B2B顧客の合理的・感情的なニーズに対するアピール方法、そして有意義な繋がりを可能にするファーストパーティデータの役割を学ぼう。
乱戦模様のB2B市場では、ターゲットとなる顧客にリーチすることが難しくなっている。もはや製品の良さだけでは、B2Bのバイヤーを惹きつけ、維持するのに十分とはいえない。しかし意外なことに、B2B企業は、B2Cでは一般的に最優先事項である「買い手向けの優れた顧客体験」の重要性を見落としがちである。
それぞれニーズが異なるとはいえ、B2Bの顧客もB2Cの顧客も意思決定者が人間であることに変わりはない。優れた顧客体験は、B2Cと同様にB2Bにおいても重要である。不親切な購買プロセスや平均以下のサービスは、B2Bの顧客に敬遠されるだろう。
B2B企業は、永続的な関係を築くために、優れた顧客体験を生み出さなければならない。そのためには、B2B顧客の購買意欲を高める動機を理解する必要があるのだ。
B2Bの顧客とは
B2B顧客は、概して、長期的で拡張性のあるビジネスソリューションを求めている。多くのB2C取引とは異なり、B2B顧客がカスタマージャーニーを開始するときは、自分自身だけでなく、顧客の組織の意思決定者全体を代表することになる。
B2Bバイヤーの27%が、彼らのジャーニーには今後もっと多くの人が関わるようになると回答している。そこで、次のことが重要になる。
- 顧客の組織の意思決定者すべてを知る
- 彼らの関係は複雑であることを理解する
- 意思決定者すべてのニーズに訴えかけ、グループとして購入までファネルを降下させる
ニーズの把握と先読み
B2B顧客には、合理的なニーズと感情的なニーズの両方がある。それらは互いに重なり合いながら意思決定に影響を与える。
B2B顧客の合理的なニーズには次のものが含まれる。
- コストパフォーマンス
B2B顧客は、効果的で手ごろな価格の製品を必要としている。製品が良くても、高価すぎる場合、B2B顧客は、より安価なオプションに心を動かされるかもしれないし、その逆もあり得る。
- 使いやすさ
製品は使いやすいだろうか。使いこなすために多くのトレーニングを必要とする割に見返りが少なければ、顧客は投資に見合う価値があった、と同僚を納得させるのは難しいだろう。
- 信頼性
企業は業務に使用する製品には高い信頼性を求める。常に業界標準を上回る製品を探すだろう。
- 拡張性
B2B顧客は、ビジネスと歩調を合わせて成長できる製品やサービスを必要としている。
感情的なニーズには次のものが含まれる。
- 信頼
B2B顧客は、あなたのブランドを信頼していなければならない。自分の仕事がかかっているかもしれないので、あなたの企業が顧客からのリクエストをきちんと実行しているかを知る必要がある。
- 安全性
B2B顧客は、自分の決定が、リスクや混乱を含むマイナスな結果をもたらさないことを確認する必要がある。
- 自信
B2B顧客は自分の決定に自信を持ちたい。自分の企業にとって、最も有益な決定をしたと確信したいものである。
- 安心
B2B顧客はベンダーから継続的なサポートがあると感じたい。製品やサービスを購入するというよりも、「パートナーシップを結んでいる」という感覚が重要なのかもしれない。
このようなニーズにアピールするには、自社の製品やサービスの利点を深く理解する必要がある。B2Bマーケターが犯しがちなミスのひとつは、独自の価値提案を十分に理解していないことである。
「私の製品は顧客の課題をどのように解決するのか」を自問してほしい。米国に本社を置くビジネス特化型SNSであるLinkedInの報告書によると、企業のリーダーが直面する主な課題には、予算に関する懸念、将来の見通し、組織構造、成長戦略などがある。
顧客が直面している課題を理解し、あなたの製品がどのように役立つかを理解すれば、顧客の最も差し迫ったニーズが何かを突き止めることができるだろう。
強力な顧客体験を生み出すためのファーストパーティデータの利用方法
