【2022年EC流通総額ランキング】国内21・海外25のECモール・カート・アプリの流通総額から見る市場トレンド
毎年2月~6月にかけて、世界中のEC業界の各主力プレイヤーが前年の流通総額や売上高を公開している。今年も5月中旬に公開された中国大手アリババグループの発表で、世界の大手ECモール・カート・アプリなどの2022年の流通総額の数値データが出揃った。今回も国内外の各主力プレイヤーの値を中心に紹介していき、それぞれの市場のトレンドを見ていく。今回は昨年と比較して9サービス(うち、国内2サービス)調査対象を広げた。一方で、これまで推測可能であった8サービスを対象から外した。
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2022年版 EC流通総額ランキング:国内20・海外25掲載
目次
▼国内21サービスの流通総額ランキング ▼海外25サービスの流通総額ランキング ▼国内21・海外25サービスの全流通総額ランキング ▼世界のマーケットプレイス(C2C)12サービスの流通総額ランキング ▼世界のECモール21サービスの流通総額ランキング ▼世界のカート・PKG14サービスの流通総額ランキング |
国内21のECモール・カート・アプリの流通総額ランキング
まずは、国内の21の主力モール・カートサービス及びパッケージ、フリマアプリなどの2022年(1月~12月)の流通総額を見ていく。
2022年国内21のEC流通総額ランキングから見るトレンド
2022年における各社の流通総額は1桁~10%台の成長が大半となり、ここ数年見られたコロナ禍の影響によるデジタルシフトのブームが一段落したことが窺える。ただし、依然として流通総額は上昇傾向にあることから、eコマースを中心としたデジタルでの取引増加の流れは昨年から引き続き変わらないようだ。また、各サービスの競争も熾烈化しており、それぞれのジャンルでのNo.1サービスは力強いものの、2位・3位のサービスは伸び率がそれほど大きくなく、各社が厳しい競争にさらされていることが明らかである。
2022年も国内の流通総額最上位は引き続きAmazonとなり、2位の楽天市場との差は拡大している。
また、3位のYahoo!ショッピングは毎年のように集計対象となるグループ内のサービスが追加又は変更されており、「ショッピング」という枠の中だけでの値が年々見えにくくなっている。2位の楽天市場も同様で、集計対象のサービスは昨年と変わらなかったが、宿泊流通やゴルフ流通も含む値であることから、正確な流通総額は見えづらくなっている。
C2Cサービスで初の1兆円突破が目前とされていたメルカリの勢いは昨年よりさらに陰りが見えてきたようだ。ただし、集計対象に議論の余地はあるもののヤフオク!との差は確実に縮めており、今後に期待が寄せられる。
それでは、国内の主力プレーヤーの流通総額をそれぞれ見ていこう。公表されているサービスも多いが、残念ながら公表されていないサービスもある。ここでは公表データだけでなく、eccLabによる推測値も掲載し、流通総額が多い順に紹介していく。
Amazon 流通総額:6兆7,937億円(推測)
米Amazon.comが公開している年次報告書の67ページによると、2022年の日本国内における総売上高は243億9,600万ドル。2022年の平均為替レートを130.43円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合(以降、米ドルに対しては全てこの値を使用)、日本円にして3兆1,251億円となった。前年2020年の同データは約2兆5,101億円(230億7,100万ドルで為替レートを108.80円とした場合)だったため、売上高は米ドルベースで前年比5.74%増となっている。Amazonの売上高については、日本国内でAmazonが売主となるものと、第三者が売主になるものの手数料10%程度が合計された値となっており、その割合は未公表だ。しかし、eccLabでは2018年のマーケットプレイス割合を50%、2019年の割合を55%、2020年の割合60%、2021年の割合を60%、2022年の割合を60%と推定。このことから、2022年の流通総額は6兆7,937億円、前年比24.5%増と推測する。
楽天市場 流通総額:5兆6301億円(トラベル等含む)
楽天の投資家向け発表によると、国内EC事業の2022年の流通総額は前年比12.3%増の5兆6301億円となった。この値は楽天市場だけでなく、トラベルなどの宿泊流通、GORAによるゴルフ流通、ビジネス、楽天24、楽天デリバリー、ラクマ、楽天西友ネットスーパーなどの値を含んだものとなっている。また、2021年の10~12月期にブックスネットワーク、クロスボーダートレーディング、Kobo(国内)、楽天マガジンを国内EC流通総額へ追加したことで数値が遡及修正されているため、2020年度の流通総額が公表時の4兆4,510億円から4兆5,396億円に修正されている。
Yahoo!ショッピング 流通総額:1兆7,547億円(LINEショッピング等含む)
