EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

CDPにおいて、顧客データを統合することがいかに重要か

CDPにおいて、顧客データを統合することがいかに重要か

マーケティング
2022/06/23

顧客独自の要件に適したソリューションを見つけるためのいくつかのアドバイス。

 

顧客データプラットフォーム(以下「CDP」)の主な目的は、すべての顧客データを1つの場所に統合し、顧客の属性、取引、または行動に基づいてオンラインとオフライン両方のキャンペーンを実行できるようにすることだ。とても簡単な例でいえば、スキーに関するページをよく見ている人を見つけて、スキー関連の新商品が入荷したときにメールを送ることができるということである。

 

このようなキャンペーンは、顧客のオンラインプロファイルをメールアドレスで充実させることができた場合にのみ可能だ。

 

つまり、見込み客は貴社で何かを購入したことがあるため、その顧客の情報は貴社の店舗に保管されており、さらに、貴社のWebサイトを訪問しているかもしれないが、その記録を統合しない限り、顧客の現場での行動を利用して適切なメッセージを送ることはできないということである。オンラインプロファイルをメールアドレスで充実させる方法を知ることは、それ自体が1つの研究であり、この記事の範囲を超えているのだが、この短い動画ではそれについて少し深く説明している。

 

オンラインプロファイルにメールアドレスを添付しておけば、そのメールアドレスの顧客データが統合され、単一の顧客ビューの完成だ、と思えたらいいのだが、そんな簡単なことではない。顧客データの中には、メールアドレスがないものもある。また、転職や合併・買収、あるいは単に複数の異なるシステムで個人アドレスを作成しているために、顧客はたいてい複数のメールアドレスを持っており、それは時間の経過とともに変えているかもしれない。

 

ここで重要な決断をしなければならない。CDPの理想的な目標は、すべての顧客データを統合することだが、現実にはその手間に見合うものではないかもしれない。すべては、CDPに何を期待するかによって異なり、それをよく考えることだ。顧客データのシナリオとユースケースを比較する必要がある。

 

簡単な方法は、メールアドレスを固有のものにすることだ。CDPには、メールアドレスごとに別のレコードがある。つまり、顧客ごとに複数のレコードが存在することになる。これは、顧客に関する単一のビューを持つというCDPの本質と矛盾するように思えるが、この解決策は一部のユースケースでは全く問題ない。

 

このことをもう少し深く理解するために、オンラインプロファイルとオフラインプロファイルの違いについて説明するとわかりやすい。

 

私が2020年にX社で働いていて、その時のメールアドレスが“gkrehbiel@companyx.com”だったとしよう。X社に在籍中、私は貴社のウェビナーに参加したので、貴社のCDPには、X社のメールアドレスを含む私のレコードが存在する。

 

2021年、私はX社を辞め、A社に入社し、メールアドレスが“greg.krehbiel@companyA.com”に変わった。2022年、貴社はCDPへの投資を行い、すべてのウェビナー情報をインポートして、“gkrehbiel@companyx.com”(今は無効で使い物にならないメールアドレス)のプロファイルを作成した。その同じ年に、私は貴社のサイトを訪れた。貴社のCDPは、私の訪問に基づいてプロファイルを作成した。つまり、CDPは私のウェブブラウザにcookieを置いて、私が貴社のウェブサイトと行ったインタラクションを記録し始めたのだが、私が誰であるかはわからなかった。

私が現在使用しているメールアドレス “greg.krehbiel@companyA.com”を使用してホワイトペーパーをダウンロードしたところ、私は「新規顧客」から「既存顧客」に変わった(万歳!)。しかし、そのアカウントでは私は“gkrehbiel@companyx.com”と登録されているため、私が貴社のウェブセミナーに参加したことはまだ分からないままだ。

 

単一の顧客ビューをどのように実現するのか?

