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消費財(CPG)ブランド、D2Cのeコマースを積極的に推進

消費財(CPG)ブランド、D2Cのeコマースを積極的に推進

マーケティング
2021/05/17

ダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC・D2C)のeコマースモデルに移行し、中間業者である小売業者を回避する消費財ブランド(CPG)企業が増えつつある。その結果、CPGブランドメーカーが、いまなお重要な役割を果たしている従来型の間接的流通チャネルと競合するケースが増加している。

 

この状況は、メーカーが、小売流通パートナーとの関係を危機にさらすことなく顧客のニーズに応えるためには、どのようなeコマース戦略をとるべきかという疑問を投げかけている。

 

これらの問題の解決への手掛かりを見つけるべく、D2Cの専門家に話を聞いた。

 

 

D2C強化のきっかけ

CPGメーカーは、世界経済の変化がもたらしているプレッシャーに直面している。消費財メーカーの60%は、eコマースの成長機会を捉えるための準備が適度にできていると感じているが、そのうち多くの企業は、競争力維持のためにD2Cをスタートすべきか、またどう実行すべきかについて疑問を抱いている。

 

米国の小売業コンサルタント企業Bold Strategiesの社長であるAllan Peretz氏は、一部の大手企業は、消費者向けのダイレクト・トゥ・コンシューマー・チャネルに、より積極的に取り組んでいると指摘する。例えば、ソフトドリンクメーカーのPepsiは自宅飲食需要に応えるために、飲料とスナックの2つのD2Cサイト(PantryShop.comSnacks.com)を立ち上げた。

 

昨年は、これら2つのサイトのローンチに関する報道の影響で、世界最大の一般消費財メーカーであるP&Gなどの他の大手ブランドは、D2Cに再び注力することになった。そして、この傾向は、中小企業にも広がった。

 

「大企業がD2Cを始めたため、多くの中小企業もこれなら大丈夫だと判断した。大企業が思い切ってD2C実行に踏み切ったことで、小売業者も、D2Cを受け入れ始めるようになった」とPeretz氏。

 

パンデミックによって変化を迫られる以前から、CPGメーカーは、流通、メッセージングや価格をより適切にコントロールできるよう、消費者に直接アプローチする新しい方法を模索する必要性を認識し始めていた。そして、早期に導入した企業は、その恩恵を享受している。

 

エグゼクティブ・リクルーティング企業Greenwich Harbor Partnersのマネージング・ディレクターであるTed Pryor氏は、CPG企業が消費者へのダイレクト・トゥ・コンシューマーを加速させている理由として、一つには新型コロナウイルスによるパンデミックの影響があり、もう一つにはダイレクト・トゥ・コンシューマー・コマースの普及があると述べている。同氏は、消費者は、炭酸飲料、トイレットペーパー、清掃用品やおむつなど、お気に入りの定番商品をオンラインで簡単に購入することを望んでおり、CPGブランドもその要望に応えていると強調した。

 

「このトレンドは、eコマースの黎明期に始まったが、eコマースを飛躍的に容易にするスマートフォンの普及により、この10年間で更なる成長を遂げた。そして、この5年間で、CPGブランドが大々的に参入し、パンデミックの間に需要が加速した」とPryor氏は説明する。

 

ナラティブのコントロール

カナダのマーケティングコンサルティング企業retailPhilの創業者であるPhil Chang氏は、インターネットがブランドと小売業者の関係を変え、また、実店舗が消費活動の中心であり、小売業者が門番の役割を果たしていた古いモデルを変えたと話す。

 

「メーカーが消費者に直接アプローチできるようになったことで、メーカーがやりたいことは大方何でもできるようになり、言いたいことは何でも言えるようになった。つまり、メーカーがナラティブをコントロールしているのだ。今では、小売業者は商品の専門家ではなく、単なる取引場所になっているケースもある」と同氏。

 

CPGメーカーは、売上の増加、利益率の上昇、小売パートナーへの依存度の最小化、新しい地域の顧客へのアクセス、そして顧客エンゲージメントやロイヤルティの向上を目的として、D2C eコマースを活用している。

 

「インターネットにより、ブランドはより優れた、そして、カスタマイズされたエクスペリエンスを提供し、消費者はオンラインでブランドに直接アクセスし、もっとも正確な情報を得ることができるようになった」とChang氏は付け加える。

