EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

モバイル広告市場を勝ち抜くための理想的なマーケティングミックス戦略

モバイル広告市場を勝ち抜くための理想的なマーケティングミックス戦略

マーケティング
2021/05/13

マーケティング追跡プラットフォームSwaarmのCEOであるDavid Frei氏による、マーケティングの投資利益率(ROI)最大化を目指すブランドのための、主要な広告プラットフォームについての考察。

 

マーケターが2021年のマーケティングミックスのフレームワークを考える際、顧客獲得のために、主に大手のプラットフォーム(GAFA:Google、Amazon、Facebook、Apple)と連携していることに気づくだろう。これにより、1つのプラットフォームへの過度の依存やオーディエンスターゲティングの変更のリスクと、ROIパフォーマンスのリスクの両方が生じる。

 

これらのリスクに気がついていても、GAFAが広告業界を支配しているという事実に変わりはなく、eMarketerによると、2020年の米国の総デジタル広告費のおよそ3分の2をGAFAが占めていたという。

 

MarketingDive報告によると、マーケターは、デジタル広告に1101億ドル(788億ポンド)を支出しており、これは米国の総広告費の51%を占める。この多額のデジタル広告支出をみると、マーケターは他のチャネルを無視しているのか、また、その代償は何かという疑問が湧く。さらに、その戦略はどの程度有効なのか、費用をかけすぎていないか、という疑問も。

 

適切なマーケティングミックスを策定することは、パフォーマンスマーケティング戦略の成功に欠かせない。戦略的かつバランスのとれたマーケティングミックスを実施することで、予算支出が効果的に最適化され、適切な場所にいるユーザーをターゲットとし、競争優位性が生み出される。

 

eMarketerの推定では、マーケターは、プログラマティック広告の低品質なインベントリが原因で、予算の約26%を無駄に費やしている。Ascend2調査によると、2020年のパフォーマンスマーケティング担当者にとっての最大の課題は、依然として「包括的戦略を策定すること」(48%)で、自社のマーケティングの目標達成について「ある程度成功した」との回答は44%にすぎなかった。

 

つまり、GAFAから脱却し多角化しなければ、ブランドセイフティや不正の問題というリスクを伴う可能性がある。今後、GAFAのプラットフォームの獲得はますます高額になり、ユーザーエンゲージメント指標の透明性は低くなっていく。

 

パフォーマンスマーケティング市場は常に変化し、複雑さを増していくため、それに応じて自社のマーケティングミックスを頻繁に見直し、更新していくことが重要である。

 

今はGAFAやプログラマティックメディアの先を見るべき時だ。その理由は以下のとおりである。

 

 

割増コストと効果に関する課題

GAFAのプラットフォームへの広告掲載は高額である。最近、Googleも2021年5月に、フランス及びスペインのGoogleプラットフォームにおける広告費を2%値上げし、両国に適用されているいわゆる「GAFA税」を相殺すると広告主に通知した。さて、この割増しされたトラフィック広告費によりROIは高くなるのだろうか。年2回行われるCMO Survey2019年1月版では、現在のソーシャルメディアの状況下では、高いROIは得られていないことが示されている。

 

 

透明性が低いため、データマネジメントによるアトリビューションが困難

GAFAなどのウォールド・ガーデン(クローズドなプラットフォーム)は、その独自データに関するインサイトをほとんど開示しておらず、自社システムから他のシステム(アナリティクスパートナー又は広告主のCRMなど)へのデータの移行や統合は、通常、許可していない。これは、オムニチャネルのデータを同期し、自社顧客のファーストパーティーデータと整合させたいパフォーマンスマーケティング担当者にとっては、自社キャンペーンのスケーリング、効果測定、報告の際に余計な手間が生じることになる。その代わりに、GAFAのアナリティクスに頼り、第一者及び第三者による検証を省くことになる。

 

 

プログラマティック広告におけるブランドセーフティに対するリスク及び透明性に関する懸念

他に媒体を購入する手段として一般的なのは、データ分析及びアルゴリズムに裏打ちされた自動化技術により、適したユーザーに適時に適切な価格で広告を表示するプログマティック広告である。プログラマティック広告による収益は、2019年のデジタルディスプレイの全収益の80%を占める(オンライン広告業界団体IAB報告より)。しかし、一方で、透明性の低さやブランドセーフティが懸念となっている。アルゴリズムの道徳倫理に対する理解は限定的であり、どのようなコンテンツの隣に広告を表示するのか、詳しくは把握していないため、YouTubeなどのプラットフォームでは好ましくない事態が起きている。

 

 

キャンペーン成功のために自社マーケティングミックスをどのように多様化するか

自社のマーケティングミックスを多様化すべき理由は様々である。例えば、マーケティング・リスクを分散させるため、より完全なオムニチャネル・エクスペリエンスを提供するため、より包括的なデータを収集するためなどである。多様性は、自社のキャンペーンの設計において鍵となる。

