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クッキーがない世界におけるアイデンティティ。どのように顧客とエンゲージメントを築いていくべきか

クッキーがない世界におけるアイデンティティ。どのように顧客とエンゲージメントを築いていくべきか

トレンド
2020/04/20

アイデンティティは今後、ブランドの成功にとってさらに不可欠なものとなるだろう。Acxiom(IDソリューションを提供する米国SaaS企業)による、未来のアイデンティティソリューションにとって重要となる柱、そして、クッキーを使用しない世界についての視点を紹介する。

 

アイデンティティは、難しい課題である。そして、Googleが最近、Chromeブラウザでのサードパーティ・クッキーのサポートを2年以内に終了する予定であると発表したことにより、さらに複雑さを増している。この動きは、オーディエンス・ターゲティングの重要な指標としてリーチに依存するデジタルチャネルに、最も大きな影響を与えるだろう。広告主がクッキーなしで前進するためには、新たな代替手段を開発する必要がある。Acxiomの見解から、総体的な状況と、検討されている将来のオプションのいくつかをより深く理解してほしい。

 

現在のエコシステムでは、アイデンティティは、モバイル ID、ブラウザ ID、コネクテッド TV ID、複数のeメールアドレス、位置情報 ID などの識別子を、単に「一致させる」ことを意味するものではない。実在人物に対する統一ビューをまとめ、時間の経過とともに情報が変化する中で、そのビューを維持するための、より総体的なアプローチが必要となる。そして、アイデンティティの最大の課題として、以下の3つが挙げられる。

 

画一的な方法はない

アイデンティティの定義は、ビジネスライン、ビジネスの種類、テクノロジープラットフォームによって異なる。どうすればそれぞれ独自のユースケースに応じて、アイデンティティソリューションを理解し、調整することができるだろうか?

 

属性とカバレッジにおけるデータギャップ

属性とカバレッジにおけるデータギャップは、ブランドのマーケティングメッセージやレスポンスの精度に、極めて大きなダメージをもたらす。どのように、顧客との関係を構築するためのインサイトを獲得することができるだろうか?

 

デバイス、携帯電話、メールアドレスを共有するユーザー

共有によってノイズが発生し、矛盾するシグナルが送信される。どのように、それらの矛盾した情報を修正し、優れた顧客体験を一貫して提供できるだろうか?

 

Winterberry Group報告書によると、2019年には、米国のマーケティング担当者は、アイデンティティ機能の強化のために、9億ドル近くをアイデンティティサービスとソリューション(デバイスグラフ、データ処理/管理プラットフォーム、サービスなど)に投資しており、2022年にはその額が26億ドル以上に増加すると予測されている。

 

投資額の大きさとマーケティング・エコシステムにおけるアイデンティティの極めて高い重要性を考慮すると、企業にとって、まず、自社所有データの状態とアイデンティティ・ ソリューションに対する自社要件を明確に評価することが不可欠である。 次に、アイデンティティソリューションのプロバイダを評価するための一連の共通した質問を確立する必要がある。その企業の最も緊急なアイデンティティに関するニーズを解決するためのプロバイダの能力を、正しく理解するためである。

 

ここでは、アイデンティティソリューションを構築する際のマーケティング担当者の指針となるべき 4 つの重要要素を紹介する。

 

正確なデータ

マーケティング会社Ascend2によると、平均すると毎年、ブランドの所有するファーストパーティ・アイデンティティ関連データアセットの30%は、古くて使えなくなるという。歯医者に行ってクリーニングを受けるのと同じように、消費者のコンタクトデータ(メールアドレス、電話番号、氏名、郵便番号)から不要なものを取り除き、標準化し、強化する予防サービスを利用することは不可欠である。多くの場合、低品質なデータが、タッチポイントにおけるエクスペリエンスの低下につながり、最も忠実な顧客でさえもイライラし、ブランドから離れていく可能性が生じる。アイデンティティは、依存するデータの品質以上に優れたものになることはなく、正確なデータは、顧客とのエンゲージメントを成功させるために必須要素である。

 

全チャネルにわたる正確なアイデンティティ

データの質も重要だが、その量も同じである。現在のマーケティング・エコシステムでは、消費者のデジタルおよびオンラインでのインタラクションの可視化が不可欠である。ファーストパーティである民間企業のグラフは、ファーストパーティのデジタルおよびオフラインのデータと、付加的なサードパーティのインサイトを組み合わせて、消費者の統一ビューを作成する。企業は、タッチポイント、デバイス、チャネル、アイデンティティ間の全体にわたって、消費者のアイデンティティを維持するソリューションを構築し、ブランド独自の視点に沿った最適な顧客体験を生み出すことができる。

 

優れた顧客体験の提供

アイデンティティは、継続的なプロセスである。変化する顧客プロファイルを維持し、ブランドとの真のエンゲージメントを可能にし、精度とリーチという競合要因のバランスをとるためには、一貫して監視と最適化を実行する必要がある。ブランドは、人工知能と機械学習を戦略的にプロセスに組み込む包括的なアイデンティティ管理ソリューションによって、マーテックとアドテクノロジーのエコシステム全体におけるアイデンティティを習得し、顧客と見込み客の双方に、優れたエクスペリエンスを提供することが可能となる。

 

適切なコンプライアンス

倫理的に、消費者を個人特定してつながることは、グローバルブランドにとって対応すべき最優先事項である。ブランドは、消費者へのアクセスに関するコンプライアンス要件を満たし、消費者の信頼を獲得するために、マーケティング活動とは別に、消費者が真実の個人情報を提供している確証を得る必要がある。このような機能を優先させることは、最近のカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)や、消費者による個人データの管理を可能にする他の消費者プライバシー規制によって定められた要件を満たし、理想的にはそれを上回るために不可欠である。

 

実際の人間に関わること

アイデンティティは、チャネル、デバイス、およびタッチポイント全体にわたって単一の顧客ビューを作成するためのバックボーンを提供する。そして、差し迫ったサードパーティ・クッキーの消滅によってさらにその重要性が増している。対策を始める前に、Acxiom の視点から現状の全体像を把握してほしい。そして、これら 4 つの要素が、現在および将来の顧客の期待に応えるべく設計された企業 ID ソリューションを構築するためのロードマップを提供するだろう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/7公開の記事を翻訳・補足したものです。