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FacebookのCCPA対策であるLDUが巻き起こす混乱と対策

FacebookのCCPA対策であるLDUが巻き起こす混乱と対策

トレンド
2020/09/16

どうすればユーザーの選択を尊重しつつ、カリフォルニア向けにマーケティングを実行できるのか?

FacebookのCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)への対応策であるLimited Data Use(データ使用制限機能。以下LDU)は、遅れをとっており、広告主を混乱させ続けている。Facebookでの自社マーケティングが、現在CCPAに準拠しているかどうかさえ定かではないかもしれない。もし、7月のFacebookでの成果が不安定だったとしたら、このLDUのせいかもしれない。

 

今年7月にFacebookは、突如、すべてのFacebookビジネスアカウントでLDUを自動的に有効にした。これにより、Facebookがカリフォルニア州居住者と識別したすべてのユーザーは、自社ページ経由で「Do Not Sell My Information(私の情報を売らないで)」というリクエストを提示したことを示すフラグが実質的に立てられてしまい、彼らに対するマーケティングや、広告閲覧後に彼らがとったアクションの測定が制限されることとなった。

 

米国メディアエージェンシーWpromoteのSimon Poulton氏は、「最悪である」とSearch Engine LandでのYoutubeライブで述べている。「正直なところ、1つのプラットフォームが実際に行なっていることという点では、今まで見てきた中で最も行き過ぎており、収益面で多大な損害を与えるものである。実際、多くの広告主が、今回の FacebookのLDUによって、大幅に収益を落ち込ませている。Facebookは、カリフォルニア在住者向けのリマーケティングを、ほぼ無効にした」と語った。

 

さらに、LDUはパスバックシグナルを除去してしまうとPoulton氏は述べている。「そして、コンバージョン時点で、シグナル情報を見失う。したがって、カリフォルニア在住者に対し、見込み客向けのマーケティングを実行したとしても、返ってくるデータは、ほとんどコンバージョンにつながらない」。

 

CCPAが自分のビジネスに適用されるかどうかわからない場合は、まずこの記事を読んで欲しい。もし影響がない場合は、LDUについて心配する必要はない。影響しそうな場合は、このまま読むことをお勧めする。

 

LDU移行期間が招く混乱。自社設定の確認を

Facebook Events ManagerでのLDUのデフォルト設定は、現在も「移行期間を維持」となっているが、それは、7月31日に終了した最初の移行期間であり、それから1ヶ月以上も経っている!

これは、本質的には、「すぐに移行期間を終了する」をチェックするのと同じである。もし、自社サイトにLDUフラグを実装するためのアクションを取らずにチェックをしている場合、Facebookで行うマーケティングは、現時点でCCPAに準拠していないことになる。移行期間を10月20日まで延長するオプションを選択し、フラグの実装に取り掛かる必要があるのだ。

 

Facebook Events ManagerでのLDUの移行期間設定

 

サイトのどこにLDUフラグを実装するべきか?

FacebookのLDUフラグを、Facebookピクセル内の全ページにデフォルトで実装したとしても、Events Managerの「移行期間を延長する」トグルを持っているのと同じことだ。

 

Poulton氏曰く、ユーザーが自分のウェブサイトの 「Do Not Sell My Information(私の情報を売らないで)」 バナーを選択した場合にのみ、LDUフラグを有効にする必要があるという。しかし、それは、非常に複雑になる。オプトアウトはどのようになるのだろうか?