CDPに、貴社のウェビナーに参加した“gkrehbiel@companyx.com”のプロファイルがあるにもかかわらず、そのプロファイルは本質的に役に立たない。メールアドレスは無効であり、アクティブなオンラインプロファイルにも対応していないため、Webサイトでウェビナー参加者としてターゲットにすることはできない。「ウェビナーに参加した人」というセグメントを作れば、そのプロファイルは含まれるが、何の役にも立たない。行動には移せないからだ。

 

この例では、メールアドレスに基づいてプロファイルを統合することの限界を指摘している。単純に、顧客に関するすべての情報を1つのレコードにまとめることはできないのだ。

 

代替案として、ホワイトペーパーをダウンロードするためのフォームに名前と住所が含まれていたとしよう。ここで、私が自宅の住所を使ったと仮定すると、2020年から2022年まで同じで、私のX社のレコードと私のA社のレコードを統合できる可能性がある。これで、ウェビナーの参加者として、ウェブ上で私をターゲットにすることができる。

 

要するに、メールアドレスの”多対一”の問題について考えなければならない。

Greg Krehbielという一人の人間が、さまざまなメールアドレスを持っており、それらのメールアドレスに関連する、貴社とのさまざまなタッチポイントを持っている可能性がある。これらのプロファイルを1つのレコードに統合できなければ、貴社と私とのつながりを完全に把握することはできないのだ。

 

それは重要なことだろうか?そうかもしれないし、そうでないかもしれない。私の実用的なプロファイル、つまり、私が貴社ウェブサイトで何をしているかと、私の現在のメールアドレスが載っているプロファイルには、貴社のウェビナーに参加したという事実は含まれないだろう。

 

それは大きな問題なのか?それはどれくらいの頻度で起こるか、そして何かを間違えた場合の影響にもよるだろう。例えば、「過去のウェビナー参加者」のリストに私を含めなかったことと、「ウェビナーに参加したことがない人」のリストに私を含めることは別のことだ。

 

ここでの課題は、あらゆるエッジケースや例外を解決しようとすると、かなり本筋から外れてしまうことだ。考えれば考えるほど、データを混乱させるような普通の出来事を簡単に思いついてしまう。

 

  • メールアドレスを収集するためのオンラインフォームに誤字があったら、どうなるだろうか?
  • 企業がメールアドレスの構成を変更した場合(例:「ファーストネームのイニシャル、ラストネーム@企業名.com」から、「ファーストネーム、ラストネーム@企業名.com」)、どうなるだろうか?
  • 誰かがカスタマーサービスに電話をかけてメールアドレスを変更する場合、データを再インポートする際にどのように対処するのだろうか。

 

どうやったら物事がうまくいくのか、考えていると気がおかしくなりそうだ。

 

では、どうすればよいか?

前述の通り、最もシンプルなのは、顧客プロファイルごとに1つのメールアドレスを持つことだ。しかし、それは 「単一の顧客ビュー」という考えをあきらめることになる。それでいいのであれば、つまり、すべてのユースケースを考え抜いた上で、それがあまり重要でないのなら、それでもいいだろう。

もう一つの方法は、メールフィールドに複数のメールアドレスを持たせることだ。この方法の唯一の欠点は、メールが顧客プロファイルの固有の識別子ではなくなることだ。しかし、いつでも他のアドレスを使用することができる。

 

このことを理解するための練習をやってみよう。誰かのメールが変わる可能性がある、または複数のメールアドレスを持っている可能性があるシナリオのリストを思い浮かべてほしい。

 

  • 転職した
  • 新しい個人的なメール
  • まじめなメールと迷惑メール
  • 会社のIT担当者がメールのフォーマットを変更することにした
  • 会社の社名が変わった、など

 

このリストと統合ルールを片手に、すべてのユースケースを見直していこう。どのような場合に「単一の顧客ビュー」を得ることができないのか?それは、戦略全体にとってどの程度の問題なのか、また、CDPで何を得たいのか?

 

顧客のメールアドレスをどのように管理するかについて、じっくりと考えなければ、CDPの導入は期待外れに終わる可能性が高いだろう。この記事で紹介したガイドラインは、貴社のニーズに合ったソリューションを見つけるための道筋を示しているはずだ。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の6/6公開の記事を翻訳・補足したものです。