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浸透する、eコマース・C2Cサービスでのユーザー認証

浸透する、eコマース・C2Cサービスでのユーザー認証

トレンド
2022/09/21

オンラインマーケットプレイスはユーザー認証を開始しており、デジタルコミュニティの発展に向けて、より安全な環境をつくるための重要な要素となっている。

 

スニーカー収集の黎明期を今でも懐かしく思い出す。当時、人々は行列を作って限定販売の靴を確保し、モールでコレクター仲間に会い、憧れのコレクションを公平に交換していたものだ。

 

確かに、「カートに入れる」をクリックするような便利さはなかったが、その体験は実際の人間関係に根ざしたものだった。これは、今日のオンラインコマースの時代において、求められていると同時に、希薄になりつつある要素でもある。

 

また、eコマースから後戻りすることはできないが、オンラインで商品を購入、交換するデジタルエクスペリエンスをより人間味のあるものにする方法がある。それは、すべてのユーザーを認証することである。

 

金融業界において、顧客識別テクノロジーやKYC(know your customer)テクノロジー(金融機関を詐欺、汚職、テロ資金供与などから保護するための技術)は、すでに一般的なものとなっている。投資会社は通常、オンラインサービスを使用する前に、顧客の身元確認と、マネーロンダリング対策に関する詳細な情報を提出するよう顧客に要求する。目的は明確だ。詐欺を防止し、ユーザー間の信頼と説明責任を高めることである。

 

現在、高価な資産を売買するオンラインマーケットプレイスでユーザー認証を行うために、同様の技術が使われている。これにより、新規ユーザーのオンボーディングの際に摩擦を生じさせることになるが、最終的には企業とユーザー双方が新たな一歩を踏み出すのに役立つのだ。理由は以下のとおり。

 

マーケットプレイスへの信頼により、リピーターは増える

ピアツーピア(接続されたコンピュータ同士が対等な立場でデータを利用、やり取りする接続・通信方式)マーケットプレイスは、昨年の融資セグメントだけでも1,156億1,000万ドル以上の価値を持つ、数千億ドル規模の産業に成長した。融資セグメントではKYCを広く採用しているものの、大多数のピアツーピアマーケットプレイスは、KYCが参入障壁をつくってしまうことでネットユーザー数の減少につながるため、その導入が遅れている。

 

ユーザー数の増加は重要だが、真の顧客を悪意のある人物からの詐欺や嫌がらせにさらすべきではない。購入者または取引相手の身元が確認されていない場合、リスクが高まるだけでなく、ユーザー間の信頼が低下し、真の関係を築くことができなくなる。グローバルマーケットリサーチ企業Ipsos調査によると、「信頼の欠如」は、買い物客がオンラインで製品やサービスを購入しない最大の理由であるという。

 

ユーザー間の信頼関係の構築と関係のキュレーションを中心に、eコマースに対するコミュニティファーストのアプローチを採用する企業は、特にZ世代や若い世代の購買力を向上させ透明性に根ざしたよりパーソナライズされたeコマースエクスペリエンスを求めることで、競争力を維持することができる。

デジタル認証は、最終的にオンラインマーケットプレイスのインテグリティ(誠実さ)を向上させ、信頼とコミュニティの促進に役立つのだ。

 

早期導入で、規制の影響を受けずに済む

信頼とユーザーの説明責任の確立とは別に、デジタルIDがオンラインマーケットプレイスを運営するビジネスに適しているもう1つの理由がある。それは、コンプライアンス維持に有効であることだ。政府は現在、税制上の理由からユーザー認証をしない企業を取り締まっている。

 

私のスニーカー業界では、パンデミック時に転売市場が活況を呈し、サイドハスラー(副業者)は、StockX(スニーカーやストリートウエアを市場の適正価格で売買できるプラットフォーム)のような二次市場でスニーカーの小売価格の2〜10倍を稼ぎ出した。スニーカーの転売市場だけでも、2019年には60億ドルの価値があると推定されており、2030年には300億ドルに達すると予測されている。ユーザー認証がなければ、政府は大量の転売屋が得た利益に課税できないのだ。考えてみてほしい。StockXのようなサイトが10億ドルの流通取引総額(GMV、gross merchandise value)を達成した場合、それは政府が徴収することのできない数億ドルの個人所得税に相当する。そしてそれは1つの業界の話にすぎない。

 

2021年12月、米国のeコマース企業eBayは、2021年の米国救済計画法で定められた新たな規制に対応するため、2022年から自社サイトで年間600ドル以上を稼ぐすべての売り手に社会保障番号または個人納税者番号の提供を義務付けると発表した。デジタル認証の計画を今すぐ開始しない企業は、新しい規制が施行された際に、油断して予算をオーバーする可能性がある。税務目的の販売者を確認することで、悪意のある人物がサイトで不正行為を行うのを阻止することもできる。

 

オンライン・コミュニティはより大きな利益を促進する

過去10年間、オンラインマーケットプレイスは流通取引総額によって動いてきた。企業はこのモデルから利益を得ているが、急速に時代遅れとなっている。私たちは、コミュニティ主導の新たなコマース時代に突入しつつある。そのため、顧客は交流があり、かつコミュニティを感じられる場所で買い物をしたいと考えており、その場所はますますオンラインに移行しているのだ。

 

私たちは今、テレビよりも携帯電話に多くの時間を費やしているが、それはエンターテインメントを探しているだけではなく、購入の決定に不用意に影響を与える人々と有意義なつながりを築くことを求めているのだ。ソーシャルコマースが2025年までに1兆2,000億ドルをもたらすと予測されているのはそのためだ。しかし、アバターの向こう側にいる人を信頼しなければ、私たちはつながりを持つことはできない。

 

そのため、ユーザー認証による保護を提供するオンラインマーケットプレイスは、この次のeコマースの時代に成功を収めるだろう。コミュニティとコマース間の結びつきが強まるにつれて、オンラインマーケットプレイスは、ユーザーエクスペリエンスと保護の適切なバランスを見つけることが不可欠となる。

 

デジタル認証は、オンライン・コミュニティが成功を収めるためのより安全な環境を作り出し、最終的には、質の高いユーザーの増加とトランザクションにつながる。結局はこれに尽きるのだ。つまり、コミュニティにとって良いことは、ビジネスにとって良いことであり、あらゆる持続可能な市場に当てはまる原則といえるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」9/15公開の記事を翻訳・補足したものです。