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最適化の先へ。モバイルファースト戦略の必要性

最適化の先へ。モバイルファースト戦略の必要性

マーケティング
2023/05/15

インドのモバイル広告テクノロジー企業InMobiのエージェンシーパートナーシップ責任者であるPhil Gale氏は、多くのブランドのオーディエンスがモバイルファーストであるため、その戦略もまたモバイルファーストであるべきだと話す。

 

スマートフォンが15年以上前に我々の生活に革命をもたらして以来、いつも我々の身近にあるこの驚くほどパワフルなデバイスは、年を追うごとに少しずつ改良されてきた。2026年にはデジタル広告に占めるモバイルの割合が70%に達すると予想されていることから、ブランドはモバイルマーケティング戦略を完璧に仕上げていると思われるかもしれない。しかし、多くのマーケターにとって、「モバイルの年」はとうに過ぎ去っているのだ。

 

オムニチャネル化やオーディエンスベースの戦略、新たなアテンション(広告注目度)測定モデルが注目を集める中、多くのマーケターは、自社予算においてこれほど高い割合がモバイルに充てられることに気づいていない。彼らが自問すべきは、「オーディエンスがモバイルファーストなら、当社の戦略もモバイルファーストであるべきではないだろうか」ということだ。

 

大多数のマーケターにとって、モバイル戦略はせいぜい後付けとなっているのが現実だ。多くのマーケターは、戦略的アプローチからクリエイティブコンセプトに至るまで、デスクトップや一般的なブロードキャスト戦略、クリエイティブアセット、コンテンツをモバイル向けに再利用することに固執し、それがうまく行くよう願っている。残念なことに、これではモバイルチャネルが持つユニークな特性を真に活用する機会を大きく逃してしまうことになる。

 

これが悪いことばかりではないと思われるかもしれない。標準化によってモバイルへのアクセスは格段に向上し、オムニチャネルへのアクセスによって、マーケターはより多くのお金をモバイルに投入できるようになったのだ。しかし、残念ながら、これではモバイルチャネルが提供するユニークな特性を本当に利用する機会を大きく逸してしまうことになるのだ。

 

モバイル向けに最適化するだけでなく、モバイル向けのプランを立てよう

プランニングの段階以前にまず考慮すべきは、オーディエンスが通常どのようにリーチされているかを理解するということだ。もし、前回のキャンペーンの予算の大半がモバイルデバイス向けに充てられていたのであれば、最初からモバイルファーストのプランニング戦略を検討することは、非常に理にかなっている。

 

では、モバイルファーストのプランニング戦略をマーケティングミックスに取り入れる場合、どのような点に留意すればよいだろうか。

 

モバイルクリエイティブの力を活用する

モバイルクリエイティブというと、多くの人は従来の静的なバナー形式を想定するが、それだけが唯一の選択肢ではない。今日のモバイルユーザーは、モバイルをただ見るだけでなく、一日中触ったり、スワイプしたり、スクロールしたりしているため、それは非常にタクタイル(触覚的)なチャネルであり、インタラクティブなフォーマットに完全に適するものだ。確かなモバイルクリエイティブを実行するモバイルファースト戦略を策定することで、マーケターはパワフルでポジティブ、かつ記憶に残るブランド体験を生み出すことができる。

 

ゲームベースのクリエイティブから、完全にインタラクティブな全画面インタースティシャル(ホストアプリのインターフェイス全体に表示されるフルスクリーン広告)まで、マーケターがモバイル体験をより魅力的なものにするためにできることは、まだたくさんある。例えば、当社は、クライアントのブランドや製品に関連したミニゲームをユーザーがプレイできるような、ゲーム化されたクリエイティブを数多く制作している。

 

将来のアテンションに備える

我々が目にしているもう一つの傾向は、従来のビューアビリティ(実際に掲載されたウェブ広告のうち、ユーザーが視認できる範囲に表示された広告の割合)に代わるものとして、アテンションメトリクスへの関心が高まっているということだ。アテンションメトリクスの基準はまだ明確ではないが、インタラクションがない場合における、閲覧されたインプレッション(広告表示)と閲覧されていないインプレッションとのインパクトの違いを明確化できることの有用性に疑いの余地はない。

 

ロンドンに拠点を置く調査会社Lumen Researchによると、「携帯電話の広告は見逃されにくい(78%が注目されるのに対し、標準的なデスクトップ広告ではわずか17%)が、デスクトップ広告よりも注目を集めにくいことが多い(携帯電話の広告が平均1.0秒であるのに対し、デスクトップ広告は1.5秒)」という。

 

この統計は、まさに予想通りの内容だ。ユーザーがテンポの速いスクロールに非常に慣れている環境下では、モバイルの注目度は低いと考えるのが賢明だろう。しかし、モバイルは画面サイズが小さいため、画面上の音声の割合は一般的に非常に高く、またハーフページやフルページの広告ユニットがはるかに一般的であるため、結果的としてより高いアテンションメトリクスを実現できる。

 

ターゲティング機能の強化

モバイル向けのプランニングは、クリエイティブの可能性を広げるだけでなく、ターゲティング機能を強化することにもなる。デスクトップなどの従来のチャネルは、通常、固定した場所にあるため、この領域では限界がある一方、モバイルはどこにいても常に我々と一緒にいるため、広告を(空いた時間などに)目にする機会が増えるだけでなく、履歴に残っているロケーションというまったく新しいターゲティングの次元をも導入することができるのだ。

 

消費者は、通勤中やオフィスで過ごす時間、そして家に帰ってからもモバイルを使用する。このように、モバイルはさまざまな場所で定期的に閲覧されるデバイスであるため、広告主は「ロングデータ」の集合体を得ることができ、それを超高粒度なレベルでターゲティングに活用することができるのだ。

 

例えば、週末に公園をジョギングしているランナーをターゲットにしたいとする。彼らはロンドンから20マイル離れた郊外に住んでいるが、毎日シティ(ロンドン中心部にある金融街)に通勤しているとしよう。ブランドは、モバイルから得られるロングデータから、彼らが公園、電車、オフィスのいずれにいる場合でも、同じ人をターゲットにしてカスタマイズしたメッセージを送ることができる。一方、デスクトップ広告のアプローチのみを採るマーケターは、同じランナーに広告を届けられる可能性がはるかに低くなる。

 

2023年には、既存のチャネルをモバイル向けに再利用するだけでは、もはや十分ではない。真に変化をもたらし、オーディエンスを惹きつけ、モバイルにユニークな機能を最大限に活用するためには、ブランドはモバイルファースト戦略を念頭に置いてキャンペーンの構築やターゲティング、そして測定を行う必要があるのだ。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の5/2公開の記事を翻訳・補足したものです。