B2B顧客の4人に3人は、担当者がつかない販売体験を望んでいる。これは、B2B企業は、役に立たない無機的なコールドコーリング(不必要な顧客に対する営業電話)や、スパムメールの送信よりも、顧客に価値を提供するためにしなければならないことがある、ということを意味する。むしろ、B2B顧客向けのポジティブな顧客体験を生み出すためには、顧客のジャーニーにおいて、パーソナライズされ、熟考を重ねたタッチポイントを通じて、有意義な繋がりを築かなければならないのだ。そのためには、データに基づいた360度の顧客ビューが必要である。
ファーストパーティデータは、B2Bマーケティングの基礎である。個人情報保護に関する規制が強化されるにつれ、サードパーティデータはますます高価になり、入手が困難になっているため、ファーストパーティデータは、顧客の好みやニーズ、問題点をより深く理解できる最も効果的なツールである。ファーストパーティデータの活用方法は次のようなものがある。
- 実際の利用者層に合わせてコンテンツをパーソナライズする
- あなたのブランドとすでに関係のある質の高いリードを特定する
- 顧客と組織・製品との、過去のやり取りに基づいた維持戦略を実施する
B2Bビジネスでは、ファーストパーティデータを見つけるのは難しいかもしれないが、適切なファーストパーティデータを調達するには、組織のグループとしての努力が必要だ。重要なデータは、営業、デジタル、カスタマーサクセスなど、さまざまなチームに存在する可能性がある。
B2B顧客には一連の意思決定者が含まれるため、ターゲット顧客の企業とその意思決定者の360度ビューを作成する必要がある。顧客データプラットフォーム(CDP)のようなテクノロジーは、ファーストパーティデータを一元化し、分類するのに役立つ。
健全なファーストパーティデータ戦略は、B2B購入決定に影響を及ぼす次のような感情的なきっかけを特定し、それに対応するのに役立つだろう。
- パーソナライゼーション
ペインポイント(問題点)に直接語りかけるパーソナライズされた広告は、気づきと理解によって、顧客の購入意欲を高めることができる。
- すぐに得られる満足感
適切なタイミングでの適切な広告は、顧客の満足感と達成感のきっかけとなり、顧客の購入意欲を高めることができる。
- 不安
顧客は不安を抑えるために決断する。自分の決断が正しかったという安心感を顧客に与える広告は、投資への信頼につながる。
なお、強力なファーストパーティデータ戦略は、次のような適切なデータソースから収集できる。
- メールの返信
- ウェブサイトのインタラクション
- 営業担当者
- カスタマーレビュー
これらのデータから、満足、不満、興奮などの感情を表す利用者のパターンを特定し、分析しよう。感情が特定されれば、利用者をセグメント化し、顧客の心に響くパーソナライズされたメッセージを作成することができる。
継続的にファーストパーティデータを収集することで、マーケティング活動に関するリアルタイムの洞察を得ることができる。これにより、必要に応じて戦略を見直し、より有意義で長期的な顧客関係を築くことができるのだ。
有意義なB2Bジャーニーを生み出す
米国に本社を置くグローバルなコンサルティング企業のMcKinseyによると、顧客体験戦略を変革したB2B企業は、クライアントの満足度が高まっただけでなく、収益が10~15%増加したという。
B2Bの意思決定ジャーニーを深く理解し、有意義な顧客体験の創造に力を入れることで、より効果的に新規顧客をターゲットとしながら、より高い継続率を達成することができるだろう。
B2Cの顧客と同様に、B2Bの顧客も、「見られている」と感じ、評価され、感謝されることを望んでいる。強力なB2B顧客体験の重要な部分は、顧客のニーズを確実に満たすことである。
B2B顧客のために魅力的なジャーニーを構築する上で最も大きな課題の2つは、適切な戦略を立てることと顧客のニーズを理解することである。データを活用して顧客のビジネスニーズを洞察し、B2B顧客も人間であることを忘れないようにすることで、これらの問題を軽減することができるだろう。