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Appleのメールプライバシー保護が開始後にどのようにメールマーケティングを分析していくべきか

Appleのメールプライバシー保護が開始後にどのようにメールマーケティングを分析していくべきか

トレンド
2021/08/23

メールマーケティングアプローチ戦略を展開するHolistic Email Marketing のCEO兼創設者Kath Pay氏が、メール戦略をアップデートするために取るべき4つのステップを解説。

 

AppleのMailアプリユーザーによるモバイル、デスクトップ、iWatchデバイスでのピクセルトラッキングの無効化を可能にするプライバシー機能の追加によりただちにその犠牲となるのは、購読者のエンゲージメント測定指標であるメールの開封率だろう。

iOS15にアップデートし、メールアプリを開くと、「メールプライバシー保護」のメニューが表示され、メールアクティビティを保護するか、メールアクティビティを保護しないかの選択肢を迫られるようになることになる。

 

そのような見通しに対し、開封率依存のメールマーケティングはそろそろ終わりにすべき時期がきている、と言いたい。なぜなら、開封率は、キャンペーン成功そのものとは別であるからだ。

 

コンバージョン率は、最も信頼性が高く、意味のある成功指標だ。Appleの変更により、ついに、マーケターは、成功指標としてコンバージョン率を採用し、それを実現するためのバックエンド作業を強いられる可能性がある。開封率依存からの脱却は、いくつかの影響をもたらす。開封数にリンクされたデータ取得できなくなることで、リアルタイムコンテンツなどのエンゲージメントと収益を直接的に左右するプログラムに影響が生じる。

 

なお、Appleによる変更が適用されるのは、9月以降になる予定である。したがって、今回の新しいイニシアチブによって、自社プログラムがどの程度の影響を受ける可能性があるかを理解し、オープンデータに依存している部分をより信頼性の高い手段に置き換える計画を立てるといった準備をする時間がある。

 

最初に変更するべきこと

開封率をどのように理解し使用するかが最初の課題だ。最近のMarTechの記事で、RPEOrigin(米国マーケティング・広告企業)の共同創設者RyanPhelan氏が、「今こそ、顧客のインテント(意図)を測定するより効果的な方法を見つけるチャンスだ」と述べている。

 

開封率は、安易に過小評価および過大評価されるため、エンゲージメントを測定する指標としては常に信頼性に欠けていた(他の指標については、そうは言えない!)。また、「アクティブな顧客または購読者のみに送信すると、開封率が50%もアップする」というように、操作もしやすい。しかし、クリック数についてはそうはいかない。

 

トラッカーを簡単に挿入できるHTMLメールが、同機能をもたないテキストメールよりも標準的なものになると、マーケターは、開封率に夢中になった。開封率は、簡単に追跡でき、ESPのキャンペーンレポートにすぐに表示される。また、生の数値としては、クリック率よりも高かった(つまり、キャンペーンをより良く見せることができた)。これが、開封率が、時に『バニティ』メトリック(虚栄の指標)と呼ばれる理由である。マーケターの気分が良くなるが、実質的な価値や正確性に基づいたものではない。

 

印刷広告やテレビコマーシャルなどの広告がどれだけ視聴されたかが従来の成功指標であったため、マーケターは、効果測定のために開封率を使うことを正当化すると聞いたことがある。しかし、今議論しているのは、高度に追跡可能なチャネルであるメールについてである。他のチャネルが、視聴数でのトラッキングに限定されているからといって、それがメールに関しても最適な方法であるとは限らない。

 

メールの場合、開封率はトレンド指標として最も有用だ。開封率が、上昇しているのか、あるいは下降しているのか?コンテンツや頻度と相関があるか?開封率から脱却しても、コンバージョンや収益には影響しないだろう。

 

顧客や購読者への影響は、極めて少ないだろう。購読者がメールの開封やクリックをしなくても、彼らに価値を提供できることはわかっている。メールによって、購入のタイミングまで、ブランドを頭の片隅に留めておくこともできるし、顧客がWebサイトに直接アクセスするきっかけを与えることもできる。DMA UK(ダイレクトマーケティング協会)の「2021 Consumer Email Tracker」によると、モチベーションの高い消費者の33%が、購入したい商品がメールに記載されているのを見て比較ショッピングサイトにアクセスすると回答しているのに対して、メールからクリックスルーすると回答したのは21%とのこと。

 

開封数に基づいた再送自動化の再検討

これは、今まさに起こっていることだろう。キャンペーンメールをリストまたは特定のセグメントに送信し、初回送信時にメールを開封しなかった人に再度送信する。その再送メールのうちかなりの割合が、実際には初回メールを開封した人に送られていることは間違いないが、その開封は記録されなかった。

 

これは簡単に修正できるプログラムであり、その変更によって、さらに正確なレポートを得ることができる。

 

開封記録のない人に送信する代わりに、件名や冒頭のコピーを修正して、クリックしなかった人に送信してみることもできるだろう。

 

ウィンバックキャンペーンまたは再アクティブ化キャンペーンの場合、開封日にのみ基づいているということは、ただメールを開封していないという理由でアクティブ顧客を削除してしまう可能性があることを意味する。次のセクションでは、これらの顧客が本当に非アクティブなのか、それとも、自社の測定指標がカバーできない範囲において行動しているだけなのかを知るために、ウェブアクティビティなどの幅広いデータを呼び出す必要があることを説明する。

