変貌を遂げたデジタルランドスケープにおける広告のあり方について紹介する。
デジタルトランスフォーメーションにより、広告はもはやブランド認知度の向上や種まきだけにはとどまらない。広告主とそのアドテックパートナーは、ファネルのどの段階でも大小さまざまなオーディエンスにリーチでき、複数のタッチポイントでクロスチャネル広告を配信できるのだ。また、従来の人口統計や視聴率だけでなく、デバイスレベルまたはユーザー固有のデータ、およびコンテキストインサイトを活用して、適切なタイミングで適切な顧客に向けて適切なメッセージを提供している。
広告は、新たなテクノロジープラットフォームやソーシャルメディアのトレンドに強く影響されるものであり、絶え間ない混乱の影響を受けやすい。マーケティング担当者として、業界のトレンドを把握し、常にトップを維持し続ける必要があるということだ。
消費者の関心が従来の広告からデジタルチャネルに移行するにつれ、マーケティング担当者は方向転換することが重要になっている。マーケティング予算全体が年間10.3%増加し、デジタルマーケティング支出が16.2%増加するという状況でこれを検討すると、従来の広告オプションよりもデジタル広告チャネルへの依存度が高まっているという傾向が見て取れるだろう。
このデータは、進化し続ける広告の性質を浮き彫りにし、適切なマーケティング戦略を採用することの重要性を強調している。顧客の好みがどのように変化するかを理解することで、効果的な広告キャンペーンを考案できるのだ。
本記事では、以下の重要なポイントについて解説する。
最適な広告戦術とは?
最適な広告戦術は、状況に応じたものであり、進化し続けている。ここでは、広告戦略に役立ついくつかの指針を紹介する。
適応すること マーケティング担当者として、変化する状況に対応する必要がある。どのプラットフォームが最もトラフィックを増やし、ターゲットグループに最も人気があるかを特定した後、プラットフォームの機能とアルゴリズムをすばやく学び、適応する必要がある。たとえば、TikTokの人気は飛躍的に高まっており、2019年の3億8,100万人に対し、2021年第4四半期には月間アクティブユーザー数が12億人になるなど、大幅に増加している。さらに、同プラットフォームは強力なコンバージョンチャネルであることが繰り返し証明されており、デジタルマーケティングコンサルティングであるJungle Topp Mediaの検証では、InstagramやFacebookの広告よりも155%多くクリックを誘導しているという。
フィードバックを組み込む 広告手法には、重要なパフォーマンスデータを収集し、それを進行中のキャンペーンに反映するためのフィードバックループが組み込まれている必要がある。新しいコンテンツを作成し、リリースし、指標を追跡し、フィードバックを収集し、それら使用して今後のキャンペーンを設計する。ソーシャルメディアなどの非伝統的なマーケティングツールの最大の利点の1つは、 実用的なデータを生成してインサイトを明らかにすることである。これにより、キャンペーンの影響をこれまで以上に簡単に評価できるようになるのだ。
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たとえば、Instagramは 、リール(最大30秒の動画を作成・編集・投稿する機能)やライブ配信のエンゲージメントに関するインサイトを提供している。リールの場合、Instagramは、合計再生数、到達したアカウント、「いいね」、コメント、保存や共有に関するデータを提供する。またライブ配信の場合、到達したアカウント、ピーク時の同時視聴者数、コメントや共有に関するデータが提供される。これは、現在のコンテンツの有効性とエンゲージメントレベルをキャプチャする非常に貴重なフィードバックであり、それに応じて今後のコンテンツを微調整することができる。
外部の力を借りることを検討する 広告のベストプラクティスは効率的であることだ。ただし、広告ツールを効果的に使用するには、そのビジネスの能力を認識しておく必要がある。新たなプラットフォームでコンテンツを作成するための適切なチームを有しているだろうか?そのチームはデータと分析を理解しているだろうか?外部ベンダーを使用して広告を最適化することで、ビジネスに競争力を与えることができるのだ。
効果的な広告についての最も重要な利点は、オーディエンスを惹きつけることである。惹きつけられたオーディエンスは、商品を購入し、口コミでそのブランドを他の人に紹介する可能性が高くなる。具体的には、広告はオーディエンスの育成につながり、以下のようなメリットがある。
- 顧客獲得:急増する顧客基盤は、長期的な収益成長に不可欠なものである。新たな顧客セグメントや市場にアクセスするには、自社ブランドを可視化し、親近感のあるものにすることが重要である。広告は、自社ブランドと潜在顧客間のギャップを埋めるメカニズムなのだ。
- 顧客維持:顧客獲得コストは顧客維持コストの5倍であるといわれることが多く、顧客ロイヤリティの構築に重点を置くことが賢明だ。顧客のフィードバックを理解し、それをキャンペーンに活かすことは、長期的な関係構築に不可欠である。
CAC(顧客獲得単価)vs.LTV(顧客生涯価値)
今日の広告業界をとりまく環境の変化
テクノロジーと広告の融合によって引き起こされる環境の変化は、マーケティング担当者に複数の機会をもたらすことは確かである。しかし同時に、一定の制限を課されることになる。この業界をナビゲートすることは、以下の理由で困難な場合がある。
氾濫する広告の中で際立つこと 今日、広告はWeb上に溢れている。顧客がGoogleを閲覧している、また、記事を読んでいる、もしくはYouTubeで動画を見ている場合でも、あらゆる場面でプロモーションや広告が表示されるだろう。
