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送料無料への警鐘。「無料」配送は実際には無料ではない

送料無料への警鐘。「無料」配送は実際には無料ではない

物流・決済・業務
2023/06/21

AmazonやWalmartが送料を値上げしたことで、私たちはeコマースの配送に対する期待を再考する必要がある。

 

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)によって、Amazon Primeで2日後と翌日の配送が「無料」になるという期待が強固なものとなった。2021年にJeff Bezos氏が退任する直前、Amazonはパンデミックにかけて5,000万人の加入者を増やしていた。当時、Primeは年額119ドルで、それは2018年に設定された価格だった。

 

今は年間139ドルだ。Amazonは最近、在庫管理システムと検索アルゴリズムを更新し、配送システムのタッチポイントを減らして配送時間を短くしたと発表。また、Amazonの集荷・返品センターがかなり近くにある場合、荷物の返送に1ドルの手数料を追加した。このような最低注文数の制限をはじめ、宅配便のコストを消費者に負担させる方向にシフトしていることがわかる。しかし、これはAmazonだけで起きていることではない。

 

Walmartは、このシフトについて良い心証が得られず、最近、高い配送料についてTwitterで声高な反発を受けた。Walmart Plus会員でない場合、通常の注文では配送料として最大9.95ドルを支払うことになる。「Express配送」は、Walmart Plus会員であるかどうかにかかわらず、追加で10ドルかかる。

 

では、この送料値上げがなぜ今なのか?

 

Amazonは、他の大手eコマース企業のように、新型コロナウイルス感染症の間、さまざまなことに挑戦していた。解決すべき新しい問題があり、多額の資金が投入されたが、今は試行錯誤することを止めている。Amazonは人員削減を進めており、今年に入って27,000人以上が解雇され、配達ロボット「Scout」や実店舗の書店、健康管理端末「Halo」などのプログラムも停止。実験の段階が終わり、気になるのはコスト面だ。

 

Bezos氏がいなくなったことで、株主への責任もある。Amazonは規模が大きすぎて、完全に無駄を削ぎ落とした組織にはなり得ないが、核となる配送サービス(2億人の加入者が利用)が機能しなければならない。消費者の期待に応えるため、同社はAIやロボットにシフトし、「地域化」の技術に重点を置いて、より早く商品を届けている。そして、それは功を奏している。それは良いことだが……。

 

Amazonがあれだけ広大な倉庫物流を持っていても、完璧になることはない。物流もロボットも、何があっても90%は問題ないだろう。しかし、100%はありえない。完全自動化されたSFのような未来はまだ先であるため、とりあえずは配送における人的要素を意識する必要がある。

 

ドライバーは、短距離ドライバーも長距離ドライバーも、配送システムにおける重要な人的要素である。倉庫間でも、誰かの家の玄関先でも、商品を運ぶには人が必要だ。労働条件は厳しい。休憩する時間もなく、毎日できるだけ多くのドアに荷物を届けることが期待されている。カリフォルニアでは、Amazon Delivery Service Partner(配送サービスパートナー)がTeamsters(全米トラック運転手組合)と組合を結成し、安全保護と賃上げを確保している。

 

私の父は長距離輸送のドライバーで、ワークライフバランスを保つにはかなりの計画を要する。運動するために、ニュージャージー州のルート上にあるジムの会員権を探さなければならなかった。人的要素は、配送インフラの中で限界を超えてはいけないものであり、そうでなければ労働力を非人間的にしてしまう危険性がある。

 

ドローンは、より小さな商品の選択肢として話題になっている。Amazonは昨年、新しいドローンを発表したが、まだ配達できる場所やものが限られており、12フィートの上空からペイロード(積み荷)を投下するのだ。ドローン配送には「ラスト1メートルの問題」がある。荷物にとっても、地上にいる人たちにとっても安全でなければならないのだ。

 

当面は、ドローンの監視と維持に費用がかかるだろう。Walmartが支援するスタートアップのDroneUpは、従業員の一部を解雇せざるを得なかったが、今後新たな雇用が発生すると述べた。ドローンの規模を拡大して配送プロセスをカバーすることはいずれ機能するだろうが、それには時間がかかるだろう。

 

そうなると、今の消費者はどうなるのだろうか。

 

2020年当時、誰もがサプライチェーンの話ばかりしていたのを覚えているだろうか。コンテナ料金は高騰していた。ロサンゼルスの港での遅延は増加する一方だった。我々がその話をするのをやめるまで、それしか話題がなかったのだ。しかし、一時的には、製品を世界中に運ぶことがいかに困難であるかということが、広く理解されるようになった。

 

世界が新型コロナウイルスからゆっくりと立ち直り、Amazonのような多くの企業がオンライン購入への大規模な移行でトップに立ったことで、消費者はこうしたサプライチェーンの苦境を忘れてしまった。それは忘れられがちなものだ。自身の財布に負担がかかるまでは。

 

そして、まさに消費者は、その問題を感じたいとは思っていないのだ。消費者は必ずしもスピードを求めているわけではない。安さを求めているのだ。ある調査では、送料は発送スピードの2.85倍も重要視されている。消費者は商品をより早く手に入れることを喜ぶが、コストを犠牲にしてまで手に入れたいわけではないのである。

 

2日後や1日後、あるいは当日発送が実現できるのは奇跡的なことだ。この10年間で、配送能力やロジスティクスがどれだけ進歩したかには驚くものがある。昔は4〜6週間かかるのが普通だった。短納期を求める私たちの期待を超えて、インフラが追いつくためのブレーキが必要になっているのかもしれない。

 

消費者が配送のために追加料金を支払うことを学ぶかもしれないし、AmazonやWalmartのような企業が新しい、緩和された配送層を作り出すかもしれない。システムの負担を軽減する方法はあるが、それは「無料」配送という概念を終わらせることにあるのかもしれない。消費者は、迅速な配達は、魔法でもなければ、無料でもないことを知る必要があるだろう。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の6/13公開の記事を翻訳・補足したものです。