EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

パンデミックで変化するeコマースのトレンドから、ニューノーマルに向けた示唆を読み取る

パンデミックで変化するeコマースのトレンドから、ニューノーマルに向けた示唆を読み取る

トレンド
2020/05/12

世界中の消費者や企業は、リモートワークをしながら、自宅でより長い時間を過ごしている。彼らは生産性やセキュリティを向上させようと奮闘しており、ソフトウェア製品やデジタル製品のオンライン注文は急増している。

 

オンライン決済サービスを提供する2Checkout は4月27日、現在の世界的パンデミックのタイミングで、オンライン・コマースが急増していることを示すレポート発表した。このレポートは、3月にサービスとデジタルおよび物理的な商品の両方を販売する 17,000 以上の加盟店から同社が収集した、グローバルなオンライン販売データに基づいている。

 

主な調査結果として示されたのは、3月の初めから、デジタル商品の需要が増加傾向にあるということ。マルチメディア・ツール (40%)やコラボレーション(22%)、エンドポイント・セキュリティ・ソリューション(15%)といったソフトウェアベースの製品において、この3月が、対前月比で最も高いレベルの伸び率となった。

 

2Checkoutは全体として、COVID-19のロックダウンにより、デジタル商品のオンライン売上が世界的に15%増加したと推定している。対して、同期間の物理的商品の売上においては、世界的な大きな伸びは見られなかった。

2Checkoutの調査員によると、物理的商品の世界的な成長が見られなかったのは、サプライチェーンと物理的商品の配送に関する物流の中断に起因している可能性があるという。

2Checkoutの代表取締役である Erich Litch 氏は、パンデミック前の状況と比較すると、この調査結果は非常に重要であると指摘している。

「私たちは、国やカテゴリーレベル別での傾向を理解するために、前年比のデータも分析した。そして、上昇傾向はパンデミックによってもたらされたものだと確信している」と同氏は語った。

 

レポートパラメータ

2Checkoutは、オンラインビジネスが国際市場でデジタルおよび物理的製品を販売するのを支援するオールインワンの収益化プラットフォームである。モジュール式のプラットフォームは、グローバル決済(グローバルレベルで45以上の決済方法)、デジタルコマース、サブスクリプション課金、グローバル税務・金融サービス、リスク管理・コンプライアンス、パートナーマネジメントといったいくつかの分野での機能を提供している。

 

「米国7-ElevenのATMなど、現金を含むオフライン決済方法での取引減少がわかっている。オフライン決済方法は、米国での取引量の1%未満しか占めていないため、その重要性は低い。しかし、予測していた通り、現金による支払いが30%減少した」と、Litch氏は、述べている。

国レベルのデータは、国別の買い物客 の取引に基づいており、2CheckOut は分析に用いる非常に幅広いデータセットを収集している。

 

同社の調査員は、実際の売上記録からデータを編集している。また、クライアントと見込み客を対象としたアンケート調査を実施し、彼らがどのような課題に直面しているのか、またパンデミックに対処するためにどのような対策を講じているのかを把握した。これらの結果は、まだ公表されていない。

 

2CheckOut のクライアントは、HPE  Software(企業向けソフトウェア)、myFICO(消費者向けクレジットスコアリングサービス)、Kaspersky Lab(コンピューターセキュリティ)、Malwarebytes(マルウェア対策ソフト) などのエンタープライズレベルの企業から、200 以上の国と地域の中小企業(SME)、および小規模事業者まで多岐にわたっている。

 

その他の調査結果

今回のレポートは、グローバルオンライン売上におけるCOVID-19 の影響を追跡調査したものである。同レポートによると、広告やビジネスサービスなどのオンライン販売も後退し、2020年3月は前月比で11%の減少となった。

注文が大幅に増加した最初の国は、イタリアであり、それは3月9日からである。他国では、3月中旬に政府によるロックダウン命令と同時期にオンライン売上が急増した。

エンドポイント・セキュリティの売上の急増は、このカテゴリーにおいて通常から好調な消費者と企業向け市場を維持している、ドイツを除く多くの国でみられた。

スウェーデンでは、デジタル製品の売上が大幅に増えたわけではないが、サービスの売上は予想通り継続して増加。なお同国では、自宅待機命令はでてない。

 

「今回の調査結果データは、不確実性の高いこの時期において、デジタルソリューションの購入が急増していることを示した。それは、ホームエンターテイメントだけでなく、リモートで働くグローバルな労働者の生産性とセキュリティの両方を向上させる目的があり、ソーシャルディスタンス 確保の取り組みの一環と言える」とLitch氏は語る。

 

国別データ

以下は、今回のCOVID-19の健康面における緊急事態の拡大に伴い、消費者や企業によるショッピングが増加し始めた3月の消費者の購買活動の一例である。Litch氏は、3月のデータ分析で明らかになったパターンに基づくと、短期、中期的には全カテゴリーのオンライン売上がパンデミック前の予測よりも高いレベルで増加すると予測する。