膨大な数の広告により、人々は従来のデジタル広告手法にますます無感覚になりつつある。デジタル広告を使用するマーケティング担当者は、雑然としたところから抜きん出て、これまで以上に魅力的なコンテンツを作成するというプレッシャーに直面しているのだ。
左:動画の前に流れる広告を好まない人の割合
右:広告を視聴しない人の割合
サードパーティCookieの衰退 マーケティング担当者は、Webサイトの訪問者を追跡しオンラインで消費者データを収集するために、何十年にもわたってサードパーティCookieを当てにしてきた。このデータは、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、ターゲット広告を生成するために重要である。しかし、データ保護とプライバシーの問題が差し迫っており、企業のデータプラクティスへの監視が強化されたことで、プライバシー侵害を抑制するための規制の枠組みが生まれたのだ。
Appleは、Intelligent Tracking Prevention(ITP/トラッキング防止機能)を使用してiOS14オペレーティングシステムに変更を実施した。Firefoxも、デフォルトでサードパーティCookieをブロックするEnhanced Tracking Protection(ETP/コンテンツブロッキング機能)を提供している。Google は、ブラウザ市場の63%以上を占めており、2023年までにサードパーティCookie を段階的に廃止する予定だ。マーケティング担当者は、消費者レベルのデータ生成のために、これらのCookieに頼ることができなくなり、ターゲットを絞った広告を作成する能力が低下することになる。
業界の変化への適応
メッセージは明確だ。これからの広告は、プライバシー侵害や操作的な戦術に基づくことはできなくなる。代わりに、成功する広告主は、消費者に対して誠実な姿勢で語り掛ける、透明で倫理的な広告を作成する必要があるだろう。
オーディエンスを知る 技術プラットフォームとソーシャルメディアチャネルによって、対応するオーディエンスもさまざまだ。マーケティング担当者は、どのプラットフォームが顧客によって最も広く使用されているかを理解し、広告に使用しているプラットフォームに対応する広告を作成する必要がある。不要な広告は消費者の84%をプラットフォームから遠ざけ 、ベビーブーム世代の約40%がそれらを回避するためにプレミアムサブスクリプションにお金を支払っている。
TikTokのようなプラットフォームや、Instagramのリールのようなツールは、コンテンツ自体に広告を組み込んでいる。YouTubeとは異なり、TikTokおよびInstagramの広告は、基になる動画コンテンツから切り離されていない。むしろ、広告をコンテンツ自体に同化させているのだ。このような有機的で非公式な広告のアプローチは、消費者を惹きつけるためのより良い方法だ。
コンテキスト広告 ターゲット広告とは異なり、コンテキスト広告はサードパーティCookieに依存しない。Webページのコンテンツを広告のコンテンツにマッチングさせているのだ。このモデルは、消費者のプライバシーを尊重しながら、そのWebページに引き寄せられた関心を考慮に入れることで、消費者の購入決定に影響を与えることができる。
機械学習と自然言語処理(NLP)の広告への適用は、マーケティング担当者に多くの機会を提供してきた。効果的なコンテキスト広告のためにウェブページコンテンツの「読み取り」を可能にするのはこれらの機能だ。コンテキスト広告を手掛けるGumGumと脳科学アナリティクス企業のSPARK Neuroによる最近の調査では、基となるページのコンテンツにマッチした広告は、ニューラルエンゲージメント が43%高くなり、広告想起が2.2倍向上することがわかっている。コンテキスト広告は、サードパーティCookieの衰退による影響を軽減し、マーケティング担当者に有力な代替手段を提供できる。
広告を成功させるカギ
広告業界のデジタルトランスフォーメーションは、複数の機会と課題をもたらした。今日では、複数のプラットフォームを介してより多くのオーディエンスにリーチすることが、かつてないほど容易になった一方で、コンテンツの競争の激化とプライバシーの懸念の高まりにより、マーケティング担当者は今まで以上にクリエイティブになることが求められている。
広告を成功させるには、オーディエンスを知り、特定のターゲットグループにインパクトのある広告を配信するための最も効果的なプラットフォームを特定することが核心となるのだ。
広告についてさらに学ぶためのリソース
広告をとりまく状況は常に変化しているため、ブランドは定期的にオーディエンスエンゲージメントの新しい手法を開発する必要がある。
以下に、戦略の改善に役立つ広告リソースを紹介しよう。
- 広告の多様性を測定する:The Geena Davis Institute on Gender in Media(エンターテインメントメディアのネガティブなステレオタイピングを減らすことを目的とするグローバル研究組織。俳優Geena Davisによって設立)は、クリエイティブ分析プラットフォームCreativeXと提携し、ブランドがすべての広告コンテンツにおける表現を測定できる機能を提供する。
- 動画広告が大事である理由:動画広告の威力は実証済みであるものの、エンゲージメントの指標は複雑で、プラットフォームごとに異なる。ここではそのガイドについて紹介する。
- モバイルゲームの広告について知っておくべきこと:モバイルゲームの消費者支出は2021年に1,160億ドルに達し、前年から160億ドル増加している。
- ポッドキャストの広告費は2021年に急増:ポッドキャストは活況を呈しており、オムニチャネルマーケティング戦略に組み込むべきもう1つのチャネルとなっている。
※当記事は米国メディア「MarTech」の5/27公開の記事を翻訳・補足したものです。