Yahoo!JAPANを経営するZホールディングス株式会社の決算説明会資料によると、2022年のYahoo!ショッピング関連事業の国内流通総額は前年比6.2%増の1兆7,547億円となった。2021年3月にLINEと経営統合したこともあって2021年第1四半期から報告セグメントが変更されており、この流通総額にはYahoo!ショッピング以外にもZOZOTOWN、LOHACO、チャーム、LINEショッピング、LINE FRIENDS、LINEギフト、MySmartStore、Yahoo!マート by ASKUL、LIVEBUYが含まれる。増加要因はPayPayモールのYahoo!ショッピング統合など、グループ内重複事業の集約を促進したことや、販促費を中心にコストの最適化を行ったためとされている。なお、eccLabの集計は2022年1月~12月の値となるため、Zホールディングス公式発表の2022年度通期の値とは異なる。
ecbeing 流通総額:9,912億円
ecbeingは2019年以降流通総額を公表するようになっていたが、昨年の流通総額のみ公開されなかった。そこでeccLabは公式サイトの記事を元に2021年の流通総額を8000億円と推定した。しかし、今年は公式サイトの記事が更新され、2022年の流通総額が9,912億円であると共に、2021年の流通総額が7,016億円であったことが判明した。よって前年比は41.3%増となる。今回の大幅な流通総額の増加について、同記事では「多様なサービスをワンストップに提供するために開発者500名・マーケティング200名の大規模な体制によって成功事例を増加させられたためだ」と述べている。
ヤフオク! 流通総額:9,794億円(ZOZOUSED等含む)
同じくZホールディングス株式会社の決算説明会資料によると、2022年のヤフオク!の国内流通総額は9,794億円となった。2021年は9,168億円だったため、前年比6.8%増となった。この流通総額にはヤフオク!以外にもPayPayフリマ、ZOZOUSEDが含まれる。ヤフオク!の流通総額は2018年以降減少~横ばい状態が続いていたが、2021年になって対象の変更もあったこともあり増加傾向に転じている。しかし、後述するメルカリとのC2Cサービスの国内首位争いを意識した数字の操作の印象も否めない。なお、eccLabの集計は2022年1月~12月の値となるため、Zホールディングス公式発表の2022年度通期の値とは異なる。
メルカリ 流通総額:9,325億円
フリマアプリのメルカリの決算説明会資料によると、国内の2022年のメルカリの流通総額は9325億円となった。2021年の国内の流通総額が8,526億円のため、前年比9.4%増となる。昨年までのような20~30%台の勢いではなくなったものの、依然として10%台近い成長率を維持している。また、昨年の流通総額が昨年公開時の8,470億円から8,526億円に修正されている。
ZOZOTOWN 流通総額:5,399億円
ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOの決算報告資料によると、2022年のZOZOTOWNの流通総額は5,399億円であった。2021年の流通総額が4,907億円のため、前年比10.0%増となる。昨年見せた24.1%増の増加率と比較すると、ややその勢いは鈍化したようだ。
au PAY マーケット 流通総額:3,115億円(推測)
auコマース&ライフ株式会社とKDDI株式会社が共同で運営するau PAY マーケット(旧:au Wowma)は、流通総額を公表していない。しかし、インタビュー記事に「au PAY マーケットの2021年における流通額は前年比19%増」との記載があることから、eccLabでは2021年のau PAY マーケットの流通総額を前年比19%増の2,757億円と推測した。2022年はポイント還元キャンペーンやセールも多く行われていたことで、メインのユーザー層である30~50代からの安定した支持や、60代ユーザーが増加したと推定される。しかし、成長率については急速にECサイトの利用が普及した2021年に劣ると考え、前年比13%増加、3,115億円と推測する。
MakeShop 流通総額:3,055億円
MakeShopの発表によると2022年のMakeShopの流通額は過去最高の3,055億円。2021年の流通総額は2,749億円のため、前年比11.1%増となった。11年連続で国内のカートASPジャンルの中での流通総額No.1となっており、この背景についてMakeShopは「コロナ禍で契約数が急増した新規導入ショップの売上成長の加速をはじめ 、「イベント・チケット・サービス」分野の回復と、地方ショップの成長」とコメントしている。
Qoo10 流通総額:2,305億円(推測)
