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CDPはデジタルシフト著しい今のマーケティングにどのようなメリットをもたらすのか

CDPはデジタルシフト著しい今のマーケティングにどのようなメリットをもたらすのか

マーケティング
2022/02/09

顧客データプラットフォームにより、マーケターは、ITや開発者の関与をほとんど必要としない、すぐに使える統合機能を通じて、顧客データの収集、セグメンテーション、およびオーケストレーションをコントロールできる。

 

通常CDPと呼ばれる顧客データプラットフォームは、マーケターが管理するシステムであり、すべてのソースから顧客データを収集し、正規化し、個々の顧客についてユニークで統一されたプロファイルを構築するように設計されている。その結果、他のマーケティングテクノロジーシステムとデータを共有する、永続的かつ統一された顧客データベースが実現する。

 

「単一顧客ビュー」のアイデアは、何年もの間、マーケターのウィッシュリストにあったものだ。しかし、世界的なCOVID-19の大流行によって引き起こされた混乱により、CDPがまさに提供するソリューションタイプへの関心が高まっており、それには、「単一顧客ビュー」も含まれる。パンデミックが、B2BとB2C双方の顧客インタラクションのデジタルチャネルへの移行に拍車をかけており、マーケターは、これらのインタラクションからデータを収集し、それらを統合してインサイトを提供し、キャンペーンのオーケストレーションを可能にするテクノロジーについて一層関心を寄せている。

 

CDPは、マーケターが組織全体に展開されているソフトウェアからデータを収集することで、顧客の単一ビューを作成することを可能にする。高い期待と、見込み客へのタッチポイントの急増に伴い、クロスデバイスIDとIDデータ検証/照合(複数のタッチポイントで収集された異種データセットを、顧客または見込み客を示す個別のプロファイルに統合・正規化する機能)が、マーケター、販売およびサービスの専門家が理想的なトータル・カスタマー・エクスペリエンスを提供するためには必要不可欠である。CDPは、この統合と正規化を実現するとともに、キャンペーン、Webページ、およびその他のインタラクションを提供する他のシステムからデータプロファイルを自由に利用できるようにするものである。

 

 

カスタマーデータプラットフォーム(CDP)とは何か?

CDPに対するマーケターの要望が高まるにつれ、タグ管理から分析、データ管理に至るまで、さまざまなバックグラウンドをもつ既存企業がそのチャンスに目をつけ、自社をCDP型に変化させてきた。一方、はじめからCDPカテゴリを念頭に置いて立ち上げた企業もあれば、市場の圧力に対応しCDP機能を開発した老舗企業もある。

 

CDPは、CRMでもDMPでもマーケティング・オートメーション・プラットフォームでもない。CDPは、統合された永続的な顧客データベースを提供し、データの透明性と、既知の個人レベルの詳細情報を提供する。CDPは、ユニークな個別の識別子の下で情報をつなぎ合わせることにより、さまざまなデータソースから顧客を識別できる。CDPは、そのデータのコピーを保存する。

 

CDPを使用することにより、マーケターは、ITまたは開発者の関与を最小限に抑える(すぐに使用可能な)ネイティブ統合を通じて、顧客データの収集、セグメンテーション、およびオーケストレーションをコントロールできる。さらに、CDPは、既知および匿名の顧客データと、CRM、POS、モバイル、トランザクション、Webサイト、電子メール、マーケティング・オートメーションなどの外部ソースまたはプラットフォームとのデータ統合を実現する。

 

私たちが支持するCDP Institute(米国CDP協会)が定義している「RealCDP」は、以下5つのことを実行可能であることを求めている。

 

  • 任意のソースからデータを取り込む
  • 取り込まれたデータの詳細を完全に把握する
  • 取り込んだデータを無期限に保存する(プライバシー制約のもとで)
  • 識別された個人の統一プロファイルを作成する
  • データを必要とするすべてのシステムとデータを共有する

 

上記の基準を満たすすべてのCDPベンダーは、実質的に次のコア機能を提供する。

 

  • データ管理(永続データベース内の顧客データの収集、正規化、および統合)多くの場合、IDが他のシステムによって照合された後である。
  • ITやデータサイエンスのリソースを使用せず、マーケティング組織や他の部門が使用するために設計された機能。(ただし、他のプラットフォームへの接続や高度なデータモデリングの実行など、一部の機能には追加のリソースが必要)
  • ベンダーに依存しないことを基本とするすべての外部システムとの接続
  • 構造化および非構造化データ管理
  • オンラインおよびオフラインのデータ管理

 

CDPベンダーは、以下を含む(ただし、これらに限定されない)より高度な機能を提供することで差別化を図っている。

 

