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進化を続ける広告とデジタルメディアをどのように活用していくべきか

進化を続ける広告とデジタルメディアをどのように活用していくべきか

マーケティング
2024/01/16

マーケターは、新たな指標にどのように適応し、AIを活用して効率的な広告予算を管理するだろうか。そして、今年は米国の大統領選挙がある。

 

これからの1年、デジタル広告主は、進化を続けるデジタル空間でAIや新たな指標を活用することに目を向けるだろう。彼らは、政治活動の繁忙期で価格が高騰する中でも、予算を抑えたいと考えている。そして何よりも、彼らは意味のある方法で顧客とつながることを望んでいるのだ。

 

アテンション指標がマーケターの注目を集め、有意義なエンゲージメントを獲得する

2024年のデータ予測に見られるように、サードパーティCookieの廃止はほぼ確実であり、マーケター、パブリッシャー、そしてアドテク・パートナーは皆、アテンション指標などのより意味のあるエンゲージメントの兆候に注目するようになるだろう。

 

「マーケターは、単なるインプレッションやクリックではなく、意味のあるインタラクションの重要性を認識している」と、米広告業界団体IABの測定・アドレッサビリティ・データセンター担当副社長を務めるAngelina Eng氏は述べる。「アテンション指標は、ユーザーがどのようにコンテンツに関わっているかについて、より微妙ニュアンスを付加した理解を提供するものであり、よりインパクトのある効果的な広告戦略を求めるマーケターの間ではこの指標への移行が加速している」。

 

アテンション指標は、エンゲージメント時間、集中度、インタラクションの質に関連づけられており、マーケターはこれを使って、従来のクリック数やページビュー数を補完したり、置き換えたりすることができる。

 

IABは2024年に、Media Rating Council(メディア調査会社の監査や認定審査を行なう米国の業界団体)と提携して、標準化されたアテンション測定ガイドラインを展開する予定である。

 

「これらのガイドラインにより、アテンションの測定方法における明確な一貫性と透明性が提供され、業界全体でより統一されたアプローチが可能となるだろう。これにより、最終的に広告主やパブリッシャーはユーザーエンゲージメントをより深く理解して最適化できるようになり、アテンション指標はデジタル広告戦略の信頼できる不可欠な要素となるだろう」。

 

「この新しいIDレス環境では、アテンション指標によって、広告主はクリックスルー率などの静的な指標を超えることができるようになるだろう」と、デジタルメディア・テクノロジー企業Adlookの米国プラットフォームディレクター、Giles Rekruciak氏は述べる。「代わりに、広告主は、特定の広告配置がどのようにユーザーの注目を集めることができるかを測定できるようになる。これにより、ユーザーの行動や好み、広告に対する受容性に関するインサイトが得られるだろう」。

 

マーケターはサプライパス最適化に注力

マーケターが求めているのは、広告の効果に対するより適切な測定だけではない。彼らは、効率的な支出を測定するためにサプライパス最適化(SPO、バイヤーが無駄な仲介業者を排除し、サプライへのアクセスを合理化するための戦略)を使用して、広告がどのように配信されるかに注目するようになるだろう。

 

「SPOはここ数年、大きな話題となっており、ブランドは不必要な仲介者を特定して排除しようとしている」とRekruciak氏。「これにより、買い手と売り手の間のホップ数(データが送信元と送信先の間で通過する必要がある中間ネットワーク機器の数)が減り、レイテンシー(ユーザーのアクションとその後の応答の間に経過する時間)が最低限に抑えられ、広告配信の効率が向上する。そしてこれは、費用の削減にも当然つながる」。

 

さらに、プライバシー保護の必要性が高まることで、ブランドはより効率的でコントロール可能なキャンペーン実施を採用する方向に進むだろう。

 

同氏はさらに、「サードパーティのIDが使いにくくなるにつれて、SPOは、メディア費用が適切に使われるよう、定評のあるプレミアムなインベントリパートナー(広告プラットフォーム)との協力がますます増え、より大きな役割を果たすようになるだろう。さらに、プライバシー保護の必要性が高まることで、ブランドはより効率的でコントロール可能なキャンペーンの実施へと舵を切るだろう」と付け加えた。

 

政治がコストを押し上げ、消費者を遠ざける

2024年に選挙があることをご存知だろうか?選挙により、デジタルを取り巻く環境はこれまで以上に二極化が進み、広告主はコストと政治的毒性という2つの大きな悩みを抱えることになるだろう。

 

「米国大統領選の年はメディアコストが上昇するため、ブランドが得られる利益は少なくなるだろう」と、マーケティング代理店Red Door InteractiveのCEO兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、Reid Carr氏は述べる。「これに備えていた企業は、一歩先を進んでいるが、多くの企業はそうではない。そのため、これらのブランドは、他の投資から予算を融通するか、手持ちの予算でクリエイティブな活動をする必要がある」。