Qoo10は、ここ数年で大きく運営母体が変わっていることもあり、流通総額は断片的な情報を組み合わせて推測するしかない状況が続いている。eccLabでは今回もQoo10の流通総額の推測を行う。2019年は「前年比30%増のペースで流通総額を拡大している」という記事の記述をもとに、1,209億円と推測。2020年は「取引高は20%の中盤から後半の伸び率だった」という記事の記述から1,542億円と推測。2021年は大規模セールの「メガ割」が好調でターゲットである10~30代女性の認知も高まっていることから2,004億円と推測した。今年は「2022年の流通総額の成長率は比較的落ち着いているが、2桁以上の成長は継続できており目標は達成できそうだ」という記事の記述や、新たに開設されたファッションカテゴリーの「MOVE」の売上が好調という記述を元に前年比15%増の2,305億円と推測する。
カラーミーショップ 流通総額:2,174億円(推測)
記事によると、今年で18周年を迎えるカラーミーショップの2021年の流通総額は前年比7.0%増の2,070億円であった。2022年の流通総額に関する情報は公開されていないが、カラーミーショップを運営するGMOペパボ株式会社の決算説明会資料をもとに、前年比5.0%増の2,174億円と推測する。
futureshop 流通総額:1,905億円(推測)
国内大手ショッピングカートfutureshopを運営する株式会社フューチャーショップのオウンドメディア「E-Commerce Magazine」の記事によると、2022年からは公式的な流通総額の発表はされないようである。そこで、eccLabでは昨年までの情報をもとに推測を行う。Futureshopの流通総額は年間平均で前年比4.27%増であった。このことから、2021年の流通総額は1,827億円のため、今年は1,905億円と推測する。2022年は外出機会増加の影響から「日用品・雑貨・インテリア」など在宅時間を充実させるアイテムの新規入店は減少したものの、「アパレル・ファッション用品」や「旅行用品・旅行予約」カテゴリの導入店舗が増加した。また、全稼働店舗の会員数は3年前と比較して約2倍になったという。
ラクマ 流通総額:1,883億円(推測)
ラクマの流通総額は昨年に引き続き公表されていないが、競合のメルカリよりも勢いは大きくないと予想されることから、前年比4.0%増と予測する。2020年の流通総額推測値1,725億円及び2021年の流通総額推測値1,811億円から推算し、2022年のラクマの流通総額は1,883億円と推測する。
BASE 流通総額:1,186億円
インスタントECを提供するBASEの決算説明会資料によると、2022年のBASEの流通総額は1,186億円。2021年の流通総額が1136億円だったため、前年比4.4%増となる。BASEは一昨年121.9%増、昨年19.4%増と劇的な成長を見せていた。それを踏まえれば今回は少し伸び悩んだと言える。また、その原因としてはリオープニングに伴うオンライン消費減少等であると述べられている。
ショップサーブ 流通総額:1,011億円
カートASPサービスのショップサーブの決算説明会資料によると、2022年のショップサーブの流通総額は1,011億円。2021年の流通総額が1,000億円だったため、前年比1.1%増となる。2016年以降データの公表が行われておらず、推測が難しい状況が続いていたが、再度データの公表が行われたことから、eccLabでは2022年の流通総額から改めて掲載する。
STORES 流通総額:960億円(推測)
インスタントECサービスSTORESの流通総額は公表されていないが、公式による記事の記述から2021年の流通総額が2,400億円であることが判明している。お知らせやプレスリリースによって店頭での決済や予約サービスが主力であると読み取れることから、ECサービスは全体の約4割程度と想定し、2022年の流通総額は960億円と推測する。なお、昨年の流通総額を推定していないことから前年比は不明となる。
リピスト 流通総額:945億円(推測)
株式会社PRECSが運営する定期購入に特化したECカートリピストの公式サイトによると、リピストの年間流通総額は900億円であるという。年度の記載はないもののここ数年で順調に導入数を伸ばしているため、eccLabでは2021年全体の流通総額もほぼ同程度であると推定し、前年比10%増の900億円と推測した。このことを踏まえ「日本トレンドマップ研究所の調査で、「CVR向上部門No. 1」、「LTV向上部門No. 1」、「サポート充実部門No. 1」を獲得し売上向上のみならずサポート品質が高い」という記事の記述から、2022年の流通総額は前年比5,0%増の945億円と推測する。
おちゃのこネット 流通総額:516億円(推測)
おちゃのこネットの流通総額は公表されていないが、日本ネット経済新聞の記事に「おちゃのこネットの2021年度の流通総額は前年15%増の482億円」との記載がある。このことから、eccLabでは2020年までの流通総額に関する情報がないため、前年比は不明であるものの、2021年全体の流通総額もほぼ同程度であると予想し、482億円と推測した。2022年は業界全体として大きな成長が見られた2021年ほどの増加は見られないと推定し、前年比7%増の516億円と推測する。