  • 異なるソースからの顧客データスニペットをつなぎ合わせるためのネイティブIDデータ検証/照合。
  • 他のマーテックシステムへの堅牢な構築済みコネクタの数と幅。APIが全世界で利用できるということは、接続が常に可能であることを意味する(多かれ少なかれ開発者の関与が必要)が、事前に構築され、テスト済みの統合機能の提供は付加価値をもたらす。
  • ユーザーインターフェイス(UI)。ベンダーによって、インターフェイスの使いやすさや、セグメントの作成、プロファイルの表示などの操作方法が異なる。
  • 機械学習と人工知能を利用した分析。インサイトを明らかにし、ジャーニーマッピング、オーディエンスセグメンテーション、予測モデリングが可能となる。
  • パーソナライズされたメッセージング、ダイナミックなインタラクションおよび製品/コンテンツの推奨のためのオーケストレーション。
  • 各業界および国際的なデータ規制への準拠。

 

では、CDPの選択に関連する重要な検討事項をみていこう。

 

顧客データ管理

データの収集とメンテナンスは、CDPの顧客データ管理プラットフォームのコア機能である。すべてのCDPは、企業全体で、個人を特定できる顧客データを収集および統合する中央データベースを提供する。ただし、各CDPは、以下のような管理能力に差がある。

 

  • データインジェスト機能: CDPは、モバイルSDK、API、Webhook、または他のプラットフォームへの組み込みコネクタなど、統合された顧客プロファイルに入るデータを取り込むためにさまざまなメカニズムを使用する。
  • IDの検証/照合:プラットフォームは、メールアドレス、電話番号、ファーストパーティCookie、購入データなどのさまざまなチャネルからの収集した顧客データポイントを「つなぎ合わせ」て、一致する単一の顧客プロファイルを作成する。この機能のために他のプロバイダーと提携しているプレーヤーもいれば、独自のシステムを持つプレーヤーもいる。
  • オンライン/オフラインデータ:CDPプラットフォームは、IDの検証/照合またはIDグラフを利用して、統一されたプロファイルを作成するための行動をつなぎ合わせる。
  • データ・ハイジーン:CDPプラットフォームにより、ユーザーは顧客の記録をクリーンにし標準化することができる。
  • 構造化/非構造化データ:CDPは、非構造化データ(つまり、ソーシャルメディアフィード、商品写真、バーコードなど)を管理する機能に違いがある。同データは、IDGによると、2025年までにすべてのデータの最大80%を占める可能性があるという。

 

これらの各データ管理機能の重要性は、特定の組織のビジネス目標、およびそれが重要なモバイルプレゼンスの重要度、ダイレクトメールの予算、または実店舗やエージェントの保有の有無によって異なる。

 

分析

CDPベンダーは、次の一部またはすべてを実行できるデータ分析機能を提供する。つまり、マーケティングにおけるエンドユーザーが、顧客セグメントを定義して作成し、チャネル全体で顧客をトラッキングすることで、顧客の行動や傾向から顧客の関心や意図に関するインサイトを収集できるようにすることだ。

 

提供される機能には、予測モデル、収益アトリビューション、およびジャーニーマッピングが含まれる。これらの機能の多くは、程度には違いがあるが、機械学習または人工知能を利用して、オーディエンスに関するインサイトを明らかにし、購入の過程で見込み客を導くための最良な次のステップを積極的に提案することができる。

 

オーケストレーション

一部のCDPは、キャンペーン管理やカスタマージャーニーのオーケストレーション機能を提供し、パーソナライズされたメッセージング、動的なWebページやメールコンテンツの推奨、複数のチャネルでのターゲット広告展開キャンペーンを可能にする。

 

顧客データプラットフォームは、多くの場合、マーケティング・オートメーション・プラットフォーム、メールサービスプロバイダー(ESP)、キャンペーン実行用のWebコンテンツ管理システムなどの外部マーテックシステムに、マーケターが作成した顧客セグメントをユーザーが設定したスケジュールで自動配信する。

 

たとえば、CDPは、ライブインタラクション中にターゲットコンテンツをWeb訪問者に配信することができる。これを行うには、CDPは、顧客対応システムからの訪問者の行動に関するインプットを受け取り、データベース内で顧客プロファイルを見つけ、適切なコンテンツを選択して、結果を顧客対応システムに送り返す必要がある。顧客データプラットフォームは、CDPから広告オーディエンスとして使用するシステム(つまり、DMP、DSP、アドエクスチェンジ)に顧客リストを送信するオーディエンスAPIを介してデジタル広告を実行することもできる。

 

データ規制コンプライアンス

CDPベンダーによって、顧客データのプライバシーを保護するための幅広い市場および国際規制に準拠するために提供するサポートがそれぞれ異なる。自社プラットフォームにコンプライアンス機能を組み込むものもあれば、外部システムに依存するものもある。欧州連合のGDPRは2018年5月に施行され、欧州のデータ処理や、EUの顧客にサービスを提供するすべての米国のマーケターとデータ企業に影響を及ぼす。電子メールを介してカナダの消費者にマーケティングを行うブランドは、同国のCASL(カナダ・アンチスパム)にも準拠する必要がある。一方、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)は、2020年1月に施行された。

