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「離脱した顧客」と「離脱しつつある顧客」の違いをしっかり理解し、どのように施策を変えるべきか

「離脱した顧客」と「離脱しつつある顧客」の違いをしっかり理解し、どのように施策を変えるべきか

マーケティング
2022/06/16

リアクティベーションとリエンゲージメントは異なるものだ。全員に同じ「We miss you(ご来店をお待ちしています)」メールを送らないようにしよう。

 

今私は少しいら立っている。

あるブランドから、こんな件名のメールが届いた。「あなたは引き続き、私たちからの連絡をご希望でしょうか?」 このようなメールはよく見かけるが、このメールには本当に腹が立った。

私は年に数回、そのブランドから購入しており、自分ではロイヤルカスタマーだと思っている。私は毎日買い物をするわけではないので、日々送られてくるメールをすべて開くわけではない。買う準備ができたら、メールをクリックするかもしれないし(まさに買う準備ができたときに来たのだから)、受信トレイにメールがあるのを目にしたとしても、それを無視してサイトに直接アクセスするかもしれない。

 

いずれにせよ、このリエンゲージメントメールは、そのブランドが私を常連だが頻繁には購入しない顧客として認識していないことを示している。このメールは、私がメールを開かず、クリックもしない、エンゲージメントを促さなければならないような人々と同じように扱っているのだ。このようなシナリオは、私たちが目指している「正しいメッセージ」とは正反対であり、私のような顧客を遠ざけるのに十分なものだ。私たちは同じではないのに、なぜ同じであるように扱われるのだろうか?

 

もし、あなたのリアクティベーション(再活性化)プログラムが、より多くの収益や購買、より多くのメールの開封とクリックなど、あなたが望む結果をもたらさないなら、リアクティベーションプログラムは、うまくいっていないと結論付けるかもしれない。

 

しかしそうではない。あなたのリアクティベーションプログラムがうまくいっていないのは、その方法が間違っているからだ。あなたは、休眠顧客やゴースト購読者がなぜ離れていったかに関係なく、すべての顧客を同じように扱っているのではないだろうか。

 

用語を正しく理解する:「離脱」と「エンゲージメントなし」の違い

マーケティング担当者が、「離脱した顧客」や「離脱しつつある顧客」を、メールを開いたり、行動したりしていないように見えるメール購読者のように扱うと、問題に直面することになる。これらの顧客は、2つの異なるオーディエンス層なのである。重なり合うこともあるが、それでも動機も特徴も異なる。

 

「離脱した顧客」や「離脱しつつある顧客」とは、通常の購入サイクルで購入やコンバージョンをしていないか、またはそのサイクルの終わりに近づいているメール購読者を指す。ユニークで高価格の商品(家具、高級寝具、高級ジュエリー)を販売している場合、化粧品、家庭用洗剤、ミールキット、おむつなどの消耗品を販売しているブランドよりも購入サイクルが長くなる可能性があるだろう。また、ブランドの製品が祝日などの季節のイベントに関連していて、年に一度の購買者にアピールしている場合も同じことがいえる。

 

「アンエンゲージメントの購読者」とは、メールを開かなくなった購読者のことを指す。 あるいは、「アンエンゲージメント」の定義によっては、メッセージを開いても、クリックしない場合もあるかもしれない。さて、さらに複雑なのは、休眠顧客は「アンエンゲージメントの購読者」でもある可能性があるということだ。これが本当の「ゴースト購読者」だ。彼らは、他のブランドへ移るために離れていったのだ。あるいは、あなたの製品はもう必要ではないものの、メールの配信を停止していない人々なのだ。

 

しかし、一見、アンエンゲージメントであるように見える購読者が、実はあなたのサイトで買い物をしているかもしれない。受信トレイにメールが表示されるだけで、メッセージを開かずに、直接あなたのサイトにアクセスする動機になっているかもしれない。

これは、eメールの有名な「ナッジ効果(きっかけを与えて消費者に特定の選択肢へ誘導する手法)」だ。印象的で、情報量の多い件名が重要である理由の一つだ。

 

この2つのオーディエンス層を並べてみると、なぜそれぞれに対応する必要があるのか、つまり、なぜ間違ったメッセージを送ると1つのリアクティベーションキャンペーンが失敗に終わってしまうのかがわかる。

 

多くの場合、メールプラットフォームがeコマースやCRM(顧客管理)システムと統合されておらず、それらの重要なピースが欠落しているためにデータの不具合が発生している。また、エンゲージメントを測るのに、開封率に頼りすぎている可能性もある。開封率は常に信頼性の低い手段であり、Appleのメールプライバシー保護がさらに水を差しているため、これも失敗といえる。

 

さらに、メール業界自体がマーケティング担当者の期待を裏切っている。なぜなら、多くの記事や解説で、「リアクティベーション」と「リエンゲージメント」が同じ課題を表す同義語であるかのように扱われているからだ。

 

私は、メール業界全体に対して、「リアクティベーション」と「リエンゲージメント」について明確な命名規則を作り、それについて議論したり書いたりする際には、どの読者をターゲットにしているのかを明確にするよう呼びかけている。

 

何が問題なのか?

