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Appleが導入したメールプライバシー保護は、実はマーケターにチャンスをもたらす

Appleが導入したメールプライバシー保護は、実はマーケターにチャンスをもたらす

マーケティング
2021/12/03

Appleが導入したMail Privacy Protection(メールプライバシー保護)による影響と、メールマーケティング担当者にもたらされるチャンスについて、SparkPost(世界初の予測型メール・インテリジェンス・プラットフォームを提供する米国企業)のEMEA(欧州、中東、アフリカ)担当リーダーで、テクニカルアカウントマネージャーのKieran Cooper氏から意見を聞いた。

 

データの利用と、マーケターと消費者間でのデータの共有方法については、インサイトや情報の収集と消費者のプライバシーの尊重との間で、長い間争点となってきた。1980年代にマーケターがデータを利用できるようになって以来、マーケティングは、トラッキングと測定の能力に大きく依存してきたが、これに対する規制はほとんどなかった。

 

最近まで、消費者は、どのデータを共有するか、また、そのデータがどのように使用されるかについてコントロールすることはほとんどできなかった。また、ブランドは、保存した情報、保存場所、共有先や使用目的について、消費者に対して透明性を有する必要はなかった。マーケターは、可能な限り多くのデータを収集しさまざまな方法で使用していたが、結果として、データ侵害がより頻繁に発生するようになっていた。何かを変えなければならないことは明らかだった。

 

消費者のプライバシー保護の動き

ここ数年の間に、データ利用と消費者プライバシーとの境界線を明確にするために、プライバシーに関するアップデートや規制が数多く導入されてきた。最近では、AppleのiOS 15のアップデートがあり、今年9月のリリース以来、すでにメールマーケティングの世界に多大な影響を与えている。

 

アップデートの主な機能の一つである「Mail Privacy Protection(MPP/メールプライバシー保護)」は、メールトラッキングに大きな影響を与えている。このMPP機能により、ユーザーのIPアドレスが提供されなくなり、多くの場合、送信者はメールのエンゲージメントを正確に追跡することができなくなった。つまり、ユーザーがブランドによるメールを介したユーザー活動トラッキングを止めさせることが可能になったのである。

 

iOS 15がリリースされてからまだ普及の初期段階にあるが、すべてのAppleユーザーがアップデートをダウンロードし、新しいプライバシー設定を利用するのは時間の問題だ。SparkPostのデータによると、iOS 15をダウンロードしたAppleユーザーの97%がMPP設定をオンにしているという。しかし、すべてが悲観的というわけではない。これは、マーケティングの世界で大規模なパニックを引き起こすのではなく、ブランドがマーケティング戦略に積極的に変化を起こすことで、今後数年間にわたってブランドとその顧客に利益をもたらすチャンスとなる。

 

プライバシー向上は、メールの受信箱のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすか

歴史的に、マーケターは開封率データを利用してリストを適正な状態に保ち、到達率の指標を健全に保ってきた。このような方法で指標を利用することは、業界ではベストプラクティスとして知られている。

 

しかし、今回のAppleの新たな変更により、マーケターはメールの開封数のデータを入手できなくなるため、メールを一度も開封していない受信者がリストから削除されない可能性が生じる。これは、デフォルトでよりパーソナライズされていない体験が提供されることを意味するだけでなく、受信箱のパフォーマンスに影響を与える可能性もある。

 

ブランドとしては、メールを一度も開封してくれない送信先は、もはやコンテンツに興味がないと考えられるため、最終的にはメールの配信を停止するのが最善策だ。今回の変更により、真の開封数を判断することは非常に難しくなっており、その結果、マーケターが関心のない顧客にメールを送り続け、それが到達率に影響を及ぼすことにつながる。

 

より少ないデータ量で優れたカスタマーエクスペリエンスを維持する方法

消費者は、プライバシーを尊重し、自身のデータが安全かつ消費者の利益となるように取り扱われることを望んでいるが、Appleの動きはプライバシー保護の万能薬ではない。それは、あくまでも一つの要因に過ぎない。

 

メールチャネルにおけるパーソナライゼーションは、ブランドがチャネルを利用して顧客とつながり、エクスペリエンスをパーソナライズして便利で関連性のある内容を送信するための不可欠な要素となっている。

 

一般的な消費者は、「メールアクティビティを保護する」を選択することがもたらす結果を理解していないかもしれない。それは、自分に提供される体験がパーソナライズされていないものと一緒くたになり、平均以下の体験となる可能性があること意味している。

 

多くの情報はオープンピクセルを通過する。オープンピクセルとは、小さく目に見えないピクセルで、読み込まれると、地域の位置情報を追跡するためのIPアドレス、デバイスのタイプやエンゲージメントの時間などの詳細データに加えて、ユーザーによる一件の開封としてトラッキングする。つまり、デバイス、開封時の場所(IP)や開封時刻などの情報が失われることから、これらのデータに依存していたイノベーションの一部も失われることになる。マーケターは、顧客体験を向上させるために、他チャネルのデータを利用して、ファーストパーティデータを強化する必要がある。

