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eコマースのマーケターが2024年に注目するべきキーワード

eコマースのマーケターが2024年に注目するべきキーワード

マーケティング
2024/01/18

2024年、顧客はどこで買物をしたいだろうか?それは、あらゆる場所で。ここでは、デジタルマーケターがどのように顧客の心をつかみ、購買につなげるかを紹介する。

 

これからの1年、マーケターは、顧客がオンラインショッピングに利用できるチャネルやオーダー方法の拡大を目指すだろう。 これらのチャネルの多くは何年も前から存在していたが(下記のショッパブル広告を参照)、マーケターがより多く採用するAIイノベーションのおかげで、これらのチャネルは結び付けられ、より魅力的になるだろう。

 

小売店の買い物客があらゆる注文方法を選択できるようにする

顧客体験と同様に、2024年には、マーケターがAI を活用して、より強固なeコマース・プレゼンスを構築するようになるだろう。データが接続されることで、ブランドは、デジタルでも実店舗でも、顧客がより多く発見、購入できる方法を提供できるようになる。

 

「もし顧客が今欲しいものがあり、それがすぐ近くの大型小売店にあることを知っている場合、テレビの前に座りながら、スマホで注文できるようにしたいのだ」と、米国を拠点とする技術・メディア調査会社The Futurum Groupの企業向けアプリケーション担当リサーチ・ディレクターKeith Kirkpatrick氏は言う。
「顧客は、在庫があること、そしてそれが10時半に準備され、10時半に行けば商品がそこにあることを確認したいと思っている」。

 

フィジカル(physical)とデジタル(digital)の融合は「フィジタル(phygital)」と呼ばれることもあるが、コロナのパンデミックが始まった最初の年に本格化した。今や、後戻りはできない。ブランドはあらゆる場所に存在する必要がある。

 

「これはより効率的な方法であり、顧客を最優先に考えている」と、Kirkpatrick氏は言う。「組織はそれを実現しようとしており、さらにパーソナライゼーションを導入し、アプリを介して顧客の行動から彼らが何を必要としているかを予測しようとしている」。

 

この場合、「フィジタル」という言葉は、誤解を招く可能性がある。確かに、その目的は、顧客の要望に応じて、あらゆるカスタマージャーニーにおいてデジタル体験とフィジカル体験の両方を利用できるようにすることである。しかし、それが実店舗での購入後に顧客にメールで送られる簡易レシートやアンケートであっても、体験を結び付け、推進するのはデジタル・コンポーネントである」。

 

実店舗の小売業者にとって、AIや自動化の改善はそのギャップを埋めるのに役立ち、貴重なオンラインフィードバックや顧客からの問い合わせを無視することがなくなる。

 

「オンライン上の可視性を制限するだけではなく、『ゴースティング』(顧客が、電子メールに返信しなくなったり、ソーシャルメディアアカウントのフォローを外したり、取引を中止するなど、ブランドとの交流をやめる行動)はブランドの全体的なデジタルパフォーマンスを著しく阻害する」と、米国を本拠地とするデジタルマーケティング会社SOCiの最高マーケティング責任者Monica Ho氏は述べている。「2024年には、AIや自動化の進歩によりこの問題が解決されるだろう。これらのテクノロジーはすでに存在しており、これにより、小売業者は迅速かつパーソナライズされた対応を大規模に提供でき、顧客満足度を高め、オンライン体験を向上させることができる」。

 

AIを活用した最適なトーンとブランドの一貫性

eコマースブランドは、店舗での購入が成功した場合に経験される人間の温かさを近似することしかできない。しかし、モデルが正しくトレーニングされていれば、ブランドは、AIを活用したチャットやコンテンツ作成で大きな成果を上げることができる。

 

「顧客とのコミュニケーションにおいて、トーンは非常に重要であり、ブランドの良し悪しを左右する」と、米国を拠点とする対話型マーケティング企業ConnectlyのプロダクトマネージャーJoscha Koepke氏は言う。「絵文字、ユーモア、共感、これらはすべて、メッセージがパーソナライズされたものであるだけではなく、本物であることを確実に伝えるために、小売りやeコマースのコミュニケーションに組み込まなければならないニュアンスである」。

 

同氏はさらに、「AIモデルはブランドトーンを体系化し、運用するために訓練される必要がある。2024年には、AIを使って適切なトーンを実現することが、特に会話型コマースなどのチャネルの利用が増えるブランドにとって、主要な優先事項となるだろう。これにより、会話が強化され、顧客ベースが増加し、より忠実な顧客が増えるだろう」。