問題は山積みだ。ここでは、間違ったメッセージを送ることの危険性をいくつかご紹介しよう。

 

1.顧客を混乱させる

これは、「We miss you(ご来店をお待ちしています)」メールを受け取ったときの私の反応だ。私はメールに無関心に見えるかもしれないが、比較的最近何かを購入している。そのため、メールが私の購入を認識せず、ブランドが私を非アクティブとみなすことに戸惑いといら立ちを感じているのだ。

店員から名前で挨拶されることや、メールに自分の好みや行動、購入履歴が反映されることなど、人間は個人として認識されることを待ち望んでいる。顧客は、ブランドがデータを使い、データを反映したメッセージをパーソナライズし、カスタマイズすることを期待しているのである。

 

2.不必要なインセンティブ

無料の商品、アップグレード、割引など、あらゆるインセンティブは、製品マージンを削ることになる。今、あなたの会社の製品マージンはぎりぎりの状態だろう。

割引は本当に離脱した顧客を取り戻すための最良の方法なのだろうか、それとも何か他の方法でブランドの魅力を再び引き出すことができるのだろうか。より多くの顧客に購入を促すインセンティブは、より多くの離脱した購読者があなたのメッセージを開封するきっかけにもなるのだろうか。

 

3.不正確なアクティビティ測定

こうした不正確な測定は、メール配信プログラムに不利益を与える不適切な判断を招くことになりかねない。例えば、3ヶ月間メールを開かなかったり、クリックしなかった購読者に、リアクティベーションプログラムを送信することがあるかもしれない。その場合、多くの人が、まさにその時に買いたいと思っていなければ、そのメールを無視する可能性がある。

 

このようなリアクティベーションメールの指標を分析すると、これらの購読者からの開封率やクリック率がゼロになっていることがわかる。そのため、彼らは興味がないと誤って判断し、アクティブリストから外してしまうのだ。しかし、もし彼らがあなたのメールを見ないとしたら、その時点での彼らの優先順位があなたと一致しないため、どうやってコンバージョンすることができるのだろうか。

 

問題の解決方法:目的に応じたメールプログラムを作成する

メールマーケティング担当者は、リアクティビティに対する考え方や話し方を変えてみてはどうか。このようなメールプログラムのネーミングと設計をする際に、まず目的を明確にしよう。

 

1.リエンゲージメントプログラムの作成

これは、開封やクリックの行動からメールのアクティビティが落ちていることが分かるメール購読者が対象だ。目的は、顧客が再びメールを開いたり、クリックしたりするように説得することだ。選択した期間内に購入データがある顧客を除外しよう。このような顧客が、なぜメールに対して行動を起こさないのかを考えてみよう。送信者欄の「from」の名前をもっと親しみやすいものにしたり、件名をもっと興味深く、情報量の多いものにしたりするなど、受信トレイから取り掛かってみよう。

 

それが最初のステップだ。次に、より多くのクリックを促すために、コンテンツを再編成する。顧客について知っていることを利用して、購読者が開封してクリックする可能性が高いコンテンツを作成しよう。これは、購読者がメールに対して行動を起こさない理由の一つであることが多いため、メールを見直し、4つの購入者パーソナリティすべてに対応しているかどうかを確認しよう。

 

ここでは、バイヤーペルソナの話はしていない。むしろ、顧客がクリックする前に商品データを熟読する傾向があるか、衝動買いする傾向があるか、あるいは割引や商品の特徴よりも感情に訴えるトリガーに反応する傾向があるかを知る必要がある。

 

最後にもう一つ考慮すべきことがある。もし、閲覧、購入、コンバージョンなどの顧客行動を把握できていない場合には、行動を起こさない顧客の配信を停止したいという衝動に駆られないようにしよう。開封数とクリック数は、エンゲージメントストーリーのほんの一部に過ぎず、この永続的な決定を導くには十分ではない。

 

このようなエンゲージメントがないように見える購読者の新たなセグメントを作り出し、購読のメリットを説明するコンテンツや、連絡を取り合うための他の手段を提案するコンテンツをテストしてみることを検討しよう。

 

2.リアクティベーションプログラムの作成

これは、購入履歴はあるが、購入サイクルに合わせて、離脱寸前または既に離脱してしまった加入者向けのものだ。このような顧客を呼び戻して、購入してもらうことが目的だ。

こうした顧客には、待つのではなく今すぐ購入する正当な理由が必要となる。“We miss you.(ご来店をお待ちしています)”と言うだけでは不十分である。彼らが耳にするのは、“We miss having you spend your money with us.(ご購入いただくのをお待ちしています) “という言葉となる。

その代わりに、他のブランドにはない、自分たちに欠けているもの、提供できるものを顧客に示すのだ。

 

・店舗のデザイン変更、または新しいロケーションや営業時間

・パーソナルショッパー、カーブサイドピックアップ、営業時間の延長や追加サービスなどの新しいサービス

・新しいブランドや製品ライン

・顧客サービスや返品制度の改善

・「即購入、後払い」などの新しい支払い方法や、PayPalVenmoまたはビットコインのような代替手段

 

次のステップ

離脱しつつある顧客、離脱した顧客やアンエンゲージメントである購読者の目的について、深く考えてみよう。

これらの目的を達成するため、別個のメールプログラムを、計画・実行する際の指針としてほしい。各プログラムに目的別の名前を付け、意思決定のプロセスを強化しよう。

 

リアクティベーションプログラムは、購入を中止した顧客を呼び戻すことを目的としている。リエンゲージメントプログラムは、顧客のメールに行動を起こさなくなった購読者にアプローチするものだ。各プログラムには、独自のクリエイティブディレクションがある。このように見ていくと、画一的なプランではうまくいかない理由がすぐにわかるはずだ。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の5/31公開の記事を翻訳・補足したものです。