Commerble EC PaaS 流通総額:469億円(推測)
柔軟性に優れたクラウドプラットフォームCommerble EC PaaSを運営する株式会社Commerbleのプレスリリースから推測すると、2021年においても堅調に成長していることが見込まれるため、流通総額は前年比50%増の、375億円と推測した。2022年の成長率は昨年に届くほどではないものの安定して順調に伸びているとの予測から、2022年年間流通総額は前年比25%増の469億円と推測する。
Creema 流通総額:165.4億円
ハンドメイドサイトCreema(クリーマ)を運営する株式会社クリーマの決算説明会資料によると、2022年のCreemaの流通総額は165.4億円。2021年の流通総額が157.2億円のため、前年比5.2%増となった。昨年の12.5%増と比較すると伸び幅は小さいが、Creemaはトレンド特集やキャンペーン施策のほか、継続的なユーザーインターフェースの向上やクリエイターの利便性向上施策、様々な施設とのコラボにも積極的に取り組んでいるという。
minne 流通総額:150.7億円
ハンドメイドサイトminne(ミンネ)を運営するGMOペパボ株式会社の決算説明会資料のp55によると、2022年のminneの流通総額は150.7億円。2021年の流通総額が151.5億円のため、前年比0.5%減となった。流通総額はほぼ横ばい状態となったが、作家・ブランド数、作品数、アプリDL数はいずれも増加している。
推測困難なその他のサービス
オープンソースECパッケージEC-CUBEは2019年8月時点での年間流通総額が2,100億円であると公表していた。また、公式サイト上での2020年振り返り記事、及び社外リリース等より、2020年はコロナ禍による巣ごもり需要の増加が1.5倍程度見られることが読み取れたため、eccLabでは流通総額の推測を行ってきたが、その後の情報公開がないため推測不能。
海外25のECモール・カートの流通総額ランキング
続いては、海外の25の主力モール・カートサービスなどの2022年(1月~12月)の流通総額を見ていく。こちらも公表データだけでなく、eコマースコンバージョンラボ編集部による推測値も掲載し、流通総額が多い順に紹介していく。
Amazonグローバル 流通総額:73兆1,655億円(推測)
米Amazon.comが公開している年次報告書の23ページによると、2022年のグローバルにおける売上高は5,139億8,300万ドルで前年比9.4%増となった。この値はAWSなどのEC事業以外も含む。EC事業のみで見ると(年次報告書37ページ)、2,429億100万ドルで前年比12%増となっている。2022年の平均為替レートを130.43円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合(以降、米国ドルに対しては全てこの値を使用)、日本円にして31兆6,816億円となる。この値も第三者が売主になるものが手数料10%程度しか計上されていないため、eccLabでは海外のマーケットプレイス割合は国内よりも多いことから63%と推定。このことから、グローバルでの2022年の流通総額は73兆1,655億円、前年比20.4%増と推測する。
また、2022年の売上高を地域別に見ると、アメリカが3,561億1,300万ドル、ドイツが335億9,800万ドル、イギリスが300億7,400万ドル、日本が243億9,600万ドル、その他の地域が698億200万ドルとなっており、昨年と同様、日本は世界で4番目の売上高を誇る規模になっている。また、本国米国の売上高は69.3%を占めている。
Taobao(淘宝网/タオバオ) 流通総額:71兆101億円(2022年4月から2023年3月までの値・推測)
Alibabaグループは前回から事業全体や売上高メインの情報公開となり、Taobao単体の流通総額が掲載されていないため、これまでの数値と最新資料を合わせた推測を行う。また、例年4月から3月までの数値しか公開されていないことから、同期間での推測となる。まず、同グループの通期実績資料において、「流通総額は前年比で一桁台半ばの減少」との言及があった。さらに2021年10-12期より事業セグメントの開示方法が刷新されているため、上記の数値はTaobaoとTmallの合計ではなく、eコマース以外も含むものとなっている。しかしながら、同グループのGMVの大半は依然としてTaobaoとTmallが占めていることなどを踏まえ、eccLabでは前年比5%減程度と推測。ここから逆算し、Taobaoの2022年度の流通総額はおよそ3兆7,023億人民元、2022年の平均為替レートを19.18円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合(以降、中国元に対しては全てこの値を使用)、日本円換算で71兆101億円と推測する。