 

メッセージの中であえて政治問題についてタイムリーに伝えようとするブランドは、潜在顧客を不快にさせないように細心の注意を払わなければならない。そもそも顧客が耳を傾けていれば、の話であるが。多くの人は、ノイズを避けるためにメディア習慣を変えるだろう。

 

「メディア消費は変化していくだろう。人々はノイズを遮断したり、別のチャネルやフィードに安らぎを求めたりするかもしれない。昨年の指標を使って2024年のパフォーマンスを測定するのは非常に難しくなるだろう」と、Carr氏は述べた。

 

同氏はさらに、「特に2024年10月下旬から11月にかけては、メッセージングが伝わりにくくなり、12月上旬にはメディア疲れが生じる可能性がある。これは、『二日酔い』のような効果を生み、ホリデーシーズンのプロモーションにマイナスの影響を及ぼす可能性がある。ブランドは、年間を通して別の時期に2024年の数字を作る計画を立てなければならない」と述べた。

 

ストリーミングサービスにおけるバンドルの拡大

必見のテレビ番組がストリーミング・オンデマンド・サービスに移行した結果、フラグメンテーション(断片化)が進んでいる。単一のケーブル・サービス・プロバイダーで1,000ものチャンネルをすばやく変える代わりに、コードカッター(ケーブルテレビの契約を止めてインターネット経由の動画視聴を選択する消費者)は、別個のアプリの無限に見えるメニューを選別しなければならない。そして、ストリーミング視聴が完全に広告でサポートされているのでない限り、これらのアプリにそれぞれ料金を支払うことになる。

 

2024年は、ストリーミング業界がより多くのバンドルを提供する、極めて重要な年になるかもしれない。

 

「ストリーミング、特にスポーツコンテンツ全体における断片化は転換点を迎えている」と、米国のデジタルエンターテイメント企業Fuboのグローバル広告セールス担当SVPであるDina Roman氏は話す。「消費者は、すべての番組を視聴するために必要となるサブスクリプション数の増加に不満を募らせており、広告主は、ますます多くのメディア・パートナーや、デバイスにおける戦略的ターゲットオーディエンスにリーチすることに課題を抱えている」。

 

また、同氏は、「今こそ、アグリゲーションの力がその価値を発揮するときであり、ストリーミング全体でのバンドル回帰が見られるだろう。我々は、消費者、ひいては広告主が暮らしやすくなるよう、業界として努力し続けなければならない」と付け加えた。

 

AIは今後も高品質な広告を提供し、コストを下げる

生成AIと機械学習の力は、広告を含むマーケティングのあらゆる分野に破壊的な影響を及ぼしている。主要なプラットフォームへのアップデートは現在も進行中である。新年には、より多くのツールが採用され、AIはデジタルキャンペーンの計画と実行をさらに容易にするだろう。

 

「商品のリターゲティングでは、特定の商品を表示するカスタマイズされた広告を大量に利用することが多いが、その他のほとんどのキャンペーンでは通常、少数の静的広告しか利用しない」と、デジタル広告会社Simpli.fiのCEOであるFrost Prioleau氏は述べる。「現在のAIの進歩の波がもたらす最初の影響は、多くの場合、いくつものバリエーションを持つような、高品質な広告クリエイティブの作成に必要なコストと時間を削減することであった。今後、AIはデータ分析、ユーザーインターフェイスやメディアプランニングの簡素化、顧客サービスの自動化など、さまざまなメリットを提供するようになるだろう」。

 

「2024年には、より多くのマーケターがコンテンツ制作、特にメディア測定に生成AIを活用するようになるだろう」と、デジタルインサイト企業Cintの測定担当SVPであるLaura Manning氏は述べる。「AIを活用して大規模なデータセットを迅速かつ正確に分析できるようになることは、2024年には、広告主やマーケターにとって大きな利点となるだろう。そのために、業界は成長の障害を経験することになる可能性があり、マーケティングや広告におけるAIの活用に関して、市場関係者が協力してより多くのプロセスを整備することが不可欠となるだろう」。

 

ソフトウェア・データ企業VideoAmpの製品担当副社長であるJonathan Bohm氏は、「AIはすでにオーディエンスの測定に影響を及ぼしており、2024年にはそれがさらに強まるだろう」と話す。「最も単純な形であっても、メディア関係者は世界のChatGPTを自分専用の図書館やアドテク・コンサルタントとして使っている。AIにとっての真のチャンスは、放送後のスケジュールの特定、視聴者のプッシュ型・プル型行動に対する理解、断片化の影響など、ほぼ完全に測定の限界のために10年以上にわたって業界が悩まされてきたような、再現可能なパターンの特定と合理化を手助けすることにある」。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の12/28公開の記事を翻訳・補足したものです。