 

分析と最適化をアップデートするための4つのステップ

1.メールマーケティングプログラムの監査

開封数、クリック数、サイトへのアクセス数、AOV(平均注文額)、コンバージョン数、注文商品数、収益(メールごと、注文ごと、アクションごとなど)といった、メールプログラムで起きていることすべてを測定する。オープンリーチ(一定期間に開封したユニークな購読者を示す指標)、クリックリーチ(CLTV(顧客生涯価値)も同様だ。

 

これにより、変化を測定するためのビフォアアフターのベンチマークが得られる。開封率とクリック率を比較して、その相関関係を調べることができる。クリック率は開封率と連動しているだろうか?開封率が高い傾向にあるのに、クリック率には一貫性がない場合がある。これは、件名では読者に何かを期待させているが、メッセージ中でその期待に応えられていないを意味している。

 

または、パターンがない場合もある。そのため、クリック率やコンバージョン率、ウェブサイトでのアクティビティなど、実際のアクティビティに頼る必要があるのだ。

 

Apple Mailを使用する顧客は他の顧客と違うのだろうか?読者の何パーセントがApple Mailを使用していて、どのデバイスで使用しているか確認してみよう。Appleの新ポリシーは、Appleデバイスに搭載されているネイチィブメールクライアント「Mail」で読まれるメッセージに適用される。他のクライアントでMailメッセージを読んだ場合、たとえば、MailメッセージをGmailやYahooなどのサードパーティクライアントに転送した場合は適用されないことがある。

 

これは、大部分のユーザーが追跡をオプトアウトした場合の指標の変化を予測する場合に利用できる。効果測定のために開封率を引き続き使用する場合は、一部の顧客だけを基準に判断することになる。これを機に、Apple Mailの顧客が、Gmail、Outlook、および他のユーザーとどのように違うのかを調べてみてはいかがだろうか。

 

2.メールテストプログラムの成功指標の見直し

多くのメールマーケターと同様に、基本的なA / Bテストを行って、どの件名が開封されやすいかを確認していることだろう。ただし、開封数の増加が、必ずしもコンバージョン数の増加と相関しているわけではない。テストを修正し、どの件名がクリック数やコンバージョン数の増加につながるかを測定する(成功指標は何でも構わない)。

 

多くのマーケターがそうであるように、一般的、魅力的、または曖昧な表現は開封数を増やし、コンバージョンも増加すると考えるかもしれない。これにより、幅広いオーディエンスが開封してくれかもしれないが、クリックしてコンバージョンをに達するオーディエンスはおそらくいないだろう。購読者を失望させたり気分を害したりすることさえあるかもしれない。こうなると、カスタマーエクスペリエンスが低下し、購読解除や非アクティブ化につながる可能性がでてくる。

 

最善の策は、複数のキャンペーンで仮説に基づいた件名言い回しを導き出し、どの言い回しが、求めている成功を促進するかを確認することである。これは、すぐに期待通りの成果を得ることはできないものの、長期的には信頼性の高い方法だ。

 

以下の「リトマス試験」を試してみてほしい。 次の3つのリストを作成する。

 

  • 開封数に基づくトップ10キャンペーン
  • クリック数に基づくトップ10キャンペーン
  • コンバージョン数に基づくトップ10キャンペーン

 

コンバージョンの算定が、開封率に関連付けられておらず、配信メールや登録されたクリック数に基づいている場合、3つのキャンペーン間ではほとんど重複がみられないはずである。

 

3.より充実したレポートの作成

自社の分析ソフトウェアのメールのトラッキング設定および属性設定が正しく実行されていることを確認し、クリック数、Webトラフィック数/サイト訪問数、注文数、コンバージョン数、AOV(該当する場合)、RPEなどを週次/月次レポートに追加しよう。バウンス、登録解除、苦情などのネガティブな指標も同様である。これらの指標によって、キャンペーンの健全性だけでなく、リストの健全性も測定することができる。

 

4.オープンデータを利用した他ツールの使用を再検討する

これには、オープンデータを使用してメール送信に最適な時間帯を算出する「送信時間最適化」、そして、時間、場所、デバイスなどのオープンデータを利用したメールコンテンツを自動的にパーソナライズまたは更新する「リアルタイムコンテンツ」が含まれる。

 

また、開封率を決定的要因として使用するすべてのセグメンテーションおよび自動化プログラムを更新すべきである。他チャネルでのアクティビティを見落とす可能性のある開封率の代わりに、次にあげる指標を用いて、ウィンバックや再アクティブ化などのプログラムでアクティビティを正確に検出するのだ。

 

  • クリック数
  • コンバージョン数
  • AOV(平均注文額)
  • ウェブサイトのログイン/訪問およびその他のウェブサイトデータ
  • メール1通あたりの収益/購読者1人あたりの収益

 

おわりに

この記事からわかるように、開封率が、過去傾向を示す指標とする場合を除いて、さらに信頼性が低下することにはさほど影響はないだろう。また、これでメールが消滅することもないだろう。

 

むしろ、メールマーケティングをより良いものにする力がある。マーケターは、今すぐ、自社プログラムを監査し、より正確で目的に焦点を合わせた成功指標を採用し、レポーティングの改善を行なうことにより、自社プログラムのパフォーマンス状況と継続的に改善する方法を正確に知るこというメリットを享受することができるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の6/29公開の記事を翻訳・補足したものです。