Tmall(天猫) 流通総額:69兆6,407億円(2022年4月から2023年3月までの値・推測)
Taobaoと同じ根拠、更にここ数年TaobaoよりもTmallの成長率が若干高いことから、中国大手ショッピングモールTmall(天猫)の成長率は前年比4%減程度と推測。ここから逆算し、Tmallの2022年度の流通総額は3兆6,309億人民元、日本円換算で69兆6,407億円と推測する。
JD.com(京東商城/ジンドン) 流通総額:66兆7,828億円
中国大手ショッピングモール京東商城(JD.com)や京東全球購(JD Worldwide)などを運営するJD.comの決算発表資料によると、2022年の流通総額は前年比5.6%増であった。2021年の発表から流通総額そのものの記載はなくなったが、2020年の流通総額が2兆6,125億人民元だったため、前年比から逆算し、JD.comの2021年の流通総額は3兆2,970億人民元。2022年もこれを元に算出し、流通総額は3兆4,819億人民元、日本円換算で66兆7,828億円となる。
Pinduoduo(拼多多/ピンドゥドゥ)流通総額:64兆8,437億円(推測)
中国の上海に本拠地を置く共同購入システムのeコマースプラットフォームPinduoduoの流通総額は今年から非公開となったようだが、eccLabでは年次報告書から総収益増加率の年間平均をとり推測を行う。総収益は前年比38.5%増であり、昨年の流通総額が2兆4,410億元のため、2022年の流通総額は3兆3,808億元、日本円換算で64兆8,437億円と推測する。2015年の設立以来、低価格商品を売りとするPinduoduoは農村部を中心に爆発的に普及したが、昨年ほどの勢いではないものの2022年も安定してその勢いは健在である。
Shopify 流通総額:25兆7,208億円
北米大手ショッピングカートサービスShopifyが発表した年次報告書によると、Shopifyの2022年の年間流通総額は1,972億ドルとなり、日本円にすると25兆7,208億円となった。昨年の流通総額が1,754億ドルなので、前年比12.5%増となる。なお、Shopifyブログのインパクトレポートによると、「Shopifyの加盟店は2021年に500万の雇用創出と4,440億ドル以上の経済効果に貢献した」とのこと。さらにパートナーエコシステムは前年比45%増の320億ドルの収益を生み出しており、これはShopifyの2021年の収益のほぼ7倍であるという。
Magento 流通総額:20兆2,167億円
米国ショッピングカートサービスMagentoの2022年の年間流通総額は、記事によると1,550億ドルとなり、日本円にすると20兆2,167億円となった。ただし、2021年以前の流通総額についての情報は公開されていないため、前年比は不明となる。Magentoは2008年にサービスを開始したのち2010年にeBayによって、2018年にはAdobeに買収されたことで提供元が2度変更になっている。
eBay 流通総額:9兆6,388億円
米国eBay Inc. が発表した投資家向けリリースによると、eBayの2022年の流通総額は739億ドルで、日本円にして9兆6,388億円であった。昨年の流通総額が874億ドルのため、前年比15.4%減となっている。なお、2021年より商品代金だけでなく送料と税金もGMVに含むようになり、完了した取引のみを計上するよう定義が変更されたため、数値が遡及修正されている。
Shopee 流通総額:6兆9,406億円
シンガポールに本拠地を置くSeaが運営する、東南アジア地域で急速に普及しているC2CモールのShopeeの2022年の流通総額は、Seaの決算発表によると735億ドルであった。これは日本円に換算すると6兆9,406億円となる。昨年の流通総額が626億ドルのため、前年比17.4%増となる。
GoTo(旧:Tokopedia) 流通総額:4兆7201億円
インドネシアのスーパーアプリ「GoTo」を提供するGoTo Groupは、2021年5月にTokopediaとGoJekが経営統合し設立された企業だ。年次報告書によると、2022年におけるGoTo Groupの流通総額は613兆ルピアであった。2022年の平均為替レートを0.0077円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合(以降、インドネシアルピアに対しては全てこの値を使用)、日本円に換算して4兆7201億円であった。昨年の流通総額が462兆ルピアのため、前年比32.7%増となる。また、昨年から流通総額が正式に公表されるようになったため、eccLabでも2020年以前の数値を遡及修正している。
これまでアリババやソフトバンクグループなど多くの企業が出資を続けてきたGoTo Groupは、2022年4月にインドネシア証券取引所に上場を果たした。公式サイトによると年間取引ユーザーは5500万人、配車のドライバーは250万人となっており、インドネシアの家庭の約2/3がGoToを利用しているという。
