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顧客データ活用の新たなアプローチを提案するメタバースマーケティング

顧客データ活用の新たなアプローチを提案するメタバースマーケティング

トレンド
2022/03/09

1992年に出版されたNeal Stephensonの人気SF小説「Snow Crash」では、メタバースという新しく登場した言葉によって、アバターを使って仮想3D世界で人々が交流する未来世界が描かれている。そのアバターが登場する社会は、バーチャルゲームファンには馴染み深いものだが、先進的なマーケター以外は、現実のeコマースの中での有用性をあまり想定していなかったようだ。

 

しかし、今は違う。FacebookのCEOであるMark Zuckerberg氏は、この「M」ワードを、彼の新しくリブランディングしたメタバース企業の「Meta」という名前として採用している。

 

小説「Snow Crash」の流行以来、メタバースという用語は、ソーシャルインタラクションを取り入れた、マルチユーザーで持続的な仮想世界を表現してきた。MarTech企業Wyngの共同設立者兼CEOであるWendell Lansford氏によれば、2003年に開始されたゲーム「Second Life」は、有意義なユーザー導入を達成した最初のメタバースであったという。MinecraftRobloxFortnightのようなマルチプレイヤーオンラインゲームやプラットフォームも、メタバースのバリエーションと考えることができるだろう。

 

「今日、メタバースという用語は、ソーシャルメディア、仮想現実、拡張現実、マルチプレイヤーオンラインゲーム、暗号通貨などの側面を結びつけ、物理的世界を反映し、かつ物理的世界への橋渡しをする没入型のデジタル体験を作り出す共有環境を表している」と、Lansford氏は語っている。

 

Eマーケティングのニューフロンティア

メタバースとは、人々がアバターとして生活し、遊び、交流し、仕事をするデジタル世界のことである。ゲーム「Second Life」の仮想コミュニティでは、多くのユーザーがデジタルグッズの制作や販売にフルタイムで取り組んでいる。

 

このように、共有された環境を結びつけるというコンセプトは、マンネリ化したマーケティング戦略に新たな命を吹き込む。そして、それは、Facebookとマーケティング業界がまさにどこに行こうとしているのかを示唆しているものである。『スタートレック』の有名なフレーズを借りれば、それは、広告主がかつて行ったことのない場所である。

 

オンライン・ショッピングの世界は、エキサイティングな場所になることだろう。ビジネス戦略としてのFacebookの名称変更は、メタバースに居場所を切り開くことになるかもしれない。突如として、メタバースは、その3D共有環境がもたらす潜在的なメリットについて大きな話題を呼ぶことになった。

この新しいメタバースのデジタル開発におけるフロンティアは、進取の気性に富む技術マニアにとって比類のない利点を持つ可能性がある。そして、メタバースのコンセプトは、eコマース・マーケティングを次のレベルに引き上げる原動力となる可能性もあるだろう。しかし、その活用方法については、多くの人々が疑問を抱いている。

 

ゼロパーティデータ

ブランドと消費者のデジタルな関係や、第三者データのリスク・リターン戦略は、近年、大きく変化している。マーケティング担当者が、嫌々ながらもこの慣行から脱却する中、メタバースの台頭は、ブランドが新たなスタートを切り、プライバシーを優先した新しい取り組みを採用するためのユニークな機会を提供する。

 

メタバースの各ユーザーは認証された正規のユーザーであるため、ブランドと消費者は、双方が望む価値交換を行うことができる。ブランドは、特定のクーポン、デジタル商品、またはエリアへのアクセスと引き換えに、明確な同意を得て共有されたデータを確実に収集することができる。

 

これによって、ブランドと消費者はどちらも推測する必要がなくなる。正しく行われれば、データの見方を永久に変える可能性がある、とLansford氏は指摘する。

 

Lansford氏の会社Wyngは、企業とその顧客が効果的なオンラインインタラクション戦略により、うまく共存できるよう支援するサービスを提供している。Wyngは、ゼロ・パーティ・データ(ZPD)用のAPI搭載インフラを使用している。

 

ゼロパーティデータとは、顧客がブランドとの体験を向上させるために共有する、同意に基づく個人的なコンテキスト・データのすべてである。これは、顧客に自分のプロファイルに関する透明性とコントロールする権限を与え、信頼を築き上げるものである。また、このプロセスでは、チャネルをまたいでリアルタイムに体験をパーソナライズすることができる。

 

メタバースにおけるビジネスについての議論

メタバース技術がブランドとその顧客に与える影響についてLansford氏と語り合った。

 

メタバースは、非メタバースとどう違うのだろうか?