「つまり、2020年3月ほどの成長率ではないにしても、上昇傾向は続くと予想され、これがニューノーマル(新しい常態)となる可能性が高い」と同氏は述べている。

 

  • 米国:米国では、3月17日から注文数が増加。3月のオンライン売上高は平均で前月比10%増、デジタル商品では13%増となった。デジタル商品では、エンドポイント・セキュリティやオーディオ・ビデオ/マルチメディア・ソフトウェアを中心に注文が増加した。金融商品など他のカテゴリーでは、オーガニック以外では大きな伸びは見られなかった。サービス業では、オンライン売上は、前月比8%の減少となったが、物理的商品のオンライン売上は前月比2%の微増となった。
  • 英国: 英国は、2Checkout の売上チャートのほとんどのカテゴリーで、上位3位に入る市場である。同国では、3月のデジタル商品のオンライン売上が、前月比14%増加。サービスのオンライン購入は4%減少、物理的商品の売上では7%の減少が見られた。
  • イタリア:イタリアは、注文数が劇的に急増した最初の国であり、それは3月9日に始まった。3月のデジタル商品のオンライン売上は、平均して対前年比40%以上増加した。主にエンドポイント・セキュリティ、オーディオ・ビデオ・ソフトウェア、ウェブ・ツールの注文が増加。イタリアの物理的な商品のオンライン販売も増加傾向にあった。しかし、サービスのオンライン販売は、前月から21%減少した。
  • スペイン:スペインでは、3月15日から、注文数が大幅に増加。3月のデジタル商品のオンライン売上は、平均して前月比30%増となった。主にエンドポイント・セキュリティ、ユーティリティ、オーディオ・ビデオ・ソフトウェアなどの注文が増加。物理的商品では、オンライン売上は、17%減少。サービス部門の減少率は39%と、さらに大きくなっている。
  • ドイツ:ドイツでは、3月19日が注文数のピーク始まりとなった。3月のデジタル商品のオンライン売上は、平均して対前月比15%増加。注文が増加したのは主にオーディオ・ビデオとマルチメディア・ソフトウェアであった。ドイツは、エンドポイント・セキュリティ製品の強い市場であり、消費者や企業はいずれにせよこれらの製品を購入していることを示している。そのため、COVID-19によるこの製品カテゴリーへの影響はそれほど大きくない。同期間のeコマースの物理的商品の売上は4%増加し、サービスは7%減少。
  • スウェーデン:3月のデジタル商品のオンライン注文量は、前月比わずかに8%増にとどまりまった。これは、他の先進国と比較すると、わずかな増加である。しかし、調査員によると、3月にサービスのオンライン売上が増加傾向にあることが確認された。どちらの傾向も、ロックダウンがなかったためと考えられる。売上における変化は、2020年4月も引き続き見られるだろう。
  • オーストラリア:オーストラリアのデータでは、デジタル商品の売上がわずかに増加。しかし、オーストラリアは、サービスのeコマース販売も減少しており、3月は2月に比べて10%の減少となった。

 

確立しつつあるニューノーマル

ITコンサルティング会社のPund-ITの主任アナリストであるCharles King氏は、もしパンデミックが多くの疫学者の予想通りに進行し、パンデミックが後退したり再発したりを繰り返した場合(つまり、より効果的な検査方法やワクチンが開発されるまでは)、オンライン・コマースにおける大規模な飛躍は続いていく可能性が高く、さらに成長する可能性もあると示唆している。

「パンデミックは、Amazonのような確立されたオンライン小売業者に明らかなメリットをもたらすだろうが、メインストリームの小売業者が、オンライン・コマースを強化し、既存の価値を打ち破る新規企業への扉を開くチャンスを生み出す可能性もあるのだ」と、同氏は語った。

 

2CheckOutのレポートでは、予想外のことや、疑問視すべき、もしくは、問題と思われる点について、何も指摘していない。しかし、サプライチェーンがどのようにしてニューノーマルに適応できるか、あるいは適応していくかについての疑問を提起していると、King氏は付け加えた。

「多くの報道で指摘されているように、今回のパンデミックによって、プライムメンバーの買い物客に約束した迅速な配送が実行できていないという点で、Amazonの鎧に亀裂が入っている」とKing氏。「もし、同社とそのサプライヤーがその問題に対処しなければ、Amazonの最大の利点の1つが損なわれるか、失われることになるだろう」。

 

King氏は、オンライン小売業者やサプライヤーが、サプライチェーンの欠陥に対処できなかった場合、実店舗の小売業者がどのように対応するかを考える価値があると指摘している。もし、オンライン小売業者やサプライヤーが迅速な解決策を見つけられなければ、消費者や企業は、地元の小売業者を支持することに戻ってしまうかもしれない。

 

「もしそうなった場合、オンライン企業は、より多くの顧客を呼び戻すための新しいサービスや特典を開発することが期待される」と同氏は述べている。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の4/28公開の記事を翻訳・補足したものです。