Coupang 流通総額:4兆5,259億円
2010年に韓国で誕生した大手ECモールCoupangの2022年度の流通総額は、記事によると347億ドルであり日本円換算で4兆5,259億円、前年比159%増となった。Coupangは韓国におけるAmazonのようなECサイトで、最短翌日に届くロケット配送を特徴としており、2021年6月には日本にも進出。現在は東京23区内の一部で展開し、最短10分で届くなど、国内でも同様配送スピードの速さを売りにしている。2021年の流通総額についてeccLabでは16.1兆ウォンを日本円換算し算出していたが、2022年のCoupang流通総額に関する記事は米ドルのみ表記されていたことから、前年比は2021年の134億ドルと比較する形で算出している。
Mercado Libre 流通総額:4兆4932億円
アルゼンチンに本拠地を置き、中南米向けにECモールを展開するMercadoLibreの2022年の流通総額は、年次報告書によると344億4,900万ドルであった。これは日本円にすると4兆4932億円となる。昨年の流通総額が283億5,100万ドルのため、前年比21.5%増となる。
VIP唯品会 流通総額:3兆3,603億円
VIP唯品会の投資家向け情報によると、中国大手のECモールであるVIP唯品会の2022年の流通総額は1,752億人民元、日本円に換算すると3兆3,603億円となる。昨年の流通総額が1,915億人民元のため、前年比8.5%減となる。
Lazada 流通総額:3兆390億円(推測)
シンガポールに拠点を置き、東南アジア各国で展開するアリババ傘下のモールLazadaの流通総額は、記事によると2022年の流通総額は233億ドルであった。他に情報が存在せず、また公式のニュースリリースでも「Lazadaの注文数微増」との記載があることから、eccLabでは2022年全体での流通総額もほぼ同等であると推定。このことから、Lazadaの2022年の流通総額は3兆390億円と推測する。昨年の流通総額が210億ドルのため、前年比11.0%増となる。
Flipkart 流通総額:2兆9,999億円
2018年にWalmartに買収されたインド最大手のECサイトでありインドのAmazonとも言われるFlipkartの2022年度の流通総額は、記事によると230億ドルと推測され、日本円で2兆9,999億円となった。昨年の流通総額が200億ドルのため、前年比15.0%増となる。なお、昨年のeccLabの記事ではFlipkartが2014年に買収したミントラのシェア30億ドルを含んでいたため、Flipkartの流通総額を200億ドルに修正うえで前年比を算出した。
Trendyol 流通総額:2兆3,477億円(推測)
トルコを本拠地として中東地域に展開するモールTrendyolの記事によると、Trendyolの2022年の流通総額はおよそ180億ドル、日本円換算で2兆3,477億円となった。記事によると2022年5月の段階でTrendyol の流通総額が176億ドルであることから、eccLabでは12月には180億ドルを達成出来ていると推測。昨年の流通総額が135億ドルのため、前年比33.3%増となる。
蘇寧易購 流通総額:2兆1,347億円
中国大手のECモールである蘇寧易購の投資家向け情報によると、蘇寧易購の2022年の流通総額は1,113億人民元、日本円に換算すると2兆1,347億円となった。昨年の流通総額は経営状況の急激な悪化に伴って一切発表されなかったため、前年比は不明となる。2020年の流通総額は2903億人民元であったことから、この2年間で3分の1程度まで流通総額が落ち込んでいることが分かり、経営状況の悪化が見て取れる。
Zalando 流通総額:2兆205億円
ドイツに本拠地を置くオンラインアパレルサイトZalandoの発表によると、Zalandoの2022年の流通総額は147億9,790万ユーロとなり、2022年の平均為替レートを136.54円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合、日本円に換算すると2兆205億円となった。昨年の流通総額が143億3,270万ユーロだったため、前年比3.3%増となる。なお、昨年の流通総額は143億4,840万ユーロから143億3,270万ユーロへと修正がなされたようである。
Etsy 流通総額:1兆7,371億円
米国ハンドメイドマーケットプレイスEtsyの決算発表によると、Etsyの2022年の流通総額は133億1,840万ドルとなり、日本円にすると1兆7,371億円となった。昨年の流通総額が134億9,183万ドルのため、前年比1.3%減となる。
allegro 流通総額:1兆4,856億円
