そろそろ2023年の戦略を立てているところだろうか?ここでは、来年の計画を考える際に考慮すべきことを紹介しよう。
今年もこの時期がやってきた。もしあなたが小売業者であるなら、懸命に取り組んでいて、キャンペーンは計画通りに進み、悲鳴を上げるようなことがほとんどない状態であることを願っている。
この季節は、ブログやコラム、ウェビナーに携わる人は皆、2023年にマーケティングで何が起こるかを予測し始める時でもあるだろう。私もそうした一人ではあるが、正直なところ、今のところはまだ誰も本当の手がかりをつかめていないのだ。
これからの12か月間に何が起こるか、我々には分からないことがたくさんある。ただ一つ確かなことは、オンラインの世界でも現実の世界でも、間違いなく、またしても多くの紆余曲折が待ち受けているだろうということだ。
そこで、ここでは予測ではなく、2023年に向けてマーケターが計画を立てるにあたって覚えておくべきことをみていきたい。私のインサイトが何らかの方向性を示し、目標設定の助けとなり、そして誰かがブラックフライデーの別のメールキャンペーンを依頼しにやって来るまでの5分間、あなたが正しい心構えでいられる材料となることを願っている。
世界的な景気後退がやってくる
米国の政治家が何と言おうと、景気後退は米国だけの問題ではない。それは、世界中で起こっている。このことは、メール(戦略)に新たな課題を突きつけている。だが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで勝者として台頭したように、メールも景気後退に立ち向かうことができる可能性がある。
私は、マーケティングや経済、政治に関するニュースを読んだり、オフィスにある5台のスクリーンに目を留めたりして、それぞれが異なる情報をストリーミングする中から、常に最新情報を得ることを大事にしている。それゆえ、一部の企業がすでに広告費を削減しているというニュースをよく目にしている。また、不況の逆風にさらされた場合に備えて、現在、プロセスに投資している企業もある。
メールはパンデミックの際にその価値が証明されたことから、その予算が他のチャネルに向けられるために削減されることはないと思われる。しかし、メールが景気後退に強いという概念は、試されることだろう。
これは、メールが無傷でいられるということではない。しかし、我々メールマーケターは、これまでと異なる種類の課題に備える必要がある。企業は、顧客に情報を提供し、真の信頼関係を構築するためにメールに投資した、パンデミック時の戦術に戻るかもしれない。あるいは、2008年の景気後退時のビジネス手法に戻って、収益目標の死守という使命のためにあらゆるものを見捨てるかもしれない。
我々は今、多くの不確実性に直面している。通常より高いインフレ率であっても、世界の一部の地域では雇用の拡大により、景気後退には見えないような不況に陥る可能性もある。
そこで、我々は、メールが景気後退に強いという評判にいかに対応することができるかを検討しなければならない。我々の二つの課題は、世界経済がどのように変化していくのか、そして生き残りのためにメールをどのように適応させればよいか、ということだ。
メールというチャネルは存続するだろう。問題は、メールが獲得した優位性を維持できるかどうかだ。
セグメンテーションは、インフレにうんざりしている顧客からの増収に役立つ
消費者はパンデミックの間、支出を控えた。そして今、インフレによって同様の支出削減が生じている。消費者支出の削減は、メールマーケターにとってさらに大きなプレッシャーとなっている。
小売業者は、お買い得品を求める顧客に対応するため、今年はさらに早い時期にホリデーキャンペーンを開始している。今までであれば11月に入る頃に行われていたようなキャンペーンを10月上旬に多く見かけた。
今年の消費者支出も軒並み高い予想だ。最も楽観的なものは、2021年の年末年始の支出は4%から6%増加すると予想しており、他のものは消費者の支出は横ばいか減少すると予想している。
小売業者は、年末年始の消費を促進するために、さらなる値引きの実施やメール配信の頻度を上げるなど、いつもの手段を講じるものと思われる。しかし、マーケターはこれらの手段を無差別に利用するのではなく、リストのセグメンテーションを再考・修正し、確実に収益を上げ続けるようにする必要がある。
「セグメンテーション」は、消費者が競合他社ではなく、貴社にお金を使うように動機付け、インセンティブを与えるための全面的に未開拓の市場を指す。
セグメンテーションは、顧客データプラットフォーム(CDP)と高度な分析ツールによってその効果が発揮される。メールマーケターは、これらのツールを使って、景気後退による予算削減と消費者支出の削減の両方に対処することができる。
セグメンテーションをサポートするリソースの要求の根拠とし、またマーケティング技術スタックの中でより高い優先順位を勝ち取るために、顧客について学んだこと(効果を奏したことと、そうでないこと)を活かそう。
世界中のマーケターが2023年に世界的な景気後退に見舞われる可能性があるが、消費者支出の削減により、最終的には「より多くの」マーケターではなく、「より賢い」マーケターになることを余儀なくされるかもしれない。
CDPに価値を証明するプレッシャーがかかる
顧客データプラットフォーム(CDP)は以前から存在していたが、現在では中堅ブランドにも浸透し、企業レベルでの本格的な導入が始まっている。しかし、CDPがデータ指向マーケティングの救世主なのか、それとも光輝く新たなトレンドなのかは、まだ分かっていない。
