品の配送予定日時は、顧客が購入前、チェックアウト画面を開いているときに提示される。さらに顧客は、購入後30日以内であれば、どんな商品でも返品することができる(「最終セール」と表示された商品を除く)。

 

同社には、指定された「Happy Returns」場所が表示される返品専用ポータルがあり、顧客は簡単にラベルを印刷して返品商品を発送できる。

 

これらすべての注文と、パッケージからのデータにより、価値提案に対する信頼が高まっている。 また、リスクを軽減し、潜在的な不正行為を特定するのにも役立っている。特定の顧客や地域からの返品リクエストが大量にある場合、ブランドは、商品に問題がなく、詐欺師ではないことを確認するための追加の手順を提供できるのだ。たとえば破損した商品の写真を撮るよう要求することもできる。

 

購入後のエクスペリエンスは、顧客にとってエンゲージメントが高いタイミングだが、マーケティング担当者はしばしば見落としがちである。

「顧客は購入後ほど夢中になることはない」とKrenge氏。「顧客にサービスを提供しているのに、十分に活用されていない領域がある。 小売業者は実際にはこの領域を活用しておらず、これこそが今最も注目されるべきタイミングなのである」と続けた。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の4/23公開の記事を翻訳・補足したものです。