 

ショッパブル広告を増やすことでeコマース売上を促進

クリエイティブなプログラミングのタイアップと、より優れた購買者体験により、2024年には、より多くのショッパブル広告が実現されるだろう。

 

「顧客はオムニチャネル体験を望んでおり、ストリーミング環境におけるショッパブル広告の登場により、これが現実に近づく」と、韓国のSamsung Groupの一部でデジタル広告・マーケティングソリューション企業Samsung Adsの営業・広告オペレーション本部長Michael Scott氏は言う。

 

最近の調査で、Samsung Adsは、ショッパブル広告がブランドとのインタラクションに加えて、ブランド想起に大いに役立つことを明らかにした。回答者の55%が広告を見たことを思い出しただけではなく、広告を思い出した人の半数が広告とのインタラクションを行った。

 

「2024年になっても、この傾向が弱まることはないだろう」とScott氏。「顧客はテレビで商品を見たとき、その商品の詳細や購入について素早く知ることができ、購入までの経路でアクセスしやすくなることを望んでいる」。

 

ショッパブル広告は、特にZ世代において、小売りと美容のつながりを深めるだろう

米国を拠点とするメディアストリーミング端末・スマートテレビ向けのOSなどを提供するエンターテインメント企業Rokuのショッパブル広告は、Walmartなどの伝統的な小売業者や、健康・美容、エレクトロニクス、家庭用品、消費者向けパッケージ商品などの伝統的ブランドや消費者直販ブランドから大きな支持を得ている。主なターゲットはZ世代である。

 

「Z世代の成人の実に96%が少なくとも1つのストリーミングサービスに加入しており、46%が毎日2時間以上をテレビのストリーミングに費やしている」と、Rokuの広告イノベーション担当のシニアディレクターPeter Hamilton氏は言う。「この視聴データと、この視聴層が美容業界に与えた影響(強力なブランドロイヤリティの採用や、美容におけるアクセシビリティと包括性をサポートする取り組みなど)を組み合わせれば、2024年のテレビストリーミングのショッパブル広告の成長に、美容市場が大きな役割を果たすことを期待できる」。

 

従来型の小売業者を通じて入手できるブランドが、2024年にショッパブル広告を採用する可能性が最も高いだろう。

「Walmartはブランドとして、最新のホリデーシーズンのRomCommerce Show(Walmartが提供するショッピング可能なドラマ仕立てのビデオ広告で、Roku、TikTok、YouTubeでストリーミング配信されている)のような特注のコンテンツから生まれるチェックアウト体験の探求でリードしている」とHamilton氏。

「ショッパブルショッピング広告の概念は目新しいものではなく、業界が20年以上前から話題にしてきた機能であるが、それを支えるテクノロジーがここ数年で著しく進歩した。ソーシャルコマースを基盤として、商品カタログ、チェックアウトAPI、認証を結び付け、家庭で一番大きなスクリーンでスムーズな購買体験を実現することができる」と、同氏は付け加えた。

 

消費者とB2Bマーケターがコンポーザブル・コマースシステムを採用

カナダを拠点とする企業向けソフトウェア会社CoveoのシニアプロダクトAIマーケティングマネージャーであるAndrea Polonioli氏によると、マーケターは、特に商品ディスカバリーにおいて、より柔軟でコンポーザブルなeコマースシステムを選ぶようになるという。

 

「ますます多くのブランド、小売業、メーカーが、モノリシックなコマースプラットフォームから、モジュール式のコンポーザブルサービスに移行しており、B2CだけでなくB2Bでもコンポーザブルコマースの勢いが増しているのを目の当たりにしている」とPolonioli氏は語る。「2024年に向けて、より多くの小売業者が、コンポーザブルコマースと、それがもたらす柔軟性、俊敏性、サポート、そして複雑なカスタマージャーニーを複数のタッチポイントにまたがるコネクテッド・エクスペリエンスに変換する機能に頼ることになるだろう」。

 

DIY、エレクトロニクス、その他のカテゴリーの小売業者は、このアプローチを使用して、顧客体験を向上させ、シームレスなジャーニーを構築するだろう。製品ラインが豊富でカタログが複雑な場合、これは極めて重要になる。

 

「これらの領域では、イノベーションと俊敏性への要求が高まっており、導入の成功によるROIの向上への期待も高まっている」と、Polonioli氏は述べている。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の12/29公開の記事を翻訳・補足したものです。