2023年には、CDPのプルーフポイント(重要性や有用性など、価値を裏付ける根拠)が示され、我々メールマーケターがCDPを利用してメールキャンペーンを顧客との会話を高めるメッセージに変えられるかどうかが明らかになるだろう。
ベンダーは、CDPを顧客のインテントや購買傾向、データオーケストレーション(大規模なITシステムやアカウントの管理をソフトウェアによって自動化する機能)へのゲートウェイとして販売してきた。来年には、CDPがデータレイク(さまざまなソースから収集したデータを一元管理で貯めておけるリポジトリ)と顧客関係管理(CRM)の間のギャップを埋めることで、よりインテリジェントなマーケティングを実現し、メッセージングの自動化やターゲティング、パーソナライゼーションを促進するかどうかが分かるだろう。
しかし、この動きは、メールの優先順位を下げることにもなりかねない。歴史的に、メールは投資というテーブルの一番奥隅に置かれ、最後に我々に出された大皿に何が残っているかを確認してもらうのを待っているようなものであった。
CDPを使えば、セグメンテーションやパーソナライゼーションのためのデータに簡単にアクセスできることが分かるかもしれない。あるいは、企業がCDP導入にかける費用は、データ、技術的構造、またはそれを管理するためのノウハウが伴わなければ無駄なものであることが分かるかもしれない。
マーテックスタックは、より厳格な精査が行われる
今年、私の代理店は、付き合いの長い顧客と新規顧客双方の技術スタックに関する業務で、非常に忙しかった。それは、メールプラットフォームに関する案件だけでなく、それに隣接し、接続するすべてのシステムに関するものであった。
これらのクライアントの多くは、自社のテクノロジーに不満を持っており、新しいベンダーを探すか、新しいベンダーに移行するよう依頼してきた。
パンデミックによってデジタルトランスフォーメーションが加速されたことは周知の通りだ。貴社の技術スタックがその変化に追いついていないのであれば、それは大惨事を起こすかもしれない。我々は、「十分なアジリティを有していない」と言うクライアントの声を聞いたことがある。
あるいは、「このプラットフォームは、当社をよりスマートにするのに役立っていない」という声や、「このプラットフォームは、現在の当社のニーズの全てに対応できるほど複雑なものではない」という声を耳にしたことさえある。
また、自社システムが役に立たなくなってしまっている企業もある。パンデミックによって、企業はより迅速に対応し、顧客、従業員、利害関係者とのコミュニケーションを改善することを余儀なくされ、多くの企業がシステムの限界を超えることを余儀なくされたのだ。
今日、多くのクライアントはニーズを満たそうと、より優れた、より高速で、より複雑な、さらに高機能なテクノロジーを求めている。なぜなら、クライアントが進化し、現在の状況に対応できるサポートを必要としているからだ。
より多くの企業が、自社に適切なテクノロジーがあるかを検討し、他にどのようなテクノロジーがあるか、また自社の新しい要求を満たすために何ができるかを精査するようになるだろう。
この再確認の一環として、企業がすでにコスト負担をしているテクノロジーの利用を増やすことも出てくるだろう。
Gartner(IT分野を中心とした調査・助言を行う英国企業)の調査を目にしたことがあるかもしれないが、これによると、企業は平均して42%の技術スタックしか使用しておらず、この数字は2020年の58%からわずかに減少している。
私がResponsys(B2Cマーケティングソフトウェアを提供していた米国企業。Oracleが2013年買収)で勤務していたとき、プラットフォームの使用率は実際には10%に近かったことが分かった。当時(「当時」とは2007年のことだ)、マーケターは、今日では多くが標準的に装備されている高度な機能をすべて使いこなすことはできなかった。
技術スタックに不満がある場合は、それが本当にニーズに合わなくなったのか、それともその機能をすべて使いこなしていないだけなのかを考えてみよう。
新しいテクノロジープロバイダーを探し始める前に、ベンダーを訪ねて最新のデモを見せてくれるよう頼んでみよう。彼らは喜んで応じてくれるはずだ。使う必要があるのに、まだ使っていないものを見せてもらうよう、プロバイダーに要求してみるのだ。そうすれば、自社のテクノロジーの能力と限界をよりよく理解できるようになるはずだ。
未来に目を向ける
いつものように、私はくだらないことを言っているだけなのかもしれない。ベンダーに、テクノロジーの使用状況の監査を依頼することについてではない。そのことは、常に良いアドバイスだからだ。そうではなく、それ以外のこと、例えば、私の仕事、ニュース、他のマーケターとの会話で目にしたことについて、という意味だ。
さらに、私は景気後退、新型コロナウイルス感染症、インターネットの誕生と進化、Amazonの波、メール分野での統合など、多くのことを経験してきた。それらが、これから起こることについての私の見解にもつながっているのだ。
私は常にマーケターと、彼らが来年の計画を立てる際に何を考えるべきかに焦点を当てている。
それでは、気を取り直して、2022年の残りの計画をまとめよう。そして、チームと飲みに行ったり、夕食に行ったり、リモート勤務のスタッフをサポートしたりして、一緒にお祝いすることもお忘れなく。
来月は、12月恒例のモチベーションと年末の総括をお楽しみに!