 

規制の厳しいヘルスケア市場のマーケターは、HIPAAおよびHITECH(ともに医療情報を扱うクラウドサービスに関わる法律)規制に従う必要がある。さらに、クレジットカード情報を受け入れ、処理、保存、または送信するすべての組織は、クレジットカード情報を扱うシステム全体の基準であるPayment Card Industry Data Security Standards(PCI DSS)にも準拠した安全な環境を維持する必要がある。

 

サードパーティのシステム統合

CDPは、CRM、DMP、マーケティング・オートメーション・プラットフォーム、DSP、キャンペーン分析およびテストツールなど、多くのマーテックシステムにすぐに使用できる(またはネイティブの)コネクタを提供することにより、顧客データの統合を合理化する。ほとんどのマーケティング組織は、これらのタイプのプラットフォームの多くを含むマーケティング・スタックを構築している。しかし、マーテックエコシステムに存在するデータを統合することは大きな課題であり、米国のブランドは、このために年間数百万ドルの費用を費やしている。同レポートで紹介するCDPの大部分は、カスタム統合を可能にするために、少なくとも基本的なAPI提供している。

 

CDPを使用するメリットは何か?

今日のマーケティングエグゼクティブは、増え続けるファーストパーティの顧客データを管理、分析、および処理するために、何十ものマーテックアプリケーションを管理している。しかし、効率性が向上しているにもかかわらず、新しいマーテックエコシステムは、データの冗長性、精度、統合についての問題を生じさせている。

 

CDPを介して顧客データの正確性と統合を自動化することで、マーケターや企業内の他の部門に多くのメリットをもたらす。

 

その内容は以下である。

 

エンタープライズコラボレーションの拡大

CDPは、企業全体からデータを収集し、多くのタッチポイントにわたる顧客とのやり取りをサポートするため、サイロ化されたグループ間の協力関係を促進する。データを統合することで、企業は、オーディエンス、カスタマーエクスペリエンス、および実行戦略がどのように組み合わされているかを確認できる。また、オーディエンスのポータビリティにより、さらに一貫性のある情報に基づいたカスタマーエクスペリエンスが実現できる。

 

データのアクセシビリティ向上

CDPは、企業の隅々から顧客データを収集して収容する一元化されたハブである。データの断片は正規化され、つなぎ合わされて、個々の顧客のユニークで統一されたプロファイルが構築される。その結果、組織全体でデータをより簡単かつ効率的に収集および共有することを目的とした永続的な顧客データベースが作成される。

 

システム統合の合理化

CDPは、マーケティングやカスタマーサービスから、コールセンター、決済システムに至るまで、企業全体のデータシステムを統合する。ファーストパーティの顧客データ向けの単一の「記録システム」を作成することで、データの重複やエラーを最小限に抑え、マーケティング・オートメーション・プラットフォーム、メールサービスプロバイダー(ESP)、CRM、その他のマーテックシステムなどに迅速にデータを流入・流出させることができる。

 

マーケティング効率の向上

CDPは、個々のデータをユニークなIDで統合し、より強固な顧客記録を作成する。多くの手動タスクもCDPによって自動化されるため、マーケターは、本来行うべき創造的で分析的なタスクに集中できる。その結果、マーケティングキャンペーンでのより正確なモデリング、ターゲティング、パーソナライゼーションが可能となり、チャネル全体でのブランドとのより関連性の高いカスタマーエクスペリエンスが実現する。

 

より速いマーケティング速度

多くの場合、CDPはマーケティング部門によって「所有」されており、データを収集、分析、および対応するためのITまたは開発者の介入の必要性を最小限に抑えている。マーケターがコントロールすることで、オーディエンスのセグメント化と構築、キャンペーンの実行、結果の分析にかかる時間が大幅に短縮される。とはいえ、詳細なデータ分析を行い、統合を円滑に行うためには依然としてエンジニアが必要になる場合がある。これは、CDPがマーケティングだけでなく、販売やサービス部門にも拡張するにつれ、特に顕著になる。

 

より強力な規制コンプライアンス

CDPは、顧客データに対する内部統制を強化し、データガバナンスを合理化して、現在世界中のブランドに影響を与えている多くの規制に準拠することができる。ヘルスケア業界のマーケターは、HIPAAとHITECHの両方の規制に準拠しなければならない。欧州のデータを扱う、またはEU圏の顧客にサービスを提供する企業は、GDPRにも準拠する必要があり、カリフォルニア州の人々相手にする企業は、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に対処する必要がある。CDPベンダーの大多数は、個人を特定できる情報(PII)を処理する際のベストプラクティスとして、ISO(国際標準化機構)とSOC(セキュリティオペレーションセンター)の両方の認証を取得している。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の1/22公開の記事を翻訳・補足したものです。