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サブスクリプションサービスの解約を減らすためにしっかり考慮するべき5つのポイント

サブスクリプションサービスの解約を減らすためにしっかり考慮するべき5つのポイント

ノウハウ・ツール
2019/07/12

サブスクリプションモデルは、多くのSaaS(ソフトウェアをインターネット経由で提供する)企業の主要な収益基盤となっている。米国の調査顧問企業Gartnerの2018年に発表したレポートによると、ソフトウェアプロバイダの90%以上が、2022年までにサブスクリプションベースのビジネスモデルに移行するとのこと。しかし、この普及率の増加にも拘わらず、企業がサブスクリプション顧客を維持することは難しく、高い解約率や収益の低下を招いている。

 

「解約率」とは、特定の期間内に失った加入者の数、または、事業者との取引を停止した顧客のことを指す。解約者は、購読のキャンセルを選択した自発的な解約者と、支払い情報の更新を忘れた不本意な解約者に分けられる。

しかし、解約の増加はどのような形でも減益を招く。「許容範囲」とされる5~7%の解約率で維持する事業者もあれば、サブスクリプションモデルを誤った方法で管理、または、単に効率的に管理していないことによって大きな損益を生み出している事業者もある。

解約率が高いと、企業は年間何千ドル、場合によっては何百万ドルもの損益を招く可能性があるだろう。中小企業の場合、解約は企業の成長を妨げ、場合によっては事業を縮小させる恐れもある。

 

英国のSaaSマーケティング企業による「解約に関する調査」の分析結果は、5%という低い解約率の場合における次のような例を示している。例えば、1,000人の顧客がいる会社での年間の解約率が5%の場合は、年間50人の顧客を失うことを意味する。しかし、解約率が月5%の場合、その会社は年間で460人の顧客を失うことになり、会社全体の収益基盤に大きな影響を与えるのだ。

キャンセルや支払いの拒否につながる要因を特定して解約を防止することは、企業が、収益が不安定なサブスクリプションから、安定したキャッシュフローを生み出すモデルに変えるうえで不可欠な対策であろう。

では、解約率を下げ、安定した月ベースの収益を生み出すための、5つのヒントを見てみよう。

 

1.前払いの奨励

月額課金オプションといったフレキシブルなサブスクリプションプランの提供は、顧客にとっては歓迎すべきことであるものの、企業にとっては予測できない解約を招くことがある。加入者に割引料金での前払いを奨励することは、企業と加入者双方にとって利点があるのだ。顧客はサービス料金の割引を受けることができ、企業は、加入者が選択した期間の収益を確保することができるためである。企業にとっては、30日後に解約する顧客よりも、前払いの契約を獲得すべきである。

商品やサービスを値下げするのが難しい場合、前払顧客には、特典や1ヶ月の無料利用期間などの提供を検討するべきだ。解約をさらに減らすために、企業は、その前払い契約による収益の一部を新規顧客獲得活動に投資し、毎月の解約者数を埋め合わせることができる。

 

2.督促処理の自動化

ここでいう督促とは、期限切れのアカウントを持つ加入者と連絡を取ることで、受動的な解約を減らすことを示す。有効期限が切れたクレジットカードや、紛失または盗難にあったクレジットカードが原因で支払いができなかった可能性もある。これらは、サブスクリプションの解約が意図的ではなかったことを意味する。

支払い情報が放置され更新されていないとしたら、それは不本意な解約だ。B2B企業では、毎月の定期的なクレジットカード取引の平均9%が拒絶されているという。B2C企業の場合、14%近くになる。

顧客はまだその製品を使用したいと思っているのに、支払いが拒絶されたことに気が付いていないかもしれない。このようなケースにおいて、顧客とのやり取りのプロセスを自動化することは、ビジネスに多大な利益をもたらすことができるだろう。

支払いが拒否された顧客に手動で電話を掛けたり、電子メールを送信したりする作業は、人手が必要となる。企業は、支払いが失敗した場合やアカウントの更新が必要な場合に、自動的に通知する自動システムを導入するべきであろう。