ポーランドを本拠地として欧州で展開するモールallegroの2022年の流通総額は、決算報告書の20ページによると524億9,570万ズロチ。2022年の平均為替レートを28.30円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合、日本円にして1兆4,856億円となった。昨年の流通総額が426億170万ズロチのため、前年比23.2%増となる。
Bukalapak 流通総額:1兆1,835億円
CtoCモールを筆頭にBtoBやBtoCなども展開するインドネシアの企業Bukalapakの2022年の流通総額は決算報告書の4ページによると153兆7,000億ルピア、日本円で1兆1,835億円であった。Bukalapakは2020年の流通総額は公表していないが、公式ブログの記事に「2021年度の流通総額は前年同期と比較して44%増加」と記載されていたことから、eccLabでは2021年の数値を逆算し122億6,000万ルピアとした。このことから、2022年の流通総額は前年比25.4%増となる。
Gmarket 流通総額:1兆18億円
韓国最大のショッピングモールGmaketの2022年流通総額は記事によると76億8100万ドル、日本円にして1兆18億円であった。2021年以前の流通総額に関する情報は公開されていないため、前年比は不明となる。サービス開始時の運営会社はGmarketであったが、2009年にeBay社の子会社となり、現在の運用はeBay Korea社によって行われている。
Squarespace 流通総額:7,903億円
米国ショッピングカートサービスSquarespaceの2022年年間流通総額は、決算報告書によると60億5,883万ドルとなり、日本円換算で7,903億円となった。昨年の流通総額が57億8,168万ドルのため、前年比4.79%増となる。
Hepsiburada 流通総額:2,965億円
トルコを本拠地として中東で広く展開するショッピングモールであるHepusiburadaの2022年流通総額は記事によると539億トルコリラ。2022年の平均レートを5.50円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)とした場合、日本円にして2,965億円。2021年の流通総額は520億トルコリラのため、前年比3.7%増となる。
Souq 流通総額:14億円
Amazonが親会社となっているアラブ世界最大のECモール、Souqの2022年流通総額は記事によると、1,090万ドルとなり、日本円にすると14億円となった。2021年以前の流通総額に関する情報公開がなされていないため、前年比は不明となる。
推測困難なその他のサービス
インドの大手ECサイトでありソフトバンクやアリババが出資していることでも知られるSnapdeal、トルコを本拠地として中東地域に展開するモールのn11、アリババグループでグローバルに越境ECプラットフォームを展開するAliExpressは、いずれも流通総額を公表しておらず、推測するための情報も存在していない。また、Snapdealと同地域に展開するマーケットプレイスのGittiGidiyorは記事によると、親会社であったeBayの事業撤退により2022年9月5日をもってサービスを終了したようである。
また、中国の越境モール・アプリに関して、昨年まではデータ分析会社、易観分析が四半期ごとのデータ分析を公開しており、記載されている市場規模とシェア率からサービスごとの市場規模を算出していた。しかし、2022年第4四半期以降のデータ公開はなく、それに伴ってTmall国際・網易 Kaola・JD.Worldwide・亜馬遜海外購(Amazon)・小紅書(RED)・蘇寧国際・聚美扱速免税店・豊趣海淘の推測は難しい状況になっている。
国内21・海外25の各主力プレイヤーの流通総額ランキングから見る市場トレンド
国内21サービス、海外25サービスの流通総額を紹介してきたが、ここで全てのサービスを流通総額順に並べてみる。
当調査を開始した2016年以降、他を大きく凌駕していた中国のTaobao・Tmallの2つのサービスは昨年から成長の減速が見られ、2022年ではそれがさらに顕著となった。また、昨年3位のAmazonグローバルは依然として成長率が高く、今回初めてTaobao・Tmallを抑えて1位になった。この上位3サービスに加え、JD.comとPinduoduoを含めた上位5サービスが60兆円の大台を超えた。また、1位のAmazonグローバルの成長率が安定していることから、今後減速が見られる2・3位のTaobao・Tmallと差が開いていくと予想される。
上位6サービスの顔ぶれは変わらず、4位のJD.com、5位のPinduoduoも中国のサービスである。なかでもPinduoduoは特に成長率が高く、3・4位の流通総額に迫る勢いであることから、中国国内におけるアリババグループの寡占傾向が年々弱まっていると読み取ることが出来そうだ。
