CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、Cookie(クッキー)のブロック、そして台頭する「監視資本主義」
すでにヨーロッパでは、2018年5月にGDPR(一般データ保護規則)が施行されている。そして米国のマーケティング担当者にとってプライバシー保護が現実となったのは、2019年であった。法的、技術的、文化的要因が重なり、ブランドや出版社、テクノロジー企業は、何年間もそれを回避してきたが、いよいよプライバシーに面と向かって取り組まざるを得なくなっている。そして今年2020年はこのプライバシー保護規制とマーケティング担当者はどのように向き合っていけばいいのだろうか。グローバルの規制の現状から紐解いていきたい。
注目されるCCPA
2018年、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が可決。そして2019年は、2020年1月1日の施行を前にさらなる注目を集めた1年となった。施行日が近づくにつれて、IAB(ネット広告業界団体)や、DAA(主要な広告やマーケティング業界団体のコンソーシアム)、多くのソフトウェア企業が、マーケティング担当者および出版社がCCPAに対処できるよう「コンプライアンスフレームワーク」とツールを導入した。
しかし、依然として企業の対応は遅く、不確実である。これは、GDPRコンプライアンスに関しても同じだった。実際、施行から1年半以上経過しているにもかかわらず、ヨーロッパで事業を行っている多くの企業はまだ完全にGDPRを準拠しているとはいえない。CCPAに関しては、2020年7月1日までは強制措置が取られないため、マーケティング担当者にとっては準備に少し時間的余裕がある。
2018年のほぼ全般と2019年初めに、テクノロジー大手企業と産業貿易団体はCCPAを批判し、反対していた。CCPAを修正させ、弱体化することを試みたのだ。なぜなら、予測されるコンプライアンスに要するコストと、データへのアクセス制限が収益に悪影響を与え、広告エコシステムを混乱させることを恐れたからである。これは現在でも変わっていない。
サードパーティCookieと「悪意のある広告」との戦い
2019年9月、ウェブブラウザのFirefoxはEnhanced Tracking Protection(拡張追跡保護)機能をローンチ。デフォルトでサードパーティのトラッキングCookieをブロックする仕様となった。AppleはSafariのIntelligent Tracking Prevention(ITP)をアップデートし、アンチトラッキングおよびCookieブロック機能とルールを、以下のように強化した。
- ・ITPは、すべてのクロスサイト・リクエスト・リファラ・ヘッダーを、オリジンのみにダウングレードする。以前は、分類されたドメインへのクロスサイトリクエストに対してのみ行われていた。
- ・ITPは、サードパーティドメインの分類ステータスに関係なく、ファーストパーティのウェブサイトですでにユーザーインタラクションがおこなわれていない限り、すべてのサードパーティのリクエストがCookieを見るのをブロックする。
世界のブラウザ市場で64%のシェアを誇るGoogle Chromeは、サードパーティのCookieブロック機能を拡張し、「(Appleよりも)効果的な方法でブロックしている」と主張している。2019年7月にChromeは、広告フィルタリングをグローバル規模で展開した。同社のBetter Ads Standardsに満たない広告はすべてブロックされる可能性がある。
「監視資本主義」の台頭
2019年は、不穏な響きを持つ「監視資本主義」というワードがデジタル用語辞書に追加され、メジャーとなった。そして、「監視資本主義」についての本や新聞記事が書かれ、2019年12月21日のニューヨークタイムズで「Total Surveillance Is Not What America Signed Up For(「アメリカがサインアップしていない全面監視」)」(閲覧には登録が必要)という社説にまでなった年でもある。
中国は国内監視において、デジタル技術のダークサイドの使用(閲覧には登録が必要)をしている代表的な例である。しかしある意味、アメリカも遅れを取っていない。同国では、モバイル端末での位置追跡が、プライバシーとパーソナライゼーションをめぐる議論の焦点となっている。
かつてテクノロジー企業は、主に雇用創出者、革新者、ソーシャルグッドの提供者であるとみなされていた。しかし現在では、ますます中傷される対象となっている。特にFacebookは、ここ数年直面しているプライバシーとデータスキャンダルの対応に苦戦した。アメリカの動画ストリーミングサービスNetflixの制作映画「The Great Hack(SNS史上最大のスキャンダル)」は、同社のCambridge Analyticaデータスキャンダルを描いたドキュメンタリーである。
しかし、ほとんどのテクノロジー企業は、はっきりした理由はわからないが、提供するサービスやその手法の価値についての消費者と広域な市場に対する教育に失敗している。その結果、虚しさと不信を煽るセンセーショナルな新聞記事(閲覧には登録が必要)が増えた。
今や消費者は、テクノロジーとプライバシーについて非常に憂慮し、諦めてさえいる。消費者の90%が、CCPAに基づいて「自分の個人情報を販売しない」というオプションを選択するところまで来ているのだ。実際にどうなるかは、いずれわかることだろう。
結論:プライバシーは友達
文化的にも法的にも、ある意味もう後戻りはできない状況である。プライバシーは、今後のユーザー体験の中心的要素となるだろう。プライバシー意識の高い消費者は、プライバシー保護に関して透明性の高い企業に報い、不透明もしくは消費者を巧みに操ろうとする企業を避けるようになる。Facebookのテレビ電話(ビデオチャット)用スマートディスプレイPortalにおける失敗は、同社への信頼性の欠如による副産物だといえよう。
倫理と信頼も、ブランドの長期的な価値における重要な要素となっていくだろう。実際、プライバシーへの対応が、他社との競争における優位性に影響を与えつつあるという早期の兆候が見られている。マーケティング担当者が前進するには、プライバシーの重要性を真に受け入れ、消費者の個人情報と引き換えに本当の顧客価値を創り出さなければならない。現実として、他の選択肢は無いのだ。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/26公開の記事を翻訳・補足したものです。