督促を自動化できるサービスはいくつかある。そのなかには、督促しなければ失われていた収益を取り戻すのに成功した方法で、顧客に”感じがよい”リマインダーを送信することにより、失う可能性のあった収益を効果的に取り戻しているものもある。企業は、安全なプラットフォーム経由で即時に支払いを行うために、どのようなコミュニケーションが共有されるかについて、顧客に選択肢を提供する必要がある。

 

3.解約者の調査

大量の自主的解約があった場合、シンプルに顧客に退会を選択した理由を尋ねることが有効なインサイトを得るための実証済みの方法だ。

例えば、企業はウェブサイトの解約ページやオプトアウトページで、解約を決めた顧客からのフィードバックを求める質問をすることができ、そのデータを活用し今後のサブスクリプションモデルに関して根拠のある選択をすることができる。そして、企業は、多くの顧客が解約理由としてあげた問題を適切に改善するために、将来のプログラムに変更を加えることにより、今後の解約を防ぐことができるのだ。

企業はいろいろな理由で顧客への調査をためらうことがあるが、解約顧客を対象とする場合、その顧客をすでに失っている状態であり、去っていく顧客に質問を投げかけても何の害もない。

 

4.加入者の一回休みや休止を認める

消費者は、サブスクリプションプログラムの自由度を好む。サブスクリプションの規則が厳格な場合、当然加入者が予期せぬ事態が発生するかもしれないと考えたり、競合他社がより柔軟なプランを提示したりすると、オプトアウトやキャンセルを選択する可能性がある。

加入者が利用を休止したり、プログラム利用を1か月スキップしたりできるオプションがあれば、実際に休止が必要になったときにそれらのオプション利用を促すことができる。加入者がオプトアウトしてしまうと再加入してもらうことははるかに困難になり、一時休止より多くの損失となる。

休止や一回休みのオプションは、特定の期間利用しなければならないというプレッシャーが無いので、気楽に登録することができる。多くの場合、顧客はサブスクリプションのスキップや休止をする必要はないが、それらのオプションの提供は初回の登録を促す効果がある。

 

5.ロイヤルティを称える

誰もが、自分が特別な一人だと感じたいものだ。それが、ロイヤルティプログラムが顧客を大きく引き付ける理由である。企業には、自社のサブスクリプションを選んだ顧客に特別な価値を提供できる、顧客に合わせたロイヤルティプログラムを構築する必要がある。それは、登録時1回限りのプレゼントでも、毎月の無料オンラインセミナーのような継続的なものでも良い。

また、ロイヤルティプログラムは、消費者の人生に応じて変化しなればならない。顧客のニーズは縮小したり倍増したりする。数か月旅行するのでサブスクリプションを休止したい人もいれば、家族が増えるのでサブスクリプションサービスも追加したい人もいる。それらに応じて、インセンティブプログラムは進化しなければならない。

ロイヤルティプログラムは、顧客にサービスを提供するだけでなく、企業が必要なインサイトを収集し、ビジネス上の決定を下すためにも使用できる。ロイヤルティプログラムサービスの一環として、米国に本社のあるハンバーガーチェーンBurger Kingは、同社のアプリを使用する顧客にコーヒーを5セントで提供している。初期のコーヒー販売では利益が失われるが、アプリの使用が必須のため、貴重な顧客データを得ることができ、他のエリアでの売り上げが増加させることにつながる。

アイルランドに本拠を置く総合コンサルティング企業のAccentureによると、顧客ロイヤルティプログラムのメンバーは12%から18%多くの収益をもたらすという。これはサブスクリプションの利用期間が長くなり、解約が少なくなることを意味する。プログラムの有効性を立証するには、新規顧客を獲得するよりも、現在の加入者を満足させる方が有益だ。

 

解約防止マネジメントは成功へのカギ

サブスクリプションプログラムは、安定した収益と忠実な顧客を生み出し、より幅広いオーディエンスに対して製品利用を促進できる傍ら、解約防止マネジメント戦略の実行がサブスクリプションモデルの成功のカギである。

サブスクリプションモデルが経済を変え続けているなかで、企業は顧客のニーズを満たすために進化し、期待される柔軟性を提供する必要がある。

企業は解約を避けることができないが、解約率を下げることはできる。正しいプランを実行すれば、サブスクリプションプログラムは、安定した収入源となるだろう。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/2公開の記事を翻訳・補足したものです。