株式会社矢野経済研究所は、2023年度の国内食品通販市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2022年度の国内食品通販総市場規模は、小売金額ベースで前年度比0.3%減の4兆5,752億円だった。これは、コロナ禍の巣ごもり需要を背景に、2020年度から2021年度にかけて市場が大きく拡大していたが、2022年度後半から徐々にコロナ禍の行動制限が緩和されたことで食品通販の需要が落ち着いたことに加え、物価上昇を受け節約志向が強まったことが市場規模の微減に影響したと考えられる。また、2022年度の食品通販のチャネル別市場規模については、対前年度比ではショッピングモール(ECモール、カタログ通販も含む)が底堅い推移を見せ、新規参入が続いたネットスーパー市場も拡大したが、他の業態については縮小傾向だった。
2023年度に関しては、直近でのコロナ禍の需要増加後の反動減や物価上昇による節約志向の高まりが市場規模推移に関与しており、特に物流の2024年問題に起因した配送料の値上げが市場にマイナスの影響を与えていると思われる。ただし、ギフト需要の堅調や、商品の値上げによる販売価格上昇の影響で、市場規模の縮小は抑えられているとみられる。
物流における2024年問題
物流の2024年問題を見据えて2023年4月から配送料の値上げが始まったことが、食品通販市場に影響を与えているようで、食品通販事業者各社においても、配送料や配送料優遇ラインの見直しに向けた動きが広がっている。さらに通販業界で広く使用されている”送料無料”の表示の見直しに向けた行政の方針公表もあり、送料込みの表示に変更する事業者も出てきていることから、表面的な表示価格が従来より上昇傾向にある。特に食品は単価が安いため、商品価格に対する配送料の比率が高くなりやすく、消費者にとっては通販で購入することが割高に感じられることから、買い控えなどの影響が懸念される。
今後の予測
今後の食品通販市場は、商品の値上げによる販売金額の上乗せもあり、2023年度の市場規模は前年度比1.0%増の4兆6,200億円と予測されているが、市場全体を牽引してきたショッピングモール(ECモール、カタログ通販も含む)は成長率が鈍化するとみられる。これは配送料を含めた販売価格が上昇することで、節約の観点で価格を重視する消費者の一部需要が、通販やWebから実店舗に流出することが考えられる他、プラットフォーム側も収益性を重視して、配送料優遇ラインの引き上げなど、サービスの見直しを図る動きが加速することが要因となっている。