 

Lansford氏 非メタバースとは、FacebookGoogleAmazonNetflixSpotify、そしてあらゆるWebサイトやeコマースサイトに代表される、今あるインターネットと考えてほしい。

一方、メタバース環境は、現在のインターネットと並行して進行している。多人数参加型のオンラインゲームによく似た仕組みである。現在のインターネットと比較して、新興のメタバース環境は、仮想世界と物理世界が融合した豊かな体験を提供し、他者とのインタラクション体験は実生活に近似すると思われる。

 

メタバースのコンセプトは、インターネット上でのビジネスを意味するeコマースと密接に関係しているのか、それとも他の業界とも関係があるのだろうか?

 

Lansford氏:メタバースは、eコマースだけでなく、さまざまな産業で活用されていくだろう。エンターテインメント、ゲーム、ソーシャルメディア、教育、フィットネス、旅行、不動産、マーケティング・広告など、さまざまな分野だ。

 

例えば、現在人気のあるアプリケーションのひとつに、離れた場所にいる友人とバーチャルシアターで映画を見る(そしてチャットする)ことがある。

 

他の例として、11月にDecentraland(人気のあるブロックチェーンを利用したメタバース環境)の仮想不動産の1区画が243万ドルで売却された。Metaverse Groupが購入したこの土地は、ファッションショーや、爆発的に成長しているデジタルファッション業界における商取引を促進するために開発される予定だ。

 

公正価値交換(FVE)は、メタバースにおけるビジネスの重要な要素だ。データ交換で消費者をショートさせない代わりにFVEを重要視するというのは、新しいコンセプトだと思うがいかがだろうか?

 

Lansford氏:これまでブランドは、主にデータアグリゲーターあるいはブローカーからデータを購入したり(サードパーティデータ)、ブランドが所有するウェブサイトやモバイルアプリで消費者のクリック、検索、購入を追跡する(ファーストパーティデータ)ことで、消費者に関するデータを収集してきた。これらのデータ収集方法は、通常、消費者がデータを収集されていることを全く知らないまま、舞台裏で実行されるものである。

 

プライバシー規制とプライバシー意識の高い消費者の存在によって、ブランドはゼロパーティデータに投資するようになった。これは、消費者が意図的に、パーソナライズされたおすすめ提案、ポイント、クーポンなどの価値あるものと引き換えにブランドと共有するデータである。消費者は、ブランドがそのデータ提供に見合った価値交換を行う場合に、信頼するブランドに対して、そのブランドにとって価値のあるデータを提供することになるのだ。

 

ブランドはメタバースにおいて、どのようにゼロパーティデータを収集すればよいだろうか?

 

Lansford氏 ゼロパーティデータを収集する唯一の方法は、提供を求めることである。ウェブ上では、ブランドは、ガイド付きショッピングクイズ、次善の質問、アンケート、投票、サインアップフォーム、会話型チャットボットなどのマイクロ体験を通じて、ゼロパーティデータの提供を求めている。

 

これらの同じ技術を、メタバースに適応させることができる。その上、メータバースは、よりリッチなインターフェイスを備えている。メタバースは、ゼロパーティデータを求めるための新たな可能性を開くものである。

 

例えば、知識豊富な店員がいて、会話をしながら顧客をサポートする仮想店舗を想像してみてみよう。その店員は、顧客の個人的なニーズ、好み、目標、興味などを知ることができる(これもゼロパーティデータである)。また、小売業者は、顧客の許可を得てそのデータを使用し、よりパーソナライズされたブランド体験を提供する。

 

さらに、NFT(non-fungible tokens)は、メタバースにおける価値交換の新たな可能性を切り開く。NFTは、ブランドのサイトや実店舗で実際の商品と交換することができるのだ。

 

最後に

Lansford氏は、メタバース商取引はまだ初期段階にあり、多くの革新と改善が必要であると述べている。しかし、マルチプレイヤーオンラインゲーム市場は、仮想世界とeコマースの融合に向けたアナロジーを提供している。

 

「たとえば、2週間にわたって開催された Gucci の展示会では、2000万人近くが自分のアバター用の限定 Gucci アクセサリーを購入した」と同氏は続けた。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の2/22公開の記事を翻訳・補足したものです。