 

メール送信者にとってのiOS 15の影響

 

 

今回の変更によるメールへの影響は、広告のエコシステムでの激しい変化よりも小さいものである。開封データは完璧な指標ではなく、欠点もある。しかし、開封データは長期的なエンゲージメント傾向を示してくれる指標だ。開封データの背後にあるテクノロジーは、エンゲージメント指標以上に強力だ(たとえその指標に欠点があったとしても)。開封データにより、メール分野では多くのイノベーションが可能となっているが、現在は疑問視されている。

 

人々は、件名、プリヘッダーやブランドの価値など、メールのファネル上部のエンゲージメントを評価するために、メール開封率に依存するようになった。これなくしては、メールエクスペリエンスのこれらのエンゲージメントを最適化することは困難になるだろう。

 

パフォーマンスへの影響を最小限に抑えるために、メール送信者やマーケターは何ができるか

開封データは、リストのエンゲージメントの可能性を判断する唯一の方法ではないが、メールのコンバージョンファネルの中では最も上位に位置する。これは、クリックによるエンゲージメントが不足しているために、より多くの人がメールのリストから除外されることを意味する。しかし、送信者がその影響を軽減するために計画できることがある。

 

1.件名のテスト

開封トラッキングに依存した件名テストは、もはや簡単にできなくなっている。クリック数やコンバージョン数など、件名からファネルのさらに下位の段階にある指標を使用する必要がある。自然言語処理を使って件名を最適化している企業は、戦略を見直し自社商品の有効性をサポートするアルゴリズムを更新する必要があるだろう。ただし、パネルエンゲージメントから得られるデータに依拠した件名テストは、今後も重要なインサイトと予測を提供するだろう。

 

2.リストの健全性管理

メールを開封がされたがどうかが分からない場合、送信者は、生身の人間が存在していてまだコンテンツに興味を持っているかを知るために、クリックやより深い行動に頼る必要がある。長い間、開封データは、ユーザーの離脱を示す重要な先行指標であり離脱したユーザーの早期削除や再ターゲット化を促してきた。開封データ指標をセグメンテーションのために使用できないために、非効率な配信方法に陥る送信者もいるかもしれない。まだ、今回の変更に対応できていないマーケターにとっては、初めて耳にするこれらの方法は難しく感じる可能性がある。

 

複数のチャネルにおけるそれぞれの受信者のエンゲージメントを見ることで、受信者があなたとの関わりに興味があるかを判断することができるかもしれない。一定期間、クリックや他のチャネルでのエンゲージメントが見られない場合は、リストからの削除を検討したほうがいいかもしれない。

 

3.エンゲージメントをサポートするアルゴリズム

送信時刻の最適化においては、多くの場合、アルゴリズムの一部として開封データを考慮し、開封やクリックのエンゲージメントに基づいてメール送信に適切な時刻を決定する。この機能を実行するテクノロジーは、iOS 15のユーザーの開封エンゲージメントを引き出せるように、アルゴリズムを更新する必要がある。自社の提携ベンダーに、この問題にどのように対処するのかを確認しよう。

 

天気ウィジェット、店舗検索や使用OSを検出するトラッカーなど、その他のイノベーションも影響を受けるだろう。

 

4.データ戦略の更新

メールの開封データによって受信者の居住地を確認している場合において、パーソナライゼーションのためにこの情報が必要であれば、サブスクライバーの居住地を確認する必要がある。基本に立ち返り、顧客にプロフィールを更新してもらうことが重要となる。

 

5.受信箱の配置をモニタリングする

メールを受信箱に届けることは、これまで以上に重要になる。開封データに基づいてメールが受信箱に届いたと仮定することには、もはや信憑性がない。iOS 15のプライバシーに関する変更の影響を軽減するためには、到達指標をすぐに確認できる適切なツールを持つことが重要になる。配信リスクを回避するためには、リストの健全性を把握するための到達データ分析が必要である。

 

顧客志向のアプローチ

iOS 15のプライバシー機能は、マーケティング分野を揺るがす最初のものではなく、また最後のものとなることも無論ないだろう。重要なことは、マーケターが、顧客のプライバシー権利を尊重しながら、高度にパーソナライズされた体験を提供し続けるために、データの利用方法を積極的に変化させていくことだ。ブランドは、このような変化を実現するために、常に顧客志向であり続け、プロセスや体験をより良く、よりパーソナライズするにはどうしたらよいかを考える必要がある。

 

ブランドがサインアップオプションについて透明性を高め、データの使用方法を説明し、約束を守ることができれば、顧客はよりパーソナルな体験と引き換えに、データや情報をブランドと共有する可能性が高くなる。これは双方向的なものなのだ。

 

プライバシー保護とメールへの影響についての詳細は、SparkPostのウェブサイトへ。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の11/17公開の記事を翻訳・補足したものです。