 

D2C成功の要因

ブランドがD2Cへの投資や実験を成功させるには、考え方を変える必要がある。企業が、D2Cの取り組みについて、社内の他の部分を変える必要のない、オンラインストア立ち上げの単なるサイドプロジェクトとして捉えているのならば、成功の見込みはないだろう。

 

Laumière Gourmet Fruits(ドライフルーツをベースとするプレミアム食品のオンライン販売を行う米国企業)のCEO兼共同設立者であるVarun Sharma氏は、メーカーはD2C eコマースのマインドセットを取り入れ、D2Cを拡張してサポートするための適切なプロセスと組織構造を確保する必要があると説明する。

 

「成功しているビジネスは、今後2、3年の見通しが明確なロードマップを持っているものだ。そして、5年から10年のビジョンを持って、ゆっくりとストアを変化させ、構築するというデジタルマインドフレームを持つことが、非常に重要な役割を果たしている」と同氏。

 

D2Cに必要な基礎を構築できなければ、オンラインストアを全く展開しない場合以上に、ブランドにダメージを与える可能性がある。なぜなら、不満を抱いている顧客は、すぐにソーシャルメディアにアクセスして、悪い経験について文句を言うからだ。

 

ダイレクト・トゥ・コンシューマーのブランドであるフルーツ加工会社を所有するSharma氏は、自分の会社は、そのD2Cモデルに全責任を負っていると話す。「一つのことでも失敗すれば、ブランド全体が駄目になる。一度でも消費者に提供する体験を台無しにすれば、顧客は戻ってこない」と同氏は断言する。

 

D2Cビジネスを成功させるためには、財務、営業、マーケティングや運営など、部門間の協力と情報提供が必須であり、社内において一律の専門知識と全面的な賛同を得る必要がある。

 

もう一つの重要な要素は、さまざまな部門の従業員が効果的にプロジェクトに協力できるように調整する権限と能力を持つD2C企業のトップ(CEOやCOO)が、DTCの推進者であることだ。

 

アジャイルな実行と継続的な改善も重要な要素だ。NatureBox(パーソナライズされた食品をオンライン販売する米国企業)やDollar Shave Club(かみそりなどの身づくろい製品を販売する米国企業)などのD2Cに成功している企業は、迅速なテスト&ラーニングのアプローチを採用している。これらの企業は、高度な分析に巨額の投資を行い、その結果をオファーのパーソナライズのみならず、消費者のニーズの予測にも利用している。

 

流通チャネルのバランス

D2Cモデルに対する明らかな懸念は、ブランドと小売業者の関係が損なわれるリスクだ。

 

ブランドは、最終顧客に商品を直接販売するのではなく、顧客を小売チャネルパートナーに誘導してオーダーフルフィルメントを行うべきだろうか。D2C eコマースが、ブランドとその小売チャネルパートナーにとってWin-Winとなるためには、微妙なバランスが必要だ。

 

「D2Cの成長によって、小売業者は以前よりもさらに多くのブランドから協業相手を選択できるようになり、協業相手の数も増加したため、より大きな力を持つようになった」とBold StrategiesのPeretz氏は述べる。

 

今日の消費者は、パーソナライゼーションと利便性を求めている。このような消費者の要求に応えるためには、CPG企業は、従来の小売チャネルを拡大して消費者に直接アプローチし、消費者の期待、好みや嗜好について、もっと知る必要がある。

 

自社ブランドのオンラインストアを立ち上げるか、サードパーティのマーケットプレイスを利用するかにかかわらず、D2C戦略を実行することは競争力維持のための鍵である。

 

多くのCPG企業が、競争力を維持し、創造的破壊企業や競合他社の脅威に対抗するためにD2Cオンラインモデルを取り入れている一方で、依然としてデジタルチャネルを通じて消費者に直接アプローチする方法を模索している企業も多い。

 

Peretz氏によると、ブランドはできるだけ早くD2Cの実験を始めるべきだという。「ダイレクト・トゥ・コンシューマーが必要になるまで待っていたら、学習曲線が長くなり、ローンチの準備が整うまで数か月から数年かかるかもしれない。つまり、最大のリスクは『待つ』ということだ。小規模な実験は、非常に低コストで実行可能なのだから」と同氏はアドバイスする。

 

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の4/20公開の記事を翻訳・補足したものです。