なお、10兆円の大台をクリアしたのは7位のMagentoまで。昨年7位で10兆円を目前にしていたeBayの成長率は、前年に引き続き更なる減少に転じた。また、圧倒的な成長率で2022年には10兆円を超えるかと思われた東南アジアのShopeeも10%台後半の成長率と、一時と比較するとその勢いに落ち着きが見られる。その他の東南アジア系のサービスであるGoTo・Flipkart・Bukalapakも成長率が高く、市場全体が好調であることがうかがえる。
上位サービスであるTaobao・TmallやeBay、Etsyの成長率は減少に転じたものの、その他の海外サービスは基本的に1桁~10%台後半の成長を続けているようだ。
続いてサービス形態別に見てみよう。
世界のマーケットプレイス(C2C)型の流通総額ランキング
まずは、マーケットプレイス(C2C)型の流通総額を見ていく。
マーケットプレイス型のサービスは、大きく成長したサービスと、成長が低迷しているサービスに2極化している。各国の市場環境などの影響が大きく一概に原因を特定することは難しそうだ。上位2サービスのTaobao、eBayと6位のEtsyは大きく低迷しており、3~5位のShopee、GoTo、Coupang、7位のBukalapakは10%台後半以上の成長を遂げている。特にCoupangは前年比159%と驚異的な成長率である。
上位2サービスは前回までと変わらず、中国のTaobaoが圧倒し、次いで米国のeBayとなっている。また、ここには掲載していないが、Amazonは流通総額の6割強がマーケットプレイス型によるものとされているため、額面通りに計算すると約44兆円となる。すると、eBayを上回り2番目に位置付けられ、Taobaoの半分強の流通総額となる。今後も東南アジア系のShopee、GoTo、Bukalapak等は依然として成長率が高いまま継続していくことが期待されるが、日本や欧米の成熟市場においてはどのような成長率となるのか注視していく必要がありそうだ。
世界のECモールの流通総額ランキング
次にモール型サービスの流通総額を見ていく。
※ダウンロードファイルに高解像度の上記グラフ画像も含まれます。
2022年のECモールの流通総額は、調査開始の2016年から独走状態だったTmallの勢いが一気に落ちたことで、2位に付けていたAmazonグローバルとの順位が入れ替わる1年となった。Amazonグローバルと2~4位のTmall、JD.com、Pinduoduoまでの4サービスは、その成長率を考慮すると若干Amazonグローバルが有利ではあるものの、今後数年でどのような勢力図に書きかわっていくのか全く予想がつかない。
5位以下の流通総額1兆円を超えるサービスは12サービスとなり、昨年に引き続いて過去最多を記録している。
世界のショッピングカート・PKGの流通総額ランキング
次にショッピングカートASPサービス、及びECパッケージ(PKG)の流通総額を見ていく。
※ダウンロードファイルに高解像度の上記グラフ画像も含まれます。
いわゆる自社サイトを展開する際に利用されるこれらのサービスは、依然としてShopifyが1位、次いでMagentoとなっており、3位以降のサービスに大きく差をつけている状態だ。ただし、2022年の成長率は日本のサービスであるecbeingが飛び抜けている。
Shopifyは日本以外の国で徐々に広がっている、自社サイトを活用する流れをうまく捉えた形だ。このShopifyの急成長は日本にも影響を及ぼしており、国内でも自社サイトを展開する際の第一選択肢と言える位置までサービスの認知が高まってきている。昨年までに見られたような圧倒的な成長率ではないのは、ある程度サービスが普及した影響を受けている可能性が考えられる。日本国内の流通総額は非公開のため分からないが、ecbeingについで2位の可能性が高いとeccLab編集部では推測している。
2022年のECモール・カート・アプリの流通総額の総括
2022年は中国のTaobao、Tmallの大きな減速と、それに伴うAmazonグローバルとの順位変動が一番の衝撃だったのではないだろうか。これまで圧倒的な流通総額と成長率でグローバルの市場を牽引してきたが、一気に数年後の勢力図がぼやける結果となった。
一方、世界中で部分的にコロナ禍の影響が残るなかでのデータかつ、2021年と比較するとその勢いは落ち着いた様子であるが、依然として多くのサービスの成長率は堅調のようだ。
海外サービスは市場が複数の国に渡っており、成長率などは依然として増加の余地があるものの、国内サービスの市場が同様の急成長を続けることは難しいと考えるのが妥当であろう。そのようななかで、海外サービスと国内サービスを並べることで、世界の、そして日本のEC市場トレンドについて多くの気付きを得ていただきたい。また、今後のEC業界の市場トレンドの検討及びインプットにしていただければ幸いだ。
今後はこのトレンドがどのように変化していくのか、また2022年で特に流通総額の増加傾向が見られた中東や東南アジアの市場はまだまだ成長の余地が期待できるため、どこまで伸びていくのか引き続き調査を行っていきたい。
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