 

以下に、検討すべき代替チャネルをいくつか示す。

 

 

1)不正がなく費用対効果の高いパートナー・マーケティングにより、新たなオーディエンスを開拓

自社のマーケティングミックスにパートナーを追加するマーケターは増加しており、この傾向は強まりつつある。米国における2020年のパートナーマーケティングに対する支出は68.2億ドルであり、2021年にはさらに増加することが予測されている(Forbes)。Xpose360の調査によると、ドイツではパートナーマーケティングが好況となると予測されている。

 

パートナー・マーケティング・モデルの魅力的な点は何か。このパフォーマンスモデルでは、パートナー又はパブリッシャーが手数料を得て、自社のマーケティングチャネルで製品やサービスを宣伝する。パートナーネットワークは、複数のパブリッシャー及び広告主間の仲介をし、パートナーネットワーク内のパートナーのインベントリへのアクセスを広告主に提供する。ネットワークは、広告主からの収益とパートナーへの手数料との差額により利益を得る。特定のニッチに集中すること(バーティカル・ターゲティング)が、パートナーマーケティング・モデルでは不可欠である。

 

今日、Swaarmのような最新技術を提供するマーケティング追跡プラットフォームを利用すれば、パートナーはより深いインサイトと透明性が得ることが可能だ。パートナーマーケティング業界における大きな問題である「不正」が解決する。パートナーが自社のキャンペーンのスケーリングや分析に用いるためにアクセスし使用する技術が高度に進歩したため、あらゆる局面でかつてないほどに透明性が高くなっている。

 

そして、アトリビューションが容易になり、透明性の高いアプローチにより、広告がユーザーの属性や実在する人物であることを知ることができるようになった。そのため、この種のパートナーシップは不正がなく、GAFAやプログマティック広告によるトラフィックよりも費用対効果が高い可能性があり、それらと同程度に強力である。また、世界的に特定のバーティカル・トラフィックを増加させ、ROIに好影響を及ぼす。

 

 

2)信頼できるネットワーク・パートナーと協業する

アトリビューション計測プラットフォームAppsFlyerの2020年の報告によると、複数のネットワークのランキングが急上昇しており、マーケターがFacebookとGoogleの複占から脱却し、自社のマーケティングミックスを多様化させる機会となっている。小規模のネットワークは、質の高いユーザーを提供できることを証明している。

 

 

3)ブランドにとって安全で不正のないインベントリを得るための高度な技術やイノベーションに投資する

マーケティング専門家によると、パフォーマンス・マーケティングは、もはやユーザー獲得だけにフォーカスしていない。オランダ・アムステルダム発のアイウェアブランドAce & Tateの顧客獲得部門責任者であるエカテリーナ・ペトラコヴァ氏は、Adjust社が発行するLTV Magazineで、未来志向のマーケターは、ブランド構築とユーザー獲得を組み合わせた全体的かつ戦略的な広い視点を得ることが必要だと述べた。また、だれもが同じデータにアクセスできる新たな手法を採用する必要があるという。

 

本来、マーケティングを成功させるには透明性や協業が有効である。高度な技術は、以下のような多くの点でこれをサポートする。

 

高度な技術により、パートナーのマーケターは、不正がなくブランドにとって安全なインベントリを提供できる。Swaarmなどのプラットフォームで不正フィルターを使用することで、マーケターは、パートナーにキャンペーンについてより深い情報を提供でき、不正なトラフィックから保護することができる。パートナーはオファーの質を容易に把握しながら、質の高いパブリッシャーを監査し選定できる。

 

パートナーは、オファーを容易に分配したり受諾したりしながら、自社のキャンペーンをより柔軟に切り分けることができる。パートナーは、より大量のリクエストを管理して、パフォーマンスマーケティングの効率と拡張性を高めることが可能となる。広告主は、機械学習による粒度の細かいターゲティングの選択肢に基づき、データ主導の最適化が実現できる。

 

キャンペーンを世界規模にスケーリングし、より国際的なリーチが可能となる。オファーテスト機能や自動化されたインサイト機能などにより、規定のルールに基づき、莫大な数の統合されたパートナーからのオファーをインポート、創出、受諾することができ、時間とリソースを大幅に節約できる。また、上述の機能によりトレンドやパターンが容易に特定することも可能だ。

 

自社のビジネス目標に到達するためには、広告キャンペーンを戦略的に立案することが重要である。イノベーションに裏付けられた適切なマーケティングミックスを採用することで、将来的なパフォーマンスマーケティングの目標の規模拡大と達成が可能となる。

 

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の4/20公開の記事を翻訳・補足したものです。