 

ユーザーが、サイトからオプトアウトしたとしよう。それは、サイトをまたいで永続的に利用できるため、クッキーに保存しておきたい値であるとPoulton氏。

「ここで問題となるのは、ユーザーがクッキーを無効にしている場合である。つまり、その値を保存できないということである。LDUフラグをローカルストレージに格納し、それをそのユーザーに対して永続化するという方法もある」と、同氏。「これは、まさにオンサイト機能の聖地のようなもので、私は、CCPAの精神に沿ったものだと考えている」とも。

 

何か問題はあるのだろうか?「これは、技術的に信じられないほど複雑である。これに取り組んでいる優秀な開発者が当社にいるが、彼らは、クライアントが悩まされているのをみている」と言う。

「満足できる妥協点」を(彼は弁護士ではないという点を警告しつつ)Poulton氏は、次のように提案する。「『満足できる妥協点』とは、誰かが 『Do not sell my onformation(私の情報を販売しないで)』にオプトインするたびに、単に LDU を有効にするということである」。

「少しやり過ぎかもしれないが、優れた実行方法であり、個人の値を持続させることができる。そして、確実に、ユーザーの選択を尊重することができるだろう」。

 

別の方法もある。ユーザーが、自社サイトでオプトアウトしたときに、一貫した処理のためにIPアドレスを非表示フィールドに保存することだ。LDUでも、同様に可能である。

 

また、Facebookは、Pixel HelperのChrome 拡張機能をアップデートし、いつどのようなデータ処理オプションが送信されたかを表示するようにしたと、Poulton氏は9月4日に自身のTwitterで述べている。

 

 

広告主は今、カリフォルニア在住者にどのように対処すべきだろうか?

米国の広告代理店AKvertiseのAkvile DeFazio氏は次のように述べている。「私たちは、カリフォルニアを切り離し、別のキャンペーンを実行してきた。そうすることにより、ビジビリティの向上と、より簡潔な管理と最適化を、より容易に実現することができ、これらすべての変化は非常に新しいものであるため、新しいキャンペーンで実際に何が起こっているのかを確認することも可能である。この方法では、キャンペーン全体に影響を与えることもなく、パフォーマンスの低下を招くこともない」。

また、同氏は、Facebookマーケティング担当へのアンケートで、約60%がカリフォルニア在住者へは別のキャンペーンを展開していると答えている。

 

広告や投稿へのエンゲージメント

DeFazio氏は、LDUを有効にしていれば、ピクセルベースのリターゲティングのオーディエンスに対し、依然として有効な次善策があると言う。

「カリフォルニアとFacebookやInstagramの広告や投稿に対しエンゲージしたことのある人たちだけをターゲットにした場合、厳密には、クリックは一種のエンゲージメントと見なされるため、それらのオーディエンスに対し、依然としてパフォーマンスを発揮できると考えられる。つまりおそらくは、過去に見た広告やポストにエンゲージした人の大部分に、依然としてヒットすることができ、リターゲティングできるだろう」と、同氏。

 

DeFazio氏は、これらのエンゲージメントリストに基づいて、類似オーディエンスを構築し続けている。「今でもある程度のパフォーマンスを発揮しているが、2019年末のような勢いはない。しかしそれは、クライアントと戦略を継続的に練る途中での算定的なものである」。

「他のカスタムオーディエンスを作成する場合、ダミーUTMを作ってそれを広告に付加する方法が、過去のシナリオではうまく機能している」とDeFazio氏は付け加える。「そうすれば、特定の広告セットにおいて、誰をターゲットにしているかを知ることができる。その広告をクリックした人は誰でも、ダミーUTMを使って、類似のオーディエンスを作成し、それをしようして、カリフォルニアのユーザーにリーチすることができるのだ。もちろん、オプトアウトしないユーザーに対してである」。

 

オプトアウト率を低くするには

CCPAは、GDPRのような「オプトイン」ではなく、「オプトアウト」に焦点を当てた法律であるため、DeFazio氏は、マーケターへのフリクションによる影響は軽減できるだろうと期待している。Poulton氏によると、ある全米規模のクライアントは、6月に約200万回のセッションを行い、オプトアウトしたのはたった800人であったという。

今でもアナリティクスやCRM、注文履歴を見ることで、カリフォルニアのパフォーマンスに関するインサイトを得ることが可能だ。

「カリフォルニアでのマーケティングは、依然として意味がある」とPoulton氏。「カリフォルニアについてレポートすることができないからといって、コンバージョンやエンゲージメントが実現できないということにはならない」。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の9/4公開の記事を翻訳・補足したものです。